先生を魔法使いにはさせません

No.26

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本編

05

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「先生、これからも俺のこと抱いてくださいね」
「は?! なんで、」
「じゃないと、学校中に言いふらしますよ。樹先生に無理やり犯されたって。先生辞職ですね」
「はああ?!」
 こっ、こいつ、どこまで脅す気なんだよ?!
 雪本はくすくす笑って、
「首輪、着けておいてくださいね」
 そう、その真っ白な首元を指差した。
「…………ッ」
 それで、俺はついムラッと来て。
 雪本の首に顔を近づけて、吸い付いた。
「んっ…」
 雪本はぴくりと反応して、声を漏らす。
 口を離すと、白い首には赤い跡がくっきりとついていた。
「ほら、首輪」
「…………っ」
 雪本は頬を染めて、目を泳がし、そして俺を抱きしめた。
「……雪本」
 あまりにも可愛い行動に、胸が高なって、彼を抱きしめ返す。
 ……俺、ホモだったのかな。今まで男を見て欲情したことなんてなかったのに。
 いや、でも思い返せば、女にもこんなに興奮したことはなかった。
 ……雪本だから、そう思ったのかな。
 そんなことを考えていると、雪本は俺の肩で静かに言った。
「先生、明日俺、体育……」
「………………あ」



「その絆創膏、何か言われなかったか?」
 翌日。昼休みの、理科準備室。偶然二人きりになった雪本に、そう聞いた。
 雪本はくすりと笑い、襟をわざと引っ張って、首元の絆創膏を俺に見せた。
「聞かれましたけど、ちょっと爪でひっかいちゃったって言ったら、みんな信じてくれましたよ」
「そうか、よかった」
 雪本が怪しまれていなくて、ほっとした。
 でも、折角つけたのに、隠してしまうなんて勿体な……いやいやいや。何考えてるんだ俺は。
 そう思っていると、雪本は微笑み、
「本当は、折角つけてもらったのに、隠しちゃうなんて勿体ないんですけど」
「は?! ば、馬鹿なこと言うな! ま、全く……」
 その発言には流石にドキリとして、慌ててそうごまかしながら、授業で使うものを机の上に並べた。
「雪本、いつもすまないけど、今日はこのプリントを持ってくのを手伝ってくれ」
「わかりました」
 雪本は、昨日の情事中のアレはどこへ行ったのか、普段通りの真面目な態度でそう了承して、俺の隣に立つ。
 そしてふと、俺が教科書の上に置いた、小さな木箱を指さした。
「それ、何ですか?」
「お、見るか?」
 雪本に、木箱を差し出す。
 その中身を見て、雪本は珍しくぱあっと顔を輝かせ、その正体を言い当てた。
「蚕の成虫ですか?」
「流石。詳しいな」
 箱の中には、ふわふわした小さな真っ白い蛾が一匹、可愛らしくちょこちょこと足を動かしている。
 この蚕蛾は、生物の授業で皆に見せようと思っていたものだった。
「本物は初めて見ました。こんなに綺麗なのに、すぐに死んじゃうんですよね。儚いなあ……」
 雪本はそう答えながら、夢中で箱の中の蚕を見つめている。
 その様子はいつもの大人ぶった態度とは違って、年相応で……不覚にも可愛いと思ってしまった。
 二人きりの、青く薄暗い準備室。運動場を駆ける生徒の声がやけに遠くに聞こえる。
 その中で雪本の存在が、異様に白く、光って見えた。
「雪本は、その……何で俺の事を好きになったんだ?」
 そう聞くと雪本は顔を上げ、首を傾げた。
「俺、先生のこと好きとか、一言も言ってないですけど」
「は?! じゃあ、好きじゃない俺にあんなこと言ってたのかお前は?!」
「……………」
 慌ててそう聞くと、雪本は黙り込む。
 少し間が開いて、彼は静かに話し始めた。
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