西瓜わる砂漠

ながめ

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西瓜わる砂漠

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「おーい、もう少し右だヨォ~」
「いや、もっと左だぁ~」
 そんな呑気な声が真っ青な空に高く響く。
「よぉし、そこだぁ~いけいけぇ~」
 そう聞こえて振り下ろす棍棒に、すぱぁーんと西瓜が割れる。
 3ヶ月も毎日西瓜割りをしていると、流石に慣れてくる。しかし、毎回芯を狙っても、割れ方は日によって違う。本日はその脳天を叩き、ぱんぱんの緑から弾けるように四方へと真っ赤がぶち撒かれた。ちょうど、出てきたかったのかもしれない。そしてその赤ぎ敷いてあるブルーシートによく映える。それは毎度毎度、異なる絵をそこに描きながら、やがてわらわらと人々がそこに群がる。
「いやぁ、こうも毎日食っていると、流石に味に飽きますなぁ」
「そうですかぁ~」
 そう言いながら、晴れ渡る青空を見ながら毎日食べている。
「にしても、ようやく穴が完成しましたなぁ」
 同僚が穴を見ながら西瓜を食う。
「ほんと、始まった時には正気の沙汰とは思わなかったが、晴れっぱなしと言うのは天候に左右されないと言う点において、馬鹿みたいに計画が進むから良いもんですなぁ」
 俺も西瓜を食いながら穴を見る。
「いやぁ、でも本当にちゃんと落ちてくるんですかねぇ?こんな砂漠のど真ん中に」
「いまさらそんなこと言っても仕方がないだろ?うまいこと落とすって、上が言ってるんだから、俺たちは従って作業を行うだけだ」
「え~、でも元はと言えば宇宙船の制御が効かなくなったのが原因でしょ?そんな簡単に制御が戻りますかね?」
「知らねぇよそんなこと。向こうには向こうのプロがいるんだろ?俺たちと同じで」
「ですかねぇ?」
「…ほら、俺たちは人類が始まって以来、ずーっとある土木をやってる。その一方で宇宙事業はまだまだ発展途上。いくら短い人類史でも、千年以上の差があるんだ。そんな簡単には行かんよ」
「そんなもんですかねぇ?」
 と、西瓜の種をそのままペッと地面に吐き出す。実際、食べるも食べないも同じことで、ゴミはそのまま放置される。この水のないだだっ広い砂漠では乾燥されるだけだ。
「にしても不思議な話ですよ」
「ん?」
「元はと言えば、別の惑星で作った海産物を輸入するためにロケットを飛ばした訳ですよね?そしたらそのロケットが制御不能になってどこに落ちるかわからないから大慌て。んで、世界中ですったもんだ話した挙句、砂漠のど真ん中に落とすことを決めた訳じゃないですか」
「まぁ、そのまま海に落としたら生態系がどうなるかわからんから、みたいな理由だっけか」
「そうそう。んで、いざ落とす段になって、その海産物を養殖したいからでっかい池を作りたいと」
「な?商魂が逞しいことで」
「そしたら、突然、『やれ、補助金をくれ』『技術提供してくれ』とか言い出して」
「『元はと言えば、オマエらの国が制御不能になったのが悪い!俺たちは被害者だ!』とか言い出してな」
「それでノコノコと金を出し、技術提供をし、我々が連行されてきた訳ですよ」
「ほんとに、こんな遠いところまで来て、でっかい池を作らされて、何が楽しいんだか」
 目の前のただただデカい穴。3ヶ月かけてようやく掘り出し、来月には水を入れる。その水は地下から汲み出すらしい。地下にあるものをさっさと引き上げれば良いものをとも思うが、やはりついて回るのはお金である。
「にしても、イヤにデカい池ですよ…これを池というのか微妙ですが」
「まぁ、海というには狭いがな…湖くらいがちょうど良いんじゃないか?」
「ここに上手いことロケットを着水させて、中から海産物をぶち撒けて、そして養殖の段階まで持っていく…ほんとにそんなに上手くいきますかね?」
「さぁ?とりあえずオレらはオレらの仕事をキッチリこなすだけだからな」
 そう言って立ち上がる。
 だだっ広い池に美味しいところだけ食べた西瓜を投げ捨てる。西瓜はここいらの唯一の農産物だ。もちろん、それだけでは生活は賄えない。だからこその新産業…でもほぼほぼ見たことがない魚を育てることってできるのだろうか?
 ま、でもオレも育てたことないから同じか。
「お金ある国は惑星を買い、海産物を育てて輸入、お金ない国はロケットを落とされる代わりに、新しい海産物を開発して輸出する。まあ、良い循環なんじゃないか?」
「そんな良いもんですかね?」
「まぁ、ウィンウィンではあるだろ」
 そう言って、ブルーシート上に散らばった西瓜の破片を見る。みんな、美味しいところだけ食べて投げていく。ここの砂漠はとても広い。ハエも寄らない。そんな場所を人間が欲望のために開発する。やがて池ができれば新たな生態系が産まれるのだろうか。
「ここで生産された魚は養殖なんですかね?」
「さぁ、どうかな?一応、惑星産の魚は一応天然扱いだから天然なのではないか?」
「でも、それは一面海の星だからであって、いくら広い池でも完全な人間の管理下にあるから流石に養殖と言わざるを得ないでしょ」
「いや、そもそも星を開発したのも人間だから養殖といえば養殖なんだよ」
「ふむ…それもそうっすね」
「そもそも、肉なんて全部養殖みたいなものなのに、魚を天然かどうかで測ることのほうがおかしいんだよ」
「なるほど」
「ほら、納得したらブルーシート持って、中身捨てるぞ」
「はい」
 そう言ってブルーシートの四隅を持つ。
 そしてそのまま池に投げ入れる。
 全ては溶解して栄養になる。
 素晴らしい計画。
「で、実際どうなんですかね?」
「ん?」
「ほんとに魚が生きてるんですかね?」
「一応、生きてるって話だけどな」
「もしかするとそれ以外のものだったりして」
「あんまり不吉なこと言うなよ」
「ま、なんにせよ美味しかったら良いですね…」
「…そうだな」
 見上げれば、あまりにも広く青い空がどこまでも続いている。そこから宇宙船が来るなんてまだ想像がつかない。テレビやらネットでは宇宙開発の話を聞くけれど、やはり嘘ではないかと思うのだ。
 しかし、目の前には穴があり、やがて池になる。仕方ない現実であるが、よもや砂漠も魚だらけになるだろうと知らないだろう。
 そういえば、砂漠がを魚を知らないのも、俺が宇宙船を理解できないのも同じ無知であり、どっかに居るらしいお偉いさん任せに、一生なすがままなのだろうなと思ってしまうのだ。
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