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プロローグ
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【この小説はカクヨムに投稿したものを加筆修正して投稿し直したものです】
───────────
『会合の時間です。始めますがよろしいですか?』
頭の中に声が響く。魔術<幻影会合>の機能で、設定した時間になると通知が来るようになっている。
座ったまま大きく伸びをして、集中して作業していた間にたまった肩の凝りをほぐす。
「もうそんな時間か。いいよ、始めて」
承諾を返すと、僕の前にある作業台の上に3人の人影が現れる。
椅子に座った状態で高さ30㎝くらいの大きさの人の姿をしている。もちろん、そこに本当にいるわけではなく幻のようなものだ。本人たちは別々の場所にいる。
『皆様、お忙しいところお集まりいただきありがとうございます。』
真ん中のいかにもお貴族様と分かる立派な服装の男性が司会を務める。彼はベルトラン・レスコー伯爵で、僕の実家があるペリゴール領の領主である。
『おかげさまで忙しくさせていただいております』
左側にいる恰幅の良い男性がにこやかに応じる。彼の名はアンドレ・ダヤン。この国でも5本の指に入る大商会、ダヤン商会の会頭だ。
『ちょうど退屈をしていましたので、助かりましたわ』
右側にいる気品のある淑女がたおやかな笑顔を浮かべ、冗談めかして応える。彼女はこの国の第二王妃リアーヌ・ルパーブ=シャトロワ陛下である。
「あれ?リアーヌ様って今、祭典に参加中じゃありませんか」
『はい。黙って微笑みながら座っているだけの簡単なお仕事ですので、大丈夫ですよ』
本来、僕のような平民が王妃陛下にこのような口を聞いたら不敬で打ち首でもおかしくない。ていうかこの場にいることすらおこがましい、はずだ。
何しろ、レスコー伯爵と言えばここ数年で2回も陞爵を果たし領主となった、今最も注目を集めている貴族の出世頭だし、ダヤン商会だってここ数年で地方の一商会から王国屈指の大商会にまで急拡大した経済界の星だ。
なにより、リアーヌ陛下はここ数年で勢力を急拡大した貴族の最大派閥”王太子派”の実権を握る超重要人物である。
今やこの王国ではこのメンバーの意向を無視して物事を進めることは、国王陛下にだって無理だろう。当然この会合の議題は、今後のこの国の経済や政治の行く末を決める大方針に関わる内容だ。
そんな場に成人したての平民の若造が参加しているのみならず、
『それではテオ殿、まずはご報告がございます』
とレスコー伯爵が丁寧な言葉づかいで僕に向けて言うのだから、いったい何様だよって話だよね…
まぁ、その辺は追々語るとして。
会議の方は、とんでもなくスケールが大きいはずの話が、まるで世間話のような感じでポンポンと進んでいく。
僕はというと適当に相槌を打ったり、質問を挟んで話の流れを止めたり、時々感想を述べたりするだけ。役に立ってないどころかむしろ邪魔してる感じすらある。
が、重鎮の3人は一向に気にせず、むしろ機嫌がよさそうだ。
『それでは皆様ありがとうございました』
小一時間ほどで話はまとまり、会議はレスコー伯爵のあいさつでお開きとなった。
「ふー」
椅子にもたれかかり、深く息を吐く。
「お疲れ様です。テオ様」
メイド服を着た綺麗なお姉さん、アネットさんがお茶を用意してくれた。
「ありがとう、アネットさん」
思えば、一介の魔術師に過ぎない僕がこんな雲上人たちと会合することなったきっかけが、このアネットさんにまつわる事件だった。
師匠に死霊術を教えてもらって、修業するのが面白くって、魔術の腕を磨いていただけなのに。
「どうしてこうなったんだか…」
僕は全てのきっかけとなったあの時の事を思い出していた。
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『会合の時間です。始めますがよろしいですか?』
頭の中に声が響く。魔術<幻影会合>の機能で、設定した時間になると通知が来るようになっている。
座ったまま大きく伸びをして、集中して作業していた間にたまった肩の凝りをほぐす。
「もうそんな時間か。いいよ、始めて」
承諾を返すと、僕の前にある作業台の上に3人の人影が現れる。
椅子に座った状態で高さ30㎝くらいの大きさの人の姿をしている。もちろん、そこに本当にいるわけではなく幻のようなものだ。本人たちは別々の場所にいる。
『皆様、お忙しいところお集まりいただきありがとうございます。』
真ん中のいかにもお貴族様と分かる立派な服装の男性が司会を務める。彼はベルトラン・レスコー伯爵で、僕の実家があるペリゴール領の領主である。
『おかげさまで忙しくさせていただいております』
左側にいる恰幅の良い男性がにこやかに応じる。彼の名はアンドレ・ダヤン。この国でも5本の指に入る大商会、ダヤン商会の会頭だ。
『ちょうど退屈をしていましたので、助かりましたわ』
右側にいる気品のある淑女がたおやかな笑顔を浮かべ、冗談めかして応える。彼女はこの国の第二王妃リアーヌ・ルパーブ=シャトロワ陛下である。
「あれ?リアーヌ様って今、祭典に参加中じゃありませんか」
『はい。黙って微笑みながら座っているだけの簡単なお仕事ですので、大丈夫ですよ』
本来、僕のような平民が王妃陛下にこのような口を聞いたら不敬で打ち首でもおかしくない。ていうかこの場にいることすらおこがましい、はずだ。
何しろ、レスコー伯爵と言えばここ数年で2回も陞爵を果たし領主となった、今最も注目を集めている貴族の出世頭だし、ダヤン商会だってここ数年で地方の一商会から王国屈指の大商会にまで急拡大した経済界の星だ。
なにより、リアーヌ陛下はここ数年で勢力を急拡大した貴族の最大派閥”王太子派”の実権を握る超重要人物である。
今やこの王国ではこのメンバーの意向を無視して物事を進めることは、国王陛下にだって無理だろう。当然この会合の議題は、今後のこの国の経済や政治の行く末を決める大方針に関わる内容だ。
そんな場に成人したての平民の若造が参加しているのみならず、
『それではテオ殿、まずはご報告がございます』
とレスコー伯爵が丁寧な言葉づかいで僕に向けて言うのだから、いったい何様だよって話だよね…
まぁ、その辺は追々語るとして。
会議の方は、とんでもなくスケールが大きいはずの話が、まるで世間話のような感じでポンポンと進んでいく。
僕はというと適当に相槌を打ったり、質問を挟んで話の流れを止めたり、時々感想を述べたりするだけ。役に立ってないどころかむしろ邪魔してる感じすらある。
が、重鎮の3人は一向に気にせず、むしろ機嫌がよさそうだ。
『それでは皆様ありがとうございました』
小一時間ほどで話はまとまり、会議はレスコー伯爵のあいさつでお開きとなった。
「ふー」
椅子にもたれかかり、深く息を吐く。
「お疲れ様です。テオ様」
メイド服を着た綺麗なお姉さん、アネットさんがお茶を用意してくれた。
「ありがとう、アネットさん」
思えば、一介の魔術師に過ぎない僕がこんな雲上人たちと会合することなったきっかけが、このアネットさんにまつわる事件だった。
師匠に死霊術を教えてもらって、修業するのが面白くって、魔術の腕を磨いていただけなのに。
「どうしてこうなったんだか…」
僕は全てのきっかけとなったあの時の事を思い出していた。
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