3 / 34
3.惨めな死
しおりを挟む
======== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
辻友紀乃・・・鍼灸師。柔道整復師。高校の茶道部後輩、幸田仙太郎を時々呼び出して『可愛がって』いる。
幸田仙太郎・・・南部興信所所員。辻先輩には頭が上がらない。
=====================================
私の名前は辻友紀乃。
辻は、所謂通り名。そして、旧姓。戸籍上は「大下」。
旦那は「腹上死」した。嘘。
本当は、がんだった。
膵臓がん、って奴だ。
私は、鍼灸師で柔道整復師だ。
お馴染みさんは、これでも多い方だ。
今日も、長い付き合いの瀬戸内輝男がやってきた。
「どや、瀬戸内さん。調子は、良くなった?」
「はい。お陰さんで。先生。湯田さん言う人知ってはります?」
「ああ。湯田さんとも長い付き合いでなあ。以前、大阪で仕事してはった時、近くのアパートに住んではったんや。引っ越してからも1ヶ月に1回、来てくれた。今の住まいの近くの鍼灸では、物足りんなって言うから、鍼灸より『矯正』にしてあげてたけど、ここ半年音沙汰なしや。Linenにメッセージ送っても返って来ないしなあ。」
「その、湯田さん。亡くなったらしい。私は、嫁の実家があの近く、大鳥大社の近くでな。昨日亡くなって、今夜『お通夜』らしいから、今夜嫁連れて行ってきますわ。」
「後で、どうしたたんか話、聞かせて貰えます?遅なってもええし。」
「了解です。」
午後9時。
瀬戸内から電話がかかって来た。
「先生。エライことになってましたわ。お通夜に行ったら、弔問客は私ら2人だけ。焼香済んで、嫁がトイレ行ってる間に罵声が飛び交うのを聞いたんです。」
「罵声?あの『へんこ』か。そうか、あの『へんこ』のせいで来なくなった、ということか。」
「『へんこ』?ああ、あの弟嫁ですか。その『へんこ』が喪主してましたわ。」
「え?おにいさんは?湯田さん、次男さんで、長男さんがいてはるから、喪主は一郎さんと違うの?三男の三郎さんの嫁の唄子?『へんこ』?」
「何でも、湯田次郎さんは、枡柿の最中に亡くなったらしい。はっきり痕跡があったから、救急隊員さんが脳卒中やろうって。興奮して昇天したんやろうって。」
「それで、怒るんか、あの『へんこ』は。あのな、瀬戸内さん。あの弟嫁は、ここに乗り込んで来て、治療代、高すぎる、ぼってるやろうって言うたんや。瀬戸内さんも知っての通り、鍼灸は同意書あったら、『医者の補助』ちゅう名目で健康保険効くけど、柔道整復師の施術は認められてへんから実費やねん。私の説明に納得したんと思ってたが・・・。どこまでも出しゃばりやな。あの『へんこ』は。あ、明日、予約で一杯やったなあ。」
私は、すぐに幸田に電話をして、呼び寄せた。
事情を聞いた幸田は、「ほな、明日は午後の仕事休んで行ってきますわ。」と言い、その場で所長に事情を説明した。
「何やったら休んでもええけどな。まあ、告別式は午後からやわな。湯田さんって言うたな。喉仏に大きなホクロある人かどうか、先生に聞いてみて。」
所長の言う通りなので、私はスマホに顔を近づけて、「所長さんも知ってる人?」と尋ねた。
「ああ、昔、ちょっとな。幸田、興信所のみんなの名前、記帳してきて、香典代も後で精算するから立て替えて。」
幸田が電話を切ると、私は、分厚い封筒を出した。
「落としなや。」「かなりのお得意さんでしたか?」
「私も恩があるねん。でも、『へんこ』と会ったら、喧嘩になる。それに明日は予約一杯やねん。幸田、頼むわ。」
「了解です。」
幸田が帰ると、風呂の用意をして、私は、昔を思い出していた。
―完―
========「中年探偵幸田の日記77」に続く============
※「へんこ」とは関西地方の方言で「頑固者、偏屈者」という意味である。
「偏屈たす頑固」と言う者もいる。兎に角、回りが「手を焼く」人間のことだ。
============== 主な登場人物 ================
辻友紀乃・・・鍼灸師。柔道整復師。高校の茶道部後輩、幸田仙太郎を時々呼び出して『可愛がって』いる。
幸田仙太郎・・・南部興信所所員。辻先輩には頭が上がらない。
=====================================
私の名前は辻友紀乃。
辻は、所謂通り名。そして、旧姓。戸籍上は「大下」。
旦那は「腹上死」した。嘘。
本当は、がんだった。
膵臓がん、って奴だ。
私は、鍼灸師で柔道整復師だ。
お馴染みさんは、これでも多い方だ。
今日も、長い付き合いの瀬戸内輝男がやってきた。
「どや、瀬戸内さん。調子は、良くなった?」
「はい。お陰さんで。先生。湯田さん言う人知ってはります?」
「ああ。湯田さんとも長い付き合いでなあ。以前、大阪で仕事してはった時、近くのアパートに住んではったんや。引っ越してからも1ヶ月に1回、来てくれた。今の住まいの近くの鍼灸では、物足りんなって言うから、鍼灸より『矯正』にしてあげてたけど、ここ半年音沙汰なしや。Linenにメッセージ送っても返って来ないしなあ。」
「その、湯田さん。亡くなったらしい。私は、嫁の実家があの近く、大鳥大社の近くでな。昨日亡くなって、今夜『お通夜』らしいから、今夜嫁連れて行ってきますわ。」
「後で、どうしたたんか話、聞かせて貰えます?遅なってもええし。」
「了解です。」
午後9時。
瀬戸内から電話がかかって来た。
「先生。エライことになってましたわ。お通夜に行ったら、弔問客は私ら2人だけ。焼香済んで、嫁がトイレ行ってる間に罵声が飛び交うのを聞いたんです。」
「罵声?あの『へんこ』か。そうか、あの『へんこ』のせいで来なくなった、ということか。」
「『へんこ』?ああ、あの弟嫁ですか。その『へんこ』が喪主してましたわ。」
「え?おにいさんは?湯田さん、次男さんで、長男さんがいてはるから、喪主は一郎さんと違うの?三男の三郎さんの嫁の唄子?『へんこ』?」
「何でも、湯田次郎さんは、枡柿の最中に亡くなったらしい。はっきり痕跡があったから、救急隊員さんが脳卒中やろうって。興奮して昇天したんやろうって。」
「それで、怒るんか、あの『へんこ』は。あのな、瀬戸内さん。あの弟嫁は、ここに乗り込んで来て、治療代、高すぎる、ぼってるやろうって言うたんや。瀬戸内さんも知っての通り、鍼灸は同意書あったら、『医者の補助』ちゅう名目で健康保険効くけど、柔道整復師の施術は認められてへんから実費やねん。私の説明に納得したんと思ってたが・・・。どこまでも出しゃばりやな。あの『へんこ』は。あ、明日、予約で一杯やったなあ。」
私は、すぐに幸田に電話をして、呼び寄せた。
事情を聞いた幸田は、「ほな、明日は午後の仕事休んで行ってきますわ。」と言い、その場で所長に事情を説明した。
「何やったら休んでもええけどな。まあ、告別式は午後からやわな。湯田さんって言うたな。喉仏に大きなホクロある人かどうか、先生に聞いてみて。」
所長の言う通りなので、私はスマホに顔を近づけて、「所長さんも知ってる人?」と尋ねた。
「ああ、昔、ちょっとな。幸田、興信所のみんなの名前、記帳してきて、香典代も後で精算するから立て替えて。」
幸田が電話を切ると、私は、分厚い封筒を出した。
「落としなや。」「かなりのお得意さんでしたか?」
「私も恩があるねん。でも、『へんこ』と会ったら、喧嘩になる。それに明日は予約一杯やねん。幸田、頼むわ。」
「了解です。」
幸田が帰ると、風呂の用意をして、私は、昔を思い出していた。
―完―
========「中年探偵幸田の日記77」に続く============
※「へんこ」とは関西地方の方言で「頑固者、偏屈者」という意味である。
「偏屈たす頑固」と言う者もいる。兎に角、回りが「手を焼く」人間のことだ。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
別れし夫婦の御定書(おさだめがき)
佐倉 蘭
歴史・時代
★第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★
嫡男を産めぬがゆえに、姑の策略で南町奉行所の例繰方与力・進藤 又十蔵と離縁させられた与岐(よき)。
離縁後、生家の父の猛反対を押し切って生まれ育った八丁堀の組屋敷を出ると、小伝馬町の仕舞屋に居を定めて一人暮らしを始めた。
月日は流れ、姑の思惑どおり後妻が嫡男を産み、婚家に置いてきた娘は二人とも無事与力の御家に嫁いだ。
おのれに起こったことは綺麗さっぱり水に流した与岐は、今では女だてらに離縁を望む町家の女房たちの代わりに亭主どもから去り状(三行半)をもぎ取るなどをする「公事師(くじし)」の生業(なりわい)をして生計を立てていた。
されどもある日突然、与岐の仕舞屋にとっくの昔に離縁したはずの元夫・又十蔵が転がり込んできて——
※「今宵は遣らずの雨」「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」「大江戸の番人 〜吉原髪切り捕物帖〜」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。
花嫁御寮 ―江戸の妻たちの陰影― :【第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞】
naomikoryo
歴史・時代
名家に嫁いだ若き妻が、夫の失踪をきっかけに、江戸の奥向きに潜む権力、謀略、女たちの思惑に巻き込まれてゆく――。
舞台は江戸中期。表には見えぬ女の戦(いくさ)が、美しく、そして静かに燃え広がる。
結城澪は、武家の「御寮人様」として嫁いだ先で、愛と誇りのはざまで揺れることになる。
失踪した夫・宗真が追っていたのは、幕府中枢を揺るがす不正金の記録。
やがて、志を同じくする同心・坂東伊織、かつて宗真の婚約者だった篠原志乃らとの交錯の中で、澪は“妻”から“女”へと目覚めてゆく。
男たちの義、女たちの誇り、名家のしがらみの中で、澪が最後に選んだのは――“名を捨てて生きること”。
これは、名もなき光の中で、真実を守り抜いたひと組の夫婦の物語。
静謐な筆致で描く、江戸奥向きの愛と覚悟の長編時代小説。
全20話、読み終えた先に見えるのは、声高でない確かな「生」の姿。
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
せんせいとおばさん
悠生ゆう
恋愛
創作百合
樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。
※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる