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35.オクトパスの『枝』
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========== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
大文字伝子・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。
大文字(高遠)学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。
一ノ瀬(橘)なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。
久保田(渡辺)あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。
愛宕(白藤)みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。
物部一朗太・・・伝子の大学の翻訳部の副部長。故人となった蘇我義経の親友。蘇我と結婚した逢坂栞も翻訳部同学年だった。
物部(逢坂)栞・・・物部の妻。蘇我が亡くなってから一人だったが、物部と今年、再婚した。
依田俊介・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。あだ名は「ヨーダ」。名付けたのは伝子。やすらぎほのかホテル東京支配人。
依田(小田)慶子・・・ある事件で依田と知り合い、結婚。やすらぎほのかホテル東京副支配人。
福本英二・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。大学は中退して演劇の道に進む。今は建築事務所に就職し、演劇活動は休止している。
福本祥子・・・福本の妻。福本の劇団の看板女優。
服部源一郎・・・伝子の高校のコーラス部後輩。シンガーソングライター。昭和レトロなレコードを探して、伝子達に紹介している。
服部(麻宮)コウ・・・服部の妻。夫を何とか音楽家として世に出したいと願っている。
南原龍之介・・・伝子の高校のコーラス部の後輩。高校の国語教師だったが、今は妻と共に学習塾を経営している。
南原(大田原)文子・・・南原の妻。学習塾を帰営している。
山城順・・・伝子の中学の書道部後輩。愛宕と同窓生。海自の民間登用の事務官。
山城(南原)蘭・・・美容師。伝子の後輩の山城と結婚した。
愛宕寛治・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。階級は警部。みちるの夫。
斉藤理事官・・・EITO本部司令官。EITO創設者。
藤井康子・・・伝子マンションの隣に住む。料理教室経営者。
大文字綾子・・・伝子の母。介護士。伝子に「クソババア」と言われることがある。
山下いさみ・・・オクトパスの「枝」だった。拘置所に入っている。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。
久保田誠警部補・・・警視庁警部補。今は、捜査一課に所属。あつこの夫。
==================================================
==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO精鋭部隊である。==
午前11時。伝子のマンション。
高遠は、LinenでDDメンバーと話していた。
物部が言った。「その、那珂国人を率いて来たリーダーは、オクトパスの『枝』か?消されないか?」
「そうだよ、高遠。失敗した訳だよな。」と、福本も同調した。
「管理官によると、サバサバしていて、知ってることは、あっさりしゃべったそうだ。」
「珍しいな。何で組織に入ったんだろう?」と、依田が言った。
「友達が借金して、死んだ。奴は。山下いさみって言うんだが、山下は、保証人になっていた。返せない。そこで『闇バイト』だ。」
「『枝、募集中』?」と、蘭が言うと、高遠は笑った。「まさか。『那珂国語』の分かる人、募集中。詰まり、通訳だ。人数分払うと書いている、しかも前払いで。」
「で、募集に応じた。合格した、ですか。高遠さん。」と山城が言った。
「その通り。観光案内でも通訳する積もりだったらしい。ところが、履歴書みたいなシートに書いた個人情報に、オクトパスが目を付けたのが、武道の心得だ。みちるちゃんとは五節棍で闘ったが、剣道も柔道も出来る。」
「成程。非正規雇用の幹部かな?借金は返せたんですか?高遠さん。」と、今度は南原が言った。
「うん。それで借金を返した後、タイミングよく『指令書』が来た。既にクーリングオフ出来ない誓約書にサインしているし、すぐに覚悟を決めたらしい。指令書のシナリオ通り進める積もりだったが、気まぐれを起してトーナメント戦にした。指令書にはトーナメント戦なんか書いて無かったんだ。」
「変わってるね。なんでシナリオ変更したんだろう?」と服部が言った。
「何か確証があったのね。集団は日本語出来なかったのよね。それじゃ、『シナリオ通りトーナメント戦を行う。自信のある者は前に出ろ』、って那珂国語で言えばいい。」
「コウさん、鋭いね。山下は、EITOやエマージェンシーガールズのことはある程度知っていた。だからこそ、トーナメント戦で集団の持久力を奪うことを考えた。」
「ちょっと待って、高遠さん。山下は集団に負けさせる積もりだったの?」と文子が叫んだ。
「かなりの知恵者ね。俊介には絶対出来ない作戦だわ。」と慶子が言い、「お褒めにあずかってありがとうございます。」と、依田が泣きそうな声を出した。
「ひょっとしたら、みちるちゃん止まりじゃなく、エマージェンシーガールズの最後のメンバーの時に集団に何人も残っていた場合も、作戦があったんじゃない?相手は日本語通じないから、指令書に書いてあるって言えばいい。那珂国語の指令書でなくても、何か日本語で書いてあるものでもいい。簡単に騙せるわ。」と、栞が言った。
「さすが、逢坂先輩。その通りです。」「ああ!」と祥子が叫んだ。
「もしかして、山下は、みちるちゃんに負ける気だった?互角と見せかけておいて、膝折って。」
「名探偵揃いだな。」と、高遠の隣にいた愛宕が言った。
「私もねえ、変だと思ったんだ。必死だったから、はっきりとは分からなかったけど。おねえさま達が駆けつけたから、切り上げたのね。笑ってたし。何でこんな余裕が?とは思ってたんだ。」と、愛宕の隣に座っている、みちるが言った。
「笑ったのか?みちる。」「うん。お前らには降参だ。流石に5000人相手にしただけある。って。」
「前の闘いの事は書いてあったの?指令書に。」と、藤井が言った。
「書いてあったの。ちゃんと指令書も提出してくれたって、あつこが言ってた。50人じゃ少なく感じるだろうが、有段者だから。君は指示するだけでいいって。」
「何で自殺しないの?殺し屋来ないの?」と、藤井の隣に座っている綾子が言った。
「薬も貰って無くて、オクトパスの情報を殆ど知らなきゃ、自白も出来ない。そんなところだろうな。」
パジャマ姿で寝室から現れた伝子が初めて発言した。
「伝子、どっか悪いの?」と、綾子が言うと、「徹夜明け。ババアの五月蠅い声で目が覚めたよ。」と伝子が悪態をついた。
「じゃ、今度、お義母さんのアラームメッセージで起きるようにする?」と、高遠は言った。
「失礼な夫婦ね。」と言い、綾子は出て行った。
「ああ、今日もコントが観られた。幸せだわあ。」と、藤井が言い、画面を通じて爆笑が起こった。
「非正規雇用の『枝』かあ。ネットは色んな使い道があるんだなあ。」端っこに座っていた橋爪警部補がポツンと言った。
「そうだ、総子ちゃんの方は、先輩。」と依田が言った。
「ああ、ヘレン誘拐事件か。終ったよ、簡単に。大前さんも、肩の荷が降りたよ。斉藤理事官、久保田管理官、夏目警視正、小柳警視正、大前司令官、芦屋総帥の五者協議で、ヘレンちゃんは、通信係としてEITO大阪支部に再就職、自宅から通っていいことになった。愛川いずみちゃんは、引き継ぎした後で、EITO大阪支部サポートチームに組み入れられる。剣道出来るから、立派にEITOエンジェルだ。サポートチームは、芦屋二美、本郷弥生と愛川いずみだ。」と、伝子は応えた。
「成程、元ヤンはつかず離れずってことか。」「そうだよ、ヨーダ。まあ、誰もわだかまりは無いと思うけどね。」
正午になった。
「さ。お寿司食べましょ。画面の向こうの人の分は無いけどね。」と、藤井は言い、高遠はLinenを終了した。
午後2時。
愛宕達が退室しようとすると、EITO用のPCが起動した。
「とうとう来たよ。」と斉藤理事官が憮然として言った。
画面の端に、チックタックの(Tick Tack)の動画が流れた。
「やあ、待たせたね、EITO諸君。何か邪魔が入ったみたいだったけど、気にしないで。エーアイ君、アナグラム好きだったよね。『科研先砂』で、今月中。イベントは、すぐ分かるさ。」動画のクラウンは、『科研先砂』と書いたプラカードを持っていた。
クラウンの格好をした、オクトパスは、しゃべり終えると、また初めから同じことを言い出した。
草薙が、慌てて再生を止めた。
「どうした、草薙。故障か?」「いえ、リール動画と言って、動画を決まった時間でエンドレス再生するんです。」
「ついさっき、警視庁の情報管理室から連絡があったのが、この動画だ。分かるかね?高遠君。」
「科研砂先・・・これは特に意味はありません、多分。奴の言う通り、アナグラムなら、『さかすなきけん』になりますね。」
「『さかすなきけん』?『探すな、危険』ってことか。何か分からないな。」
高遠は思わず妻を見た。伝子はかぶりを振った。
「今月中・・・こっちに何か意味あるのかな?」「学。皆にメッセージ送っとけ。藁ばらまいとけ。」
「藁・・・まあ、いいけど。」高遠は苦笑した。
食事の後、高遠は、Linenの一斉送信のメッセージを送った。
事件が発覚したのは、明朝だった。
翌日。午前8時半。江東区東陽町。
通勤してきた、ビジネスマンが、マンホールに挟まっていた女性を発見した。
既に死体であることは、一目瞭然だった。彼は迷わず警察に通報した。
野次馬整理に駆り出された女性警察官が、鑑識の井関に近寄って来て言った。
「やっぱり。」声に振り返った井関は驚いた。「早乙女君・・・早乙女巡査部長。久しぶりだな。知り合いかい?」「ええ。」「何も持って無いから。このプラスチックカード以外な。身元確認に困るだろうな、とは思ったが・・・。」
井関は、『た』とひらがなで書かれたカードを早乙女に見せた。そして、側にいた久保田警部補にも見せ、こう言った。
「久保田。EITOに協力依頼が必要かも知れないな。」
久保田警部補は、すぐにEITOに連絡をした。
電話の向こうで「了解しました。」という、なぎさの声が聞こえた。
―完―
============== 主な登場人物 ================
大文字伝子・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。
大文字(高遠)学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。
一ノ瀬(橘)なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。
久保田(渡辺)あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。
愛宕(白藤)みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。
物部一朗太・・・伝子の大学の翻訳部の副部長。故人となった蘇我義経の親友。蘇我と結婚した逢坂栞も翻訳部同学年だった。
物部(逢坂)栞・・・物部の妻。蘇我が亡くなってから一人だったが、物部と今年、再婚した。
依田俊介・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。あだ名は「ヨーダ」。名付けたのは伝子。やすらぎほのかホテル東京支配人。
依田(小田)慶子・・・ある事件で依田と知り合い、結婚。やすらぎほのかホテル東京副支配人。
福本英二・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。大学は中退して演劇の道に進む。今は建築事務所に就職し、演劇活動は休止している。
福本祥子・・・福本の妻。福本の劇団の看板女優。
服部源一郎・・・伝子の高校のコーラス部後輩。シンガーソングライター。昭和レトロなレコードを探して、伝子達に紹介している。
服部(麻宮)コウ・・・服部の妻。夫を何とか音楽家として世に出したいと願っている。
南原龍之介・・・伝子の高校のコーラス部の後輩。高校の国語教師だったが、今は妻と共に学習塾を経営している。
南原(大田原)文子・・・南原の妻。学習塾を帰営している。
山城順・・・伝子の中学の書道部後輩。愛宕と同窓生。海自の民間登用の事務官。
山城(南原)蘭・・・美容師。伝子の後輩の山城と結婚した。
愛宕寛治・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。階級は警部。みちるの夫。
斉藤理事官・・・EITO本部司令官。EITO創設者。
藤井康子・・・伝子マンションの隣に住む。料理教室経営者。
大文字綾子・・・伝子の母。介護士。伝子に「クソババア」と言われることがある。
山下いさみ・・・オクトパスの「枝」だった。拘置所に入っている。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。
久保田誠警部補・・・警視庁警部補。今は、捜査一課に所属。あつこの夫。
==================================================
==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO精鋭部隊である。==
午前11時。伝子のマンション。
高遠は、LinenでDDメンバーと話していた。
物部が言った。「その、那珂国人を率いて来たリーダーは、オクトパスの『枝』か?消されないか?」
「そうだよ、高遠。失敗した訳だよな。」と、福本も同調した。
「管理官によると、サバサバしていて、知ってることは、あっさりしゃべったそうだ。」
「珍しいな。何で組織に入ったんだろう?」と、依田が言った。
「友達が借金して、死んだ。奴は。山下いさみって言うんだが、山下は、保証人になっていた。返せない。そこで『闇バイト』だ。」
「『枝、募集中』?」と、蘭が言うと、高遠は笑った。「まさか。『那珂国語』の分かる人、募集中。詰まり、通訳だ。人数分払うと書いている、しかも前払いで。」
「で、募集に応じた。合格した、ですか。高遠さん。」と山城が言った。
「その通り。観光案内でも通訳する積もりだったらしい。ところが、履歴書みたいなシートに書いた個人情報に、オクトパスが目を付けたのが、武道の心得だ。みちるちゃんとは五節棍で闘ったが、剣道も柔道も出来る。」
「成程。非正規雇用の幹部かな?借金は返せたんですか?高遠さん。」と、今度は南原が言った。
「うん。それで借金を返した後、タイミングよく『指令書』が来た。既にクーリングオフ出来ない誓約書にサインしているし、すぐに覚悟を決めたらしい。指令書のシナリオ通り進める積もりだったが、気まぐれを起してトーナメント戦にした。指令書にはトーナメント戦なんか書いて無かったんだ。」
「変わってるね。なんでシナリオ変更したんだろう?」と服部が言った。
「何か確証があったのね。集団は日本語出来なかったのよね。それじゃ、『シナリオ通りトーナメント戦を行う。自信のある者は前に出ろ』、って那珂国語で言えばいい。」
「コウさん、鋭いね。山下は、EITOやエマージェンシーガールズのことはある程度知っていた。だからこそ、トーナメント戦で集団の持久力を奪うことを考えた。」
「ちょっと待って、高遠さん。山下は集団に負けさせる積もりだったの?」と文子が叫んだ。
「かなりの知恵者ね。俊介には絶対出来ない作戦だわ。」と慶子が言い、「お褒めにあずかってありがとうございます。」と、依田が泣きそうな声を出した。
「ひょっとしたら、みちるちゃん止まりじゃなく、エマージェンシーガールズの最後のメンバーの時に集団に何人も残っていた場合も、作戦があったんじゃない?相手は日本語通じないから、指令書に書いてあるって言えばいい。那珂国語の指令書でなくても、何か日本語で書いてあるものでもいい。簡単に騙せるわ。」と、栞が言った。
「さすが、逢坂先輩。その通りです。」「ああ!」と祥子が叫んだ。
「もしかして、山下は、みちるちゃんに負ける気だった?互角と見せかけておいて、膝折って。」
「名探偵揃いだな。」と、高遠の隣にいた愛宕が言った。
「私もねえ、変だと思ったんだ。必死だったから、はっきりとは分からなかったけど。おねえさま達が駆けつけたから、切り上げたのね。笑ってたし。何でこんな余裕が?とは思ってたんだ。」と、愛宕の隣に座っている、みちるが言った。
「笑ったのか?みちる。」「うん。お前らには降参だ。流石に5000人相手にしただけある。って。」
「前の闘いの事は書いてあったの?指令書に。」と、藤井が言った。
「書いてあったの。ちゃんと指令書も提出してくれたって、あつこが言ってた。50人じゃ少なく感じるだろうが、有段者だから。君は指示するだけでいいって。」
「何で自殺しないの?殺し屋来ないの?」と、藤井の隣に座っている綾子が言った。
「薬も貰って無くて、オクトパスの情報を殆ど知らなきゃ、自白も出来ない。そんなところだろうな。」
パジャマ姿で寝室から現れた伝子が初めて発言した。
「伝子、どっか悪いの?」と、綾子が言うと、「徹夜明け。ババアの五月蠅い声で目が覚めたよ。」と伝子が悪態をついた。
「じゃ、今度、お義母さんのアラームメッセージで起きるようにする?」と、高遠は言った。
「失礼な夫婦ね。」と言い、綾子は出て行った。
「ああ、今日もコントが観られた。幸せだわあ。」と、藤井が言い、画面を通じて爆笑が起こった。
「非正規雇用の『枝』かあ。ネットは色んな使い道があるんだなあ。」端っこに座っていた橋爪警部補がポツンと言った。
「そうだ、総子ちゃんの方は、先輩。」と依田が言った。
「ああ、ヘレン誘拐事件か。終ったよ、簡単に。大前さんも、肩の荷が降りたよ。斉藤理事官、久保田管理官、夏目警視正、小柳警視正、大前司令官、芦屋総帥の五者協議で、ヘレンちゃんは、通信係としてEITO大阪支部に再就職、自宅から通っていいことになった。愛川いずみちゃんは、引き継ぎした後で、EITO大阪支部サポートチームに組み入れられる。剣道出来るから、立派にEITOエンジェルだ。サポートチームは、芦屋二美、本郷弥生と愛川いずみだ。」と、伝子は応えた。
「成程、元ヤンはつかず離れずってことか。」「そうだよ、ヨーダ。まあ、誰もわだかまりは無いと思うけどね。」
正午になった。
「さ。お寿司食べましょ。画面の向こうの人の分は無いけどね。」と、藤井は言い、高遠はLinenを終了した。
午後2時。
愛宕達が退室しようとすると、EITO用のPCが起動した。
「とうとう来たよ。」と斉藤理事官が憮然として言った。
画面の端に、チックタックの(Tick Tack)の動画が流れた。
「やあ、待たせたね、EITO諸君。何か邪魔が入ったみたいだったけど、気にしないで。エーアイ君、アナグラム好きだったよね。『科研先砂』で、今月中。イベントは、すぐ分かるさ。」動画のクラウンは、『科研先砂』と書いたプラカードを持っていた。
クラウンの格好をした、オクトパスは、しゃべり終えると、また初めから同じことを言い出した。
草薙が、慌てて再生を止めた。
「どうした、草薙。故障か?」「いえ、リール動画と言って、動画を決まった時間でエンドレス再生するんです。」
「ついさっき、警視庁の情報管理室から連絡があったのが、この動画だ。分かるかね?高遠君。」
「科研砂先・・・これは特に意味はありません、多分。奴の言う通り、アナグラムなら、『さかすなきけん』になりますね。」
「『さかすなきけん』?『探すな、危険』ってことか。何か分からないな。」
高遠は思わず妻を見た。伝子はかぶりを振った。
「今月中・・・こっちに何か意味あるのかな?」「学。皆にメッセージ送っとけ。藁ばらまいとけ。」
「藁・・・まあ、いいけど。」高遠は苦笑した。
食事の後、高遠は、Linenの一斉送信のメッセージを送った。
事件が発覚したのは、明朝だった。
翌日。午前8時半。江東区東陽町。
通勤してきた、ビジネスマンが、マンホールに挟まっていた女性を発見した。
既に死体であることは、一目瞭然だった。彼は迷わず警察に通報した。
野次馬整理に駆り出された女性警察官が、鑑識の井関に近寄って来て言った。
「やっぱり。」声に振り返った井関は驚いた。「早乙女君・・・早乙女巡査部長。久しぶりだな。知り合いかい?」「ええ。」「何も持って無いから。このプラスチックカード以外な。身元確認に困るだろうな、とは思ったが・・・。」
井関は、『た』とひらがなで書かれたカードを早乙女に見せた。そして、側にいた久保田警部補にも見せ、こう言った。
「久保田。EITOに協力依頼が必要かも知れないな。」
久保田警部補は、すぐにEITOに連絡をした。
電話の向こうで「了解しました。」という、なぎさの声が聞こえた。
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