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4章 乖離
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2010年7月3日
今日も碧は学校に来ない。先生曰く家庭の事情と言っているが本当のことは当人以外誰も知らない。
凛が碧の家まで様子を見に行こうと提案したが、そもそも誰も住所を知らなかったのだ。凛でさえ。
勝負に勝った湊は日々もやもやして過ごしていた。連絡先は知っているのだから、メールや電話で伝える手もあったのだが、どうやら彼は直接伝えたいみたいだ。
一度しびれを切らした湊が碧に電話を掛けたが見事につながらなかった。
「碧、本当にどうしたんだろう。変な事件に巻き込まれてないよね、、、」
「大丈夫だ碧は戻ってくる。信じて待って居よう。」
「うん。」
明らかに元気のない凛に悠は優しく声をかける。
「こんな時落ち込んでてもしょうがないだろ。凛。」
「そうなんだけどね。」
「そうだ。明日三人で海に行かないか。前回ほどしっかりじゃなくてさ。なんていうか。海を眺めに。」
「海か、、、そうだね気晴らししに行こう。」
「湊ももちろん来るよな。」
「もちろん行くよ。」
悠が海に行くことを提案した。三人で海に行くことになった。
次の日。外は雨が降っていた。
三人でチャットでのやり取りの末、午後雨の止んだタイミングで駅に集合することになった。
「困った予定が狂ってしまった。何をしようか。」
カレンダーを眺めていると、今日は好きなアーティストのCDの発売日だ。
朝一でCDショップに行くことにした。
悠はゆっくりと朝食を食べ支度をする。
時間は九時四十分。そろそろいい時間だ。CDショップは十時からで徒歩十五分くらいの場所にある。
黒い傘をさしてそこに向かっていった。
家を出て三分くらいたったある交差点。――少女はいた。いや。本当に彼女か?
悠は傘を投げ捨て走り出した。
何をしているんだ俺は。こんなところにいるはずないじゃないか。
しかし悠の足は止まらなかった。少女が路地に入ったところ。追いかけて悠も曲がる。
――彼女の姿はもうなかった。見間違いだったのだろうか、おかしい。彼女が曲がってすぐ俺も曲がったはずだ。そんなすぐ見失うわけがない。悠は荒く呼吸をする。全力疾走したものと起こりえない不可解な事象が重なり息が整わない。落ち着くまで少し時間がかかった。
「やっぱり気のせいか。」
二、三分程して傘を取りに戻る。しかしあれは何だったのだろう、普段来ている服とほぼ同じ背丈もよく似ていた。似ていただけなのだろうか。俺の期待と不安と願望が作り出した幻――そんなわけがない。幻なんて信じていない。息は整いつつあったが、動悸がする。
「立花君。」
悠は一瞬肩をビクンとさせて後ろからかけられた声に反応する。なんでだろう、振り向けない。早く碧の顔を見たい。間違いない。この声、呼び方。碧だ――。
「立花君。」
二回目の呼びかけにやっと振り向いた。
そこには悠の黒い傘をさして少し悲しそうな顔をしている碧がいた。
「碧、、、」
「急にいなくなったりしてごめんね。」
「いや。どうしたんだよ急に、みんな心配してるぞ。戻ってくるのか?体は大丈夫なのか?あとっ――。」
碧は右手人差し指を悠の口の前に持ってくる。悠は興奮していたことに気づき言葉を発することをやめた。
碧は小さく頷きながら続けた。
「実はいろいろあって、みんなにはちょっと話せないんだけど。週明けからちゃんと学校行くよ。あと体は何の問題もないよ。」
「そうか。」
悠はこれ以上もう何も言えなかった。久しぶりに初恋の相手に会えた嬉しさと碧の表情、声色、降りそそぐ雨が相まって何も言えなかったのだ。
「ごめん。もう行くね、またね立花君。」
碧は手に持っていた悠の傘を返して足早に交差点から消えていく。渡された傘をさすことなく悠はしばらく雨に打たれ続けた。
少し空を見上げた。降りそそぐ雨はとても悲しかった――。
雨の止んだ午後、三人は海辺にいた。雨が降っていたせいか少し肌寒い。
悠はさっきあったことを話した。
「俺、さっき碧に会ったんだ。」
「おいそれホントかよ!どこにいたんだよ!」
「悠、詳しく聞かせて!」
案の定湊と凛が食いついてきた。
「二丁目のスーパー前の交差点で。」
「それで!?何話したんだ?」
湊がものすごい剣幕で聞いてくる。そりゃそうだよな。心から好きな人のことだもんな。しばらく会えてないことも重なっているのだろう。
「いや、、、特に何も。月曜から学校。来るってさ。」
「それだけかよ!なんかもっとこう、、、言うことたくさんあったんじゃねぇのかよ!
なんで今日連れてこなかったんだよ、、、。」
湊の声が一度は大きくなったが、だんだんかすれていった。
「ごめん。」
悠はそれしか言えなかった。凛は激高した湊を止めていた。悲しそうな顔をしていた。
しばらくして湊は無言で去っていった。
凛も、じゃあ、とだけ残して帰って行ってしまった。――また、雨が降ってきた。
帰宅後、碧に電話をかけてみたがやはり繋がらない。湊と凛には謝罪のメッセージを送っていた。それぞれ
「もういいよ」
「大丈夫」
と、一言ずつ返ってきた。来週顔を合わせ辛いな。そう思いながら眠りについた。
――夢を見ている気がする。
今日も碧は学校に来ない。先生曰く家庭の事情と言っているが本当のことは当人以外誰も知らない。
凛が碧の家まで様子を見に行こうと提案したが、そもそも誰も住所を知らなかったのだ。凛でさえ。
勝負に勝った湊は日々もやもやして過ごしていた。連絡先は知っているのだから、メールや電話で伝える手もあったのだが、どうやら彼は直接伝えたいみたいだ。
一度しびれを切らした湊が碧に電話を掛けたが見事につながらなかった。
「碧、本当にどうしたんだろう。変な事件に巻き込まれてないよね、、、」
「大丈夫だ碧は戻ってくる。信じて待って居よう。」
「うん。」
明らかに元気のない凛に悠は優しく声をかける。
「こんな時落ち込んでてもしょうがないだろ。凛。」
「そうなんだけどね。」
「そうだ。明日三人で海に行かないか。前回ほどしっかりじゃなくてさ。なんていうか。海を眺めに。」
「海か、、、そうだね気晴らししに行こう。」
「湊ももちろん来るよな。」
「もちろん行くよ。」
悠が海に行くことを提案した。三人で海に行くことになった。
次の日。外は雨が降っていた。
三人でチャットでのやり取りの末、午後雨の止んだタイミングで駅に集合することになった。
「困った予定が狂ってしまった。何をしようか。」
カレンダーを眺めていると、今日は好きなアーティストのCDの発売日だ。
朝一でCDショップに行くことにした。
悠はゆっくりと朝食を食べ支度をする。
時間は九時四十分。そろそろいい時間だ。CDショップは十時からで徒歩十五分くらいの場所にある。
黒い傘をさしてそこに向かっていった。
家を出て三分くらいたったある交差点。――少女はいた。いや。本当に彼女か?
悠は傘を投げ捨て走り出した。
何をしているんだ俺は。こんなところにいるはずないじゃないか。
しかし悠の足は止まらなかった。少女が路地に入ったところ。追いかけて悠も曲がる。
――彼女の姿はもうなかった。見間違いだったのだろうか、おかしい。彼女が曲がってすぐ俺も曲がったはずだ。そんなすぐ見失うわけがない。悠は荒く呼吸をする。全力疾走したものと起こりえない不可解な事象が重なり息が整わない。落ち着くまで少し時間がかかった。
「やっぱり気のせいか。」
二、三分程して傘を取りに戻る。しかしあれは何だったのだろう、普段来ている服とほぼ同じ背丈もよく似ていた。似ていただけなのだろうか。俺の期待と不安と願望が作り出した幻――そんなわけがない。幻なんて信じていない。息は整いつつあったが、動悸がする。
「立花君。」
悠は一瞬肩をビクンとさせて後ろからかけられた声に反応する。なんでだろう、振り向けない。早く碧の顔を見たい。間違いない。この声、呼び方。碧だ――。
「立花君。」
二回目の呼びかけにやっと振り向いた。
そこには悠の黒い傘をさして少し悲しそうな顔をしている碧がいた。
「碧、、、」
「急にいなくなったりしてごめんね。」
「いや。どうしたんだよ急に、みんな心配してるぞ。戻ってくるのか?体は大丈夫なのか?あとっ――。」
碧は右手人差し指を悠の口の前に持ってくる。悠は興奮していたことに気づき言葉を発することをやめた。
碧は小さく頷きながら続けた。
「実はいろいろあって、みんなにはちょっと話せないんだけど。週明けからちゃんと学校行くよ。あと体は何の問題もないよ。」
「そうか。」
悠はこれ以上もう何も言えなかった。久しぶりに初恋の相手に会えた嬉しさと碧の表情、声色、降りそそぐ雨が相まって何も言えなかったのだ。
「ごめん。もう行くね、またね立花君。」
碧は手に持っていた悠の傘を返して足早に交差点から消えていく。渡された傘をさすことなく悠はしばらく雨に打たれ続けた。
少し空を見上げた。降りそそぐ雨はとても悲しかった――。
雨の止んだ午後、三人は海辺にいた。雨が降っていたせいか少し肌寒い。
悠はさっきあったことを話した。
「俺、さっき碧に会ったんだ。」
「おいそれホントかよ!どこにいたんだよ!」
「悠、詳しく聞かせて!」
案の定湊と凛が食いついてきた。
「二丁目のスーパー前の交差点で。」
「それで!?何話したんだ?」
湊がものすごい剣幕で聞いてくる。そりゃそうだよな。心から好きな人のことだもんな。しばらく会えてないことも重なっているのだろう。
「いや、、、特に何も。月曜から学校。来るってさ。」
「それだけかよ!なんかもっとこう、、、言うことたくさんあったんじゃねぇのかよ!
なんで今日連れてこなかったんだよ、、、。」
湊の声が一度は大きくなったが、だんだんかすれていった。
「ごめん。」
悠はそれしか言えなかった。凛は激高した湊を止めていた。悲しそうな顔をしていた。
しばらくして湊は無言で去っていった。
凛も、じゃあ、とだけ残して帰って行ってしまった。――また、雨が降ってきた。
帰宅後、碧に電話をかけてみたがやはり繋がらない。湊と凛には謝罪のメッセージを送っていた。それぞれ
「もういいよ」
「大丈夫」
と、一言ずつ返ってきた。来週顔を合わせ辛いな。そう思いながら眠りについた。
――夢を見ている気がする。
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