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“真昼の悪夢”
6-3 まるで呪いですね
「琉架!」
豪快に引かれた引き戸から顔をのぞかせたのは、【Vanilla】の店長・須磨子だった。自慢の栗色の巻き髪を振り乱し、ものすごい形相で病室の中を凝視する。人が来た反射で和唯は、ずっと握ったままだった琉架の手をぱっと離し、琉架の顔の付近を陣取って座っていた丸椅子からすっと立ち上がった。和唯が退いたことで横たわる琉架が確認できた須磨子は、慌てて病室の中に入ってベッドに駆け寄った。
「やだぁ、琉架! 大丈夫なの!?」
琉架の顔の近くで崩れるように床に膝をついてしゃがみ、我が子同然に大事にしている男の表情をのぞき込む。元々のしゃがれ声をさらに掠れさせ、須磨子は真っ白いベッドにへばりついた。
「須磨子さん……わざわざ来てくれたの? 新店準備で忙しいのに、ごめん」
駆け寄ってきたときの聞き慣れたピンヒールの音に、琉架はほっとした。ヒールの音も、濃いメイクから漂ってくるふわっとした化粧の匂いも、見た目にそぐわない低くがさつく声も、どれもからだに染みついて馴染んでいる。商品として大事にされているだけかもしれないが、今こうやって心細いときに会いに来てくれて、琉架は須磨子に改めて家族のような情を寄せた。
「何バカなこと言ってんのよこの子は! 来るに決まってるじゃない! 地球の裏側にいたって飛んでくるわよ、こんなの! ……あぁもう、無事でよかったわぁ、寿命縮んだわよぉ……」
琉架の声を聞いて安心したのか、花柄の綺麗なフレアスカートの裾が床に広がってしまっているのも構わず、須磨子はそのままぐったりする。
「ホントごめん、こんなのびっくりするよな」
「ごめんはこっちよ……あいつやっぱり出禁にしとけばよかったわねぇ、アタシの判断ミスだわ。ごめんねぇ琉架」
「出禁にしてたって、外で襲われてたら意味ねぇだろ」
「そうだけどぉ……あー、もう! うちの大事な琉架になんてことしてくれたんだか! ほんっと、フォークって最低! ケダモノ! いっつもフォークが悪さするの!」
過去の客たちの積み重ねもあるのか、フォークから大金を巻き上げているくせに、須磨子はフォークに対する憤りを隠さない。病室の隅にひっそりと移動して二人の様子を見ていた和唯が、須磨子の口を衝いて出た言葉に少しだけ動揺する。
「須磨子さん主語……。フォークが最低なんじゃなくて、あの人が狂っちゃっただけだろ。オレは平気だから」
「もぉー、琉架は甘いのよぉ」
須磨子がやれやれと乱れた巻き髪を指で整えていると、隅で所在無げに立っていた和唯が口を開いた。
「あの、琉架さん……俺一旦出ますね」
後方から聞こえてきた声に驚き、須磨子が振り返って人の姿を確認する。そういえば病室をのぞいたときに誰かいた記憶はあるが、琉架の容体を心配するあまり認識する余裕が須磨子にはなかったようだった。
「あらやだ、琉架おともだち来てたの? ごめんなさいねぇ、騒がしくして。やだアタシ、邪魔しちゃったのかしら」
今ようやく気づいた和唯の存在に、須磨子が独特の甘ったるいしゃべり方で申し訳なさそうに謝る。
「いえ、大丈夫ですよ。……琉架さんの入院の荷物準備して、またあとで戻ってきますね」
「あぁ、うん。悪いな」
和唯は須磨子に軽く会釈だけ残すと、扉をスライドさせて病室を出て行った。
すっと扉が閉まったあと、病室に落ちたただならぬ空気を敏感に感じ取り、いい年をした須磨子が少しオロオロする。何か……何か大切な空間を壊した気がする……と、濃いパープルのアイシャドウをのせた須磨子の顔がみるみる曇った。
「もしかしてあの子、オトモダチじゃなかった……!?」
「……少なくともオレは、オトモダチとは思ってねぇんだけど」
あっちはどうだろうなーと、琉架は苦笑してあっさりと白状した。琉架はもう、和唯とその先の関係を強く望んでいる。
「やだ! アタシすっごい空気読めない女なんじゃないの!? あの子、琉架に用あったのよね!? よかったのかしら!?」
「用あったのオレの方だったんだけど……まぁ大丈夫、だと思う」
病室を出ていく和唯の後ろ姿がどことなく気落ちしているように見えて、琉架は少し不安になる。伝えたかったことを中途半端にしてしまい、和唯が続きをどんな風に想像するのか気がかりではあった。
──あとで来るって言ってたし、大丈夫だ、よな……?
なんとなく、このまま離れてしまったのが心許なくて、琉架はそっと目を閉じた。まぶたを下ろせば、さっきの和唯の舌の感触を思い出せる。あたたかくて、柔らかくて、もっとしていてほしかった。病室で不謹慎だとは思ったが、そのまま口唇を割って求めてきてほしかった。こんなに貪欲になれるのに、大事な気持ちをまだ言えていないことに、焦りと憂いを琉架は覚える。
思い詰めなきゃいいけど……と、琉架はこのタイミングでひとりにしてしまった和唯を案じた。どれだけ大丈夫だと教えてやっても、おそらく。
多分和唯は、これからまだきっと、自分を責める──。
すぐにはマンションに戻る気になれなくて、和唯は総合病院の広い廊下をとぼとぼと歩いていた。一般外来や各種検査の時間はとっくに終わっていたが、救急外来や入院患者の関係者なのか廊下やロビーには人がほどほどにいて、なんとなくひとりになりたくなかった和唯は、そのままロビーの隅の方で見つけたベンチに一旦腰を下ろした。
改めて落ち着くと、今日初めて知ったような複雑な感情が一気にぶわっと押し寄せてきて、和唯はベンチでうなだれてしまった。琉架が無事という結果があったから報われたように感じるだけで、根本的な自分の無力さや情けなさは解決していない。そばにいたのに血を流させてしまったのは変えようがない事実だし、今後またこういう事件に巻き込まれないとも限らない。どうしたら琉架が被害に遭わないのかも、そのときにどう琉架を守ったらいいのかもわからず、和唯はただ自信を喪失していく。
「わ、この事件、めっちゃ近所じゃん」
そのとき、隣のベンチから若い女の声が聞こえてきた。ふと和唯が目をやると、ブレザーの制服に身を包んだ女子高生と、その母親らしき女性が座っているのが見える。女子高生はスマホを眺めながら、うわサイアク……という歪んだ顔を隠すこともなく母親に話しかけていた。
「あぁそれ、今日の昼間の、フォークがケーキの人刺したやつ?」
──!?
母親が娘にそう返しているのを聞き、まさかニュースになっているのかと和唯が慌てて自分のスマホを取り出す。聞き耳を立てながら、和唯はたまにしか見ないスマホのニュース画面を開いた。
「犯人、面識ある人だったみたいね。もう捕まったからよかったけど」
「えー、なに、交友関係のトラブル? こわ……」
「さぁ? でも犯人フォークだから、ケーキの血? とかそういうの狙ったんじゃないの? 定期的にこの手の事件起きるわよね。その度にケーキの危機管理がどうとか、フォークの凶暴性がどうとか、毎回おんなじような論争起きてる気がするわ」
母親はさほど驚きもせず、よくあることだと淡々としている。
「だねー。ケーキとフォークのカップルって時々いるけど、よく流血事件とか暴力事件とか起こしてニュースになってるイメージあるかも。なんで一緒にいんだろ? いつ理性なくすかわかんない危ないケモノと一緒にいるようなもんじゃん?」
「最初は惹かれ合って一緒になるんでしょうけど、所詮は依存っていうか、利害関係っていうか……恋愛としてうまくいかなくなると歪みでそういう事件にまで発展しちゃうのかもね」
「こわー。私ケーキじゃなくてよかったー」
親子の会話を器用に拾いながら、和唯は血眼になって慣れないスマホを凝視する。やっぱり琉架の事件はネットニュースになっていて、そこから血に狂った犯人フォークへの誹謗中傷や、過去にあったケーキとフォークの様々な事件の詳細や、ケーキとフォークに関する過激な論争にまで飛ぶことができた。
和唯ももちろんこういうニュースには昔から触れてきてはいたが、自分が当事者になるまではさほど深く知ろうとしてこなかった。一度目にしてしまったら書いてあるすべてが気になって、和唯はしばらくスマホの中に没頭した。
長い時間を掛けて膨大な情報の波を泳ぐ。長い時間が掛かったのは和唯がスマホを苦手としているからなのか、それとも読み進めるのを憚るほどの辛辣な内容だったからなのか。いつの間にか隣のベンチにいた親子はいなくなっていた。
こういう事件が起きる度にフォークは悪という風潮が強くなる。過去の凄惨な事件も掘り返され、言及されていた。過去のどの犯人も、とてもそんなことをするような人ではなかったと周りからは証言されている。それでもなんらかのトリガーによって本人の意志とは無関係に暴走してしまうこともあるようで、フォークについては科学的に不明な点もまだ多く、今のところは本能的な暴走を抑える解決策もないということだった。有識者による論争もたくさん行われていた。フォークの行動を制限すべき、ケーキとの接触を制限すべきだという過激派もいた。ケーキを攻撃し食らうという点ばかりが取り沙汰され、味覚がないというフォークの絶望には誰も寄り添っていなかった。
フォークを発症して日が浅い和唯には知らないことばかりだった。味覚をなくしたことだけを重く捉え、世間におけるフォークの評価を和唯はまるで知らなかった。
琉架があまりにも、ずっとやさしかったから。
こんなにも嫌われ者だったなんて、気づきもしなかった。
「……くん? 和唯くん……?」
誰かに呼ばれた気がして、和唯ははっとスマホから顔を上げた。もうずいぶん長い時間同じ体勢でスマホを睨んでいたらしく、目もからだも相当痛い。普段スマホに執着しない和唯は、情報の許容量もとっくに超えていた。頭も痛い。
顔を上げた先には、少し腰を折って心配そうにこちらの様子をのぞき込む年配の男がいた。即座に認識できなかったのは男が制服姿ではなく私服だったからで、コンビニの店主だと気づくと和唯は慌ててベンチから立ち上がった。退勤後にわざわざ病院まで来てくれたようで、頼もしさから和唯の顔の緊張が少し和らぐ。
「店長さん! ……先程はどうもありがとうございました」
和唯は深々とお辞儀をして店主にお礼を言う。あのときパニックになっていた和唯は、店主の登場にどれほど救われたかわからない。
「いやいや、当然のことをしただけだよ。……それで、琉架ちゃんは?」
「はい、さっき目を覚まして、会話も比較的元気そうだったので大丈夫だと思います。傷も、見た目の出血量ほど深くはなかったみたいで。数日入院はしますけど」
「そうかい、無事で本当によかったよ」
店主は大きく胸を撫で下ろし、孫のように可愛がっている琉架の笑顔を思い出した。
「……君も大変だったねぇ。大丈夫かい? だいぶ疲れてるみたいだけど」
あんなことがあったのだから仕方ないだろうとは思いつつ、和唯のどこか異常なまでの虚ろな表情を店主が憂慮する。
「……ちょっと、感情が、追いつかないというか……ちょっと……いやだいぶ、参ってます」
大丈夫です疲れてないですと嘘はつけず、和唯は正直に疲弊を打ち明けた。この店主には、どうしてかいつも話を聞いてもらいたくなる。店主も和唯の不安を敏感に察して、澱んでいるものを吐き出させてやろうと和唯をベンチに座るように促した。その隣に店主も座る。夜の病院のロビーは研ぎ澄まされた鋭利な空気がぴんと張っていて、これからするネガティブな話にはうってつけだと和唯は思った。
「俺、琉架さんのこと、もうダメかもしれないです……せっかく店長さんに応援してもらってたのに……期待に応えられなくて、ごめんなさい……」
「急にどうしたの……事件のことを気にしているのかい? 悪いのはあのフォークで、和唯くんが責任を感じることじゃないだろう?」
琉架を危険な目に遭わせてしまったことを気に病んでいるのかと、店主がやさしく心配する。琉架を守る騎士になりたいと言っていた子だからと、必要以上に自分を追い詰めている様子の和唯が危うくて仕方ない。
「そもそもまったく君のせいじゃないし、君のせいじゃないことを責めたり怒ったりするような子じゃないだろう、琉架ちゃんは」
「そうなんです……琉架さんは俺を責めない……たとえ俺のせいであっても、責めないんです」
初めて会った雪の夜に、襲ってしまったときも。
「……俺、……フォークなんです」
和唯の声が心なしか震えた。店主は驚きつつも、和唯の言葉をまっすぐ冷静に受け止める。
「琉架さんを刺したあいつと同じ……フォークなんです」
「でも君は、琉架ちゃんを傷つけたりはしないだろう?」
和唯はゆっくりと首を横に振った。
「ケーキを食べたくて、我慢できなくて、親切で家に上げてくれた琉架さんを、無理やり、……」
はじまりを思い出して、和唯は気が狂いそうになった。最初は自分も琉架を襲ったただの加害者だったのだ。今回シンがしたことと本質は何も変わらない。食べたくて、奪うように食う。琉架の温情で警察に突き出されなかっただけで、犯した罪はこの先もずっと消せない。
「この先も琉架さんと共にいられたとして、こんな俺が……フォークである俺が、あの人を守ることなんて本当にできるのかって、……よく、わからなくなってしまいました」
怒涛のようにインプットした情報に翻弄されているだけなのかもしれないとも思ったが、とてもシンプルな正論のようにも思えた。本能に抗えず凶暴化したフォークがケーキを襲うのは、この世界の摂理だった。
「怖いです……いつか、自分が自分じゃなくなるみたいに、乱暴にケーキを求めてしまうかもしれない」
琉架を大事にしたいと願った指先が、暴走を止められなくて、琉架を痛めつける日がいつか来てしまうかもしれない。シンのように、血にばかり執着することが、この先絶対にないとは言い切れない。血液も精液も舐めたことがないのだ、今以上のあまさを知ったら、人が変わったように気がふれてしまうかもしれない。
「俺、フォークを発症してまだ半年も経ってないんです。自分のからだや本能がこれからどうなっていくのか、全然想像できなくて……すごく怖い、です」
せっかく琉架が、自分のからだを大切にしたいと言ってくれたのに。それを踏みにじるのが自分であっては絶対にいけないと、和唯が不安で打ち震える。
「ケーキとフォークは、まるで呪いですね」
あまい気配に気づかれたら定めのように与え続けるしかないケーキと、忌み嫌われる獣のようになってまで食らってしまうフォークと。マイノリティの心細さから互いに依存しているだけで、いつか傷つけ合うのがわかっているのに、呪いのように離れられない。
「俺たち、ケーキとフォークじゃなかったらよかったのかな」
ただの男だったら、あなたにまっすぐ好きだと言えたのかな……と和唯は弱々しく苦笑するが、ケーキとフォークじゃなかったらそもそも出会っていないことを思い出しまた苦笑する。出会いすら呪いのようだと和唯は思った。
「和唯くん、……君は、本当に琉架ちゃんを愛しているんだね」
「……っ」
店主の穏やかな言葉に、和唯の胸が詰まった。
愛してる。そう、だからこそ──。
「……琉架さんは、フォークと一緒にいるべきじゃないんです」
琉架を本当の意味で守る絶対の方法は、フォークの自分が琉架の前から姿を消すことだと、和唯が最悪で最良の結論にたどり着く。琉架はフォークと一緒にいるべきではない。琉架はフォークとだけは、一緒に生きてはいけない。ただでさえケーキとフォークの関係にとらわれすぎている琉架は、フォークがどんな悪さをしでかしてもいつもあきらめて、全部許してしまうから。
「俺じゃ、琉架さんを……幸せにできない」
離れなきゃ。
そんなことしたくもないしできるはずもないのに、そうしなければという脅しのような強い思いに負けそうになる。
──オレ、和唯に言いたいことあるよ。
──オレとおまえのことなんだけど。
先刻聞きそびれた琉架の言葉の続きも、もしかしたら、ケーキとフォークはこれ以上一緒にいない方がいいという提案だったのかもしれないと和唯の考えが及ぶ。フォークにあんなひどい目に遭わされたのだから当然だ。
「俺が幸せにしてあげたかったのに、……っ」
「本当に君じゃ琉架ちゃんを幸せにできない? 本当に、そう?」
隣でひどく参っているまだ人生経験の少ない青年に、歳だけは充分に重ねた店主がやさしく寄り添った。ケーキとフォークの事情はまるでわからないが、和唯が琉架を心底大切に想っていることだけは痛いほど伝わってきて、店主も胸を痛めながら和唯に問いかける。
「……っ、わからないです……どうすればいいのか、もう、わからない」
和唯は本当にわからなくなって、夜の冷たい病院のロビーで、琉架を想ってただ途方に暮れた。
豪快に引かれた引き戸から顔をのぞかせたのは、【Vanilla】の店長・須磨子だった。自慢の栗色の巻き髪を振り乱し、ものすごい形相で病室の中を凝視する。人が来た反射で和唯は、ずっと握ったままだった琉架の手をぱっと離し、琉架の顔の付近を陣取って座っていた丸椅子からすっと立ち上がった。和唯が退いたことで横たわる琉架が確認できた須磨子は、慌てて病室の中に入ってベッドに駆け寄った。
「やだぁ、琉架! 大丈夫なの!?」
琉架の顔の近くで崩れるように床に膝をついてしゃがみ、我が子同然に大事にしている男の表情をのぞき込む。元々のしゃがれ声をさらに掠れさせ、須磨子は真っ白いベッドにへばりついた。
「須磨子さん……わざわざ来てくれたの? 新店準備で忙しいのに、ごめん」
駆け寄ってきたときの聞き慣れたピンヒールの音に、琉架はほっとした。ヒールの音も、濃いメイクから漂ってくるふわっとした化粧の匂いも、見た目にそぐわない低くがさつく声も、どれもからだに染みついて馴染んでいる。商品として大事にされているだけかもしれないが、今こうやって心細いときに会いに来てくれて、琉架は須磨子に改めて家族のような情を寄せた。
「何バカなこと言ってんのよこの子は! 来るに決まってるじゃない! 地球の裏側にいたって飛んでくるわよ、こんなの! ……あぁもう、無事でよかったわぁ、寿命縮んだわよぉ……」
琉架の声を聞いて安心したのか、花柄の綺麗なフレアスカートの裾が床に広がってしまっているのも構わず、須磨子はそのままぐったりする。
「ホントごめん、こんなのびっくりするよな」
「ごめんはこっちよ……あいつやっぱり出禁にしとけばよかったわねぇ、アタシの判断ミスだわ。ごめんねぇ琉架」
「出禁にしてたって、外で襲われてたら意味ねぇだろ」
「そうだけどぉ……あー、もう! うちの大事な琉架になんてことしてくれたんだか! ほんっと、フォークって最低! ケダモノ! いっつもフォークが悪さするの!」
過去の客たちの積み重ねもあるのか、フォークから大金を巻き上げているくせに、須磨子はフォークに対する憤りを隠さない。病室の隅にひっそりと移動して二人の様子を見ていた和唯が、須磨子の口を衝いて出た言葉に少しだけ動揺する。
「須磨子さん主語……。フォークが最低なんじゃなくて、あの人が狂っちゃっただけだろ。オレは平気だから」
「もぉー、琉架は甘いのよぉ」
須磨子がやれやれと乱れた巻き髪を指で整えていると、隅で所在無げに立っていた和唯が口を開いた。
「あの、琉架さん……俺一旦出ますね」
後方から聞こえてきた声に驚き、須磨子が振り返って人の姿を確認する。そういえば病室をのぞいたときに誰かいた記憶はあるが、琉架の容体を心配するあまり認識する余裕が須磨子にはなかったようだった。
「あらやだ、琉架おともだち来てたの? ごめんなさいねぇ、騒がしくして。やだアタシ、邪魔しちゃったのかしら」
今ようやく気づいた和唯の存在に、須磨子が独特の甘ったるいしゃべり方で申し訳なさそうに謝る。
「いえ、大丈夫ですよ。……琉架さんの入院の荷物準備して、またあとで戻ってきますね」
「あぁ、うん。悪いな」
和唯は須磨子に軽く会釈だけ残すと、扉をスライドさせて病室を出て行った。
すっと扉が閉まったあと、病室に落ちたただならぬ空気を敏感に感じ取り、いい年をした須磨子が少しオロオロする。何か……何か大切な空間を壊した気がする……と、濃いパープルのアイシャドウをのせた須磨子の顔がみるみる曇った。
「もしかしてあの子、オトモダチじゃなかった……!?」
「……少なくともオレは、オトモダチとは思ってねぇんだけど」
あっちはどうだろうなーと、琉架は苦笑してあっさりと白状した。琉架はもう、和唯とその先の関係を強く望んでいる。
「やだ! アタシすっごい空気読めない女なんじゃないの!? あの子、琉架に用あったのよね!? よかったのかしら!?」
「用あったのオレの方だったんだけど……まぁ大丈夫、だと思う」
病室を出ていく和唯の後ろ姿がどことなく気落ちしているように見えて、琉架は少し不安になる。伝えたかったことを中途半端にしてしまい、和唯が続きをどんな風に想像するのか気がかりではあった。
──あとで来るって言ってたし、大丈夫だ、よな……?
なんとなく、このまま離れてしまったのが心許なくて、琉架はそっと目を閉じた。まぶたを下ろせば、さっきの和唯の舌の感触を思い出せる。あたたかくて、柔らかくて、もっとしていてほしかった。病室で不謹慎だとは思ったが、そのまま口唇を割って求めてきてほしかった。こんなに貪欲になれるのに、大事な気持ちをまだ言えていないことに、焦りと憂いを琉架は覚える。
思い詰めなきゃいいけど……と、琉架はこのタイミングでひとりにしてしまった和唯を案じた。どれだけ大丈夫だと教えてやっても、おそらく。
多分和唯は、これからまだきっと、自分を責める──。
すぐにはマンションに戻る気になれなくて、和唯は総合病院の広い廊下をとぼとぼと歩いていた。一般外来や各種検査の時間はとっくに終わっていたが、救急外来や入院患者の関係者なのか廊下やロビーには人がほどほどにいて、なんとなくひとりになりたくなかった和唯は、そのままロビーの隅の方で見つけたベンチに一旦腰を下ろした。
改めて落ち着くと、今日初めて知ったような複雑な感情が一気にぶわっと押し寄せてきて、和唯はベンチでうなだれてしまった。琉架が無事という結果があったから報われたように感じるだけで、根本的な自分の無力さや情けなさは解決していない。そばにいたのに血を流させてしまったのは変えようがない事実だし、今後またこういう事件に巻き込まれないとも限らない。どうしたら琉架が被害に遭わないのかも、そのときにどう琉架を守ったらいいのかもわからず、和唯はただ自信を喪失していく。
「わ、この事件、めっちゃ近所じゃん」
そのとき、隣のベンチから若い女の声が聞こえてきた。ふと和唯が目をやると、ブレザーの制服に身を包んだ女子高生と、その母親らしき女性が座っているのが見える。女子高生はスマホを眺めながら、うわサイアク……という歪んだ顔を隠すこともなく母親に話しかけていた。
「あぁそれ、今日の昼間の、フォークがケーキの人刺したやつ?」
──!?
母親が娘にそう返しているのを聞き、まさかニュースになっているのかと和唯が慌てて自分のスマホを取り出す。聞き耳を立てながら、和唯はたまにしか見ないスマホのニュース画面を開いた。
「犯人、面識ある人だったみたいね。もう捕まったからよかったけど」
「えー、なに、交友関係のトラブル? こわ……」
「さぁ? でも犯人フォークだから、ケーキの血? とかそういうの狙ったんじゃないの? 定期的にこの手の事件起きるわよね。その度にケーキの危機管理がどうとか、フォークの凶暴性がどうとか、毎回おんなじような論争起きてる気がするわ」
母親はさほど驚きもせず、よくあることだと淡々としている。
「だねー。ケーキとフォークのカップルって時々いるけど、よく流血事件とか暴力事件とか起こしてニュースになってるイメージあるかも。なんで一緒にいんだろ? いつ理性なくすかわかんない危ないケモノと一緒にいるようなもんじゃん?」
「最初は惹かれ合って一緒になるんでしょうけど、所詮は依存っていうか、利害関係っていうか……恋愛としてうまくいかなくなると歪みでそういう事件にまで発展しちゃうのかもね」
「こわー。私ケーキじゃなくてよかったー」
親子の会話を器用に拾いながら、和唯は血眼になって慣れないスマホを凝視する。やっぱり琉架の事件はネットニュースになっていて、そこから血に狂った犯人フォークへの誹謗中傷や、過去にあったケーキとフォークの様々な事件の詳細や、ケーキとフォークに関する過激な論争にまで飛ぶことができた。
和唯ももちろんこういうニュースには昔から触れてきてはいたが、自分が当事者になるまではさほど深く知ろうとしてこなかった。一度目にしてしまったら書いてあるすべてが気になって、和唯はしばらくスマホの中に没頭した。
長い時間を掛けて膨大な情報の波を泳ぐ。長い時間が掛かったのは和唯がスマホを苦手としているからなのか、それとも読み進めるのを憚るほどの辛辣な内容だったからなのか。いつの間にか隣のベンチにいた親子はいなくなっていた。
こういう事件が起きる度にフォークは悪という風潮が強くなる。過去の凄惨な事件も掘り返され、言及されていた。過去のどの犯人も、とてもそんなことをするような人ではなかったと周りからは証言されている。それでもなんらかのトリガーによって本人の意志とは無関係に暴走してしまうこともあるようで、フォークについては科学的に不明な点もまだ多く、今のところは本能的な暴走を抑える解決策もないということだった。有識者による論争もたくさん行われていた。フォークの行動を制限すべき、ケーキとの接触を制限すべきだという過激派もいた。ケーキを攻撃し食らうという点ばかりが取り沙汰され、味覚がないというフォークの絶望には誰も寄り添っていなかった。
フォークを発症して日が浅い和唯には知らないことばかりだった。味覚をなくしたことだけを重く捉え、世間におけるフォークの評価を和唯はまるで知らなかった。
琉架があまりにも、ずっとやさしかったから。
こんなにも嫌われ者だったなんて、気づきもしなかった。
「……くん? 和唯くん……?」
誰かに呼ばれた気がして、和唯ははっとスマホから顔を上げた。もうずいぶん長い時間同じ体勢でスマホを睨んでいたらしく、目もからだも相当痛い。普段スマホに執着しない和唯は、情報の許容量もとっくに超えていた。頭も痛い。
顔を上げた先には、少し腰を折って心配そうにこちらの様子をのぞき込む年配の男がいた。即座に認識できなかったのは男が制服姿ではなく私服だったからで、コンビニの店主だと気づくと和唯は慌ててベンチから立ち上がった。退勤後にわざわざ病院まで来てくれたようで、頼もしさから和唯の顔の緊張が少し和らぐ。
「店長さん! ……先程はどうもありがとうございました」
和唯は深々とお辞儀をして店主にお礼を言う。あのときパニックになっていた和唯は、店主の登場にどれほど救われたかわからない。
「いやいや、当然のことをしただけだよ。……それで、琉架ちゃんは?」
「はい、さっき目を覚まして、会話も比較的元気そうだったので大丈夫だと思います。傷も、見た目の出血量ほど深くはなかったみたいで。数日入院はしますけど」
「そうかい、無事で本当によかったよ」
店主は大きく胸を撫で下ろし、孫のように可愛がっている琉架の笑顔を思い出した。
「……君も大変だったねぇ。大丈夫かい? だいぶ疲れてるみたいだけど」
あんなことがあったのだから仕方ないだろうとは思いつつ、和唯のどこか異常なまでの虚ろな表情を店主が憂慮する。
「……ちょっと、感情が、追いつかないというか……ちょっと……いやだいぶ、参ってます」
大丈夫です疲れてないですと嘘はつけず、和唯は正直に疲弊を打ち明けた。この店主には、どうしてかいつも話を聞いてもらいたくなる。店主も和唯の不安を敏感に察して、澱んでいるものを吐き出させてやろうと和唯をベンチに座るように促した。その隣に店主も座る。夜の病院のロビーは研ぎ澄まされた鋭利な空気がぴんと張っていて、これからするネガティブな話にはうってつけだと和唯は思った。
「俺、琉架さんのこと、もうダメかもしれないです……せっかく店長さんに応援してもらってたのに……期待に応えられなくて、ごめんなさい……」
「急にどうしたの……事件のことを気にしているのかい? 悪いのはあのフォークで、和唯くんが責任を感じることじゃないだろう?」
琉架を危険な目に遭わせてしまったことを気に病んでいるのかと、店主がやさしく心配する。琉架を守る騎士になりたいと言っていた子だからと、必要以上に自分を追い詰めている様子の和唯が危うくて仕方ない。
「そもそもまったく君のせいじゃないし、君のせいじゃないことを責めたり怒ったりするような子じゃないだろう、琉架ちゃんは」
「そうなんです……琉架さんは俺を責めない……たとえ俺のせいであっても、責めないんです」
初めて会った雪の夜に、襲ってしまったときも。
「……俺、……フォークなんです」
和唯の声が心なしか震えた。店主は驚きつつも、和唯の言葉をまっすぐ冷静に受け止める。
「琉架さんを刺したあいつと同じ……フォークなんです」
「でも君は、琉架ちゃんを傷つけたりはしないだろう?」
和唯はゆっくりと首を横に振った。
「ケーキを食べたくて、我慢できなくて、親切で家に上げてくれた琉架さんを、無理やり、……」
はじまりを思い出して、和唯は気が狂いそうになった。最初は自分も琉架を襲ったただの加害者だったのだ。今回シンがしたことと本質は何も変わらない。食べたくて、奪うように食う。琉架の温情で警察に突き出されなかっただけで、犯した罪はこの先もずっと消せない。
「この先も琉架さんと共にいられたとして、こんな俺が……フォークである俺が、あの人を守ることなんて本当にできるのかって、……よく、わからなくなってしまいました」
怒涛のようにインプットした情報に翻弄されているだけなのかもしれないとも思ったが、とてもシンプルな正論のようにも思えた。本能に抗えず凶暴化したフォークがケーキを襲うのは、この世界の摂理だった。
「怖いです……いつか、自分が自分じゃなくなるみたいに、乱暴にケーキを求めてしまうかもしれない」
琉架を大事にしたいと願った指先が、暴走を止められなくて、琉架を痛めつける日がいつか来てしまうかもしれない。シンのように、血にばかり執着することが、この先絶対にないとは言い切れない。血液も精液も舐めたことがないのだ、今以上のあまさを知ったら、人が変わったように気がふれてしまうかもしれない。
「俺、フォークを発症してまだ半年も経ってないんです。自分のからだや本能がこれからどうなっていくのか、全然想像できなくて……すごく怖い、です」
せっかく琉架が、自分のからだを大切にしたいと言ってくれたのに。それを踏みにじるのが自分であっては絶対にいけないと、和唯が不安で打ち震える。
「ケーキとフォークは、まるで呪いですね」
あまい気配に気づかれたら定めのように与え続けるしかないケーキと、忌み嫌われる獣のようになってまで食らってしまうフォークと。マイノリティの心細さから互いに依存しているだけで、いつか傷つけ合うのがわかっているのに、呪いのように離れられない。
「俺たち、ケーキとフォークじゃなかったらよかったのかな」
ただの男だったら、あなたにまっすぐ好きだと言えたのかな……と和唯は弱々しく苦笑するが、ケーキとフォークじゃなかったらそもそも出会っていないことを思い出しまた苦笑する。出会いすら呪いのようだと和唯は思った。
「和唯くん、……君は、本当に琉架ちゃんを愛しているんだね」
「……っ」
店主の穏やかな言葉に、和唯の胸が詰まった。
愛してる。そう、だからこそ──。
「……琉架さんは、フォークと一緒にいるべきじゃないんです」
琉架を本当の意味で守る絶対の方法は、フォークの自分が琉架の前から姿を消すことだと、和唯が最悪で最良の結論にたどり着く。琉架はフォークと一緒にいるべきではない。琉架はフォークとだけは、一緒に生きてはいけない。ただでさえケーキとフォークの関係にとらわれすぎている琉架は、フォークがどんな悪さをしでかしてもいつもあきらめて、全部許してしまうから。
「俺じゃ、琉架さんを……幸せにできない」
離れなきゃ。
そんなことしたくもないしできるはずもないのに、そうしなければという脅しのような強い思いに負けそうになる。
──オレ、和唯に言いたいことあるよ。
──オレとおまえのことなんだけど。
先刻聞きそびれた琉架の言葉の続きも、もしかしたら、ケーキとフォークはこれ以上一緒にいない方がいいという提案だったのかもしれないと和唯の考えが及ぶ。フォークにあんなひどい目に遭わされたのだから当然だ。
「俺が幸せにしてあげたかったのに、……っ」
「本当に君じゃ琉架ちゃんを幸せにできない? 本当に、そう?」
隣でひどく参っているまだ人生経験の少ない青年に、歳だけは充分に重ねた店主がやさしく寄り添った。ケーキとフォークの事情はまるでわからないが、和唯が琉架を心底大切に想っていることだけは痛いほど伝わってきて、店主も胸を痛めながら和唯に問いかける。
「……っ、わからないです……どうすればいいのか、もう、わからない」
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