2 / 71
2【双子Diary】冬の火葬場
しおりを挟む
黒ばかりを身にまとったたくさんの大人たちに囲まれて、双子は小さなその手をぎゅっと握り合っていた。
わけもわからず連れてこられた場所は今まで嗅いだこともないような不思議な匂いが充満していて、ただでさえ不安定な双子を余計に怖がらせる。ここは死んだ人を焼く場所だと、知らない大人に淡々と教えられた。
『ほんとに……死んじゃったんだな』
海斗がうつむいたままつぶやいた。痛いほど強く繋げ合った手に視線を落とし、片割れの手をさらに強く握りしめる。
『……うん、死んじゃったね。ついおとといまで、生きてたのに』
最後に両親と交わした言葉はなんだったか、眞空はもう一度思い出す。自分は確か、いってらっしゃいとそっけなく両親を送り出しただけだった。海斗はお土産をたくさん買ってこいとしつこく言っていた。結婚記念日に二人きりでデートに出掛けた両親は事故に合い、ただいまを告げることなく冷たくなって帰ってきた。せめて元気にいってらっしゃいと言ってあげればよかったと、もう何度悔やんだかわからないあのときの態度を思って眞空はまた奥歯をきつく噛みしめる。
『オレたちこれからどうなるのかな』
たった8歳の子供が、自分たちの未来を思って途方に暮れていた。たった8歳の海斗でさえ、これからの自分たちを守ってくれる人がこの黒い服の集団の中にはいないだろうということはなんとなくわかる。双子なのだ、その分負担も二倍になる。どんな物好きが自分たちを育ててくれるのだろうかと足りない頭で考えれば考えるほど答えは見つからなくて、兄としての自覚がそれなりにある海斗は暗く沈んでしまう。
『おれ、海斗とはなればなれになるの、イヤだよ』
『オレだってイヤだよ。ぜったいにイヤだ! ねぇ眞空、どんなにすごくて、どんなにえらい人が来てオレたちをはなればなれにしようとしたって、オレたちずっと二人でいよう? 何があっても二人でがんばろう?』
『うん、やくそくだよ』
何があってもはなればなれにされませんように。二人なら、だいじょうぶだから。
双子が、絡めた小指と小指をぶんぶんと大きく振って誓いの儀式をしていると、目の前にあった小さな扉が開いて、中から大きくて細長い箱が取り出された。黒ずくめの大人たちはその箱に群がり、何かを選び始めた。納める骨を選んでいるのだと、また別の大人に教えられた。
大人たちが両親の骨を拾う様子を、二人は別次元のものでも見るようにぼんやりと眺めていた。変わり果てた姿を信じられず、握り合った手がどちらからともなく小刻みに震え出す。
『ねぇ海斗、今何かんがえてる?』
視線を両親の骨から外さないまま、眞空が問う。
『……たぶん、眞空と同じことかんがえてる』
男の子なのに泣き虫ね、といつも母親を困らせてばかりいた海斗の目には、期待を裏切らない大粒のしずくが現れ始める。
『言ってよ、海斗』
『イヤだよ、眞空が先に言えよ』
『じゃあ、せーので言おう?』
『……うん』
『せーの』
『せーの』
震える声と、潰れてしまいそうなほど強く強く握り合った手と手。張り詰めていたものが切れたように、双子はその場にへたり込んでわぁわぁ泣きじゃくった。
八年の人生で幸いを奪われた、同じ顔を持つ小さな二人。
『どうして死んじゃったんだよぉ』
『どうして死んじゃったんだよぉ』
綺麗に重なり合った悲痛の叫びが、冬の乾いた火葬場に冷たく響き渡った。
わけもわからず連れてこられた場所は今まで嗅いだこともないような不思議な匂いが充満していて、ただでさえ不安定な双子を余計に怖がらせる。ここは死んだ人を焼く場所だと、知らない大人に淡々と教えられた。
『ほんとに……死んじゃったんだな』
海斗がうつむいたままつぶやいた。痛いほど強く繋げ合った手に視線を落とし、片割れの手をさらに強く握りしめる。
『……うん、死んじゃったね。ついおとといまで、生きてたのに』
最後に両親と交わした言葉はなんだったか、眞空はもう一度思い出す。自分は確か、いってらっしゃいとそっけなく両親を送り出しただけだった。海斗はお土産をたくさん買ってこいとしつこく言っていた。結婚記念日に二人きりでデートに出掛けた両親は事故に合い、ただいまを告げることなく冷たくなって帰ってきた。せめて元気にいってらっしゃいと言ってあげればよかったと、もう何度悔やんだかわからないあのときの態度を思って眞空はまた奥歯をきつく噛みしめる。
『オレたちこれからどうなるのかな』
たった8歳の子供が、自分たちの未来を思って途方に暮れていた。たった8歳の海斗でさえ、これからの自分たちを守ってくれる人がこの黒い服の集団の中にはいないだろうということはなんとなくわかる。双子なのだ、その分負担も二倍になる。どんな物好きが自分たちを育ててくれるのだろうかと足りない頭で考えれば考えるほど答えは見つからなくて、兄としての自覚がそれなりにある海斗は暗く沈んでしまう。
『おれ、海斗とはなればなれになるの、イヤだよ』
『オレだってイヤだよ。ぜったいにイヤだ! ねぇ眞空、どんなにすごくて、どんなにえらい人が来てオレたちをはなればなれにしようとしたって、オレたちずっと二人でいよう? 何があっても二人でがんばろう?』
『うん、やくそくだよ』
何があってもはなればなれにされませんように。二人なら、だいじょうぶだから。
双子が、絡めた小指と小指をぶんぶんと大きく振って誓いの儀式をしていると、目の前にあった小さな扉が開いて、中から大きくて細長い箱が取り出された。黒ずくめの大人たちはその箱に群がり、何かを選び始めた。納める骨を選んでいるのだと、また別の大人に教えられた。
大人たちが両親の骨を拾う様子を、二人は別次元のものでも見るようにぼんやりと眺めていた。変わり果てた姿を信じられず、握り合った手がどちらからともなく小刻みに震え出す。
『ねぇ海斗、今何かんがえてる?』
視線を両親の骨から外さないまま、眞空が問う。
『……たぶん、眞空と同じことかんがえてる』
男の子なのに泣き虫ね、といつも母親を困らせてばかりいた海斗の目には、期待を裏切らない大粒のしずくが現れ始める。
『言ってよ、海斗』
『イヤだよ、眞空が先に言えよ』
『じゃあ、せーので言おう?』
『……うん』
『せーの』
『せーの』
震える声と、潰れてしまいそうなほど強く強く握り合った手と手。張り詰めていたものが切れたように、双子はその場にへたり込んでわぁわぁ泣きじゃくった。
八年の人生で幸いを奪われた、同じ顔を持つ小さな二人。
『どうして死んじゃったんだよぉ』
『どうして死んじゃったんだよぉ』
綺麗に重なり合った悲痛の叫びが、冬の乾いた火葬場に冷たく響き渡った。
24
あなたにおすすめの小説
【完結】言えない言葉
未希かずは(Miki)
BL
双子の弟・水瀬碧依は、明るい兄・翼と比べられ、自信がない引っ込み思案な大学生。
同じゼミの気さくで眩しい如月大和に密かに恋するが、話しかける勇気はない。
ある日、碧依は兄になりすまし、本屋のバイトで大和に近づく大胆な計画を立てる。
兄の笑顔で大和と心を通わせる碧依だが、嘘の自分に葛藤し……。
すれ違いを経て本当の想いを伝える、切なく甘い青春BLストーリー。
第1回青春BLカップ参加作品です。
1章 「出会い」が長くなってしまったので、前後編に分けました。
2章、3章も長くなってしまって、分けました。碧依の恋心を丁寧に書き直しました。(2025/9/2 18:40)
夢の続きの話をしよう
木原あざみ
BL
歯止めのきかなくなる前に離れようと思った。
隣になんていたくないと思った。
**
サッカー選手×大学生。すれ違い過多の両方向片思いなお話です。他サイトにて完結済みの作品を転載しています。本編総文字数25万字強。
表紙は同人誌にした際に木久劇美和さまに描いていただいたものを使用しています(※こちらに載せている本文は同人誌用に改稿する前のものになります)。
【完】君に届かない声
未希かずは(Miki)
BL
内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。
ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。
すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。
執着囲い込み☓健気。ハピエンです。
告白ごっこ
みなみ ゆうき
BL
ある事情から極力目立たず地味にひっそりと学園生活を送っていた瑠衣(るい)。
ある日偶然に自分をターゲットに告白という名の罰ゲームが行われることを知ってしまう。それを実行することになったのは学園の人気者で同級生の昴流(すばる)。
更に1ヶ月以内に昴流が瑠衣を口説き落とし好きだと言わせることが出来るかということを新しい賭けにしようとしている事に憤りを覚えた瑠衣は一計を案じ、自分の方から先に告白をし、その直後に全てを知っていると種明かしをすることで、早々に馬鹿げたゲームに決着をつけてやろうと考える。しかし、この告白が原因で事態は瑠衣の想定とは違った方向に動きだし……。
テンプレの罰ゲーム告白ものです。
表紙イラストは、かさしま様より描いていただきました!
ムーンライトノベルズでも同時公開。
シスルの花束を
碧月 晶
BL
年下俺様モデル×年上訳あり青年
~人物紹介~
○氷室 三門(ひむろ みかど)
・攻め(主人公)
・23歳、身長178cm
・モデル
・俺様な性格、短気
・訳あって、雨月の所に転がり込んだ
○寒河江 雨月(さがえ うげつ)
・受け
・26歳、身長170cm
・常に無表情で、人形のように顔が整っている
・童顔
※作中に英会話が出てきますが、翻訳アプリで訳したため正しいとは限りません。
※濡れ場があるシーンはタイトルに*マークが付きます。
※基本、三門視点で進みます。
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる