スイートホームダイアリー

ゆりすみれ

文字の大きさ
48 / 71

48【堂園家Diary】運命のチャイム

しおりを挟む
 そしてその数日後、眞空が言うところの『人生ってうまくいかねぇ』ような出来事が、兄二人も弟二人も収まるべきところになんとか収まったばかりの平穏な堂園家を襲うことになる。

 例の休日ルールに則って、今日も今日とて五人揃っての朝食を楽しんでいるときだった。今日は五人とも午前中は用事がないということでいつもよりずいぶんと遅めの団欒になり、ほとんど昼食にも近いその時間に、運命のチャイムはなんの前触れもなく突然鳴り響いた。

 チャイムを聞いた息子四人はすかさずじゃんけんをし、誰が出るかを決める。これもまた恒例ルールのようなもので、堂園家の見慣れた光景だった。

 じゃんけんで負けた冬夜は食べかけのトーストをコトリと皿に置くと、渋々リビングの隅にあるインターホンのモニターに向かった。

「……はい」

 冬夜がモニター越しに返事をする。モニターには、知らない女性が映っていた。

「……あの、……と申します」

 相手の声が小さいのか、聞き慣れない言葉だったからか、よく聞こえなかった。何かの営業だろうかと思い、冬夜はとりあえず玄関に向かう。

 玄関の扉を開けて門の前を確認すると、そこには四十代くらいの女性が申し訳なさそうにひっそりと立っていた。肩につくくらいの軽やかなミディアムボブのその女性は、とろみのある薄いベージュのシャツにチョコレート色のロングスカート、小さめの白いショルダーバッグを肩に掛けている。ぱっと見ただけで、品の良さそうな綺麗な人だという印象を受ける。

 女は玄関から少しだけ顔を出した冬夜を確認すると、突然顔色を変え、冬夜をじっと見つめた。冬夜も不思議そうに、面識のないその女性を見つめ返す。

「……と、う……や?」

「?」

「……冬夜、なの?」

「……? ……はい、冬夜ですけど」

 すると女はふらついたからだで門に寄りかかり、そのあと顔を両手で覆ってわぁっと泣き崩れてしまった。往来を行く人の目もはばからずにその場にへたり込み、ぽろぽろと涙をこぼしている。

「ちょ、ちょっと、どうしたんですか……」

 なんの脈絡もない唐突な涙に、冬夜は駆け寄ることもできずにその場で狼狽ろうばいするしかない。ちょうどそこへ、新聞新聞と唱えながら堂園家の家長が陽気に玄関へとやって来た。

「ちょっと秀春さん! この人が突然……」

 弱り果てた顔で冬夜が秀春に助けを求めると、

「……ひで、はる、さん……?」

 と、冬夜が名を呼ぶのを聞いていた女がはっとして顔を上げ、今度は冬夜の隣に立ち尽くしている秀春に視線を預けた。能天気が取り柄の秀春も、さすがに何事かと女を見返す。女を視界に入れた秀春は、瞬時に顔色を変えた。

「……ゆか、ちゃん? ……由夏ちゃんなんだね!?」

 普段おっとりとしている秀春が珍しく声を張り上げたかと思うと、慌てて女に駆け寄ってしゃがみ、泣き崩れている由夏と呼ばれた女性の肩を抱くように支える。

「ゆかちゃん……って、誰?」

 さとい冬夜も今回ばかりはうまく事態が飲み込めず、ただおろおろと二人の様子を傍観するしかなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夢の続きの話をしよう

木原あざみ
BL
歯止めのきかなくなる前に離れようと思った。 隣になんていたくないと思った。 ** サッカー選手×大学生。すれ違い過多の両方向片思いなお話です。他サイトにて完結済みの作品を転載しています。本編総文字数25万字強。 表紙は同人誌にした際に木久劇美和さまに描いていただいたものを使用しています(※こちらに載せている本文は同人誌用に改稿する前のものになります)。

【完】君に届かない声

未希かずは(Miki)
BL
 内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。  ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。 すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。 執着囲い込み☓健気。ハピエンです。

告白ごっこ

みなみ ゆうき
BL
ある事情から極力目立たず地味にひっそりと学園生活を送っていた瑠衣(るい)。 ある日偶然に自分をターゲットに告白という名の罰ゲームが行われることを知ってしまう。それを実行することになったのは学園の人気者で同級生の昴流(すばる)。 更に1ヶ月以内に昴流が瑠衣を口説き落とし好きだと言わせることが出来るかということを新しい賭けにしようとしている事に憤りを覚えた瑠衣は一計を案じ、自分の方から先に告白をし、その直後に全てを知っていると種明かしをすることで、早々に馬鹿げたゲームに決着をつけてやろうと考える。しかし、この告白が原因で事態は瑠衣の想定とは違った方向に動きだし……。 テンプレの罰ゲーム告白ものです。 表紙イラストは、かさしま様より描いていただきました! ムーンライトノベルズでも同時公開。

俺の親友がモテ過ぎて困る

くるむ
BL
☆完結済みです☆ 番外編として短い話を追加しました。 男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ) 中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。 一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ) ……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。 て、お前何考えてんの? 何しようとしてんの? ……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。 美形策士×純情平凡♪

ある日、友達とキスをした

Kokonuca.
BL
ゲームで親友とキスをした…のはいいけれど、次の日から親友からの連絡は途切れ、会えた時にはいつも僕がいた場所には違う子がいた

シスルの花束を

碧月 晶
BL
年下俺様モデル×年上訳あり青年 ~人物紹介~ ○氷室 三門(ひむろ みかど) ・攻め(主人公) ・23歳、身長178cm ・モデル ・俺様な性格、短気 ・訳あって、雨月の所に転がり込んだ ○寒河江 雨月(さがえ うげつ) ・受け ・26歳、身長170cm ・常に無表情で、人形のように顔が整っている ・童顔 ※作中に英会話が出てきますが、翻訳アプリで訳したため正しいとは限りません。 ※濡れ場があるシーンはタイトルに*マークが付きます。 ※基本、三門視点で進みます。 ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

一軍男子と兄弟になりました

しょうがやき
BL
親の再婚で一軍男子と兄弟になった、平凡男子の話。

処理中です...