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ゆりすみれ

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58【亜楼+海斗Diary】やり直し③

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 目を瞑ってしまえば、確かに何も見えない。

 閉じた瞳の奥で、絡めた舌の触り心地と、時折こぼれる浅い息を懸命に拾う。

「……ん……はぁ……っ、ふっ」

 二人でベッドに上がり、くちづけにふける。約束通り亜楼は、脚を投げ出して座る海斗を、背後から抱きかかえるようにしていた。海斗の顔だけを自分の方に振り向かせ、もうずいぶんと長い時間、唾を混ぜ合う濃いキスばかりをくり返している。

「んん、……はっ、はぁ……は、」

「……息上がってんぞ?」

「だ、って、……こんなに、キスしたことねぇ、しっ……、ぁんっ、ん……」

 恥じらってうつむいたまま息を整えていると、すぐに亜楼にあごをすくい取られ、また勝手にくちづけられてしまう。

「……んんっ、……あろ、キスばっか……」

 果てしなく口唇を求められ続け、海斗は順調にどろどろになっていった。こんなにされるとは思っていなくて、キスだけで簡単にのぼせそうになる。

「キスすんの好きなんだよ、……これくらいは俺の好きにさせろ……」

「キス魔かよ……」

「一周回って、キスがいちばん、気持ちいんだよ……」

 海斗にとっての今までのキスは、家族に聞こえてはいけない声を閉じ込めるためだけのものだったのに。それが今は、信じられないほど甘く、いやらしくて、脳がしびれる。

「は、っ、……ふっ……ん、んん、……っ」

 亜楼の舌が、単体で意志を持った生き物のように口の中でうごめく。吸い付き、歯列をなぞり、唾液の糸を何度も作った。深く入れられたり、浅く入れられたりして、亜楼のいいように遊ばれる。

「んっ、……ん、……はぁ、は……」

「……キスも、いいモンだろ?」

「……ん、」

 海斗が素直にうなずいた。否定できるはずもない。

「こっから、恥ずかしいって思う暇ねぇくらい、……すげぇ気持ちよくしてやるから」

「こ、っ、から……?」

 今でももう充分に内側からじわじわと溶かされているのに、そう聞いて、全身にぶわっと期待が走るのを海斗が感じた。なかなか終わらせてもらえない執着のくちづけを浴びながら、これからどんな風に抱かれるかを想像し、指の先まで興奮する。

 本当はキスから始めるのだと、いつか亜楼が教えてくれた。キスの次は? 海斗はよく知らない。

「……っんん、ん、……ふぅ、……あろ、もぅ、……」

 下半身がじんじんと、解放を強く訴えてくる。下着の中が窮屈でつらいのを言い出せない海斗が、涙目になりながら亜楼を呼んだ。もっともっと、気持ちいいことに近づきたい。

「あろ、っ、もぅ……次、して……つぎ、教えてよ……」

「教わりてぇの? 勉強熱心じゃん」

 亜楼がふっと口元を緩ませる。もう少しキスだけでぐちゃぐちゃにしてやりたかったが、かわいい弟のお願いを無下にはできない。

「さわってやる」

 背中側から熱いごつごつとした手が伸びてきて、Tシャツの中で海斗の腹筋を撫で始めた。ほどよく鍛えられた腹をまさぐり、脇腹のラインに沿ってゆっくりと手がのぼっていく。たどり着いた胸のあたりで、指先が生き生きと這い出した。

「!? ちょ、っ、なに!? ンなとこ……っ」

 背後から伸びた亜楼の両手が、海斗の左右の突起を同時につまむ。そんなところをさわられると思っていなかった海斗が、驚いて逃げるように腰を浮かせた。

「ひ、うっ……、や、っ……!?」

「逃げんなよ」

 亜楼は海斗が逃げないように腕の内側でからだを押さえつけるようにすると、戸惑う弟に構わず、つまんだ乳首をくりくりとね回し始めた。

「……っ、ま、って、……や、あろ、……なに、っこれ……」

 他人はもちろん、自分でもいじったことのないそこが、知らない感覚に落ちていく。くすぐったいのに、何故かぞわぞわとして、容易にからだ中から力が抜け落ちてしまう。

「やっ、……なんか、ヘン……、……やだっ」

「ヘンになるのが気持ちいいって、前に教えただろ? ……頭カラッポにしろ。俺の指の動きだけ、意識して追って」

「ん、はぁ……、あっ、うぅっ……」

「服、邪魔だな……。おい海斗、自分でまくってろ」

「や、……っ、やだよ、……はずかし……」

「あれ? ……大好きな兄ちゃんのお願い、聞いてくんねぇの?」

 耳の後ろあたりから、亜楼の含みのある低音が、じっとりと響いてきた。変なときに兄貴ヅラしやがって! と振り返って責めたくもなるが、兄のお願いは無下にはしたくない。大好きなのは事実だ。

「っ、……クソッ……」

 海斗は自分のTシャツの裾に両手を伸ばすと、ぎゅっとつかみ、ひと思いにバッと捲り上げた。肌が、クーラーで冷えた夏の空気にさらされる。捲った先では、亜楼の指がしっかりと両方の乳頭に触れているのが見えた。

「……、……っん」

 視覚からの情報が、さらに海斗の羞恥をあおる。こんなところをさわられていると実感すれば、海斗の目がますます潤んで赤らんだ。

「お、丸見え」

 動かしやすくなった指で、亜楼は海斗の突起物を悠々といじっていく。いろいろと触り方を試した末、少し強めの力でぐりぐりと粒を押してやると、海斗から自然とあまい息がこぼれた。

「あぁっ、ん……やだ……それっ……」

「自分で捲ってんの、えろくていいな。そのままシャツ持ってろよ」

 こんな自分から見せつけるみたいな格好、恥ずかしくてたまらないのに。恥ずかしいと思えば思うほど、もうすっかり膨れ切っている欲に、まだ熱が走る。

「おまえ、これ、気持ちいい……?」

 海斗の胸をいじる指を止めないまま、亜楼がふと、少し不安げに尋ねた。何回かは抱いているのに、今まで前戯をすっ飛ばしていたせいで、海斗の好きなことがわからない。好きなことだけをたっぷりとしてやりたいが、亜楼も手探りの状態だ。

「んぅっ、……わ、かんっ、ない……けど、……亜楼にさわられると、からだが勝手に、……エロいモードに、なるからっ……」

 涙目を伏せて、亜楼の指の動きだけに集中しながら、海斗が途切れ途切れに答える。

「……亜楼にさわられたら、……っ、正直どこも、全部、きもちいぃっ……、はぁ、んっ」

 後ろから抱っこされているような体勢も、振り向けば口唇がすぐに届く距離なのも、自ら服を捲って強欲に亜楼の指をとどまらせているのも、すべてが淫らで、最高にたかぶる。

「頭バカになったみてぇに、きもちいぃしか、わかんねぇの……、っ、……全部、全部亜楼のせいだかんな……っ!?」

 責められるように言われ、亜楼が目を丸くした。

「……俺のせいで、どこも、きもちいいって?」

 とにかく過去のひどい抱き方をやり直したくて、早く自分と海斗とのセックスの正解を見つけたくて、少しの感度の揺らぎも見落とすまいと神経を研ぎ澄ませていた亜楼が、ふっと肩の力を抜いて笑った。焦って無理に完璧を探そうだなんて思わなくてもいいのだと、弟に教えられる。ただ肌と肌をくっつけているだけでも、充分、満たされる。

「どこさわっても気持ちいいなんて、……俺、最強じゃん」

 うれしいことばかりを言ってくれる海斗がいとしくて、亜楼は背を抱きしめる力を強くした。愛されている実感に、舞い上がる。前の恋愛ではあまり感じられなかった、大切な感覚だと亜楼は思った。

「ん、……あろ、っ、も、やだっ……」

「海斗、顔こっち。……キスしたい」

「……っ、んんっ……、んぅ……」

 再び振り向かせた海斗の口唇を吸いながら、亜楼は背後から弟の太腿ふとももに右手を滑らせた。内側の方をねっとりと愛撫しつつ、その手でゆっくりと脚を開かせていく。腰を浮かせるように誘導し、海斗のスウェットのズボンをひざのあたりまで乱雑に下げて下着をあらわにすると、塞がれた口唇の下で海斗が心細くうなった。

「……んーっ、……んっ、ふ……」

 ボクサーパンツの中心は大きく隆起し、染み出した液体が布のグレーを濃く変色させている。

「我慢汁すっげ……」

「……っ、もぅ、やっ……」

「きつかったな、ごめんな」

 亜楼はそう謝って、仕舞われて苦しそうだった海斗の陰茎を一気に空気にさらしてやった。やっと狭いところから出してもらえたと、涙目の海斗がふぅふぅと浅く息をする。

「あろ、……もうむり……、前さわりたい……」

 まだ律儀にTシャツの裾を握りしめ捲り上げている海斗が、涙にかすれた声で亜楼に告げた。力強く勃起している己を目の当たりにし、目隠しがないことを思い知らされ、また羞恥で震えてしてしまう。

「自分でするか?」

 海斗が、ぶんぶんと首を横に振って嫌がった。

「っ、……さわってほし……ぃ、あろう……さわって、お願い……」

「……っ」

 思いがけずグッとくる言い方でお願いされ、亜楼も息を荒くしながら弟の肉棒を右手で包み込んだ。左手ではまだ海斗の胸の尖りをつまみながら、下と同時にさわってやる。海斗の欲を、振り始めた。

「あっ、……はぁっ……、あ、ああ、……きもちい……、きもちぃ……」

 うわ言のようにつぶやいて、海斗が亜楼のてのひらにすべてをゆだねる。大好きな兄の、熱くて大きな手に存分に甘やかされながら、海斗はうっとりと目を細めた。

「ガン勃ちじゃん……えっろ……」

「はっ、……あろ、の、せい……っ、あ、……あっ」

「我慢汁まだ出てんぞ……、手ぇぬるぬる……」

 それでも、背中側に硬いものを、もうかなり前からゴリゴリと押しつけられている海斗が、息をあまく乱しながら言い返す。

「……っ、おまえだって、さっきから……すっげぇ、……勃たせてんじゃねぇかっ……、っ」

 兄が、わざと強めに押し当ててきているのはわかっていた。口では反撃するように言ってみたが、本当はこの硬さがうれしくて、海斗がひどく安堵する。弟相手に、この人はちゃんとサカっている。

「しょうがねぇだろ、……おまえ突くために、デッカくなってんだから」

「……っ」

「言っただろ? 恥ずかしいって思う暇ねぇくらい、よくしてやるって」

 亜楼がさらに海斗の背にすり寄って、尻の割れ目の上方に、下着の中から取り出した硬い竿の先端を直接擦りつけた。臀裂でんれつをぐいぐいと先っぽで押せば、海斗が驚いてびくっとからだを震わす。

「……なっ!?」

「早く入りてぇって、暴れてんだよ……」

 亜楼もそろそろ前がきつくなってきて、弟の臀部にそれを擦りつけながら、必死に欲をなだめ始める。上手に己を律しながら、海斗のたかぶりを盛大に可愛がるのも、もちろん忘れない。

「……、んっ、……はっ、もぅ、……あ、っん……はあっ……」

 亜楼の上下するてのひらが、海斗をあまく追い詰めていく。

「っ、……っんあ……あっ、う、……」

「海斗……、先に一回出すか?」

 今にも爆ぜそうな海斗に、亜楼が問いかけた。

「いい……、耐える、……っ」

「無理すんな、このまま出していいぞ」

「もぅ、……振んないで……」

 兄のせいですっかりとろとろになった顔で、海斗が懇願する。

「亜楼に、突かれて、イきたい……」

「……っ」

 亜楼が口唇をギリッと噛みながら、海斗の性器を振り動かす手を止めた。

「おまえ……っ」

「……早く、入りてぇんだろ? 亜楼、……ほら、入ってこいよ」

 海斗の挑発が、亜楼の情欲に火をつける。

「っ、……煽るようなこと、言ってんじゃねぇよ」

 これ以上焚きつけられてはたまらないと、亜楼は海斗のあごをすくって強引にこちらに向けると、生意気な口唇を容赦なく塞いでやった。
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