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勇者のパーティーメンバーはいないようです。
しおりを挟む「ねぇ、何であなたは1人で旅しているの?」
あの町に出た日に見た冒険者らしき人達は、何人かでパーティーを組んでいるようだった。彼のように1人でいるのは殆ど居なかったように思う。
「俺は勇者だからな」
「それは前にも聞いたけど関係ある? 勇者のパーティーって普通魔法使いとか、神官や聖女とかそういった凄い人達で組むんじゃないの?」
元の世界でのゲームでは大体そういった感じだった気がする。そのパーティーでお姫様を救いに行ったり、魔王を倒すのが目標だったりして冒険していくのだ。
「前も言ったかもしれないが、俺が勇者だと言うのを信用されてないんだ。俺は平民の出だからな。貴族からはやっかまれ、同じ平民からは嘘つきだと言われ誰もついて来なかった」
「そんな……」
「王城からもらった資金もほんの僅かだ。すぐに使い果たし、今は依頼をこなして稼ぐことを優先しているからな。勇者というより独り身のただの冒険者だ」
「そうだったんだ……いつから冒険をしているの?」
「この国では15の時にスキル鑑定を受けるんだ。その時からだからもう2年経つな」
ということは17歳になるのか。そんな前からずっと1人で旅をしているなんて。しかも王城からも、周りの人たちからも突き放されて。
「私だったらそんな扱い受けていたら国なんか見捨てて普通の生活を送るわ」
「そういう考えもあるかも知れないな。だがこの国は魔物に困っている。俺の力でそれを救うことが出来るなら俺はそれをするだけだ。別に誰かに認められたくてやってるんじゃない。俺がやりたいからしているだけだ」
そう聞いて、彼は本物の勇者なんだと思う。私ならそんな風に思えるわけがない。口調は悪いが意外と純情で、そして一人頑張る彼を応援したいと素直に思った。
それからの私たちは今までと変わらない距離を保っていたが、私は以前より美味しいご飯を食べさせてあげようと腕によりを振るっている。そして彼も以前より少し雰囲気が丸くなった気がする。
今日はトマト、オニオン、卵、ベーコンで作ったスープだ。他の余った野菜の切れ端でダシを取っているので、シンプルながら野菜の美味しさが良く出ている。2人で火を前にして並んで座る。この距離の近さにもだいぶ慣れてしまった。
「美味いな。俺が作った時にはこんな味は出なかった」
「ふふふふ。愛が詰まってるのよ」
「ブッ! 馬鹿なこと言ってんじゃねぇよ!」
「ちょっと汚いでしょ。唾飛ばさないでよ」
こんな軽口も叩ける間柄にはなったのだ。
「ねぇ、あなたはいつまでこんな旅を続けていくの? そもそも魔物って何?」
「……ユーリだ」
「ユーリって何……?」
「俺の名前だよ! ユーリって言ってんだろ」
「名前教えてくれる気になったんだ。ずっと教えてくれないつもりなのかと思ってた」
彼の名前を3週間経った今初めて聞いたのだ。教えてくれないし、見ず知らずの私に名乗りたくないのかと思ってそのまま聞かずにいたんだけど、少しは信用してくれたのかしら。
「普通は名前聞いてくるだろう。お前が何も言わないから……タイミングがなかっただけだ」
最後は少し声の音量が下がっている。ちょっとは悪く思ってるのだろうか。
「ねぇあなたって私と以前会ったこと無いわよね?」
何故だか分からないけど、彼の顔に見覚えがあるのだ。会ったことなどある訳ないのに。
「ある訳ないだろう。住んでた世界が違うのに。とうとう頭がおかしくなったか?」
「そうよね……。他人のそら似と言うやつかしら」
「他人のそら似? そういうお前の名前は何だよ。お前だって言ってないじゃないか」
「ごめんごめん、私の名前は由莉よ。私たちの名前似ているわね」
2人揃ってダブルユー! なんちゃって。
「ユーリとユリか確かにややこしいな」
「だから今まで通りお前で良いわよ。私もあなたって呼ぶし」
名前を知ったところで呼び方を変える必要はない。変わらないのなら名前を知らなくても良いかと思い、今まで名乗らなかったのだ。
「……お前がそういうならそれで良い。それでお前はいくつなんだよ。俺ばっかり知られてて不公平だ」
「29歳よ。あなたとは一回り違うわね」
「29……もう少し若いのかと思った」
「この世界の人がどんな感じか知らないけど、あっちの世界でも童顔だったからね。よく歳下には見られてたから。思ったよりおばさんでがっかりした?」
「いや、別に。歳なんか関係ないし」
そうよね。別に私たちはただ期間限定でお世話になってる、そしてお世話してる関係だ。私の歳など別に興味ないだろう。
「あと1週間で私の運命が決まるのよね……」
「そうだな。一応聞いておくが、元の世界で何をしたんだ?」
「ただ男の子が轢かれそうだったのを助けただけよ。男の子を庇って私が轢かれてしまったの」
「……そうか。偉かったな」
そう呟くと、私の頭を撫ぜる手。こんな一回りも歳下に慰められてもと思う頭とは裏腹に、私の目からは涙が流れてしまう。私だって死にたくなかった。生きたかった、やりたい事だって夢だってたくさんあったのに。男の子を救ったことには後悔してないけど、あちらでの人生が終わってしまったことはまだ受け入れられない。
「後悔してるか?」
「してないって言ったら嘘になるけど……あの時は後悔するとか考えてる暇もなくって。気づいたら考えるよりも先に体が動いてたの」
「……」
「まぁ結婚とか恋人とかもその時は居なかったし、こうして別の世界でまだ生きてることが出来るんだからラッキーかな。この世界で善人だったと認められたらの話だけど」
「そういう経緯なら問題ないだろう。お前は王城に保護されると思うぞ」
「私の話を信じてくれるの? 前は何言っても疑ってたのに」
「流石に3週間も一緒に過ごせばお前が嘘ついてるかどうかなんてわかる。お前は嘘ついてもすぐにバレそうだしな」
「んなっ! 失礼ね」
私が泣いていることには触れずに居てくれることにホッとする。もし涙を指摘されてしまったら私は泣くことをやめていただろう。彼が見て見ぬフリをしてくれたから、思う存分泣けてなんだか気持ちもスッキリした。
「もう遅い、寝ろ」
「今日くらい一緒に寝ない? 何もしないから」
あんな話をしたせいか、1人で眠る気にならなかった。まだ誰かに側にいて、慰めて欲しいと思ってしまった。その慰めてもらうのに年下の彼を選んでしまったのは申し訳ないけど、彼なら私のその気持ちを分かってくれると思ってしまった。
「馬鹿っ。何もしないなんて当たり前だろう。仕方ないな……、今日だけだぞ」
そう言って私に付き合ってくれる彼は優しい。結局彼は私が寝付くまで頭を撫ぜ続けてくれた。そういえばあちらで亡くなる直前に何か考えていた気がするのだが、あれは何を考えていたんだっけ。
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