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プロローグ
しおりを挟む夜ベットに入り目を閉じると、ふわっといつもの感覚に落ちる。
目が覚めて準備をして部屋を出ると、いつものメンバーが整列をして私を待っていた。
「メイ様、今週もよろしくお願いします。これが前回分の報酬です」
「ありがとう。今回はどこの浄化をすれば良いの?」
「ノイス領の西側にある湖が邪気に侵されていますので、そちらの浄化をお願いします」
「分かりました。ノイス領の湖となると2日で終わるかしら」
「もし厳しかったら来週持ち越しでとのことです」
「分かったわ」
私、北山めい24歳はかれこれ3年ほど異世界の聖女として週に2日こちらの世界へ派遣され、浄化の仕事についている。
◇
あれは3年前の就活に苦しむある日、目が覚めるととても華やかな場所に立っていた。
目の前には魔法使いのローブのようなものを着ている集団、騎士の格好をして剣を持っている集団、そして王冠をかぶっている王様のような人がいた。
何かの撮影だろうか?
「そなたが聖女であるか?」
「いいえ、何のことですか?」
こちらを見て王冠の人が質問してきたので、一応返事をする。状況が分からない中で無視は良くない。
するとローブを着た中でも年配の方が答える。
「いえ、彼女からは私達とは違う魔力を感じます。彼女は間違いなく聖女です」
「では召喚は成功したのだな?」
「はい、恐らく成功しているかと思います」
私を置いていきぼりにして会話が進んでいく。
「そなた名は何という?」
「……北山めいですけど、それよりあなたは誰ですか? 状況を説明して欲しいんですけど」
「それは悪かった。我の名はルイ・ウィルソンという。このウィル王国の王だ。我が国の邪気を浄化して欲しくてそなたを呼び出したのだ」
王の話はこうだ。この国は邪気により大地を侵されている。その邪気からは魔物が生まれ、人々を襲うのだが、それを浄化出来るのが異世界からの聖女のみ。それを召喚する魔術を使った所、私が召喚されてしまったらしい。
うん、こういう小説よくネットで読んでいた。どんなに抵抗しても大体逃げ道は残されていないのだ。浄化の話にのるしかないだろうと諦める……時には諦めも肝心だ。だがとりあえず定番の質問をしてみよう。
「浄化に関しては分かりました。出来るかは分からないですけど、ちゃんと報酬をもらえるなら頑張ります。ですが、私は元の世界に帰ることは出来るんですか?」
大体こういう物語だと、召喚は出来ても元の世界に戻ることが出来ないパターンが多い。私は期待せずに聞いた。
「あぁもちろん。明後日には帰れるだろう」
「え……? 明後日?? 帰れないとか、浄化が全て終わったらとかではなくて?」
「帰れないわけなかろう。2日経てば自然と元の世界に引っ張られてしまう」
私は驚き過ぎて声が出ない。明後日はいささか早過ぎやしないか? 海外に行くのにももう少し大掛かりな移動になるのに、異世界は1泊2日とはどういうことだ。
「昔の文献によると、元の世界から無理矢理引っ張ってきた者を長くこの世界に留めておくことは出来ないそうだ。2日経てば帰れるから安心してくれ。その代わりまた1週間後に再度召喚させてもらいたい」
話に色々ついていけないと思っていたら、騎士の集団の中から1人出てきて王様に声を掛ける。
「殿下、詳しい話は後ほどで。ご覧の通り彼女は衣服も整っていないようですし、準備ができ次第別室で話してはいかがですか」
そう王様に進言して下さったのが、アーノルドだった。茶髪の短髪に緑の瞳がとても印象的なイケメン。この瞬間、私には彼がキラキラと輝いて見えた。所謂一目惚れだったのだ。
彼は私のパジャマ姿(高校の学祭のクラスTシャツにスウェットのパンツ)に気づいて話の流れを変えてくださった紳士である。
この時の格好を今でも後悔している。せめてもっと可愛いパジャマを着ていれば今頃アーノルドといい感じになれていたかも知れないのに……。
この時の印象のせいか、アーノルドからは大切にはされているが、それは聖女としてであり、女の子扱いはされていないのだ……ぐすん。
その後別室で詳しい説明と契約に関する打ち合わせが行われた。
契約はこうだ。
1.私は週に2日この世界に呼び出され、浄化をする。
この世界と元の世界は流れる時間は一緒だというので、こっちで2日過ごしたら向こうでも2日経ってしまう。
2.報酬は前回分を翌週の召喚の際に現金で渡す。
最初は宝石類との話だったのだが、向こうとこっちの世界の宝石が同じとは限らないし、証明書とかもないので元の世界で売ることが出来ないと思い現金にしてもらった。
だが実際には忙しすぎてこっちのお金を使う機会がないので今は現金にしたことを少し後悔している。
3.この世界のことを知りたいので、参考の書籍は元の世界に持ち帰ることが出来る
これは2日間は浄化に費やさないといけないので、必要なことを学ぶ為に宿題として持ち帰ることにした。ちゃんと知っておかないと私が不安だからだ。逆に向かうの世界の物をこっちの世界へ持ち込むことは出来ない。文明を発展を変えてしまう恐れがあるということだ。
4.聖女として私は王様と対等な権利を持ち、話すことが出来る。
これは元々の聖女の身分が王様と同等らしいのだが、しっかりと約束してもらった。
5.全ての浄化を終えれば私は自由に過ごすことが出来る。
これは万が一こっちの世界で過ごしたくなった時の為に約束してもらった。聖女として働くも、好きな人と結婚するのも全て私の自由である。
そんな訳で、私は週2日異世界に派遣されている。
召喚は一度してしまえば、同じ人を呼び出すのはそんなに魔力を消費しないらしい。
私は元の世界では派遣社員として就職して、週4日働き、こちらへ来て2日浄化の仕事をし、帰って1日休むという週休1日の生活を続けている。
本当は派遣の仕事を週3にしたいところだが、生活の為には週4でないと厳しいのだ。
なんでこんなカツカツな生活をしているかというと、それはひとえにアーノルドに会いたいからだ。
私はあの日アーノルドに一目惚れし、この人に会う為に週2日浄化をしに異世界に来ることに決めた。
元の世界での生活がどんなに疲弊して疲れても、こっちでの浄化がしんどくても、彼を見れば疲れも吹っ飛んでいってしまう。
当初はアーノルドと良い感じになれればと期待していたのだが、今ではもう会えるだけで満足している。なにせ浄化の仕事がハード過ぎるのだ。
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