通学電車の恋~女子高生の私とアラサーのお兄さん~

高崎 恵

文字の大きさ
2 / 12

手紙

しおりを挟む


「えっ! とうとう告白したの? あのリーマンに!!」

「そう!! 振られちゃったけど、挨拶は許してもらえた!!」

「そりゃあ初対面で告白されて、はいそうですかって付き合う人居ないって。何て告白したの?」

「うーーん、緊張しすぎて覚えてないけど、ずっと好きでした、ずっと見てたんですみたいなこと言ってた気がする」

「うわ……。ストーカー丸出しじゃん!!」

「違うもん! ストーカーじゃないもん! 見てたのは電車の中だけだもん」

「でも相手が下車する駅の周りうろうろとかもしてたじゃん」

「……偶然出会えないかなって思っただけで、家とか職場とか調べようとか思ってないもん!」

「いや、十分アウトだったから」

 あの告白の翌日、バイト終わりに千里とスタバで昨夜のことを報告する。彼女には今まで散々あのお兄さんのことを相談していたのだ。



「まあとにかくこれで顔を覚えてもらったんだから、あとは少しずつ挨拶して好印象を残していけば良いじゃん」

「だよね!!」

「うん、なにせうちらは女子高生だよ!? 女子高生に言い寄られてなびかない男は居ないって! 千尋は可愛いし、モテるじゃん!」

「モテはしないけど、女子高生って最強だよね! うちのお兄ちゃんも制服は最強の武器って言ってたし!!」

「あんたの兄はヤバいけどね。あとはそのリーマンに彼女が居ないことを願うしかないね。年齢も分かんないんでしょ?」

「うん……。多分25くらいなのかなって思ってる」

「25か……。千尋誕生日遅いもんね、9歳差か」

「うん、2月生まれだから。千里はもう17でしょう? 良いなぁ」

 私は今高校2年なのだが、2月生まれなので16歳。これが18歳とかだったらあの人も付き合ってくれたのかなぁ……。
 その後も千里と作戦会議をしたのだが、結局笑顔で挨拶することくらいしか思い浮かばなかった。それから私の好印象大作戦は始まったのだが、それもなかなか上手くいかない。何せあのお兄さんとは乗る駅も降りる駅も違うのだ。


 私が通っている高校は少し遠くて、電車に40分ほど乗っている。あのサラリーマンのお兄さんは、私にとっては7駅目で乗り、そこから3つ目の駅で降りてしまう。せめて同じ駅を利用していたら、ホームで挨拶出来たかも知れないが、電車内で見かけても会釈をすることしか出来ない。しかも乗る車両は毎回同じなのだが、通勤時間がバラバラらしく、全く会えない週もあるのだ。あの告白から3か月経つが、私はなかなか縮まらない距離にヤキモキしていた。



「ねぇ、全く作戦が上手くいかないんだけど」

「まぁそう上手くはいかないよね……。また待ち伏せするとか?」

「挨拶すること以外はOK貰えてないもん……。次やったら無視されて終わると思う。話してみたら想像よりぶっきらぼうな感じだったもん」

「良くそれで折れないよね。私なら断られた時点で心折れるわ」

「だって1年もずっと好きだったんだよ?」

「はいはい、それ何回も聞いたから。もう聞き飽きました」

「ねぇ、次の作戦考えたの! 古風でいこう文通作戦!!」

「無視かい! で、何なのその作戦は?」

「電車であえた時にさりげなく手紙を渡すの!!」

 本当だったらLINEを交換したいが、多分教えてくれない気がする。だからさりげなく隣を確保した時に手紙を渡すのだ。

「それはそれでハードル高くない?」

「大丈夫! 1週間ごとに通勤時間ズレるみたいだから、月曜に会えたら作戦実行するの。乗るドアも分ってるから、そのドアの横を確保していれば多分渡せるはずっ」

 私は比較的早い時間の電車に乗っているから人は比較的まだ少ない。ドアの横にさえついていれば気づいてくれるはずだ。今までは私が座っていたのでなかなか近づけなかったが、頑張て立って待つことにする。本当は始発の駅から乗るので座っていたい。何せそこで座れなければ40分も立ったまんまになる可能性もあるのだ。だから今までは座ったままだったのだが、全く進展がない以上体力を使って頑張るしかない。……今日から持久走の練習が始まるが、なんとか乗り切ろう。

 翌週の月曜にお兄さんの姿を見かけ、家に帰ると手紙を書き始める。なるべく目立たずに渡せるように小さなレターセットを用意しておいたのだ。一言書いてプレゼントに添えるようなタイプの物。いきなり長文は読んでもらえない気もするので、最初は短めにしようと思う。散々迷ったあげく、「好きです。LINE下さい」の一言と、私のIDを書いた。返事が来ることは期待しないが、万が一の可能性もある。

 翌日の火曜日。お兄さんをドアの横で待つが、結局その日はお兄さんが乗ってくることはなかった。お兄さんは休みなのか時々こうして週の真ん中で会えない時がある。気合を入れなおして、翌日に再度手紙を持ってスタンバイする。あと1駅……、ホームに電車が入った瞬間窓からお兄さんの姿を探す。……良かった、今日はいつもの所にいる。ドアが開き乗車してくるとビックリした顔のお兄さん。私はすかさず手紙を差し出す。

「あのっ、おはようございます」

「ああ、おはよう」


「これ」

「??」

 少し首をかしげながらも、無事に受け取りスーツのポケットにしまってくれた。そのままお兄さんに話しかけようとしたのだが、彼は空いていた座席に座ってしまい、私はついていくタイミングを失い結局お兄さんが降りるまでドアの前に立って居たのだが、降りる時は隣のドアから降りてしまった。やっぱり避けられているのかな……。でも今日は挨拶も出来たし、手紙も渡せた! もしかしたら今日メッセージが届くかも知れないもんね!


 そう前向きに捉え、スマホを頻繁にチェックするが、その日お兄さんからメッセージが来ることはなかった。……こんなんじゃ折れないんだから! また手紙を渡すんだもん! 

 翌日もお兄さんを例の扉で待ち構え、朝の挨拶と共に手紙を渡す。そして手紙を受け取るとそのまま座席に座りにいくのにちゃんとついて行き、お兄さんの前に立った。それを見たお兄さんは少し疲れたような顔をするが気にしない。話すことは出来なかったが、3駅の間お兄さんのことを眺めることが出来て私は幸せだった。そうして手紙を渡し続けて2週間が経つ。



「それで、一方的な文通をまだ続けてるの?」

「うん! ちゃんと受け取ってもらえてるよ」

「本当に読まれているか分かんないけどね」

「……きっと読んでくれてるもん」

「でも結局LINE来てないんでしょ?」

 そうなのだ。結局お兄さんからは連絡が来ていない。手紙に毎回IDを載せているけど、もうスマホを開くのもむなしくなりチェックするのも辞めた。


「うん……」

「手紙はどんなこと書いてるの?」

「帰宅は何時の電車に乗るんですか? とか、昨日は休みだったんですか? とかの質問形式にしてる! 一問一答みたいな感じ」

「ゲッ。ストーカー感丸出しじゃん! もっとここが好きですみたいなこと書いてアピールしなよ」

「その手があったか!!」

「もう馬鹿なの? そういうとこホント変というか、天然というか……」

「ありがとう! 今すぐ帰って手紙書かなきゃ! ごめん行くね!!」

 そう千里に別れを告げると急いで家に帰って手紙を書き始める。お兄さんの好きな所……。どうしよう沢山ありすぎて書けない。私はもう1年以上片思い中なのだ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

恋い焦がれて

さとう涼
恋愛
小学校時代の担任教諭・佐野に七年ぶりに再会し、話の流れで佐野の恋人へのエンゲージリングを選ぶために一緒にジュエリーショップに行くことになってしまった二十歳の女子大学生・輝。 最初はそんなつもりはなかったのに、次第に佐野を意識してしまうようになり、自分でも困惑してしまう。 必死に自分の想いを打ち消そうとする輝。 だけど佐野も恋人との関係に悩んでいるようで、複雑な想いを抱え続けることになる。 そんな輝を見守る(ちょっかいをかける?)バイト先の店長。 さらに佐野の恋人は意外な人物で、輝は大混乱。 ※ドロドロではなく純愛系を目指していますが、ビターテイストなお話です ※理想的で格好いいヒーローではありません(…すみません) ※調べながら執筆をしているのですが、無知なところも多々あるので、間違っているところがありましたら教えてください。ツイッターでも受け付けています。 https://twitter.com/SATORYO_HOME

お前が欲しくて堪らない〜年下御曹司との政略結婚

ラヴ KAZU
恋愛
忌まわしい過去から抜けられず、恋愛に臆病になっているアラフォー葉村美鈴。 五歳の時の初恋相手との結婚を願っている若き御曹司戸倉慶。 ある日美鈴の父親の会社の借金を支払う代わりに美鈴との政略結婚を申し出た慶。 年下御曹司との政略結婚に幸せを感じることが出来ず、諦めていたが、信じられない慶の愛情に困惑する美鈴。 慶に惹かれる気持ちと過去のトラウマから男性を拒否してしまう身体。 二人の恋の行方は……

俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜

ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。 そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、 理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。 しかも理樹には婚約者がいたのである。 全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。 二人は結婚出来るのであろうか。

俺と結婚してくれ〜若き御曹司の真実の愛

ラヴ KAZU
恋愛
村藤潤一郎 潤一郎は村藤コーポレーションの社長を就任したばかりの二十五歳。 大学卒業後、海外に留学した。 過去の恋愛にトラウマを抱えていた。 そんな時、気になる女性社員と巡り会う。 八神あやか 村藤コーポレーション社員の四十歳。 過去の恋愛にトラウマを抱えて、男性の言葉を信じられない。 恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。 そんな時、バッグを取られ、怪我をして潤一郎のマンションでお世話になる羽目に...... 八神あやかは元恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。そんな矢先あやかの勤める村藤コーポレーション社長村藤潤一郎と巡り会う。ある日あやかはバッグを取られ、怪我をする。あやかを放っておけない潤一郎は自分のマンションへ誘った。あやかは優しい潤一郎に惹かれて行くが、会社が倒産の危機にあり、合併先のお嬢さんと婚約すると知る。潤一郎はあやかへの愛を貫こうとするが、あやかは潤一郎の前から姿を消すのであった。

幸せのありか

神室さち
恋愛
 兄の解雇に伴って、本社に呼び戻された氷川哉(ひかわさい)は兄の仕事の後始末とも言える関係企業の整理合理化を進めていた。  決定を下した日、彼のもとに行野樹理(ゆきのじゅり)と名乗る高校生の少女がやってくる。父親の会社との取引を継続してくれるようにと。  哉は、人生というゲームの余興に、一年以内に哉の提示する再建計画をやり遂げれば、以降も取引を続行することを決める。  担保として、樹理を差し出すのならと。止める両親を振りきり、樹理は彼のもとへ行くことを決意した。  とかなんとか書きつつ、幸せのありかを探すお話。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 自サイトに掲載していた作品を、閉鎖により移行。 視点がちょいちょい変わるので、タイトルに記載。 キリのいいところで切るので各話の文字数は一定ではありません。 ものすごく短いページもあります。サクサク更新する予定。 本日何話目、とかの注意は特に入りません。しおりで対応していただけるとありがたいです。 別小説「やさしいキスの見つけ方」のスピンオフとして生まれた作品ですが、メインは単独でも読めます。 直接的な表現はないので全年齢で公開します。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

それは、ホントに不可抗力で。

樹沙都
恋愛
これ以上他人に振り回されるのはまっぴらごめんと一大決意。人生における全ての無駄を排除し、おひとりさまを謳歌する歩夢の前に、ひとりの男が立ちはだかった。 「まさか、夫の顔……を、忘れたとは言わないだろうな? 奥さん」 その婚姻は、天の啓示か、はたまた……ついうっかり、か。 恋に仕事に人間関係にと翻弄されるお人好しオンナ関口歩夢と腹黒大魔王小林尊の攻防戦。 まさにいま、開始のゴングが鳴った。 まあね、所詮、人生は不可抗力でできている。わけよ。とほほっ。

シンデレラは王子様と離婚することになりました。

及川 桜
恋愛
シンデレラは王子様と結婚して幸せになり・・・ なりませんでした!! 【現代版 シンデレラストーリー】 貧乏OLは、ひょんなことから会社の社長と出会い結婚することになりました。 はたから見れば、王子様に見初められたシンデレラストーリー。 しかしながら、その実態は? 離婚前提の結婚生活。 果たして、シンデレラは無事に王子様と離婚できるのでしょうか。

処理中です...