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廃線跡のトンネルに吊るされた非常灯が、ぼんやりと橙色の光を投げかけている。
その中心には、拾い集めたホワイトボードと紙、簡易端末を並べた即席の作戦卓。
数十人の影と、叶多とルカがその前に立っていた。
「……じゃあ、まず現状の確認からいこう」
叶多が深く息を吐いてから、地図を広げた。
都市部から逃れてきた複数の影グループが、現在地を点で示している。
彼らはバラバラに逃げたが、少なくとも三箇所で連絡が取れ始めていた。
「北ブロックの影グループは、旧輸送倉庫を抑えてる」
「西は通信塔の地下を奪ったらしい。向こうもやる気だな」
周囲の影たちがざわめいた。
“逃げる”だけだった影たちが、自分たちの意思で拠点を確保し始めている。
それは初めて「組織」になりつつある瞬間だった。
ルカは一歩前に進み、ボードに指を走らせた。
「国家はこの24時間以内に、再包囲を仕掛けてくる」
「早いな」
「この国は“影の反乱”を想定してなかった。でも……対処の速さは、さすがに軍だ」
「敵の主力は三方向から圧をかけてくるはず。
正面は重装部隊、東はドローン制圧、南からは狙撃部隊……逃げ場を潰す気だ」
「じゃあ、どうする?」
叶多の問いに、ルカの声が低く鋭くなる。
「——こっちから“先に”動く」
トンネルの空気が少し震えた。
逃げる戦いじゃない。
「反撃」だ。
◇
作戦は三段階で組まれた。
撹乱——
北ブロックの仲間がドローン中継局を破壊し、敵の索敵能力を落とす。
奪取——
ルカと少数精鋭が中央エネルギー中継施設を制圧。
影の通信網と電力を“自分たちのもの”にする。
拡散——
奪った通信回線を使い、国家に隠されてきた「影の存在」を世界に流す。
逃げるだけではなく、世界に姿をさらす反撃。
「……本気で、世界をひっくり返す気だな」
叶多の声には笑いが混ざった。
「俺たちが戦う理由は“ここ”にある」
ルカが影たちを見回す。
「もう、檻の中で誰にも消させない」
影たちの顔が一斉に上がる。
誰も命令はしていない。
でも、それぞれが“戦う”と決めていた。
◇
「武器の確保は?」
「拾い物と鹵獲品。装甲相手には足りねえが……頭を潰せば勝ち筋はある」
「EMPとネット兵器も再利用できる。俺が同期波を出せば、敵のドローンは奪える」
影たちが次々に情報を出す。
まるで生きた一つの神経網のように、組織が形になっていく。
叶多が苦笑した。
「なあルカ、これ……もはや反乱軍だな」
「うん。世界が、俺たちを“そう呼ぶ”のなら……そうなってやる」
その声にはもう迷いはなかった。
◇
夜がまた来る。
トンネルの奥、静まり返った暗がりの中で、
ルカと叶多は並んで地図を見下ろしていた。
「……なあ、叶多」
「なんだよ」
「君と出会わなかったら、俺……檻の中で壊れてたと思う」
「バカ。俺の方こそ、お前がいなきゃとっくに捕まってた」
ふたりの視線が重なり、短い沈黙が落ちる。
「行こう」
「……ああ。壊してやろうぜ、この世界」
影たちが静かに武器を手に取る。
夜明けを、再び奪い返すために——。
その中心には、拾い集めたホワイトボードと紙、簡易端末を並べた即席の作戦卓。
数十人の影と、叶多とルカがその前に立っていた。
「……じゃあ、まず現状の確認からいこう」
叶多が深く息を吐いてから、地図を広げた。
都市部から逃れてきた複数の影グループが、現在地を点で示している。
彼らはバラバラに逃げたが、少なくとも三箇所で連絡が取れ始めていた。
「北ブロックの影グループは、旧輸送倉庫を抑えてる」
「西は通信塔の地下を奪ったらしい。向こうもやる気だな」
周囲の影たちがざわめいた。
“逃げる”だけだった影たちが、自分たちの意思で拠点を確保し始めている。
それは初めて「組織」になりつつある瞬間だった。
ルカは一歩前に進み、ボードに指を走らせた。
「国家はこの24時間以内に、再包囲を仕掛けてくる」
「早いな」
「この国は“影の反乱”を想定してなかった。でも……対処の速さは、さすがに軍だ」
「敵の主力は三方向から圧をかけてくるはず。
正面は重装部隊、東はドローン制圧、南からは狙撃部隊……逃げ場を潰す気だ」
「じゃあ、どうする?」
叶多の問いに、ルカの声が低く鋭くなる。
「——こっちから“先に”動く」
トンネルの空気が少し震えた。
逃げる戦いじゃない。
「反撃」だ。
◇
作戦は三段階で組まれた。
撹乱——
北ブロックの仲間がドローン中継局を破壊し、敵の索敵能力を落とす。
奪取——
ルカと少数精鋭が中央エネルギー中継施設を制圧。
影の通信網と電力を“自分たちのもの”にする。
拡散——
奪った通信回線を使い、国家に隠されてきた「影の存在」を世界に流す。
逃げるだけではなく、世界に姿をさらす反撃。
「……本気で、世界をひっくり返す気だな」
叶多の声には笑いが混ざった。
「俺たちが戦う理由は“ここ”にある」
ルカが影たちを見回す。
「もう、檻の中で誰にも消させない」
影たちの顔が一斉に上がる。
誰も命令はしていない。
でも、それぞれが“戦う”と決めていた。
◇
「武器の確保は?」
「拾い物と鹵獲品。装甲相手には足りねえが……頭を潰せば勝ち筋はある」
「EMPとネット兵器も再利用できる。俺が同期波を出せば、敵のドローンは奪える」
影たちが次々に情報を出す。
まるで生きた一つの神経網のように、組織が形になっていく。
叶多が苦笑した。
「なあルカ、これ……もはや反乱軍だな」
「うん。世界が、俺たちを“そう呼ぶ”のなら……そうなってやる」
その声にはもう迷いはなかった。
◇
夜がまた来る。
トンネルの奥、静まり返った暗がりの中で、
ルカと叶多は並んで地図を見下ろしていた。
「……なあ、叶多」
「なんだよ」
「君と出会わなかったら、俺……檻の中で壊れてたと思う」
「バカ。俺の方こそ、お前がいなきゃとっくに捕まってた」
ふたりの視線が重なり、短い沈黙が落ちる。
「行こう」
「……ああ。壊してやろうぜ、この世界」
影たちが静かに武器を手に取る。
夜明けを、再び奪い返すために——。
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