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第四話 ──王の子を宿した花──
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王に抱かれたあの夜から、いくつもの夜を越えた。
ミリアは今、王妃としての務めを日々果たしながら、静かに自らの変化に気づき始めていた。
「……また、朝食の匂いで……」
王宮の台所から運ばれる香草のスープ。その匂いに思わず胃が反応し、思わず身を丸める。
昨日もそうだった。おとといも、似たような感覚があった。
そして今朝――
「……気分が……悪い……」
貧血のようなふらつきと、胸の奥から湧き上がる吐き気。
侍女が慌てて支えに駆け寄り、宮廷付きの侍医が急ぎ診察に現れた。
「王妃様……これは、もしかすると」
彼の顔がこわばったまま、告げられた言葉。
──“ご懐妊の兆し”であると。
***
「……私が、子を……王の……?」
揺れる心に追いつかぬまま、ミリアはひとり寝殿に戻った。
身体の奥では、たしかに新たな命の気配が灯っている――そう思うと、どうしようもないほど、胸が震えた。
けれど、同時に不安も渦巻いていた。
自分は“身代わり”としてこの世界に来た。
王に愛され、妃となったとはいえ、未だに“本物ではない”と陰口を叩く者も多い。
そんな中で、もし王の子を――この国の“後継者”を宿したとなれば。
「……狙われる」
静かに呟いた言葉に、自分でぞっとする。
誰よりも、王を恐れない女でなければならない。
誰よりも、彼の傍にふさわしい妃でなければならない。
扉が開き、王が姿を現したのはその時だった。
「……聞いたぞ」
その一言で、ミリアの心臓が跳ねた。
エイリオス・ヴェルハイト。
氷の瞳で王国を睥睨する男が、今はただひとり、彼女の前に立っていた。
「……王様……その、あの……」
言葉が震える。どんな顔をすればいいのかわからない。
けれど、次の瞬間、王の腕が彼女を強く抱き寄せた。
「よくやった。……我が子を宿したのだな」
その声には、これまでにない熱がこもっていた。
唇が額に触れ、首筋に滑り、耳元で囁かれる。
「この身体に、私の血を宿している……」
「っ……王様……」
「もう誰にも、指一本触れさせん。誰も、お前を否定させない。お前は“王妃”であり、“王の母”だ」
「……でも……私、まだ確定では……」
「確定させよう。身体が、王のものだと……心も、魂も、この夜、もう一度刻み直してやる」
そう囁かれると、ミリアの背筋に戦慄が走った。
それが恐怖ではなく、甘美な期待であることに、身体が先に気づいてしまう。
王の指がドレスを緩め、腰まで落としていく。
柔らかい胸を包み込み、下腹をそっと撫でる。
「ここに、私の種が宿っている。ならば――今夜は、“確信”を刻む夜にしよう」
ミリアは言葉もなく頷いた。
それが、彼の“独占”の本質なのだと、知っている。
***
夜。
ふたりの身体は、すでに何度も交わっていたはずだった。
けれどこの夜は、違っていた。
王の手は、いつにも増して執拗で、丁寧で、まるで“自分の痕跡”を刻み込むようだった。
「ひぁっ……んんっ……そ、そこは……っ、くぅっ……!」
敏感になっている身体に、王の舌が這う。
胸の先端に吸いつき、腹の奥へと手が滑り込む。
「感じているな……母になる身体は、こうして敏感になる」
「っ……し、らない……あぁ、んっ……もう……やぁ……!」
脚を割られ、奥を探るように押し広げられる。
「確かめてやる……私の子が、ここにいるという証を」
ぬるりと熱が入り込んだ瞬間、ミリアは声を漏らした。
「んぁっ……ぁ……っ、そんなに……あっ……深……っ」
「奥に届くように、しっかり注ぐ。……また、宿るようにな」
「も、もう……いるかも、しれないのに……っ」
「足りぬ。私は貪欲だ。“一人”で満足するつもりはない」
何度も何度も、貫かれる。
そのたびにミリアの身体は跳ね、蜜を溢れさせて、快楽に溶かされていく。
「王様……好き……好きです……私、もう……っ、あなたしか……」
「私もだ。お前以外、考えられない」
「ほんとうに……?」
「私の血を宿し、私だけを見て、私だけを欲しがるお前が……何より、愛しい」
その言葉に涙が滲んだ。
──あの日、“代わり”としてここに来た自分が、
今では“王の愛”と“子”に包まれている。
それは、何よりも誇らしく、何よりも大切な、ミリアの証だった。
***
翌朝。
王は早朝から政務へと向かった。
ミリアは彼の背を見送ったあと、ゆっくりと鏡の前に立った。
裸の身体に、昨夜の痕がいくつも残っている。
胸の下、内腿、首筋、そして腹――。
「……ここに……あなたの子がいるのですね」
そっと掌を添えたお腹に、柔らかい微熱が伝わる気がした。
だがその瞬間。
窓の外に、不穏な気配がよぎる。
──誰かが、こちらを見ていた。
王妃の懐妊が、漏れたのか。
あるいは、王妃の座を狙う者たちが、動き出したのか。
ミリアは唇を引き結び、目を伏せた。
「私は……もう逃げません。お腹の子を、王様を、守ってみせます」
そう呟いた声に、震えはなかった。
彼女はもう、“誰かの代わり”ではない。
王の愛を受け、子を宿す――“本物の王妃”なのだから。
ミリアは今、王妃としての務めを日々果たしながら、静かに自らの変化に気づき始めていた。
「……また、朝食の匂いで……」
王宮の台所から運ばれる香草のスープ。その匂いに思わず胃が反応し、思わず身を丸める。
昨日もそうだった。おとといも、似たような感覚があった。
そして今朝――
「……気分が……悪い……」
貧血のようなふらつきと、胸の奥から湧き上がる吐き気。
侍女が慌てて支えに駆け寄り、宮廷付きの侍医が急ぎ診察に現れた。
「王妃様……これは、もしかすると」
彼の顔がこわばったまま、告げられた言葉。
──“ご懐妊の兆し”であると。
***
「……私が、子を……王の……?」
揺れる心に追いつかぬまま、ミリアはひとり寝殿に戻った。
身体の奥では、たしかに新たな命の気配が灯っている――そう思うと、どうしようもないほど、胸が震えた。
けれど、同時に不安も渦巻いていた。
自分は“身代わり”としてこの世界に来た。
王に愛され、妃となったとはいえ、未だに“本物ではない”と陰口を叩く者も多い。
そんな中で、もし王の子を――この国の“後継者”を宿したとなれば。
「……狙われる」
静かに呟いた言葉に、自分でぞっとする。
誰よりも、王を恐れない女でなければならない。
誰よりも、彼の傍にふさわしい妃でなければならない。
扉が開き、王が姿を現したのはその時だった。
「……聞いたぞ」
その一言で、ミリアの心臓が跳ねた。
エイリオス・ヴェルハイト。
氷の瞳で王国を睥睨する男が、今はただひとり、彼女の前に立っていた。
「……王様……その、あの……」
言葉が震える。どんな顔をすればいいのかわからない。
けれど、次の瞬間、王の腕が彼女を強く抱き寄せた。
「よくやった。……我が子を宿したのだな」
その声には、これまでにない熱がこもっていた。
唇が額に触れ、首筋に滑り、耳元で囁かれる。
「この身体に、私の血を宿している……」
「っ……王様……」
「もう誰にも、指一本触れさせん。誰も、お前を否定させない。お前は“王妃”であり、“王の母”だ」
「……でも……私、まだ確定では……」
「確定させよう。身体が、王のものだと……心も、魂も、この夜、もう一度刻み直してやる」
そう囁かれると、ミリアの背筋に戦慄が走った。
それが恐怖ではなく、甘美な期待であることに、身体が先に気づいてしまう。
王の指がドレスを緩め、腰まで落としていく。
柔らかい胸を包み込み、下腹をそっと撫でる。
「ここに、私の種が宿っている。ならば――今夜は、“確信”を刻む夜にしよう」
ミリアは言葉もなく頷いた。
それが、彼の“独占”の本質なのだと、知っている。
***
夜。
ふたりの身体は、すでに何度も交わっていたはずだった。
けれどこの夜は、違っていた。
王の手は、いつにも増して執拗で、丁寧で、まるで“自分の痕跡”を刻み込むようだった。
「ひぁっ……んんっ……そ、そこは……っ、くぅっ……!」
敏感になっている身体に、王の舌が這う。
胸の先端に吸いつき、腹の奥へと手が滑り込む。
「感じているな……母になる身体は、こうして敏感になる」
「っ……し、らない……あぁ、んっ……もう……やぁ……!」
脚を割られ、奥を探るように押し広げられる。
「確かめてやる……私の子が、ここにいるという証を」
ぬるりと熱が入り込んだ瞬間、ミリアは声を漏らした。
「んぁっ……ぁ……っ、そんなに……あっ……深……っ」
「奥に届くように、しっかり注ぐ。……また、宿るようにな」
「も、もう……いるかも、しれないのに……っ」
「足りぬ。私は貪欲だ。“一人”で満足するつもりはない」
何度も何度も、貫かれる。
そのたびにミリアの身体は跳ね、蜜を溢れさせて、快楽に溶かされていく。
「王様……好き……好きです……私、もう……っ、あなたしか……」
「私もだ。お前以外、考えられない」
「ほんとうに……?」
「私の血を宿し、私だけを見て、私だけを欲しがるお前が……何より、愛しい」
その言葉に涙が滲んだ。
──あの日、“代わり”としてここに来た自分が、
今では“王の愛”と“子”に包まれている。
それは、何よりも誇らしく、何よりも大切な、ミリアの証だった。
***
翌朝。
王は早朝から政務へと向かった。
ミリアは彼の背を見送ったあと、ゆっくりと鏡の前に立った。
裸の身体に、昨夜の痕がいくつも残っている。
胸の下、内腿、首筋、そして腹――。
「……ここに……あなたの子がいるのですね」
そっと掌を添えたお腹に、柔らかい微熱が伝わる気がした。
だがその瞬間。
窓の外に、不穏な気配がよぎる。
──誰かが、こちらを見ていた。
王妃の懐妊が、漏れたのか。
あるいは、王妃の座を狙う者たちが、動き出したのか。
ミリアは唇を引き結び、目を伏せた。
「私は……もう逃げません。お腹の子を、王様を、守ってみせます」
そう呟いた声に、震えはなかった。
彼女はもう、“誰かの代わり”ではない。
王の愛を受け、子を宿す――“本物の王妃”なのだから。
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