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外に出ると、午後の陽射しは少し傾きはじめていた。
昼下がりの街には、
カフェのオープンテラスやオフィス街の往来が、心地よいざわめきをつくっている。
陽翔と蓮は並んで歩きながら、
取材用の資料が入ったファイルを手にしていた。
「……暑いな」
「だね。でも、風があるぶんマシかも」
「……お前、歩くのちょっと遅い」
「え~、蓮さんが早いんだよ」
「……仕方ねぇな」
蓮は小さくため息をついて、歩幅を自然と落とした。
その動きが、言葉よりもずっと優しくて――
陽翔の胸の奥に、小さく甘い音が鳴った。
(……こういうとこ、ずるいんだよな)
「……なにニヤついてんだ」
「ん~、恋人の顔して歩いてる」
「バカ、外だぞ」
「わかってるって。でも、俺らだけの秘密だから」
「……ガキ」
蓮は少しだけ視線をそらし、
陽翔の手がファイルを持ち直す瞬間、
ほんの一瞬だけその手に触れた。
誰にも気づかれないくらいの小さな接触。
けれど、それだけで心があたたかくなる。
*
取材先のビルに向かう途中、
二人は信号待ちで足を止めた。
陽翔は何気なく蓮の横顔を見上げる。
仕事中の真剣な表情――
その顔に恋をしたのは、たぶん何度目かもう数えられない。
(……こうやって並んで立ってる時間も、好きなんだよな)
蓮は視線を前に向けたまま、小さく口を開いた。
「……なに、また見てんのか」
「うん」
「堂々と言うな」
「だって、かっこいいんだもん」
「……バカ」
信号が青に変わり、二人は再び歩き出した。
その一歩のタイミングが、自然と揃っていることに、
陽翔は小さく笑みを浮かべた。
*
取材先のカフェ。
ふたりは資料を広げ、聞き取りを進めていた。
仕事モードの蓮は、言葉少なでもきちんと相手に的確な質問を投げる。
その冷静さと鋭さに、担当者の表情が次第に信頼へと変わっていくのがわかる。
「……さすが蓮さん」
「なにが」
「かっこいい」
「仕事中だぞ」
「知ってる。でも、かっこいいのは事実」
蓮が小さく睨むように目を細めたが、
その口元はわずかにゆるんでいた。
声に出さなくても、二人のあいだには確かな空気が流れている。
(こういう“仕事中の顔”も、俺、ちゃんと好きなんだ)
*
取材を終えて外に出ると、夕方の風が心地よく吹き抜けた。
人の流れが少し落ち着いて、街の音もやわらいでいる。
陽翔が伸びをして深呼吸すると、
隣で蓮も無言で歩き出した。
その肩がほんの少しだけ陽翔の肩に触れる。
ぶつかったわけじゃなく――自然と、寄り添うように。
「……おつかれ」
「お、珍しく“おつかれ”言った」
「うるせぇ」
「ふふ、うれしい」
蓮の横顔を見ながら、
陽翔は自分でも気づかないくらいにやわらかい笑みをこぼしていた。
*
「……なあ」
「ん?」
「今日、なんかお前……甘ったるい」
「え、そうかな?」
「……バレバレだ」
「でも、蓮さんもいつもより優しい」
「……知らねぇ」
二人の会話は、風に溶けるように穏やかだった。
周りの人々は誰も、
この空気の甘さには気づかない。
だけど、ふたりだけが知っている。
外の世界でも、ちゃんと繋がっていることを。
(こうやって、恋が日常に混ざっていくの、悪くないな)
🕊️ 第42話 予告:「夕方の寄り道」
仕事を終えた帰り道。
ちょっとした寄り道が、ふたりにとって小さな“デート”になる時間。
日常の中に、確かに恋がある――そんな夕方。
昼下がりの街には、
カフェのオープンテラスやオフィス街の往来が、心地よいざわめきをつくっている。
陽翔と蓮は並んで歩きながら、
取材用の資料が入ったファイルを手にしていた。
「……暑いな」
「だね。でも、風があるぶんマシかも」
「……お前、歩くのちょっと遅い」
「え~、蓮さんが早いんだよ」
「……仕方ねぇな」
蓮は小さくため息をついて、歩幅を自然と落とした。
その動きが、言葉よりもずっと優しくて――
陽翔の胸の奥に、小さく甘い音が鳴った。
(……こういうとこ、ずるいんだよな)
「……なにニヤついてんだ」
「ん~、恋人の顔して歩いてる」
「バカ、外だぞ」
「わかってるって。でも、俺らだけの秘密だから」
「……ガキ」
蓮は少しだけ視線をそらし、
陽翔の手がファイルを持ち直す瞬間、
ほんの一瞬だけその手に触れた。
誰にも気づかれないくらいの小さな接触。
けれど、それだけで心があたたかくなる。
*
取材先のビルに向かう途中、
二人は信号待ちで足を止めた。
陽翔は何気なく蓮の横顔を見上げる。
仕事中の真剣な表情――
その顔に恋をしたのは、たぶん何度目かもう数えられない。
(……こうやって並んで立ってる時間も、好きなんだよな)
蓮は視線を前に向けたまま、小さく口を開いた。
「……なに、また見てんのか」
「うん」
「堂々と言うな」
「だって、かっこいいんだもん」
「……バカ」
信号が青に変わり、二人は再び歩き出した。
その一歩のタイミングが、自然と揃っていることに、
陽翔は小さく笑みを浮かべた。
*
取材先のカフェ。
ふたりは資料を広げ、聞き取りを進めていた。
仕事モードの蓮は、言葉少なでもきちんと相手に的確な質問を投げる。
その冷静さと鋭さに、担当者の表情が次第に信頼へと変わっていくのがわかる。
「……さすが蓮さん」
「なにが」
「かっこいい」
「仕事中だぞ」
「知ってる。でも、かっこいいのは事実」
蓮が小さく睨むように目を細めたが、
その口元はわずかにゆるんでいた。
声に出さなくても、二人のあいだには確かな空気が流れている。
(こういう“仕事中の顔”も、俺、ちゃんと好きなんだ)
*
取材を終えて外に出ると、夕方の風が心地よく吹き抜けた。
人の流れが少し落ち着いて、街の音もやわらいでいる。
陽翔が伸びをして深呼吸すると、
隣で蓮も無言で歩き出した。
その肩がほんの少しだけ陽翔の肩に触れる。
ぶつかったわけじゃなく――自然と、寄り添うように。
「……おつかれ」
「お、珍しく“おつかれ”言った」
「うるせぇ」
「ふふ、うれしい」
蓮の横顔を見ながら、
陽翔は自分でも気づかないくらいにやわらかい笑みをこぼしていた。
*
「……なあ」
「ん?」
「今日、なんかお前……甘ったるい」
「え、そうかな?」
「……バレバレだ」
「でも、蓮さんもいつもより優しい」
「……知らねぇ」
二人の会話は、風に溶けるように穏やかだった。
周りの人々は誰も、
この空気の甘さには気づかない。
だけど、ふたりだけが知っている。
外の世界でも、ちゃんと繋がっていることを。
(こうやって、恋が日常に混ざっていくの、悪くないな)
🕊️ 第42話 予告:「夕方の寄り道」
仕事を終えた帰り道。
ちょっとした寄り道が、ふたりにとって小さな“デート”になる時間。
日常の中に、確かに恋がある――そんな夕方。
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