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夜の事務所は、昼間とはまるで別の顔をしていた。
外からの雑音はなく、
蛍光灯を落としたランプの灯りだけが、
ぼんやりと二人を包み込んでいる。
「……ふぅ」
陽翔はソファに腰を下ろし、背中を預けた。
一日の疲れが、足元からじんわりと抜けていく。
その横で、蓮は無言のままコートをハンガーに掛け、
ゆっくりと隣に腰を下ろした。
(……なんか、この時間、好きだな)
昼間は仕事の顔をしていて、
夕方は少しはしゃいで、
でも夜になると――
蓮の空気がやわらかくなるのを、陽翔はちゃんと知っている。
「……疲れたな」
「うん。でも、楽しかった」
「……ガキみてぇだな」
「いいじゃん。好きな人と一緒にいる日だったし」
「……」
蓮は何も言わず、
陽翔の頭をぐいっと肩にもたれかけさせた。
その仕草が、胸の奥に甘く沈む。
*
「……ねえ、蓮さん」
「ん」
「夜の事務所ってさ、ちょっと特別な空気あるよね」
「……どういう意味だよ」
「昼間より静かで、落ち着いてて……蓮さんの声が、ちょっとだけ近く感じる」
蓮は「バカ」と小さく呟き、
ため息まじりに陽翔の髪を撫でた。
手のひらの温度が、じんわりと頭の奥に広がる。
「……なにそれ」
「特別」
「勝手に特別にすんな」
「でも、蓮さんも少し笑ってる」
「……してねぇ」
「うそ、してる」
*
事務所の窓の外には、静かな夜景が広がっていた。
ビルの灯りもまばらになり、
遠くの車の音がかすかに聞こえるだけ。
陽翔は蓮の肩に顔を預けたまま、
深く息を吐いた。
その息が、蓮の首筋をくすぐるように触れる。
「……なあ」
「ん」
「このまま、朝までここにいたら怒る?」
「怒る」
「だよねぇ」
「……でも」
「ん?」
「……少しだけなら、いい」
「……!」
陽翔の胸が、どくんと跳ねた。
蓮の“少しだけ”が、どれだけ特別な意味を持っているか――
陽翔はもうよく知っている。
「……ほんと、ずるいんだから」
「なにが」
「そういう言い方」
「……知らねぇよ」
*
ソファの背に、二人の肩がぴたりと触れ合っている。
指先が触れるたびに、
その温度がじわじわと心の奥に染み込んでいく。
「……蓮さん」
「ん」
「今日も、だいすき」
「……いきなり言うな」
「我慢できなかった」
「……」
蓮は言葉を返さず、
代わりに陽翔の手をそっと握った。
夜の静寂に包まれたその仕草は、
言葉よりもずっと深く、あたたかかった。
「……ん」
「なに」
「……なんでもない。ただ、今、すごく幸せ」
蓮は何も言わず、
そのまま陽翔の髪をやさしく撫で続けた。
夜の灯りが、二人の影をひとつに溶かしていく。
🕊️ 第45話 予告:「夜のささやき」
夜の事務所で、肩を寄せ合うふたり。
静かな時間のなかで交わされる、小さなささやき。
それは、恋人同士の“心の温度”を確かめるような夜――。
外からの雑音はなく、
蛍光灯を落としたランプの灯りだけが、
ぼんやりと二人を包み込んでいる。
「……ふぅ」
陽翔はソファに腰を下ろし、背中を預けた。
一日の疲れが、足元からじんわりと抜けていく。
その横で、蓮は無言のままコートをハンガーに掛け、
ゆっくりと隣に腰を下ろした。
(……なんか、この時間、好きだな)
昼間は仕事の顔をしていて、
夕方は少しはしゃいで、
でも夜になると――
蓮の空気がやわらかくなるのを、陽翔はちゃんと知っている。
「……疲れたな」
「うん。でも、楽しかった」
「……ガキみてぇだな」
「いいじゃん。好きな人と一緒にいる日だったし」
「……」
蓮は何も言わず、
陽翔の頭をぐいっと肩にもたれかけさせた。
その仕草が、胸の奥に甘く沈む。
*
「……ねえ、蓮さん」
「ん」
「夜の事務所ってさ、ちょっと特別な空気あるよね」
「……どういう意味だよ」
「昼間より静かで、落ち着いてて……蓮さんの声が、ちょっとだけ近く感じる」
蓮は「バカ」と小さく呟き、
ため息まじりに陽翔の髪を撫でた。
手のひらの温度が、じんわりと頭の奥に広がる。
「……なにそれ」
「特別」
「勝手に特別にすんな」
「でも、蓮さんも少し笑ってる」
「……してねぇ」
「うそ、してる」
*
事務所の窓の外には、静かな夜景が広がっていた。
ビルの灯りもまばらになり、
遠くの車の音がかすかに聞こえるだけ。
陽翔は蓮の肩に顔を預けたまま、
深く息を吐いた。
その息が、蓮の首筋をくすぐるように触れる。
「……なあ」
「ん」
「このまま、朝までここにいたら怒る?」
「怒る」
「だよねぇ」
「……でも」
「ん?」
「……少しだけなら、いい」
「……!」
陽翔の胸が、どくんと跳ねた。
蓮の“少しだけ”が、どれだけ特別な意味を持っているか――
陽翔はもうよく知っている。
「……ほんと、ずるいんだから」
「なにが」
「そういう言い方」
「……知らねぇよ」
*
ソファの背に、二人の肩がぴたりと触れ合っている。
指先が触れるたびに、
その温度がじわじわと心の奥に染み込んでいく。
「……蓮さん」
「ん」
「今日も、だいすき」
「……いきなり言うな」
「我慢できなかった」
「……」
蓮は言葉を返さず、
代わりに陽翔の手をそっと握った。
夜の静寂に包まれたその仕草は、
言葉よりもずっと深く、あたたかかった。
「……ん」
「なに」
「……なんでもない。ただ、今、すごく幸せ」
蓮は何も言わず、
そのまま陽翔の髪をやさしく撫で続けた。
夜の灯りが、二人の影をひとつに溶かしていく。
🕊️ 第45話 予告:「夜のささやき」
夜の事務所で、肩を寄せ合うふたり。
静かな時間のなかで交わされる、小さなささやき。
それは、恋人同士の“心の温度”を確かめるような夜――。
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