『偽りの令嬢を演じていたら、いつの間にか最強魔導師に溺愛されていました』

春夜夢

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第十五話:謎の第三勢力と、崩れゆく王家

──その報告は、ノアの諜報網を通じて、私のもとへ届けられた。

「“影の牙”と名乗る新たな勢力が、王都北部で活動を開始した模様です。
元貴族、魔術学派の一部、そして……転生者を名乗る者が複数含まれているとのこと」

 影の牙──
 その名は、まるで私たちのような“影に生きる者たち”の反逆を想起させた。

「……転生者が、まだいたのね」

 私は静かに呟く。

 リリィだけじゃない。あの女は、ただの駒にすぎなかった。
 本当の“物語の外側から来た者”が、ようやく動き出したのだ。

「おそらく、王族を倒し、自らの理想国家を打ち立てるつもりだろうな」

 ノアの推測に私は頷く。

「彼らの掲げる理想が、民にとって甘い幻想である限り──
この国の“不満”を吸収して膨らんでいくでしょう。放ってはおけません」

「その通り。……だが、問題はそこだけではない」

 ノアは机の上に地図を広げ、王都の防衛線を示す。
 それはまるで、内側から崩れていく城のようだった。

「王家内部での分裂が始まっている。
現国王派と、女王セレーナ派。
さらに、第一王子シリウスを擁護しようとする旧貴族派が、水面下で結託を始めた」

「……まるで王都そのものが、内部から腐っていくように」

 私は、かつての自分を思い出していた。

 何も知らず、命じられるまま“影”として笑い、頭を下げていたあの頃。
 それと同じことが、王家全体に起きている。

「ノア。……もし、この国が崩れるとして、その後に“私たち”は、何を作るべきだと思う?」

「……そうだな」

 ノアは私を見つめ、ゆっくりと手を伸ばす。

「お前が“王”になるというなら、俺はその玉座を用意しよう」

「……っ、ノア……」

「そして、お前が“王にはならない”というなら──
俺が玉座ごと、世界を焼き払ってやる」

 その言葉に、私は震えた。
 恐れではない。確信だった。

 ──この人は、どこまでも私の味方だ。

「……ふふっ。それなら、私が選ぶのはひとつです」

 私は微笑みながら、ノアの手に自分の手を重ねた。

「“この国を焼かずに済む方法を、私自身の手で築く”。
そのために、私はこの手で影の牙を潰し、王家の腐敗を断ち切る」

 影に生きた私が、ついに“未来を創る側”へと歩み出す。

 ──恋と復讐を超え、リヴィアの物語は“統治”の扉を叩く。

次回:「仮面の転生者と、二度目の婚約式」へ続く。
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