『偽りの令嬢を演じていたら、いつの間にか最強魔導師に溺愛されていました』

春夜夢

文字の大きさ
16 / 22

第十六話:仮面の転生者と、二度目の婚約式

王都西部の貴族街。
 かつて社交界の花形だったローゼンベルグ邸の跡地に、一つの黒い幕が張られていた。

 その中央に立つのは──仮面の男。

「ようやくここまで来たな、“監視者”の姫君。君の存在は、もう無視できない」

 銀の仮面の下から響く声は、まるで澄んだ氷のようだった。
 彼の名は、ルーク・メルヴィル。
 元は辺境伯家の次男、だが正体は**“日本から転生してきた”複数転生者**──いわば、リリィと同類にして、さらに上位の存在だった。

「俺たちは知っている。この世界が“ルート分岐型の物語”であることを。
聖女ルートが潰れた今、次は──“監視者ルート”の時間だ」

 

 一方その頃、王城の大広間では。

 ──鐘の音が高らかに鳴り響き、群衆が見守る中。

「ここに、我が王国魔導師長ノア・グランハルトと、監視者リヴィア・シュヴァルツの正式な婚約を宣言する!」

 女王セレーナの声が、王都中に魔法で伝達された。

 私とノアは、広間の中央に立っていた。
 純白と深紅の衣装を身にまとい、指には煌めく契約の指輪。

 ──これは、ただの恋愛ではない。
 この瞬間から、私たちは“国の中枢”を担う存在となる。

「……本当に、ここまで来たのね」

 小さく呟いた私の言葉に、ノアは微笑を浮かべた。

「まだ始まりにすぎないさ。これからだ、俺たちの国は」

 大広間には盛大な拍手と歓声が響いた。
 だがその裏で、ひとりの少年がつぶやいていた。

「リヴィア・シュヴァルツ──君が正義を名乗るのなら、俺は“自由”の名で君を否定する」

 ルークの言葉は、静かに風に乗って消えていった。

 

 婚約式の夜。
 ノアの部屋で、私は彼にそっと問いかけた。

「……私たち、本当に“王”になっていくのかしら」

「王かどうかは関係ない。お前が望む世界を、俺が力で支えるだけだ」

 その言葉が、何よりも甘く、何よりも強かった。

 ──けれど、私の胸に残る一抹の不安。

 あの仮面の男は、リリィとは違う。
 “この世界のルール”そのものを知っている、真の“異分子”。

 物語は再び、波乱の幕を開ける。
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】帳簿係の地味令嬢、商会の不正を見抜いて王宮に見出されました。

夏灯みかん
恋愛
王都の商工会議所で働く、地味な帳簿係エミリー。 真面目に記録をつけることだけが取り柄の彼女は、同僚から軽く扱われ、雑用を押しつけられる日々を送っていた。 そんなある日――エミリーは、孤児院への配給物資の記録に、わずかな“ズレ”があることに気づく。 数量は合っている。 だが、なぜか中身の重量だけが減っている。 違和感を覚えたエミリーは、自ら倉庫へ足を運び、現物を確認する。 そこで見つけたのは、帳簿では見えない“静かな不正”だった。 しかしその矢先――不正の責任を押しつけられ、職場から追い出されそうになってしまう。 それでもエミリーは諦めない。ただ一つ、自分が積み上げてきた“記録”を信じて。 「では、正式な監査をお願いいたします」 やがてその記録は、王宮の政務監査官リオンの目に留まり―― 隠されていた不正はすべて暴かれる。 そして、彼女を軽んじていた者たちは、その代償を支払うことになる。 これは、地味で目立たなかった一人の帳簿係が、 “正しく記録した”ことで不正を暴き、王宮に見出されるまでの物語。

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす

小木楓
恋愛
完結しました✨ タグ&あらすじ変更しました。 略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。 「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」 「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」 大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。 しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。 強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。 夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。 恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……? 「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」 逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。 それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。 「一生、私の腕の中で溺れていろ」 守るために壊し、愛するために縛る。 冷酷な仮面の下に隠された、 一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。 ★最後は極上のハッピーエンドです。 ※AI画像を使用しています。

余命僅かな大富豪を看取って、円満に未亡人になるはずでした

ぜんだ 夕里
恋愛
傾きかけた家を救うため、私が結んだのはあまりにも不謹慎な契約――余命いくばくもない大富豪の辺境伯様と結婚し、彼の最期を穏やかに看取ることで莫大な遺産を相続する、というものだった。 しかし、人の死を利用して富を得るなど不正義! そう考えた私が立てたのは、前代未聞の計画。 「そうだ、遺産が残らないくらい贅沢の限りを尽くしてもらえば、すべて丸く収まるじゃない!」

お互い好きにいたしましょう ~無能な夫は捨てて愛人と人生を歩みます~

今戸日予
恋愛
セレスティーヌはロジャー・グラハム侯爵と政略結婚をする事となった。 挙式当日、式場ではなく侯爵邸にいて契約書を前にしていたが、ロジャーは愛人のクロエと共にいて「君を愛することはない」と言い放った。 セレスティーヌは「分かりました。それならば、お互い好きにいたしましょう」と容認し、ロジャーの許可を得て契約書にその条項を付け足し、二人がイチャついている間に他にも条項を付け足した。 政略結婚であってもロジャーと愛し合えればと思っていたセレスティーヌは失望し、案内された部屋の粗末さから益々嫌気が差し、契約書に足した条項である「愛人可」を利用して、ロジャーの護衛の中から相手を選ぶ事にする。 そして侯爵家騎士団兵舎へ行き、ヴォルフ・エンドリヒに目を付け、一夜の相手になるように命令した。 それ以来、ヴォルフが愛人となって情を交わし続ける事となり……。 ※AIのサポート(主に名詞)有

仮面王の花嫁

松雪
恋愛
婚約者を腹違いの妹に奪われ、新しい相手も見つからず修道院に行く覚悟を決めたルチア。修道女となるため髪を切った日の夜、王城から「国王がルチアを妻に望んでいる」という書簡を持った使者がやって来た。 しかし、従兄弟であり恋仲だったニールが国王のせいで死に至った過去を持つルチアは、国王からの求婚を喜べずーー。

冷酷な王の過剰な純愛

魚谷
恋愛
ハイメイン王国の若き王、ジクムントを想いつつも、 離れた場所で生活をしている貴族の令嬢・マリア。 マリアはかつてジクムントの王子時代に仕えていたのだった。 そこへ王都から使者がやってくる。 使者はマリアに、再びジクムントの傍に仕えて欲しいと告げる。 王であるジクムントの心を癒やすことができるのはマリアしかいないのだと。 マリアは周囲からの薦めもあって、王都へ旅立つ。 ・エブリスタでも掲載中です ・18禁シーンについては「※」をつけます ・作家になろう、エブリスタで連載しております

愛の重めな黒騎士様に猛愛されて今日も幸せです~追放令嬢はあたたかな檻の中~

4月2日コミカライズ配信♡二階堂まや
恋愛
令嬢オフェリアはラティスラの第二王子ユリウスと恋仲にあったが、悪事を告発された後婚約破棄を言い渡される。 国外追放となった彼女は、監視のためリアードの王太子サルヴァドールに嫁ぐこととなる。予想に反して、結婚後の生活は幸せなものであった。 そしてある日の昼下がり、サルヴァドールに''昼寝''に誘われ、オフェリアは寝室に向かう。激しく愛された後に彼女は眠りに落ちるが、サルヴァドールは密かにオフェリアに対して、狂おしい程の想いを募らせていた。