『偽りの令嬢を演じていたら、いつの間にか最強魔導師に溺愛されていました』

春夜夢

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第十七話:転生者の宣戦布告と、夜の甘い罠

※本話にはR18描写が含まれます。ご注意ください。

 

 ──その男は、正装に身を包んだまま、宮廷舞踏会の裏で私を待っていた。

「リヴィア・シュヴァルツ。君に、ひとつだけ質問をしたい」

 仮面の転生者・ルーク・メルヴィル。
 彼は人目のない回廊で、私の行く手を遮った。

「君が正義の名の下に成そうとしている“理想国家”に、“自由”は存在するのか?」

「……自由?」

「そう。“誰かの守護のもとにある安心”は、真の自由じゃない。
君が魔導師に守られ、女王と結託し、国を統治しようとするなら──
それは“別の支配”でしかないんじゃないのか?」

 ルークの言葉は、冷たく、けれど鋭く胸に突き刺さった。

「……それが、あなたの宣戦布告?」

「いいや。これは“プロポーズ”だよ」

 私が言葉を失った瞬間、ルークが手を伸ばしてくる。

「ノア・グランハルトじゃなく、俺を選べ。
君が本当に“自由を知る王”になる気があるなら──支配ではなく解放を掲げるべきだ」

 

 ──その時。

「……下がれ」

 低く、鋭い声が割り込んだ。

 ノアだった。

 その眼差しは、氷よりも冷たく、剣よりも鋭く。
 彼は私をルークの手から引き寄せ、抱き寄せた。

「俺の婚約者に手を出すな。……お前の首は、次に近づいた時に落ちる」

 ルークは小さく笑った。

「ふふ……独占欲の塊だな。だがリヴィア──覚えておいて。
君が“選ぶべきもの”を誤ったとき、俺は必ずそれを奪いに行く」

 仮面の男は、闇へと消えていった。

 

 その夜。

 私は、ノアの寝室で静かに身体を預けていた。

「……嫉妬、したんですか?」

「当たり前だ」

 彼の唇が、私の鎖骨に触れる。

「お前が誰に目を向けたかより……あの男の視線が、俺の許せない場所に触れていた」

「どの、場所に?」

 わざと囁くように聞くと──

 次の瞬間、ノアの手が私の腰を抱え込み、ベッドに押し倒される。

「教えてやる。お前が、どこまで俺のものか……身体に刻んでやるよ」

 冷たい指先がドレスの端を引き上げ、熱を持った唇が素肌をなぞる。

「……ノア……っ」

「もう何も考えられなくなるくらい、感じろ。……俺だけを見てろ」

 

 夜は甘く、激しく、そして支配的に過ぎていく。
 独占欲と愛が絡み合う熱に包まれて──私は再び、“ノアの女”として、彼に溶かされていった。

 

 ──だがその頃。
 王都の地下で、ルーク・メルヴィルは次なる駒を動かしていた。

「リヴィア。君を俺の側に引き込むのは……何も恋だけが手段じゃない」

 仮面の奥、彼の瞳が、冷たい光を灯していた。

次回:「偽りの戴冠と、王女の亡霊」へ続く。
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