異世界で竜王の番に選ばれ、夜ごと蕩ける愛を注がれてます

春夜夢

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第55話 ――静かな雨と、静かな愛と

「今日は雨みたいだね」

「うん。……出かけられないのは残念だけど、
 雨の日は、なんか“ふたりの世界”って感じがして、好き」

そんな会話から始まった、しっとりとした一日。

ユウトはお気に入りの読書椅子に座り、
ザディクはその隣で紅茶を淹れてくれる。

「新しく買った本、読んでみる?」

「うん。……でも、その前に……ちょっとだけここにいて」

ユウトは本を胸に抱えながら、
ザディクの膝に頭を預ける。

雨の音。
お湯の立つ音。
ときどきページをめくる音。

何も起こらないのに、胸が満たされる時間だった。

夕方。

シャワーを終えたユウトの髪を、
ザディクがタオルで丁寧に拭いていた。

「……動かないで。ここ、まだ濡れてる」

「うん……なんか、ちょっとくすぐったい」

「ふふ、じっとしてて。髪、きれいだから、ちゃんと乾かしたい」

指先が髪をすくい、
額にかかる前髪を整え、
そのままそっと頬に触れる。

「……こうして、雨の音を聞きながら触れていられるのが幸せだよ」

「ザディク……もっと、触れて……?」

その夜。

ベッドに沈むと、
雨音がまるで子守唄のように響く。

ザディクがユウトの首筋に唇を落とすと、
ユウトの体がふるっと震える。

「ん……やさしい……」

「雨の日は、君を静かに愛したい。
 快感より、安心を深く注ぎたい」

服の上からそっと愛撫しながら、
ザディクは胸元に、舌で小さな円を描く。

「もっと……奥まで、ほしい……っ」

「君の奥に、雨のように、静かに注ぐよ」

ゆっくり、深く――
快感が波のように、心と身体を包んでいく。

「ザディク……音が、優しい……あなたの動きと混ざって……」

「この音も、今夜のふたりのBGMだよ」

ふたりは雨音に溶けながら、
静かに、でも確かに愛を深めた。

甘い雨が、
ふたりの夜を、優しく濡らしていった。
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