101 / 101
第101話(最終話) ――君と家族になった日から、今日まで、そしてこの先も
春。
ピンクの花びらが、風にのって舞い散る朝。
リュミエールは、制服のリボンをキュッと結びながら言う。
「なんか、ちょっとだけドキドキしてる」
「うん、私も」
「……おい、俺は泣かないぞ。今日は“祝う側”だからな」
そう言いながら、
スーツのポケットにはしっかりとハンカチが入っていた。
入学式。
立派な挨拶。まっすぐな瞳。
拍手の中で、リュミエールは何度もこちらを振り返り、
にこっと笑って手を振ってくる。
ふたりはそのたびに胸が熱くなって、
「この子を育ててこられたこと」への感謝でいっぱいになる。
式のあと。
家に帰ってから、
リュミエールがふたりに小さな封筒を渡してきた。
「これ、がっこうはじまるからって、
せんせいが“たいせつなひとにありがとうを伝えてね”って言ってたの」
中には、拙い文字でこう綴られていた。
──
ぱぱ、ままへ。
いつも わらってくれて ありがとう。
いえが あたたかくて、うれしいです。
ぱぱと ままが わたしの ままで ほんとうによかった。
うまれてきて ほんとうに よかった。
──
ユウトは手紙を胸にあてて泣き崩れ、
ザディクは隣で静かに肩を抱き寄せる。
「……もうさ、こんな言葉もらったら……
なんにもいらないよね……」
「ほんとに……君がこの子を産んでくれて、
ここまで共に歩んでくれて……俺は、ただ感謝しかないよ」
夜。
一日の余韻に包まれながら、
ふたりは寝室で灯りを落とし、
並んでベッドに腰を下ろす。
「今日は“子育てという旅”の、ひとつの節目だったね」
「うん。そして、
“またふたりに戻る時間”が、少しずつ始まるのかもしれないね」
「だったら今夜は――
また、恋人みたいに愛したい」
キスは静かで、やわらかくて、
まるで過去と未来の境目をなぞるように深い。
「……ずっと“家族”だったけど、
あなたの“恋人”であること、ちゃんと忘れたくない」
「君はずっと俺の最愛の人。
今も、これからも、ずっとずっと愛してる」
服を脱がせ合いながら、
視線も、触れ合う手も、
お互いの記憶と未来を見つめている。
挿れられた熱に、涙がにじむほどの安堵が広がっていく。
「ん……やっぱり……あなたが、いちばん好き……」
「その言葉が、俺のすべてを満たしてくれる」
その夜――
ふたりは、“夫婦”として、“恋人”として、
再び深く、ひとつに結ばれた。
「うまれてきてよかった」
その言葉を、
今度はふたり自身が、互いに贈る夜だった。
【完】
ピンクの花びらが、風にのって舞い散る朝。
リュミエールは、制服のリボンをキュッと結びながら言う。
「なんか、ちょっとだけドキドキしてる」
「うん、私も」
「……おい、俺は泣かないぞ。今日は“祝う側”だからな」
そう言いながら、
スーツのポケットにはしっかりとハンカチが入っていた。
入学式。
立派な挨拶。まっすぐな瞳。
拍手の中で、リュミエールは何度もこちらを振り返り、
にこっと笑って手を振ってくる。
ふたりはそのたびに胸が熱くなって、
「この子を育ててこられたこと」への感謝でいっぱいになる。
式のあと。
家に帰ってから、
リュミエールがふたりに小さな封筒を渡してきた。
「これ、がっこうはじまるからって、
せんせいが“たいせつなひとにありがとうを伝えてね”って言ってたの」
中には、拙い文字でこう綴られていた。
──
ぱぱ、ままへ。
いつも わらってくれて ありがとう。
いえが あたたかくて、うれしいです。
ぱぱと ままが わたしの ままで ほんとうによかった。
うまれてきて ほんとうに よかった。
──
ユウトは手紙を胸にあてて泣き崩れ、
ザディクは隣で静かに肩を抱き寄せる。
「……もうさ、こんな言葉もらったら……
なんにもいらないよね……」
「ほんとに……君がこの子を産んでくれて、
ここまで共に歩んでくれて……俺は、ただ感謝しかないよ」
夜。
一日の余韻に包まれながら、
ふたりは寝室で灯りを落とし、
並んでベッドに腰を下ろす。
「今日は“子育てという旅”の、ひとつの節目だったね」
「うん。そして、
“またふたりに戻る時間”が、少しずつ始まるのかもしれないね」
「だったら今夜は――
また、恋人みたいに愛したい」
キスは静かで、やわらかくて、
まるで過去と未来の境目をなぞるように深い。
「……ずっと“家族”だったけど、
あなたの“恋人”であること、ちゃんと忘れたくない」
「君はずっと俺の最愛の人。
今も、これからも、ずっとずっと愛してる」
服を脱がせ合いながら、
視線も、触れ合う手も、
お互いの記憶と未来を見つめている。
挿れられた熱に、涙がにじむほどの安堵が広がっていく。
「ん……やっぱり……あなたが、いちばん好き……」
「その言葉が、俺のすべてを満たしてくれる」
その夜――
ふたりは、“夫婦”として、“恋人”として、
再び深く、ひとつに結ばれた。
「うまれてきてよかった」
その言葉を、
今度はふたり自身が、互いに贈る夜だった。
【完】
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加
処刑エンドの悪役公爵、隠居したいのに溺愛されてます
ひなた翠
BL
目が覚めたら、やり込んだBLゲームの悪役公爵になっていた。
しかも手には鞭。目の前には涙を浮かべた美少年。
——このままじゃ、王太子に処刑される。
前世は冴えない社畜サラリーマン。今世は冷徹な美貌を持つ高位貴族のアルファ。
中身と外見の落差に戸惑う暇もなく、エリオットは処刑回避のための「隠居計画」を立てる。
囚われのオメガ・レオンを王太子カイルに引き渡し、爵位も領地も全部手放して、ひっそり消える——はずだった。
ところが動くほど状況は悪化していく。
レオンを自由にしようとすれば「傍にいたい」と縋りつかれ、
カイルに会えば「お前の匂いは甘い」と迫られ、
隠居を申し出れば「逃げるな」と退路を塞がれる。
しかもなぜか、子供の頃から飲んでいた「ビタミン剤」を忘れるたび、身体がおかしくなる。
周囲のアルファたちの視線が絡みつき、カイルの目の色が変わり——
自分でも知らなかった秘密が暴かれたとき、逃げ場はもう、どこにもなかった。
誰にも愛されなかった男が、異世界で「本当の自分」を知り、運命の番と出会う——
ギャップ萌え×じれったさ×匂いフェチ全開の、オメガバース転生BL。
【完】心配性は異世界で番認定された狼獣人に甘やかされる
おはぎ
BL
起きるとそこは見覚えのない場所。死んだ瞬間を思い出して呆然としている優人に、騎士らしき人たちが声を掛けてくる。何で頭に獣耳…?とポカンとしていると、その中の狼獣人のカイラが何故か優しくて、ぴったり身体をくっつけてくる。何でそんなに気遣ってくれるの?と分からない優人は大きな身体に怯えながら何とかこの別世界で生きていこうとする話。
知らない世界に来てあれこれ考えては心配してしまう優人と、優人が可愛くて仕方ないカイラが溺愛しながら支えて甘やかしていきます。
2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。
ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。
異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。
二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。
しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。
再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。
アケミツヨウの幸福な生涯【本編完結】
リラックス@ピロー
BL
ごく普通の会社員として日々を過ごしていた主人公、ヨウはその日も普通に残業で会社に残っていた。
ーーーそれが運命の分かれ道になるとも知らずに。
仕事を終え帰り際トイレに寄ると、唐突に便器から水が溢れ出した。勢い良く迫り来る水に飲み込まれた先で目を覚ますと、黒いローブの怪しげな集団に囲まれていた。 彼らは自分を"神子"だと言い、神の奇跡を起こす為とある儀式を行うようにと言ってきた。
神子を守護する神殿騎士×異世界から召喚された神子
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
ストーカーから逃げ切ったのも束の間、転移後はヤンデレ騎士団に殺されかけている現実!
由汰のらん
ファンタジー
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。
しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。
そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。
「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」
やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった。しかしハルの血が特殊だと知ったダンピールはハルを連れ帰って?
いっそ美味しい『血』(治癒)と『体液』(バフ)と『癒し』を与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!
リバになるならそう記入しておいて欲しいです。