Ωの花嫁に指名されたけど、αのアイツは俺にだけ発情するらしい

春夜夢

文字の大きさ
40 / 68

第40話:遠距離の鼓動と、透真の新たな一歩

しおりを挟む
陽翔が南方領に発ってから、三週間が経った。

 ──会えない。触れられない。声も、時差のせいでなかなか届かない。
 けれど、不思議と“孤独”とは違った。

 それは、透真が毎晩届くボイスメッセージを聞いているからかもしれない。


---

『透真、今日もお疲れ。そっちは寒いんだろ? ちゃんと寝てるか?』

 その声は、スマホ越しでも変わらず優しくて、
 まるで隣にいるように錯覚してしまう。


---

 昼休み。透真は学園内のカフェスペースで、進路担当との面談を終えたところだった。

「記録職か……いい志望動機だと思う。君のように“当事者”として
 バース制度に関わる人間の言葉は、未来に残す価値がある」

 担当者の言葉に、透真は小さく微笑んだ。

(──俺、前より“ちゃんと自分で歩けてる”気がする)


---

 その日の放課後。
 校門を出たところで、懐かしい声がした。

「……久しぶりだな、緋月」

 振り返ると、そこにいたのは──狩屋だった。


---

「なんで……ここに」

「今日は生徒会の外部連携で戻ってきただけだよ。
 ……でも、お前の顔を見るために寄ったってのも、半分本音」


---

 狩屋は、真顔で言った。

「ひとつ、確認させてくれ。
 ……お前、今でも陽翔のこと、“番”だと思ってるか?」


---

 唐突な問いに、透真は一瞬言葉を失う。
 だが、すぐに目を逸らさずに答えた。

「“今でも”じゃない。“ずっと”思ってる。……それが俺の答えだよ」


---

 狩屋は少しだけ苦笑し、スマホを取り出した。

「じゃあ、これ──見ても、“気持ちが変わらない”って言い切れるか?」

 そこには、陽翔と誰かが並んで映る写真。
 見知らぬ女性。南方の制服。──笑い合うふたり。


---

 狩屋は言う。

「向こうで、パートナー候補と組まされてるらしいよ。
 ──お前が知らないだけで、向こうの世界は進んでる」


---

 透真は写真を見つめながら、拳を握った。
 胸がざわめく。
 でも、それでも──

「俺は、“信じる”って決めたんだ。
 ……陽翔と、俺のあいだにある絆を」


---

 狩屋は小さく肩をすくめ、最後にひと言だけ残して立ち去った。

「……変わらないな、お前。
 でも──その強さが、いつかお前自身を壊す日が来なきゃいいけど」


---

 夜。
 透真は、陽翔からのメッセージを待ちながら、
 小さな録音機に向かって囁いた。

「……おかえり、って。ずっと言えるように、俺も強くなっておくから」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

オメガなのにムキムキに成長したんだが?

未知 道
BL
オメガという存在は、庇護欲が湧く容姿に成長する。 なのに俺は背が高くてムキムキに育ってしまい、周囲のアルファから『間違っても手を出したくない』と言われたこともある。 お見合いパーティーにも行ったが、あまりに容姿重視なアルファ達に「ざっけんじゃねー!! ヤルことばかりのくそアルファ共がぁああーーー!!」とキレて帰り、幼なじみの和紗に愚痴を聞いてもらう始末。 発情期が近いからと、帰りに寄った病院で判明した事実に、衝撃と怒りが込み上げて――。 ※攻めがけっこうなクズです。でも本人はそれに気が付いていないし、むしろ正当なことだと思っています。 同意なく薬を服用させる描写がありますので、不快になる方はブラウザバックをお願いします。

平凡な僕が優しい彼氏と別れる方法

あと
BL
「よし!別れよう!」 元遊び人の現爽やか風受けには激重執着男×ちょっとネガティブな鈍感天然アホの子 昔チャラかった癖に手を出してくれない攻めに憤った受けが、もしかしたら他に好きな人がいる!?と思い込み、別れようとする……?みたいな話です。 攻めの女性関係匂わせや攻めフェラがあり、苦手な人はブラウザバックで。    ……これはメンヘラなのではないか?という説もあります。 pixivでも投稿しています。 攻め:九條隼人 受け:田辺光希 友人:石川優希 ひよったら消します。 誤字脱字はサイレント修正します。 また、内容もサイレント修正する時もあります。 定期的にタグ整理します。ご了承ください。 批判・中傷コメントはお控えください。 見つけ次第削除いたします。

断られるのが確定してるのに、ずっと好きだった相手と見合いすることになったΩの話。

叶崎みお
BL
ΩらしくないΩは、Ωが苦手なハイスペックαに恋をした。初めて恋をした相手と見合いをすることになり浮かれるΩだったが、αは見合いを断りたい様子で──。 オメガバース設定の話ですが、作中ではヒートしてません。両片想いのハピエンです。 他サイト様にも投稿しております。

幼馴染みのハイスペックαから離れようとしたら、Ωに転化するほどの愛を示されたβの話。

叶崎みお
BL
平凡なβに生まれた千秋には、顔も頭も運動神経もいいハイスペックなαの幼馴染みがいる。 幼馴染みというだけでその隣にいるのがいたたまれなくなり、距離をとろうとするのだが、完璧なαとして周りから期待を集める幼馴染みαは「失敗できないから練習に付き合って」と千秋を頼ってきた。 大事な幼馴染みの願いならと了承すれば、「まずキスの練習がしたい」と言い出して──。 幼馴染みαの執着により、βから転化し後天性Ωになる話です。両片想いのハピエンです。 他サイト様にも投稿しております。

オメガ大学生、溺愛アルファ社長に囲い込まれました

こたま
BL
あっ!脇道から出てきたハイヤーが僕の自転車の前輪にぶつかり、転倒してしまった。ハイヤーの後部座席に乗っていたのは若いアルファの社長である東条秀之だった。大学生の木村千尋は病院の特別室に入院し怪我の治療を受けた。退院の時期になったらなぜか自宅ではなく社長宅でお世話になることに。溺愛アルファ×可愛いオメガのハッピーエンドBLです。読んで頂きありがとうございます。今後随時追加更新するかもしれません。

バーベキュー合コンに雑用係で呼ばれた平凡が一番人気のイケメンにお持ち帰りされる話

ゆなな
BL
Xに掲載していたものに加筆修正したものになります。

ヤンキーΩに愛の巣を用意した結果

SF
BL
アルファの高校生・雪政にはかわいいかわいい幼馴染がいる。オメガにして学校一のヤンキー・春太郎だ。雪政は猛アタックするもそっけなく対応される。  そこで雪政がひらめいたのは 「めちゃくちゃ居心地のいい巣を作れば俺のとこに居てくれるんじゃない?!」  アルファである雪政が巣作りの為に奮闘するが果たして……⁈  ちゃらんぽらん風紀委員長アルファ×パワー系ヤンキーオメガのハッピーなラブコメ! ※猫宮乾様主催 ●●バースアンソロジー寄稿作品です。

先生、今日あなたを番にします

まんまる
BL
やんちゃな公爵家長子のアレク。 家庭教師が何人も辞めていく中、新しい家庭教師が決まった。 勉強なんて嫌だと反発しようとしたが、あまりにも美しい教師を見て、思わず受け入れる返事をしてしまう。 順調に進んでいた授業も二人の関係も、ある事がきっかけで粉々に壊れてしまう。 一途な公爵家嫡男アレク×臆病な家庭教師フィオレッド 15歳差の切ない恋 『兄様、明日嫁ぎます』に出てきたアレクのお話です。 このお話だけで独立させたつもりですが、少し絡む箇所があるので、先に『兄様~』を読んでいただくとありがたいです。 ゆるい設定ですのでご理解の程よろしくお願いします。 Rシーンは※付けます

処理中です...