魔女とキスのレシピ

春夜夢

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第9話 知らなかったユノと、知っている私

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「あの人……ユノさんのこと、好きだったんだよ」

昼休み、ルカの隣に座った友人のミナがぽつりと呟いた。

中庭の向こうで、ユノが誰かと話している。
相手は隣のクラスの女子、セラ。

背が高く、快活な雰囲気。
けれど今は笑っておらず、真剣な表情でユノに何かを伝えていた。

「セラさんね、去年からユノさんのこと、ずっと気にしてたの。
でも、何も言えないまま、ただ見てたんだって」

胸の奥に、冷たいものが流れ込む感覚がした。

(知らなかった……ユノに、そんなふうに誰かを惹きつける一面があるなんて)

放課後、ルカは黙って帰り支度をしていた。
ユノが声をかけてくれるのを、いつもなら楽しみにしているはずなのに。

「ルカ? 今日、中庭行かない?」

「……ごめん。ちょっと疲れちゃったから、先に戻るね」

ユノは少し驚いた顔をしたが、無理に追ってはこなかった。

寮の部屋。
カーテンの隙間から差し込む夕陽が、静かに揺れている。

(私……嫉妬してるんだ)

ユノに他の誰かが想いを寄せていたことに。
それを知らなかった自分に。
なにより、そんなことくらいで動揺してしまう心に。

扉をノックする音がした。

「……ルカ?」

ユノだった。

「入ってもいい?」

「……うん」

ユノはそっと扉を閉め、静かにルカの隣に座った。

「セラさんのこと、聞いた?」

「……うん」

ルカは目を伏せたまま答える。

「彼女、今日、私に気持ちを伝えてきたの」

その言葉に、胸が音を立てた。

「でもね。私は、ちゃんと断ったよ。
“ごめん、好きな人がいる”って。
“その人を、すごく大事にしてる”って」

ルカの視線が、ユノの瞳と交差する。

「……嫉妬、しちゃったの」

「うん。してくれて、うれしかった」

「え……?」

「だって、それだけ私のことを“自分のもの”だって思ってくれてるってことだから」

ユノは、ルカの手をそっと握った。

「でも安心して。私はもう、どこにも行かないよ。
……ちゃんと、ルカの“恋人”だから」

その言葉に、涙が込み上げてきた。

(この人は、ちゃんと私の不安を包んでくれる)

「……ごめんね、勝手に拗ねて」

「いいよ。たまにはそういうルカも可愛い」

ふたりの笑顔が、夕暮れの中で溶け合っていった。

キスは、そっと、指先の上に落ちた。

確かめ合うように重ねたその唇に、もう迷いはなかった。
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