魔女とキスのレシピ

春夜夢

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第21話 “またね”のキスに、すべてを込めて

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朝の光がカーテン越しに差し込む。
静かな部屋、毛布の中でぬくもりが続いていた。

ルカは目を開けたまま、ユノの背中にそっと額を寄せていた。

(ああ、本当に、夢じゃなかったんだ)

昨夜、何度もキスを重ねた。
手を繋いで眠った。
何も飾らず、ただふたりでいられた。

それだけなのに、こんなにも胸が満ちている。

「……おはよう、ルカ」

寝ぼけ声のユノが、ゆっくりと振り返る。
目が合うと、照れたように笑った。

「すごくいい朝」

「うん。起きたくないくらい」

ルカはそう言って、ユノの髪にそっと触れた。

「このままずっと一緒にいられたらいいのに」

「……でも、また会えるから。
会いたいって思って、次の再会まで過ごせるから。
それって、すごく幸せなことだよね」

ユノの言葉は、どこまでも優しかった。
でもその奥には、“強さ”があった。

(私は、ユノに恋して、本当に変わったんだ)

朝食を終え、駅までの道。
スーツケースを引くユノの手を、ルカはそっと握った。

「今日、送らなくていいって言ったのに」

「言っても送るよ。……こういうのは、大事なんだから」

駅に着いて、発車のベルが鳴る。

あと数分。

ルカはユノの前に立ち、少しだけ顔を上げた。

「また、手紙……送るね」

「私も。……でもその前に」

そっと、ふたりの唇が重なる。

キスは短くて、あたたかくて。
言葉にできないすべてを詰め込んだような、静かな“またね”だった。

列車が動き出す。

窓越しに手を振るユノに、ルカは笑って応えた。
笑顔の裏で、ほんの少しだけ瞳が揺れていたとしても——

(大丈夫。また会える。だって私たちは、ちゃんと恋人なんだから)

今日からまた、日々は続いていく。
だけどそれは“ひとり”じゃない。
“ふたりで歩く道の途中”だから。
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