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Desperado ≪開店
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「イケメン調香師の甘い罠。連日行列のアロマショップ人気の秘密……いいっすね」
カウンターに頬杖をついてパラパラとページを捲る。新刊雑誌の紙かインクなのか分からないあの独特な匂いが昔から好きだった。
香りに秘められた世界を追求したいと思ったのはきっとそんな些細な事からだろう。
「えっ?爽とうとう頭おかしくなった?」
「ちょっ、違いますよ!あれっすよ。この間取材受けた雑誌!昨日発売だったんで買って来ました」
「あーあれね。ちょっと見せて」
開店作業中の手を止めた典登が雑誌を覗き込む。
「典登さんも紘巳さんも超カッコいいっす!」
「思ったより特集してくれてる。このインタビュー記事なんか話したそのまま掲載されてるよ」
「ん?俺……インタビュー受けた記憶ないんすけど」
『当たり前だ。爽は接客中だったからないに決まってるだろ』
奥の部屋から現れたのはこの店のオーナー兼店長の華川紘巳。
肩までつきそうな髪をゴムで束ねながら企んだ様な言い草で言った。
「えっ、待って下さいよ!あー!だからあの時、紘巳さんのお客さん俺に押し付けたんすね!酷いじゃないすか!」
『まぁ、見習いは見習いらしく謙虚にな』
「そんなぁ~」
「ふふふ。紘巳にしてやられたな。爽も頑張って早く一人前の調香師にならなきゃね」
紘巳と爽の会話のやり取りを聞きながら微笑んでいるのは麻生典登。
紘巳と共にお店を切り盛りしている相棒でもあり二人は恋人同士だ。
「見てて下さい。すぐ一人前になりますよ!」
お調子者の三角爽。この店で働き初めてまだ半年。今は見習いとして二人に追い付こうと必死に勉強中しながらムードメーカーとしてお店に欠かせない存在だ。
『それは楽しみだな。よし、典登も爽も準備は出来てるな』
「うん。こっちは大丈夫」
「俺もOKっす!」
『それじゃオープンするぞ』
繁華街の大通りを一本入った狭い道。
少し歩くと突き当たる密かに佇む白壁の建物。
時計の針がAM10:00を指すと"open"の文字に裏返されたプレートが揺れ、木目調の扉がゆっくりと開く。外のふんわりとした風が舞って香り鮮やかな店内へ導きだすよう。
店内から出てきた男達に客の色めく声が広がった。彼女達の手に持った雑誌が行列の原因だ。
多忙な一日を覚悟し三人は顔を合わせた。
「いらっしゃいませ。Desperadoへ」
カウンターに頬杖をついてパラパラとページを捲る。新刊雑誌の紙かインクなのか分からないあの独特な匂いが昔から好きだった。
香りに秘められた世界を追求したいと思ったのはきっとそんな些細な事からだろう。
「えっ?爽とうとう頭おかしくなった?」
「ちょっ、違いますよ!あれっすよ。この間取材受けた雑誌!昨日発売だったんで買って来ました」
「あーあれね。ちょっと見せて」
開店作業中の手を止めた典登が雑誌を覗き込む。
「典登さんも紘巳さんも超カッコいいっす!」
「思ったより特集してくれてる。このインタビュー記事なんか話したそのまま掲載されてるよ」
「ん?俺……インタビュー受けた記憶ないんすけど」
『当たり前だ。爽は接客中だったからないに決まってるだろ』
奥の部屋から現れたのはこの店のオーナー兼店長の華川紘巳。
肩までつきそうな髪をゴムで束ねながら企んだ様な言い草で言った。
「えっ、待って下さいよ!あー!だからあの時、紘巳さんのお客さん俺に押し付けたんすね!酷いじゃないすか!」
『まぁ、見習いは見習いらしく謙虚にな』
「そんなぁ~」
「ふふふ。紘巳にしてやられたな。爽も頑張って早く一人前の調香師にならなきゃね」
紘巳と爽の会話のやり取りを聞きながら微笑んでいるのは麻生典登。
紘巳と共にお店を切り盛りしている相棒でもあり二人は恋人同士だ。
「見てて下さい。すぐ一人前になりますよ!」
お調子者の三角爽。この店で働き初めてまだ半年。今は見習いとして二人に追い付こうと必死に勉強中しながらムードメーカーとしてお店に欠かせない存在だ。
『それは楽しみだな。よし、典登も爽も準備は出来てるな』
「うん。こっちは大丈夫」
「俺もOKっす!」
『それじゃオープンするぞ』
繁華街の大通りを一本入った狭い道。
少し歩くと突き当たる密かに佇む白壁の建物。
時計の針がAM10:00を指すと"open"の文字に裏返されたプレートが揺れ、木目調の扉がゆっくりと開く。外のふんわりとした風が舞って香り鮮やかな店内へ導きだすよう。
店内から出てきた男達に客の色めく声が広がった。彼女達の手に持った雑誌が行列の原因だ。
多忙な一日を覚悟し三人は顔を合わせた。
「いらっしゃいませ。Desperadoへ」
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