17 / 155
序章の色
第17話 証の色
しおりを挟むまずギルド証発行までの経緯を話さなくてはなるまい、この街のギルドは言うなれば支店のようなもので、本店はここからさらに東にある王都の中心に構えているギルドの本店のようなものがある、そこで全ての冒険者の個人情報などを管理しているわけだが仮に支店などで冒険者登録を行った場合、その冒険者の情報をその本店におくり、その人物の戦闘スキル、知能、順応性、耐性などを審査しそこで合格をもらって、初めて冒険者として認められる。
しかし問題は本店で登録を行ったら早くて三日で証明書がもらえるが、このように支店などで行った場合にはその情報をいちいち届けるために当然車などがあるわけなく、馬などを使っていくわけでここからだと往復で一週間、遠くになると一ヶ月にもなるらしい、そしてそんなこんなでようやくギルド証を手にすることができるというわけだ。
「それではギルド証の受け取りにサインをしてください」
「はい」
そう言って渡された紙の一番下に自分のサインをする、上の確認事項は地球の文字ではないが文字の上に地球の文字が浮かんで見えるため難なく読むことができた、本当に色々わからないことが多すぎる、まぁ便利なので別に気にも留めないが。
「書けました」
「それでは確認します」
例によって紙を受け取ったギルドの受付嬢はリーフェさんだ、一応書いた文字は日本語なのだが大丈夫かが心配だ。
「サインが確認できましたので、それではギルド証の方を手渡したいと思います。このままお待ちください」
「はい」
そう言って奥に入っていったリーフェさん、ふと隣を見ると猫耳のメルトさんが冒険者から受け取った袋に入った何かを重そうに運んでいる。
やっぱり困ってる女の子を助けるのは男として当然だよなっ!
「手伝いますか?」
「ふぇ?、あっ!ショウさん!」
本当のところ、ギルド証がなければ魔物の装備品などを換金できないのだが、ガルシアさんのおかげで一緒に魔物を狩ってるため装備品の金は山分けということになってる、ちなみにそのたびに夜遅くなってリーフェさんに怒られるのは恒例行事になってしまったのは頭がイタイ話だ、そしてその姿を毎回見られていたのでメルトさんには名前を覚えられたというわけだ。
「す、すみましぇん、お願いします」
「いいんですよ」
持ってみると、確かにこれは重すぎる、袋の中身はあまり想像したくないがおそらく魔物の肉の一部や臓物などが詰まってるのだろう。
「いつも大変ですね」
「えっ、あっはいぃ・・・」
「?」
どうしたんだろうか、やけに顔が赤いが熱でもあるのか?、そんなことを考えるうちに秤の前に来て袋をその上に置く。
「それでは僕はここらで」
「あっ、あの!」
「?なんですか」
おいおい、本当に大丈夫かこの人、獣人族のことはよくはわからんけど・・・、体調が悪いわけでは・・・ないな、もう顔から火が出るくらい真っ赤だぞ。
「あ、ありがとう・・・」
「いいえ、もっと頼ってもいいんですよ」
そう言ってまた元の座席へ戻る、そのとき少し後ろを見たが彼女はなんか魂抜けた顔をしていた。
「なんだろう・・・まさかなぁ」
「スミマセンお待たせしました」
そう言ってやってきたリーフェさんは手にトレーを持ってやってきた
「こちらがギルド証になります」
「おぉおっ!」
これが夢にまで見たギルド証か!、見た目普通のカードと変わらない、変わってると知れば材質が紙じゃなくなんかの皮を使ってるとこか、ギルドのマークである七色でできた七角形の星が中心にありその上に自分の個人情報が書かれている、内容を簡単に書くと。
NAME:IMAISIKI SYOU
AGE : 19
HAIR:BLACK
SEX :MAN
RANK:C
WEAPON:SWORD
ATTRIBUTE:COLORLESS
ざっとこのような感じで、他に規定内容やこのカードを無くした場合のことなどが書かれているのだが、少し引っかかる部分がある。
「あのぉ、すみません」
「はい、なんですか?」
「冒険者のランクってどこからがスタートなんですか?」
そう気になっているのはそこだ、新人の自分がどうしていきなりCというランクなのかが気になる。
「本来ならば新人冒険者はEランクからのスタートとなっているのですが、ショウさんの場合、ギルド長公認の特待冒険者となりますのでCランクからのスタートということになります」
「・・・」
あんのクソジジィ!俺はコツコツやってくのが好きなの!いきなり特待とかハードル高すぎだろ!しかも何なんだよギルド長とか言って、どこからそんな権力を持ち出せるんだよ!
「これでも、あのガルシアさんが頑張って推薦文章とか書いてくれたんですよ、よほど気に入られたんですねぇ」
「・・・はぁ」
あんまり男に、しかもおじさんに気に入られて嬉しいと思う10代はなかなかいるものではないのだろう、当然俺は例に漏れることなくだ。
しかし一回あのガルシアさんの出で立ちを見れば、確かに彼に憧れて冒険者になったという人間がいては不思議ではないと思う、その裏腹、実は結構ずさんな人間だったりするものだから人とはなかなかわからない。
「あっ、そうです、ひとつ言い忘れていることがありました」
「なんでしょうか?」
すると彼女はテーブルに置いてある俺のギルド証のATTRIBUTEの欄を指差して真剣な顔つきで話し始めた
「このCOLORLESSという表示なんですが、ギルド職員以外にあまり公表はしないでください」
「何故です?」
COLORLESSすなわち無色という意味なのだがこの世界では珍しいものなのか?、ゲームやラノベなどの世界ではかなりチートな能力だったりや忌み嫌われる存在だがこの世界ではどうなのだろうか。
「あなたがCOLORLESSであるということはギルドの皆さんは承知なのですが、もしこれが『啓示を受けし者の会』にバレてしまったら実験材料にされてしまいますよ」
「・・・はい?」
なんだその『啓示を受けし者の会』って、聞くからにかなり胡散臭そうだぁ、この壺を買えば幸せになれますよ的な胡散臭さを感じる。
「その・・・なんですか、その啓示を受けし者の会って?」
「それはその・・・え~っと・・・帰ってから話をします!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ムグッ!ムグッ!フェイフィフォフフェフィフォフォファフィフェフファァ?」
「また例によってですが、食べ終わってから喋ってもらえますか?」
もはやこのやり取りはこの一週間で何回行われたのだろうか、少なからず七回は行われていることになるか。
今日のメニューはギルド証を受け取った後の依頼をこなした、簡単に言えばバイト料だが、近くの店で食材を買い込んだがかなりの量を買うことができた。
それらを使って簡単な野菜とあまり種類のわからないなんかの肉を細くし、まとめて焼いた俗に言うハンバーグを作ってみた、使っている野菜が種類もわからず使ってしまったのでちょっとカラフルで面白い、ソースには残った野菜を細くし肉汁と絡めてそばにあった果実酒を軽く入れて作ったものだ、若干酸味は強く、地球のファミレスなんかには到底及ばないが彼女が喜んでくれているので良しとしよう。
「ふぅ~、『啓示を受けし者の会』というのはですね、簡単に言うと国の認可にある研究組織なんです」
「それは一体どんな研究なんですか?」
「それはですねぇ・・・」
簡単に要約すると、この世界の成り立ちや魔力、魔術の発生、そこからさらには神の研究までしているという、言うなれば考古学者の集まりがあって研究や討論をしてる組織というのが『啓示を受けし者の会』。
「・・・です」
「う~ん、それが僕とどう関係しているんですか?」
「実はですね、ショウさんの持っている魔力の色ってかなり珍しいんですよ」
「珍しい?」
「ええ」
また簡単に要約するとだこの世界ではまず全ての人に平等に魔力とそれを扱うための魔術が与えられている、しかしごく稀に、それこそ数千年に一人の割合で魔力は持つものの魔術が使えないという人物が現れ始めた、そして決まってその人物はこの世界に大きな出来事をもたらすとされている、そこで魔術や世界の成り立ちについて研究を行う啓示を受けし者の会が躍起になって探すというわけだ。
「ちなみになんですけど、その無色の魔力を持つ人物を拘束、もしくは捕獲した人間には懸賞金が出るそうですよ」
「ふ~ん、でもなんで俺が無色と知って通報しないんですか?お金がもらえるのに」
「もともとギルドは国とは独立した機関です、それにショウさんは推薦された冒険者なのでギルドとしても失うには惜しい人なんです」
それに、と付け加えて
「私としてもショウさんがいなくなってしまうのは困りますからね」
そう言って差し出された皿には、もう一枚焼きたてのハンバーグを載せようと思う。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる