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第1章 赤の色
第28話 嵐までのカウントダウンの色
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出発前日、俺はリーフェさんと装備品についての相談と同時に買い出しに出かけている。時間はちょうどお昼で多くの人で街が賑わっている、とは言っても田舎みたいな場所だが。
「そういえばリーフェさん」
「はい、なんでしょう?」
「ギルドは今日いいんですか?メルトさん一人になっちゃいますよ?」
「いいんですよ。今日はあんまり忙しくない日ですし、それに田舎ですから」
「ならいいんですが・・・一個人の冒険者にここまでしてもらって、ちょっと申し訳ない感が」
以前説明したと思うが、俺はかなりリーフェさんに手をかけてもらっている。それが原因で周りの冒険者にいじられるわけだが。しかしそう言うリーフェさんはやんわりと微笑んで。
「だとしたら、一ギルド受付嬢に美味しいご飯を作ってもらって、こっちが申し訳ありませんよ」
「でも、それはリーフェさんの・・・
家に居候しているからで」と言いかけてやめた、せっかく好意に思ってくれているんだから別にいいかと思ってしまった。
「どうしました?」
「いえ、なんでもないですよ。それにしても今日はどこまでいくんですか?」
「今日は、これから世界へと羽ばたく冒険者にぴったりの防具や装備を揃えているお店に行くんですよ」
・・・えぇ、知ってますとも。
「そのお店の名前はなんていうんですか?」
「・・・『パルウス工房』という名前のお店ですっ」
・・・ガルシアさんっ!やりましたよっ俺っ!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「そういえば、さっき計らうって何のことだ」
「言葉のままですよ、ガルシアさんが告白しやすいように僕が舞台を用意してあげるんです」
「なん、だと」
ガルシアさんのグラスを持つ手がプルプルと震えヒビを入れさせる、奥でグラスを磨いていた親父さんがそれ弁償しろよという目で見てくる。そして顔からリアルに火を出しそうな勢いで真っ赤になっている、これは決して酒の酔いなどではない。
「こ、こ、告白って・・・何言えばいいんだよ・・・」
「そうですね・・・」
はて困ったものだ、俺自身自慢ではないが女子に告白をしたことはない、かといって男にするはずもないんだが。好きになった女子はいるがとてもそんな勇気がなく、友達に冷やかされて終わっただけだったような気がする。
「とりあえず文章にしてみてはどうでしょうか?それで変だったら僕が直しますよ」
「そ、そうだな。親父さんっ、紙とペンを持ってきてくれっ!」
親父さんが持ってきてもらった紙とペンに文字を書き込んで行く隣のガルシアさん。すでに店からは人がほとんど残っていない酒場にそのペンを走らせる音が響いている、その音をBGMにグラスの酒を喉に流し込むが、だんだん俺も酒の飲み方に慣れてきたかな?
そしてだがよくよく考えてみれば、この世界にガラスを作る技術があるということに気がついた。なんの飾り気もないグラスだがそれでも透明度は地球のものと大して変わらない、だが街を見ている限りここが田舎のせいでもあるのか窓ガラスの普及率は低い、あるとすればギルドの窓とランクアップ申請のために行った市役所というか街の戸籍管理みたいな建物の中くらいだったか。
「ショウっ、書けたぞっ!」
「はい、見せてください・・・どれどれ・・・」
人のラブレターというか、告白の文章を読むのはなかなかシュールな出来事だがそれでもこのくらいのことをしてあげなきゃ・・・な?
「あの~、ガルシアさん?」
「んあ、なんだ?」
「これ・・・なんでこんな堅っ苦しいんです?」
「いやまぁ・・・そのぉ・・・俺、魔術文字しか書けないんだわ」
以下が、実際にガルシアさんの書いた人生おそらく初めて書いたであろう、ラブレターである。
『親しき我が天使、リーフェ=アルステイン
そなたの翡翠色を帯びる瞳、我思うこの瞳我がものにすればと
そなたの翡翠色を帯びる髪、我思うこの髪我がものにすればと
そなたの翡翠色を帯びる心、我思うこの心我がものにすればと
・
・
・
』
とまぁ、続くわけだがここから先は彼の名誉のために割愛させていただこう、っていうかガルシアさん字書けなかったんだ。たしかに魔術文字も問題なく読めるがなんだろう、この厨二病感満載の文章は・・・
「そういうおまえだって書けないだろ」
「僕はガルシアさんと違って冒険者の仕事が終わった後にリーフェさんに文字の勉強を教えてもらってますから、少なからずガルシアさんより書けますよ」
「・・・ック!う、うらやましいっ・・・!」
というかこの人、俺の推薦状どうやって書いたんだろう。まさかだろうがこの厨二病感満載の文章で送ったんじゃあるまいな。
「・・・やっぱだめだよな・・・」
「えぇ、当然ですね。ですが一つ方法はあります」
「ほ、本当かっ!教えてくれるんだったらこの店のツケ全部ショウにやるよっ」
「いるかっ!」
教えるというほどでもないが、まぁ・・・作戦だな。
「いいですか、僕の話をよく聞いてください」
「おうおう」
「まずですが・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ここが『パルウス工房』ですっ」
「おぉ・・・以外と小さいんですね」
見た目は一軒家くらいだろうか、とくに何かを記載する看板はなく何も知らない人が通ったら少し洒落た家と思うだろう。そしてあたり一帯はリーフェさんの家同様草原が広がっていて長閑なところだ。
「人があまり来る場所でもありませんし、それに作ってる人が人ですから」
「?」
リーフェさんが先に工房の扉を叩く、そういえば扉になんでドアノブが二つ付いてるんだ?・・・あっ、もしかして・・・
「はいはい・・・って、リーフェちゃんかよっ。久しぶりだなっ!元気にしてたかっ?」
「えぇ、おかげさまで。パルウスさんもお元気で何よりです」
出てきたのは、ファンタジーの世界ではおなじみと言っていいだろうか。身長は俺の半部よりちょっと小さく、しかしその顔は大人でたくましい腕と立派な髭を生やしたドワーフだった。
「へへっ、美人に言われて悪い気はしねぇや。ん?その後ろのガキンチョはだれでぇ?」
「紹介しますね、冒険者のイマイシキ ショウさんです」
「どうも、イマイシキ ショウです」
パルウスと呼ばれたドワーフに対して、一礼をする。これから何をしてもらうのかはわからないが世話になることには間違いない。
「ほぉ~、おまえがか・・・にしてもヒョロヒョロしてんなぁ、そんなんで俺の作る防具とか扱えるのか?」
「こう見えてもガルシアさんに見込まれた冒険者です、腕はたしかですよ」
「う~ん、まぁリーフェちゃんが言うなら間違いないか?」
なんだこのドワーフ、リーフェさんに対して凄く甘くないか?
「まぁ、とにかく入れよ。リーフェちゃんと・・・まぁ、坊主でいいか」
おいっ。
家の中に入るとそこは確かに工房と呼ぶにふさわしい器具と設備が見える、ハンマーだったりとか・・・そして。
「あれ、ガルシアさん。なんでここにいらっしゃるんです?」
「ン?リーフェサン、コレハキグウデスネ」
「どうしたんです?」
「イヤ、イツモノヤリノテンケンニキタダケデスヨ、ハ、ハ、ハ」
「はぁ・・・」
おいおい、いきなり棒読みだぞ。
さて今回の作戦を説明しよう!昨日バーで話をしたのは、まず俺が明日はずの工房にまるで偶然のようにガルシアさんが現れ、俺が防具や装備品を選んでいる間にリーフェさんを連れ出して二人きりになって、そして勢いで告るという作戦なのだが・・・果たしてうまくいくのか?これ。
「おい坊主、おまえ何しに来たんだ?俺はさっさと仕事をして美人と茶を飲みたい主義なんだが?」
それを主義とは言わない。絶対に。
「はい、僕そろそろここを離れるのでその前に装備を整えておきたいなと」
「チッ!ほら、さっさとそこに立てよ、採寸するから」
・・・この人本当に職人なんだよな?見た所一人しかいないし、この人がここの工房の職人なんだよな?
「坊主、おまえ何使って戦うんだ?」
「えぇ~っと、この剣です」
「・・・ほぉ、なかなか立派なもん持ってるじゃねぇか。新人にしちゃ良すぎる武器だな」
すると、パルウスは工房の隅に立てかけてあった一振りの剣をこっちに投げ渡す、なかなかずっしりとしてパレットソードよりかかなり重い、そして鞘から剣を抜くと汚れひとつない綺麗な刀身が露わになる。
「振ってみろ」
「はい?」
「振ってみろつってんだよっ!そうしなきゃ防具が作れねぇだろうがっ」
「あっ、はいっ!」
狭い店で素振りをするのにはなかなか勇気がいるが、しかし、王都騎士団に教えてもらった剣の振り方をしっかりイメージしながら。そして、店の中に素振りの音が響く。
「・・・ふんっ、なかなかいい音出すじゃねぇか」
「あ、ありがとうございます」
「・・・さてと、テメェ似合う防具はっ」
そう言ってガサゴソと、パルウスがいろんな防具をかたどった型紙をそれぞれ取り出してゆき俺の体に当ててゆく、そしてある程度決まったのか型紙を並べてゆく。
「とりあえずこんなところだろ。胸当て、上腕当て、前腕当て、手甲、腰当て。テメェは剣振るのが疾ぇーから関節部分の装備は削る、あと材質は鉄じゃなくて軽めの素材を使ってやる・・・そうだな、ドラゴンの翼でいいな、ちょっと高くつくがどうせ金は持ってるんだろ。なかったら出世払いで払え」
パルウスは一気に言いたいことを言ったあと、部屋の奥へと消えていった。さてと、ここからが俺の出番だ。
「あの~、リーフェさん。僕どうせここで待ってなくてはいけませんし、先に戻ってもらっても大丈夫ですよ」
「えっ、ショウさん」
「おそらく時間がものすごくかかりますし、完成したらギルドに帰ってきますから」
「そう、ですかわかりました、帰り道に気をつけてくださいね」
そう言ってリーフェさんが扉に向かおうとした時である。
「リ、リーフェサン」
リーフェさんの隣でシベリアの市場の魚みたいカチンコチンに立っていたガルシアさんが声をかける。
「オレモイッショニイキマスヨ」
「あっ、そうなんですか。では一緒に戻りますか」
そう言って微笑を浮かべながら振り返るその姿はさながら高出力の太陽光戦のように眩しい、これでガルシアさんも溶けるだろう。
「でも、槍そのままでいいんですか?」
「大丈夫ですよ、明日取りに行きますから」
うんしっかり溶けてるな。
そして二人が、外に出たのを見送って俺は装備が完成するのを一人部屋で待った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
さて、冷静に考えるんだロード=ガルシアッ!なんて言葉をかければいいっ!なんてっ!
「リ、リーフェさん。最近仕事どうですか?」
「はい?何言ってるんですかガルシアさん、いつも一緒に働いてるようなものじゃないですか」
そ、そうだったぁ。よくよく考えれば同僚じゃないかっ!
「そうですねぇ・・・ギルド長がもうちょっとまじめで早く字を覚えてくれたらいいんですけど」
「いや・・・それは勘弁してくださいよ・・・」
実際ショウの推薦文は魔術文字で書こうとしたところをリーフェさんに止められて、一緒に勉強しながら書いたんだっけか、そのせいで徹夜させてしまって・・・
「すまない、私が馬鹿なばっかりに」
「ふふっ、いいんですよ。それも受付嬢の役目というかギルド長を支えるのも仕事ですから」
改めて思う、自分はいい人に巡り会えたなと。
「そういえばガルシアさん覚えてます?」
「ん?何がですか?」
「あなたの槍を初めて作ったのがあそこの工房だって」
「あぁ・・・そんなこともありましたね」
「あの時はまだこんなにちっちゃかったのに」
そう言って、指と指の間でその小ささを表現するがそんなに小さく見えたのか俺は。忘れもしない、親を魔物に食い殺されて孤独になった時、家に泊めさせてくれて世話してくれたのがリーフェさんだった。これはショウに話してはいないがあいつを俺と同じ境遇にするように仕向けたのは俺のエゴなのかもしれないな。そしてこの道をリーフェさんと通って冒険者になるための装備を揃えたっけ。
「あれから何年たちましたっけ?」
「・・・数え切れないくらいすぎました」
「そう、ですね」
何十年たっても隣にいる人は俺がガキの頃に比べてちっとも変わらない、ずっと綺麗だ。
「貴方は何一つ変わりませんね」
「・・・?なにがですか?」
「いや、その・・・姿が」
「・・・これでも変わった方なんですよ?私」
はて、相変わらず綺麗だとは思ったのだが。
「・・・ガルシアさんを怒ってるせいで目の当たりにシワができました」
「・・・すみません」
ちょっと頰を膨らまして怒るリーフェさん、そんなことはない、どんな姿でも貴方は綺麗だ。
「リーフェさん・・・」
「はい、なんでしょうか?」
「あの・・・いや・・・」
なんて言えば、この叶わない恋心を何て言葉にしたらいいんだ?そんなことを思っていた時だ隣を歩くリーフェさんの足が止まる。
「・・・どうかされました?」
「・・・向こうの方で魔力が・・・・人じゃない・・・これは魔物?」
「・・・っ!危ないっ!」
突如膨れ上がった殺気、そして飛んできたなにか、それは後方へと飛び着弾すると爆発音を響かせる。
「あれは『フレイムランス』っ、こんなの魔物に出来る芸当ではっ」
「いや、1匹いる。あいつだ」
向こうから近づいてくる、何かの影それは人の姿をしていて、しかし背中に背負った翼が人間ではないことを告げている。
「はずしたカ、さずがだナ」
「・・・久しぶりだなぁ、俺の親父とお袋を食って得た魔法の力どうだ?」
「悪くなイ」
「クソが」
今から約40年前、俺の家族を奪った張本人が目の前を飛んでいた。
「そういえばリーフェさん」
「はい、なんでしょう?」
「ギルドは今日いいんですか?メルトさん一人になっちゃいますよ?」
「いいんですよ。今日はあんまり忙しくない日ですし、それに田舎ですから」
「ならいいんですが・・・一個人の冒険者にここまでしてもらって、ちょっと申し訳ない感が」
以前説明したと思うが、俺はかなりリーフェさんに手をかけてもらっている。それが原因で周りの冒険者にいじられるわけだが。しかしそう言うリーフェさんはやんわりと微笑んで。
「だとしたら、一ギルド受付嬢に美味しいご飯を作ってもらって、こっちが申し訳ありませんよ」
「でも、それはリーフェさんの・・・
家に居候しているからで」と言いかけてやめた、せっかく好意に思ってくれているんだから別にいいかと思ってしまった。
「どうしました?」
「いえ、なんでもないですよ。それにしても今日はどこまでいくんですか?」
「今日は、これから世界へと羽ばたく冒険者にぴったりの防具や装備を揃えているお店に行くんですよ」
・・・えぇ、知ってますとも。
「そのお店の名前はなんていうんですか?」
「・・・『パルウス工房』という名前のお店ですっ」
・・・ガルシアさんっ!やりましたよっ俺っ!
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「そういえば、さっき計らうって何のことだ」
「言葉のままですよ、ガルシアさんが告白しやすいように僕が舞台を用意してあげるんです」
「なん、だと」
ガルシアさんのグラスを持つ手がプルプルと震えヒビを入れさせる、奥でグラスを磨いていた親父さんがそれ弁償しろよという目で見てくる。そして顔からリアルに火を出しそうな勢いで真っ赤になっている、これは決して酒の酔いなどではない。
「こ、こ、告白って・・・何言えばいいんだよ・・・」
「そうですね・・・」
はて困ったものだ、俺自身自慢ではないが女子に告白をしたことはない、かといって男にするはずもないんだが。好きになった女子はいるがとてもそんな勇気がなく、友達に冷やかされて終わっただけだったような気がする。
「とりあえず文章にしてみてはどうでしょうか?それで変だったら僕が直しますよ」
「そ、そうだな。親父さんっ、紙とペンを持ってきてくれっ!」
親父さんが持ってきてもらった紙とペンに文字を書き込んで行く隣のガルシアさん。すでに店からは人がほとんど残っていない酒場にそのペンを走らせる音が響いている、その音をBGMにグラスの酒を喉に流し込むが、だんだん俺も酒の飲み方に慣れてきたかな?
そしてだがよくよく考えてみれば、この世界にガラスを作る技術があるということに気がついた。なんの飾り気もないグラスだがそれでも透明度は地球のものと大して変わらない、だが街を見ている限りここが田舎のせいでもあるのか窓ガラスの普及率は低い、あるとすればギルドの窓とランクアップ申請のために行った市役所というか街の戸籍管理みたいな建物の中くらいだったか。
「ショウっ、書けたぞっ!」
「はい、見せてください・・・どれどれ・・・」
人のラブレターというか、告白の文章を読むのはなかなかシュールな出来事だがそれでもこのくらいのことをしてあげなきゃ・・・な?
「あの~、ガルシアさん?」
「んあ、なんだ?」
「これ・・・なんでこんな堅っ苦しいんです?」
「いやまぁ・・・そのぉ・・・俺、魔術文字しか書けないんだわ」
以下が、実際にガルシアさんの書いた人生おそらく初めて書いたであろう、ラブレターである。
『親しき我が天使、リーフェ=アルステイン
そなたの翡翠色を帯びる瞳、我思うこの瞳我がものにすればと
そなたの翡翠色を帯びる髪、我思うこの髪我がものにすればと
そなたの翡翠色を帯びる心、我思うこの心我がものにすればと
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』
とまぁ、続くわけだがここから先は彼の名誉のために割愛させていただこう、っていうかガルシアさん字書けなかったんだ。たしかに魔術文字も問題なく読めるがなんだろう、この厨二病感満載の文章は・・・
「そういうおまえだって書けないだろ」
「僕はガルシアさんと違って冒険者の仕事が終わった後にリーフェさんに文字の勉強を教えてもらってますから、少なからずガルシアさんより書けますよ」
「・・・ック!う、うらやましいっ・・・!」
というかこの人、俺の推薦状どうやって書いたんだろう。まさかだろうがこの厨二病感満載の文章で送ったんじゃあるまいな。
「・・・やっぱだめだよな・・・」
「えぇ、当然ですね。ですが一つ方法はあります」
「ほ、本当かっ!教えてくれるんだったらこの店のツケ全部ショウにやるよっ」
「いるかっ!」
教えるというほどでもないが、まぁ・・・作戦だな。
「いいですか、僕の話をよく聞いてください」
「おうおう」
「まずですが・・・」
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「ここが『パルウス工房』ですっ」
「おぉ・・・以外と小さいんですね」
見た目は一軒家くらいだろうか、とくに何かを記載する看板はなく何も知らない人が通ったら少し洒落た家と思うだろう。そしてあたり一帯はリーフェさんの家同様草原が広がっていて長閑なところだ。
「人があまり来る場所でもありませんし、それに作ってる人が人ですから」
「?」
リーフェさんが先に工房の扉を叩く、そういえば扉になんでドアノブが二つ付いてるんだ?・・・あっ、もしかして・・・
「はいはい・・・って、リーフェちゃんかよっ。久しぶりだなっ!元気にしてたかっ?」
「えぇ、おかげさまで。パルウスさんもお元気で何よりです」
出てきたのは、ファンタジーの世界ではおなじみと言っていいだろうか。身長は俺の半部よりちょっと小さく、しかしその顔は大人でたくましい腕と立派な髭を生やしたドワーフだった。
「へへっ、美人に言われて悪い気はしねぇや。ん?その後ろのガキンチョはだれでぇ?」
「紹介しますね、冒険者のイマイシキ ショウさんです」
「どうも、イマイシキ ショウです」
パルウスと呼ばれたドワーフに対して、一礼をする。これから何をしてもらうのかはわからないが世話になることには間違いない。
「ほぉ~、おまえがか・・・にしてもヒョロヒョロしてんなぁ、そんなんで俺の作る防具とか扱えるのか?」
「こう見えてもガルシアさんに見込まれた冒険者です、腕はたしかですよ」
「う~ん、まぁリーフェちゃんが言うなら間違いないか?」
なんだこのドワーフ、リーフェさんに対して凄く甘くないか?
「まぁ、とにかく入れよ。リーフェちゃんと・・・まぁ、坊主でいいか」
おいっ。
家の中に入るとそこは確かに工房と呼ぶにふさわしい器具と設備が見える、ハンマーだったりとか・・・そして。
「あれ、ガルシアさん。なんでここにいらっしゃるんです?」
「ン?リーフェサン、コレハキグウデスネ」
「どうしたんです?」
「イヤ、イツモノヤリノテンケンニキタダケデスヨ、ハ、ハ、ハ」
「はぁ・・・」
おいおい、いきなり棒読みだぞ。
さて今回の作戦を説明しよう!昨日バーで話をしたのは、まず俺が明日はずの工房にまるで偶然のようにガルシアさんが現れ、俺が防具や装備品を選んでいる間にリーフェさんを連れ出して二人きりになって、そして勢いで告るという作戦なのだが・・・果たしてうまくいくのか?これ。
「おい坊主、おまえ何しに来たんだ?俺はさっさと仕事をして美人と茶を飲みたい主義なんだが?」
それを主義とは言わない。絶対に。
「はい、僕そろそろここを離れるのでその前に装備を整えておきたいなと」
「チッ!ほら、さっさとそこに立てよ、採寸するから」
・・・この人本当に職人なんだよな?見た所一人しかいないし、この人がここの工房の職人なんだよな?
「坊主、おまえ何使って戦うんだ?」
「えぇ~っと、この剣です」
「・・・ほぉ、なかなか立派なもん持ってるじゃねぇか。新人にしちゃ良すぎる武器だな」
すると、パルウスは工房の隅に立てかけてあった一振りの剣をこっちに投げ渡す、なかなかずっしりとしてパレットソードよりかかなり重い、そして鞘から剣を抜くと汚れひとつない綺麗な刀身が露わになる。
「振ってみろ」
「はい?」
「振ってみろつってんだよっ!そうしなきゃ防具が作れねぇだろうがっ」
「あっ、はいっ!」
狭い店で素振りをするのにはなかなか勇気がいるが、しかし、王都騎士団に教えてもらった剣の振り方をしっかりイメージしながら。そして、店の中に素振りの音が響く。
「・・・ふんっ、なかなかいい音出すじゃねぇか」
「あ、ありがとうございます」
「・・・さてと、テメェ似合う防具はっ」
そう言ってガサゴソと、パルウスがいろんな防具をかたどった型紙をそれぞれ取り出してゆき俺の体に当ててゆく、そしてある程度決まったのか型紙を並べてゆく。
「とりあえずこんなところだろ。胸当て、上腕当て、前腕当て、手甲、腰当て。テメェは剣振るのが疾ぇーから関節部分の装備は削る、あと材質は鉄じゃなくて軽めの素材を使ってやる・・・そうだな、ドラゴンの翼でいいな、ちょっと高くつくがどうせ金は持ってるんだろ。なかったら出世払いで払え」
パルウスは一気に言いたいことを言ったあと、部屋の奥へと消えていった。さてと、ここからが俺の出番だ。
「あの~、リーフェさん。僕どうせここで待ってなくてはいけませんし、先に戻ってもらっても大丈夫ですよ」
「えっ、ショウさん」
「おそらく時間がものすごくかかりますし、完成したらギルドに帰ってきますから」
「そう、ですかわかりました、帰り道に気をつけてくださいね」
そう言ってリーフェさんが扉に向かおうとした時である。
「リ、リーフェサン」
リーフェさんの隣でシベリアの市場の魚みたいカチンコチンに立っていたガルシアさんが声をかける。
「オレモイッショニイキマスヨ」
「あっ、そうなんですか。では一緒に戻りますか」
そう言って微笑を浮かべながら振り返るその姿はさながら高出力の太陽光戦のように眩しい、これでガルシアさんも溶けるだろう。
「でも、槍そのままでいいんですか?」
「大丈夫ですよ、明日取りに行きますから」
うんしっかり溶けてるな。
そして二人が、外に出たのを見送って俺は装備が完成するのを一人部屋で待った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
さて、冷静に考えるんだロード=ガルシアッ!なんて言葉をかければいいっ!なんてっ!
「リ、リーフェさん。最近仕事どうですか?」
「はい?何言ってるんですかガルシアさん、いつも一緒に働いてるようなものじゃないですか」
そ、そうだったぁ。よくよく考えれば同僚じゃないかっ!
「そうですねぇ・・・ギルド長がもうちょっとまじめで早く字を覚えてくれたらいいんですけど」
「いや・・・それは勘弁してくださいよ・・・」
実際ショウの推薦文は魔術文字で書こうとしたところをリーフェさんに止められて、一緒に勉強しながら書いたんだっけか、そのせいで徹夜させてしまって・・・
「すまない、私が馬鹿なばっかりに」
「ふふっ、いいんですよ。それも受付嬢の役目というかギルド長を支えるのも仕事ですから」
改めて思う、自分はいい人に巡り会えたなと。
「そういえばガルシアさん覚えてます?」
「ん?何がですか?」
「あなたの槍を初めて作ったのがあそこの工房だって」
「あぁ・・・そんなこともありましたね」
「あの時はまだこんなにちっちゃかったのに」
そう言って、指と指の間でその小ささを表現するがそんなに小さく見えたのか俺は。忘れもしない、親を魔物に食い殺されて孤独になった時、家に泊めさせてくれて世話してくれたのがリーフェさんだった。これはショウに話してはいないがあいつを俺と同じ境遇にするように仕向けたのは俺のエゴなのかもしれないな。そしてこの道をリーフェさんと通って冒険者になるための装備を揃えたっけ。
「あれから何年たちましたっけ?」
「・・・数え切れないくらいすぎました」
「そう、ですね」
何十年たっても隣にいる人は俺がガキの頃に比べてちっとも変わらない、ずっと綺麗だ。
「貴方は何一つ変わりませんね」
「・・・?なにがですか?」
「いや、その・・・姿が」
「・・・これでも変わった方なんですよ?私」
はて、相変わらず綺麗だとは思ったのだが。
「・・・ガルシアさんを怒ってるせいで目の当たりにシワができました」
「・・・すみません」
ちょっと頰を膨らまして怒るリーフェさん、そんなことはない、どんな姿でも貴方は綺麗だ。
「リーフェさん・・・」
「はい、なんでしょうか?」
「あの・・・いや・・・」
なんて言えば、この叶わない恋心を何て言葉にしたらいいんだ?そんなことを思っていた時だ隣を歩くリーフェさんの足が止まる。
「・・・どうかされました?」
「・・・向こうの方で魔力が・・・・人じゃない・・・これは魔物?」
「・・・っ!危ないっ!」
突如膨れ上がった殺気、そして飛んできたなにか、それは後方へと飛び着弾すると爆発音を響かせる。
「あれは『フレイムランス』っ、こんなの魔物に出来る芸当ではっ」
「いや、1匹いる。あいつだ」
向こうから近づいてくる、何かの影それは人の姿をしていて、しかし背中に背負った翼が人間ではないことを告げている。
「はずしたカ、さずがだナ」
「・・・久しぶりだなぁ、俺の親父とお袋を食って得た魔法の力どうだ?」
「悪くなイ」
「クソが」
今から約40年前、俺の家族を奪った張本人が目の前を飛んでいた。
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