魔王様を拾ったのは

恵葉

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今さらだけど、君の名は?そしてこれから 2

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取り敢えず、森の中のその少し広い草原にロンが結界を張り、そこを拠点に数日間は滞在することにしました。
テント…も何も無いですが、何かそれに代わるものが欲しいなぁ。
結界があるから安全だけど…でもね…。
まあ、今後を決めるまでの数日という事で、諦めました。

森を歩いていて、ススキににた植物の群生と、どうみても竹に見える林を見つけ、更に使えそうな蔦を見つけたので、せっせと伐採して運びました。
竹らしき木を使って、外枠を作り、ススキに似た植物を少しずつ束ね、どちらも蔦を叩いてひも状にしたもので縛って、ススキは屋根に使い、簡易な小屋?を作りました。
「まるで私が子供の頃に友人たちと作った秘密基地だわ…。」
ボソッとつぶやきました。

「ノエルは子供の頃に、このような事をやっていたのですか?」
「まあ…ご令嬢ではないからね…。
そういう意味でもあなた達、召喚する相手を間違えたんじゃないの?」
「いえいえ!ノエルは間違いなく!聖女様です!」
「…魔女だって追い出されたけどね…。
素朴な疑問ですが…仮に私が聖女だとして、その聖女様を追い出した場合って、どうなるのでしょう?」
『…ノエル、聖女なのに追い出されたんだから、この国、亡ぼしちゃえば???』
「いやいやいや!何を物騒な事を仰っているの?!そこのロンロンさん!」
『だってさぁ、勝手に召喚しておいて、追い出すって、失礼だし身勝手じゃない?
しかも神獣と魔獣の区別もつかない奴らだよ?何なら俺が亡ぼしちゃうよ?
俺のブレスでブワッと一吹き…。』
「いやいやいや!そんな事したら、目立っちゃうじゃない!
私は第一に帰りたい!そして第二に穏便に過ごしたいのだよ!
だから塔からも逃げなかったのだよ…。」
「え?!逃げようと思えば逃げられたのですか?」
「多分ね…私、お上品なご令嬢じゃないし…。
あの部屋からだったら、あの塔だったら、脱出は出来たよ、私、多分。
でもやらなかった…やったら私が悪いって事にされちゃうから。」
そんなに変かな?何か、微妙な顔で沈黙された…。
「それにしても…さてどうしようかな。これから。
この森って暮らすには適さないんだよね?
やっぱり他の国へ行くよりほかにないかなぁ。」

この夜は居場所を確保して、空腹を誤魔化しながら、夜は更けていきました。

皆で雑魚寝をしている時でした。
何か若しくは誰かの気配がしました…それも結界のすぐ外で。
私とヒース、それにロンは、慌てて小屋?の外へ出てみました。
見ると、結界の外には、無数の光がありました。
一見、星に見えなくもないけど、地上に星は無い。
目を凝らして良く見ると、クマやイノシシや巨大な蜘蛛や、その他の形の魔獣がうじゃうじゃと居ました。
星ではなく、魔物の目が光っていたのでした。
「うわぁ!なんだ?!あれ!結界があるから入ってこられないんだよね?!大丈夫だよね?!結界?」
鳥肌が立って、思わず叫びました。
『ノエル、あれ見て!何か襲われているっぽいよ!』
ロンに言われて、目が慣れてきた暗闇に、更に目を凝らして良く見ると、小さな黒い塊が、入れない結界を背に、一生懸命唸りながら、自分を囲っている魔物を睨みつけておりました。
それが何なのか、良く見ようと、少しずつ近付いてみると、黒い猫のようでした。
「ロン!猫が魔物に襲われているよ!あれ、助けられないの?!」
『何言ってんだ?!あれも魔物かもしれねぇじゃねぇか!』
「魔物のわけないよ!だって魔物が襲っているんだよ!」
『この世は弱肉強食っていってな、弱い魔物は強い魔物に食われるんだよ!』
「そんな!でもあの子、どう見ても猫じゃない!魔物じゃないよ!
ロンのケチ!じゃあ私が助けに行ってくる!」
そういって、小屋の中へ戻り、幾つか作ってあった松明の一つを手に取り、松明に灯りをともし、魔物に囲まれている猫に向かって走り出しました。
すると私の鬼気迫る勢いに恐れをなしたのか、それとも火が怖かったのか、魔物たちがジリジリと下がっていきました。
私が結界のところにたどり着いた時、既に魔物たちは、完全に遠巻きになっていたので、私は松明を地面に突き立て、その猫に向かって手を伸ばして掴み、胸に抱きよせました。
「ぎゃう!!!!」
結界の中へ引き入れる時、その猫は、凄い悲鳴をあげて、意識を失ってしまいました。
「あれ?何で?」
その子を胸に抱えて、突き立てておいた松明を手に取り、ヒースやロンの元へ戻りました。
途端にその子を囲んでいた魔物たちが再び結界のところまできて、結界に体当たりをしたり、攻撃をし始めました。
結界はびくともしないのですが。
「ねえ!ロン!この子、気を失っちゃったんだけど、なんで?」
『お前…無理やり中へ引き入れただろ?
お前やヒースは結界を普通に抜けられる、行き来できるけど、他のものは無理やり引き入れると、電撃を食らったかのような衝撃を受けるんだ。』
「この子、大丈夫なの?なんか、良く見ると、猫じゃなくて、ネコ科の大型動物の子供っぽいんだけど…。
黒豹の子供とかかなぁ?!」
『こいつ…何か普通の動物じゃないような気がするんだよなぁ…やっぱり魔物じゃねぇ?』
「まあ取り敢えずこの子の意識が戻ったら、どうするか考えよう!」
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