33 / 56
4章『楽園にようこそ』
33 ジューゴ、再確認する
しおりを挟む
楽園では股間が涼しい……そして恥ずかしい。僕は服を全て洗濯に出され、全裸のまま食事と寝台に入ることになった。
ファナは裸に馴れているようだが、僕にはどうにも居心地が悪い。
「ジューゴ様…眠たいです……」
特に股間の居心地が悪く、ぶらぶらスースーする僕はせめてタオルを巻かせてくれと、世話役の人に頼んでみたものの、リムの肌を傷つける気かと一蹴された。
「で、ファナはどこで寝る気なんだ?」
リムコートと同じ滑らかな布の寝台に上がり、ファナがあくびをしながら僕の左脇に丸くなる。
「ここではだめですか?」
「右側のベッドが空いてるよ」
「……それはご命令ですか?」
僕は少し笑いながら、
「命令じゃないよ。でもベッドが二つあるなら一人ずつの方が……」
と言ったらファナが
「命令でないなら従いません」
とベッドに入ったまま僕の左脇にぴったりと収まった。
「ジューゴ様の核は小さいのです。こうしてくっついて大きくしませんと、もしもの時は困ります」
「もしもって?」
「もしもはもしもです。ジューゴ様がちゃんとお腹に核をくだされば……」
とべったり張り付いた。
「ファ、ファ、ファナ!君、どこでそんなこと!女の子がそんなことを言ったらだめだよ!」
ファナは僕に再会するまで一人でいたのだから、色々と大変だったはずだ。
「また、僕に出会うまでのことを教えてよ」
隣ではファナがもう寝息を立てており、僕はぼんやりと半地下みたいな部屋から外を眺めていた。
救出されたリムたちは騎士の核を取り除かれ記憶を消されて真っさらのリムになるそうだ。ファナは銘有りリムだから、ここではブラッシュアップも出来ないし、ファナも僕もその気はない。
頭を撫でるとファナがびくりと身体を固くしてそれから再び弛緩して僕のお脇の下近くに顔を埋めた。
「失恋してたんだなあ……」
僕はしゃくりあげるように息を吐き、ファナを起こさないように呟いた。思い出したくもないけれど、思い出してよかった。さつきと剛志、幸せになれよーだ。
僕は日本の地元の川から東の国でリムの命と引き換えの次元回廊実験で引き摺り込まれ、この異世界グランディア大陸に来た。クサカ博士の作り出した最後のリム『ファナスティック・リム』ファナに助けられた。
そしてリム狩りをしていたガゼルとチロルに襲われて、僕はファナを岸に逃して流されていったんだ。十歳といえば日本では小学四年生。ランドセルを背負う女の子が一人で半年も旅をしていたのだ。
「ファナ、大変だっただろうな……」
僕はベッドに横になると眠っているファナに呟いた。頭を撫でていると、ぽかりと目を開いて、僕の顔に小さな手を添えて唇に小さな形のよい唇を寄せてきた。
「……おやすみなさい」
「お、や、すみ……」
僕は脇の下辺りに額を擦り付けて寝息を立て始めたファナの顔を、まじまじと見つめてしまった。
喧騒と歓喜……僕が起きたのはパティオのざわめきからだ。
「ん……なんだ?」
楽園の漆喰で固めた城壁の中庭は、明るいパティオでリムたちが自然と一体となり遊び回る。
男なら眼福なのだが、成体の豊満な胸のリム達の全身は色香があり、少々目のやり場に困った。
グランツほど老たければいざ知らず、まだ若いんだよ、僕は。下半身こそ凪いで冷静だが、心拍数は跳ね上がりっぱなし。
「ジューゴ様、おはようございます」
ファナが僕の足元に座り窓の外を見ている。
「賑やかだね」
そう話しているとエバ団長が窓の外からノックしてきて、
「今日はリムのお披露目がある。朝御飯を食べたら見るかい?」
「はい、よろしければ」
窓から朝食のバスケットを差し入れをされて、ファナがベッドから降りて取りにいく。軽い足取りがして、ファナが戻り、
「ジューゴ様の服と、二人分の食事です」
と、差し出してくる。
「ファナ、ありがと」
馴染んだ服を着込みパニーニに似た食感のパンに肉を挟んだサンドを食べると、枕の下に隠してあった旧友の名残を腰に挟む。
「ジューゴ様、何ですかそれは?」
「あ……えーと、異世界の武器、みたいな?」
とは言うものの日本で使用していた時とは形状の異なるその姿に、どう呼べばいいやら。
トンファーは掌に収まるただのL字型の有機生命鉄の塊で、小動物のように小刻みに震え眠っていて寝息が聞こえて呼吸している。
「トンファーだよ」
ファナも覗き込んで、
「トンファさん」
と呟いたので、
「うん、友達のを持ってきてしまったんだ」
と言い添えた。
「トンファは、『ファ』が私と同じ音です」
子どもの遊びのような名付けに、ファナがふんふんとご機嫌で僕は笑顔になる。
「さて……食べたし、エバ団長の所へ行こう。ね、ファナ?」
ファナが食べ物と一緒に運んできたリムコートを、僕に差し出してきた。
「リムはマスターからしか全てを貰えないのです。ジューゴ様、私にください」
金髪と青い瞳が僕を必死で見つめてくる。
多分……この真摯なまでの眼差しに僕はとてつもなく弱いのだ。
「ファナ、コートを」
「はいっ!」
床に正座をしているファナの脇に手を入れてひょいと立たせると、首からコートを被せる。
「これでよし。あとは服や肌着をどうするかなんだよね」
ファナが真っ赤な顔をしてコートの中から、
「無理しないでください。私、人の服でも……」
と、本当に小さく言った言葉を拾い上げ僕はファナの頭を撫でる。
「うん、おいおいだよね。ファナ、これからよろしくね」
ファナが全身に力を入れているのがわかり、緊張しているファナと手を繋ぎ、僕は間違いなくリムのマスターになったわけだなと思った。
ファナは裸に馴れているようだが、僕にはどうにも居心地が悪い。
「ジューゴ様…眠たいです……」
特に股間の居心地が悪く、ぶらぶらスースーする僕はせめてタオルを巻かせてくれと、世話役の人に頼んでみたものの、リムの肌を傷つける気かと一蹴された。
「で、ファナはどこで寝る気なんだ?」
リムコートと同じ滑らかな布の寝台に上がり、ファナがあくびをしながら僕の左脇に丸くなる。
「ここではだめですか?」
「右側のベッドが空いてるよ」
「……それはご命令ですか?」
僕は少し笑いながら、
「命令じゃないよ。でもベッドが二つあるなら一人ずつの方が……」
と言ったらファナが
「命令でないなら従いません」
とベッドに入ったまま僕の左脇にぴったりと収まった。
「ジューゴ様の核は小さいのです。こうしてくっついて大きくしませんと、もしもの時は困ります」
「もしもって?」
「もしもはもしもです。ジューゴ様がちゃんとお腹に核をくだされば……」
とべったり張り付いた。
「ファ、ファ、ファナ!君、どこでそんなこと!女の子がそんなことを言ったらだめだよ!」
ファナは僕に再会するまで一人でいたのだから、色々と大変だったはずだ。
「また、僕に出会うまでのことを教えてよ」
隣ではファナがもう寝息を立てており、僕はぼんやりと半地下みたいな部屋から外を眺めていた。
救出されたリムたちは騎士の核を取り除かれ記憶を消されて真っさらのリムになるそうだ。ファナは銘有りリムだから、ここではブラッシュアップも出来ないし、ファナも僕もその気はない。
頭を撫でるとファナがびくりと身体を固くしてそれから再び弛緩して僕のお脇の下近くに顔を埋めた。
「失恋してたんだなあ……」
僕はしゃくりあげるように息を吐き、ファナを起こさないように呟いた。思い出したくもないけれど、思い出してよかった。さつきと剛志、幸せになれよーだ。
僕は日本の地元の川から東の国でリムの命と引き換えの次元回廊実験で引き摺り込まれ、この異世界グランディア大陸に来た。クサカ博士の作り出した最後のリム『ファナスティック・リム』ファナに助けられた。
そしてリム狩りをしていたガゼルとチロルに襲われて、僕はファナを岸に逃して流されていったんだ。十歳といえば日本では小学四年生。ランドセルを背負う女の子が一人で半年も旅をしていたのだ。
「ファナ、大変だっただろうな……」
僕はベッドに横になると眠っているファナに呟いた。頭を撫でていると、ぽかりと目を開いて、僕の顔に小さな手を添えて唇に小さな形のよい唇を寄せてきた。
「……おやすみなさい」
「お、や、すみ……」
僕は脇の下辺りに額を擦り付けて寝息を立て始めたファナの顔を、まじまじと見つめてしまった。
喧騒と歓喜……僕が起きたのはパティオのざわめきからだ。
「ん……なんだ?」
楽園の漆喰で固めた城壁の中庭は、明るいパティオでリムたちが自然と一体となり遊び回る。
男なら眼福なのだが、成体の豊満な胸のリム達の全身は色香があり、少々目のやり場に困った。
グランツほど老たければいざ知らず、まだ若いんだよ、僕は。下半身こそ凪いで冷静だが、心拍数は跳ね上がりっぱなし。
「ジューゴ様、おはようございます」
ファナが僕の足元に座り窓の外を見ている。
「賑やかだね」
そう話しているとエバ団長が窓の外からノックしてきて、
「今日はリムのお披露目がある。朝御飯を食べたら見るかい?」
「はい、よろしければ」
窓から朝食のバスケットを差し入れをされて、ファナがベッドから降りて取りにいく。軽い足取りがして、ファナが戻り、
「ジューゴ様の服と、二人分の食事です」
と、差し出してくる。
「ファナ、ありがと」
馴染んだ服を着込みパニーニに似た食感のパンに肉を挟んだサンドを食べると、枕の下に隠してあった旧友の名残を腰に挟む。
「ジューゴ様、何ですかそれは?」
「あ……えーと、異世界の武器、みたいな?」
とは言うものの日本で使用していた時とは形状の異なるその姿に、どう呼べばいいやら。
トンファーは掌に収まるただのL字型の有機生命鉄の塊で、小動物のように小刻みに震え眠っていて寝息が聞こえて呼吸している。
「トンファーだよ」
ファナも覗き込んで、
「トンファさん」
と呟いたので、
「うん、友達のを持ってきてしまったんだ」
と言い添えた。
「トンファは、『ファ』が私と同じ音です」
子どもの遊びのような名付けに、ファナがふんふんとご機嫌で僕は笑顔になる。
「さて……食べたし、エバ団長の所へ行こう。ね、ファナ?」
ファナが食べ物と一緒に運んできたリムコートを、僕に差し出してきた。
「リムはマスターからしか全てを貰えないのです。ジューゴ様、私にください」
金髪と青い瞳が僕を必死で見つめてくる。
多分……この真摯なまでの眼差しに僕はとてつもなく弱いのだ。
「ファナ、コートを」
「はいっ!」
床に正座をしているファナの脇に手を入れてひょいと立たせると、首からコートを被せる。
「これでよし。あとは服や肌着をどうするかなんだよね」
ファナが真っ赤な顔をしてコートの中から、
「無理しないでください。私、人の服でも……」
と、本当に小さく言った言葉を拾い上げ僕はファナの頭を撫でる。
「うん、おいおいだよね。ファナ、これからよろしくね」
ファナが全身に力を入れているのがわかり、緊張しているファナと手を繋ぎ、僕は間違いなくリムのマスターになったわけだなと思った。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
9
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる