愛のない婚約者は愛のある番になれますか?

水無瀬 蒼

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新婚旅行らしくない新婚旅行7

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 新婚旅行のハワイでの1週間はあっという間だった。
 陸さんとは結婚する前と変わらず最低限の会話だったけれど、親同士が決めた許嫁だったというのに無視したりはしない。それは陸さんの育ちの良さを感じる。
 この結婚は陸さんが望んでした結婚じゃない。それはわかっている。子供の頃は一緒に遊んでくれたりはしたけれど、それは大人の中にいてもつまらないからだったんだろうと思う。でも、自分が大人になってしまえばそういうわけにもいかない。僕も大人になってしまっているからだ。
 それに、陸さんにはっきりと聞いたわけではないけれど、恐らく好きな人がいる。その心の中にはその人1人しかいないんだろう。間違えても僕はいないし、入る隙間もないだろう。それは仕方ないと思っている。
 そんな風に結婚したからハワイに来たって行動は最初から最後まで別々だったし、会話だって挨拶と最低限だけだった。
 陸さんとはそんな感じだったけれど、僕のハワイ1人旅(?)は楽しかった。と言っても本を読むか本屋に通い詰めて面白そうな本を買い込んだだけだけど。本屋さんに行きたいが為にマウイ島の別荘ではなくオアフ島にして貰ったくらい、アメリカの本屋さんに行きたかった。
 ハワイ最後の夜も陸さんが部屋で食べると言わなかったので、恐らくどこか食べに出かけたのだろう。僕はフードコートでテイクアウトしたメキシコ料理にした。
 早めにコンドミニアムに戻り、お風呂に入ってからお土産ものと自分で購入したものをスーツケースにしまっていく。行きにカラカラだったスーツケースもいっぱいになってしまい、お土産のいくつかは入らなかったので別途袋に入れたままだ。ちょっと本を買いすぎたかもしれない。
 そして翌日の帰国日は早めに空港に着き、ラウンジでコーヒーを飲みながらゆっくりとしていた。それよりも今日これから帰るのはそれぞれの実家ではなく、2人のマンションだ。
 新婚生活は都内のタワマンだ。荷物を運び入れるために何度か行ったけれど、一軒家のような広々とした感じはないけれど2人で住むには十分な広さだし、何より立地が良かった。
 マンションの下にはクリニックとスーパーがあるし、少し行けば銀行やレストランもある。駅からは徒歩10分くらい。最も陸さんは車での迎えが来るから電車なんて乗らないけれど。とにかく便利なマンションだ。
 帰るのが陸さんと住むマンションだということは不思議な感じもするけれど、そのうちに慣れるのだろうか。でも、ハワイでもそうだったけれど、子供の頃から憧れていた陸さんと一つ屋根の下に住むということにドキドキした。しばらくはドキドキするんだろうな。いや、ずっとかもしれない。陸さんのことは結婚した今でも憧れているから。
 飛行機の席は隣同士だ。隣と言ってもファーストクラスだからエコノミーとは違いパーテーションで区切られているから、比較的独立している。
 機内では喋ることもなく、ハワイから東京まで無言のままだった。そして羽田空港には陸さん付きの秘書兼運転手の寺岡さんが迎えに来てくれていた。運転手と言っても陸さんと同じ歳なので仕事以外では結構仲が良いらしい。

「お帰りなさい」
「ああ。迎えありがとう」
「まっすぐ帰りますか」
「そうしてくれ」

 そう言うと陸さんは後部座席に乗り込み、僕は寺岡さんにペコリと頭を下げてから陸さんの隣に座り込んだ。

 
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