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新しい生活4
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贅沢なファヒータを食べた後はデザートだ。フランはメキシカンの硬めのプリンのことなんだけど、砂糖の代わりに練乳を使っているので味が濃厚だ。普段はそんなに甘いものを食べる方ではないけれど、こうやって食事に来るとデザートを頼むことがある。
陸さんはデザートとかって食べるんだろうか? フルーツは甘めのもの、酸味の強いものどちらも食べているから甘い物が好きなのか苦手なのかがわからない。陸さんと会っていたお正月だとおせちだったからよくわからないんだ。
今度家でなにか作ってみようか。それこそプリンあたりが甘すぎずいいかもしれない。それでさりげなく勧めたら好きかどうかわかる。
こうやって考えてみると陸さんのことをなにも知らないんだと思う。子供の頃は年に2回会っていたけれど、陸さんが中学生になった辺りから会うのは年に1回になった。大きくなって陸さんへの気持ちに気づいた頃には年に1回しか会っていないから陸さんのことはよくわからなくて。そしてそのまま結婚した。
陸さんのことをよく知らないと思うと寂しいけれど、これから知る楽しみがあるんだと気持ちを切り替えた。
「なに考えてる? じーっとフラン見つめて」
「あぁ、うん。陸さんって甘いもの好きなのかどうなのか知らないなと思って。ほんと知ってるようで知らないんだ」
「今まで知らなかったなら、これから知っていけばいいじゃん」
「そっか。知る機会があるといいな」
「機会は作るんだよ」
機会は作るものか。それならプリンでも作って勧めてみよう。いや、甘いものだけじゃなくてその他のことも知っていけばいいのか。
「西賀は前向きだよね」
「そうか? 普通だよ」
「じゃあ僕が後ろ向き?」
「普通だろ。でも陸さんのことになると気弱になる気がするけど」
陸さんのことになるとか……。それはあるかもしれない。
「今度プリンでも作って勧めてみる」
「そうだな。その反応で好きか苦手かわかるもんな。少しずつ知っていけるって楽しみだよな」
「うん、そうだね」
うん。西賀と話してると前向きになれて楽しいから、やっぱり大事な友だちだと思う。
そんな風に西賀に感謝しながらフランを食べ、お酒を飲みながら色々な話しをした。
陸さんには好きな人がいるんじゃないかと思ってから、少し遠慮気味になっていた。それは仕方ないのかもしれないけど、人間としてどうなのかもわからない。僕が陸さんに対して抱いている気持ちは子供の頃からなので大人になってからというのがよくわからない。だから、少しずつ知っていこう。そう思った。
「今日は楽しかったな。また会おうぜ」
「うん。今日はありがとうね。また連絡する」
「おう。俺も連絡するよ。じゃ、おやすみ」
そう言って別々の路線に乗り家に帰る。時計を見ると22時30分。家に着くのは23時前くらいかな。陸さんはもう帰っているだろうか。もし帰っていたとしたら真っ暗な家は寂しいだろうな。今まで明るい家に帰っていたからなおさら感じるだろう。そう考えると早く帰りたいと思ってしまう。もしもう帰っているのなら、僕が今さら焦ったって意味がないけれど、気持ちはせいてしまう。
あ、プリンを作る材料を買っていこうかな。確か下のスーパーは24時間やってた気がする。帰りに買っていけば明日作れると考えて、明日は陸さんの実家にお土産を渡しに顔を見せに行く日だったと思い出す。そして明後日はうちの実家。プリンを作れるのは週明けになりそうだ。
明日、明後日はきっと僕たちを心配しているであろう両親に顔を見せよう。プリンはそれからでも全然遅くない。
陸さんはデザートとかって食べるんだろうか? フルーツは甘めのもの、酸味の強いものどちらも食べているから甘い物が好きなのか苦手なのかがわからない。陸さんと会っていたお正月だとおせちだったからよくわからないんだ。
今度家でなにか作ってみようか。それこそプリンあたりが甘すぎずいいかもしれない。それでさりげなく勧めたら好きかどうかわかる。
こうやって考えてみると陸さんのことをなにも知らないんだと思う。子供の頃は年に2回会っていたけれど、陸さんが中学生になった辺りから会うのは年に1回になった。大きくなって陸さんへの気持ちに気づいた頃には年に1回しか会っていないから陸さんのことはよくわからなくて。そしてそのまま結婚した。
陸さんのことをよく知らないと思うと寂しいけれど、これから知る楽しみがあるんだと気持ちを切り替えた。
「なに考えてる? じーっとフラン見つめて」
「あぁ、うん。陸さんって甘いもの好きなのかどうなのか知らないなと思って。ほんと知ってるようで知らないんだ」
「今まで知らなかったなら、これから知っていけばいいじゃん」
「そっか。知る機会があるといいな」
「機会は作るんだよ」
機会は作るものか。それならプリンでも作って勧めてみよう。いや、甘いものだけじゃなくてその他のことも知っていけばいいのか。
「西賀は前向きだよね」
「そうか? 普通だよ」
「じゃあ僕が後ろ向き?」
「普通だろ。でも陸さんのことになると気弱になる気がするけど」
陸さんのことになるとか……。それはあるかもしれない。
「今度プリンでも作って勧めてみる」
「そうだな。その反応で好きか苦手かわかるもんな。少しずつ知っていけるって楽しみだよな」
「うん、そうだね」
うん。西賀と話してると前向きになれて楽しいから、やっぱり大事な友だちだと思う。
そんな風に西賀に感謝しながらフランを食べ、お酒を飲みながら色々な話しをした。
陸さんには好きな人がいるんじゃないかと思ってから、少し遠慮気味になっていた。それは仕方ないのかもしれないけど、人間としてどうなのかもわからない。僕が陸さんに対して抱いている気持ちは子供の頃からなので大人になってからというのがよくわからない。だから、少しずつ知っていこう。そう思った。
「今日は楽しかったな。また会おうぜ」
「うん。今日はありがとうね。また連絡する」
「おう。俺も連絡するよ。じゃ、おやすみ」
そう言って別々の路線に乗り家に帰る。時計を見ると22時30分。家に着くのは23時前くらいかな。陸さんはもう帰っているだろうか。もし帰っていたとしたら真っ暗な家は寂しいだろうな。今まで明るい家に帰っていたからなおさら感じるだろう。そう考えると早く帰りたいと思ってしまう。もしもう帰っているのなら、僕が今さら焦ったって意味がないけれど、気持ちはせいてしまう。
あ、プリンを作る材料を買っていこうかな。確か下のスーパーは24時間やってた気がする。帰りに買っていけば明日作れると考えて、明日は陸さんの実家にお土産を渡しに顔を見せに行く日だったと思い出す。そして明後日はうちの実家。プリンを作れるのは週明けになりそうだ。
明日、明後日はきっと僕たちを心配しているであろう両親に顔を見せよう。プリンはそれからでも全然遅くない。
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