愛のない婚約者は愛のある番になれますか?

水無瀬 蒼

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重なる気持ち5

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 そうして迎えたシルバーウィーク。今回も陸さんの運転で箱根に来ることになった。そして、こちらも今回も変わりなく、陸さんに助手席側のドアを開けて貰うというエスコート付きで。エスコートし慣れてる。それにしても陸さんは結構長距離も運転するので、運転することが好きなんだろうか。少なくとも苦になっている様子はない。

「今夜泊まるのは先日話したところだ。強羅にある。昼間は箱根を観光しよう。子供の頃、一緒に箱根に行ったのは覚えているか?」
「お母さんから聞いてます。僕が記憶に残ってるのは海賊船だけですが」
「まだお前は3歳か4歳くらいだったから無理もないか。それ以外では来たことはあるか?」
「友人と1度来ました。大涌谷と関所に行きました」
「そうか。じゃあ今回はそれ以外のところに行こう。見所は他にたくさんあるからな。海賊船はせっかくだから乗るか」
「乗りたいです! 湖からみる景色、いいですよね」
「そうだな。じゃあ海賊船も込みだな。まずは強羅だな。公園もあるし、お店も色々あるから昼をそこで食べよう」
「はい」

 箱根湯本に着いたときに今日のプランを決める。と言っても僕が見たところは少ししかないし、また見てもいいから詳しそうな陸さんにお任せだ。
 陸さんの言う通り車は強羅公園に着いた。強羅公園は日本初のフランス式整型庭園だということだ。今はまだ時期には早いけれど、時期になれば薔薇園がとても綺麗だという。他にも熱帯植物館もあるという。

「秋の薔薇のシーズンにはまだ少し早いな」

 確かに咲いている薔薇の数は少なめだ。それでも、シーズンになれば見事だろうと思わせる作りになっている。そうでなくても薔薇のアーチなんかもあり、女性客やデートには向いているだろう。
 と、そこで考える。今日の僕と陸さんもデートって言えるのかな? 言えるよね。そう思うと急に恥ずかしくなった。

「満開になったらすごいでしょうね」
「ここを一番楽しめるのが春だ。桜が咲いてから、奥の藤が咲いて、それから薔薇が咲く。フランス式庭園で藤棚があるのも面白いけどな」
「藤、僕好きです」
「そうか。それなら今度は春に来よう」
「!」

 今度。また連れてきてくれるんだ。それがすごく嬉しかった。そのことに僕はふわふわとした気持ちで園内を歩いてまわった。
 園内を大まかに歩いたところでお腹が空いてきた。と、僕のお腹の空腹具合に気づいたのか陸さんがランチの提案をしてきた。

「この近くにハンバーガーの店があるんだが、昼はそこでいいか? 味はいい」
「僕は箱根は全然なので陸さんにお任せします」
「よし、そしたら行こう」

 着いたところは強羅公園から車ですぐのホテルだった。ハンバーガーっていうからもっとカジュアルなお店かと思ったら、ホテルでびっくりした。まぁ、ホテルの食事の中ならカジュアルなのかもしれないけれど。

 ランチメニューは2つのバーガーとオープンサンドイッチのみという少なさだが、目をひいたのはそんなところではなくて価格だ。
 ハンバーガーが2,300円とか桁、間違えてない? と思ってしまった。でも、テーブルに通されてしまって出るわけにもいかないし、陸さんは平然としているから価格は問題ない、ということなんだろう。ここまできたら美味しくいただくしかない。
 メニューは少ないので、あまり悩むことなくビーフ&ベジタブルバーガーに決めた。ダブルバーガーもあったけれど、僕の好きなアボカドが入っているのでこちらにした。陸さんも同じだった。
 そうして出てきたのは、大きなハンバーガーだった。これ、口に入らないよ。それぐらい大きい。なのでバンズから少しずつかじっていく。そしてお肉に行き当たり、口に入れてびっくりした。

「美味しい!」
「美味いだろ。100%国産牛だ」

 このお肉を使ったら確かに価格が高くなるのは当然だ。国産牛だということだけど、それでもいいのを使っているのがわかる。だって口に入れるとお肉がとけていくんだ。それでもゆっくりとお肉を味わって、お腹に納めていく。
 そうしてハンバーガーを堪能していると陸さんが何気なくといったふうに口を開いた。

「突然だが、寝室を同じにしないか?」

 陸さんの言った言葉の意味がわからず、ハンバーガーを食べる手が止まった。
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