愛のない婚約者は愛のある番になれますか?

水無瀬 蒼

文字の大きさ
106 / 106

番外編9

しおりを挟む
 友人へのお土産、両親へのお土産と買ったので、最後はコナ・コーヒーを買いに行った。お父さんの分と自分たちが家で飲む分だ。
 コナ・コーヒーは日本でも買えるけれど高いので、ハワイで買って行くのがいい。

「お土産を買うのも疲れるな。父さんと母さんなんていつでも来れるんだから買う必要ないのに」
「でも、うちのお父さんとお母さんに買って、お義父様とお義母様には買わないっていうわけにはいきませんよ」
「新婚旅行のときは1人で選んだんだろ。悪かったな、任せて」
「いいんです。今日一緒に選べたから」

 そう言うと陸さんは優しい笑顔を見せてくれた。この表情が見れることが嬉しい。

「ところで夕食だが、買って帰るか。疲れただろう。美味しいロブスターの店があるんだがどうだ?」
「わぁ! ロブスター食べたいです!」
「じゃあ今夜はロブスターにするか」

 車に乗ってすぐに陸さんは訊いてきた。夕食のこと全然考えてなかった。ロブスターか。いいな。

「ステーキも一緒なんだが、6ozでいいか? 7ozだと少し多いか?」
「えっと、1ozが28gくらいでしたっけ? そしたら6ozで」
「わかった。スープとか適当に頼むぞ」
「はい。お任せします」

 僕がそう言うと陸さんはスマホでオーダーをする。後は取りに行けばいいだけだ。ロブスターなんて大学生のときにハワイに来たとき以来だ。なので楽しみだ。
 車でお店まで行くと少し待ち時間があったものの、大して待つこともなくオーダーした品を受け取る。

「冷めるから早く帰って食べよう」

 そう言って寄り道もせずにまっすぐコンドミニアムに戻る。そして帰って来てテイクアウトしてきたものを見ると、ロブスターとステーキのコンボプレート、ロブスターのスープ、大麦のライスが入っていた。ロブスターのスープなんて飲んだことがない。

「スープ、一応温めますね」
「ああ、頼む。他はテーブルに出しておくよ。飲み物は水でいいか?」
「はい」

 スープを軽く温めて食事を始める。まずはロブスターから食べる。

「ん! 美味しい!」
「だろう? 旅行者はあまり見かけない店だが、地元民でいつ行ってもいっぱいだよ」
「ですよね。こんなに美味しいですもん」

 ロブスターを食べた後はロブスターのスープだ。一口飲んでみると、当たり前だけどロブスターの味がする。ロブスターのスープなんて初めてだ。

「ロブスターってスープにしても美味しいんですね。スープがあるなんて知りませんでした」
「そう思って注文した。このライスも食べてみろ。さっぱりしていて美味しいぞ」

 陸さんにそう促されてライスを一口食べると、確かにさっぱりしている。ロブスターやステーキの味がはっきりしているから、これくらいさっぱりしている方が合う。

「ロブスターやステーキに合いますね」
「そっちがソースやらなにやら味があるからな。ライスはさっぱりがいい」
「はい。あーでもステーキも美味しい」

 アメリカでのステーキの焼き方はほとんどの店が焼きすぎる傾向にあるが、このお店はほどよい焼き加減だった。

「焼きすぎてないから美味いだろ」
「はい。お肉のいい味がします」

 全てが美味しくて、僕はほとんど喋らずに食べてしまった。陸さんはそんな僕を微笑みを浮かべて見ていた。気がついたときには恥ずかしくて顔を赤らめてしまう。

「気に入ってくれたみたいだな」
「はい。どれも、とっても美味しいです」
「なら良かったよ」

 2人で笑いながら食事をできることが嬉しかった。そうしてハワイ最後の夜は更けていった。
 

 


 番外編・完
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

知らないだけで。

どんころ
BL
名家育ちのαとΩが政略結婚した話。 最初は切ない展開が続きますが、ハッピーエンドです。 10話程で完結の短編です。

僕はあなたに捨てられる日が来ることを知っていながらそれでもあなたに恋してた

いちみやりょう
BL
▲ オメガバース の設定をお借りしている & おそらく勝手に付け足したかもしれない設定もあるかも 設定書くの難しすぎたのでオメガバース知ってる方は1話目は流し読み推奨です▲ 捨てられたΩの末路は悲惨だ。 Ωはαに捨てられないように必死に生きなきゃいけない。 僕が結婚する相手には好きな人がいる。僕のことが気に食わない彼を、それでも僕は愛してる。 いつか捨てられるその日が来るまでは、そばに居てもいいですか。

俺の好きな人は誰にでも優しい。

u
BL
「好きなタイプは?」と聞かれて世界で一番多く答えられているのは間違いなく「優しい人」だろう。 相手の優しいところに惹かれ、気づいた時には引き返せないところまで恋に落ちている。 でも次第に気付くのだ。誰だってみんな「優しい人」ではなく「"自分だけに"優しい人」が好きなのだと。 ロランは、"誰にでも優しい男"、フィリオンに恋をしてしまい、地獄のような日々に身を焼かれていた。 そんなとある日「この恋、捨てたいな…」と溢したら「それ、捨てようとすんの、やめてくんね?オレ、あんたがアイツを見る視線に興奮すっからさ」と遊び人で有名な男、ヒューゴに言われる。 彼は、自分を好きな人間には興味がなく、別の誰かに恋い焦がれている人間の目が好きな変態らしい。 そんな身勝手な遊び人とちょくちょく話すようになってからというもの、フィリオンの様子はどんどんおかしくなっていく。 恋を捨てたい男と、恋を捨てるなと言う男と、優しさが狂い始めていく男の話。 ※作者の意思ではなくキャラの意思で結末が決まります。ご要望は受け付けられませんのでどちらとくっついても美味しいと思う方のみお読みください。 ※中世ヨーロッパ風学園ものです。 ※短編(10万文字以内)予定ですが長くなる可能性もあります。 ※完結までノンストップで毎日2話ずつ更新。

泡にはならない/泡にはさせない

BL
――やっと見つけた、オレの『運命』……のはずなのに秒でフラれました。――  明るくてお調子者、だけど憎めない。そんなアルファの大学生・加原 夏樹(かはらなつき)が、ふとした瞬間に嗅いだ香り。今までに経験したことのない、心の奥底をかき乱す“それ”に導かれるまま、出会ったのは——まるで人魚のようなスイマーだった。白磁の肌、滴る水、鋭く澄んだ瞳、そしてフェロモンが、理性を吹き飛ばす。出会った瞬間、確信した。 「『運命だ』!オレと『番』になってくれ!」  衝動のままに告げた愛の言葉。けれど……。 「運命論者は、間に合ってますんで。」  返ってきたのは、冷たい拒絶……。  これは、『運命』に憧れる一途なアルファと、『運命』なんて信じない冷静なオメガの、正反対なふたりが織りなす、もどかしくて、熱くて、ちょっと切ない恋のはじまり。  オメガバースという世界の中で、「個」として「愛」を選び取るための物語。  彼が彼を選ぶまで。彼が彼を認めるまで。 ——『運命』が、ただの言葉ではなくなるその日まで。

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

流れる星、どうかお願い

ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる) オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年 高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼 そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ ”要が幸せになりますように” オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ 王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに! 一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが お付き合いください!

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

彼の理想に

いちみやりょう
BL
あの人が見つめる先はいつも、優しそうに、幸せそうに笑う人だった。 人は違ってもそれだけは変わらなかった。 だから俺は、幸せそうに笑う努力をした。 優しくする努力をした。 本当はそんな人間なんかじゃないのに。 俺はあの人の恋人になりたい。 だけど、そんなことノンケのあの人に頼めないから。 心は冗談の中に隠して、少しでもあの人に近づけるようにって笑った。ずっとずっと。そうしてきた。

処理中です...