不出来なオメガのフォーチュン

水無瀬 蒼

文字の大きさ
12 / 46

2-5

しおりを挟む
「シーツはセットしてあるが使っていないから、とりあえず今日はこれで我慢してくれ。明日新品のを持ってくる。後、掃除だが数日に一回サービスが入るし、掃除ロボットも毎日動くから掃除はしなくていい。洗濯は希望すればやってくれるが、人に洗濯物を触られるのが気になるようであれば自分でしても構わない」

 そう言って寝室を出てリビングダイニングの左側の部屋を除くと書斎になっていた。神宮寺いわく持ち帰りの仕事をしたりするそうだ。そして残り一部屋は客室になってるという。
 部屋を一通り案内された後はランドリールームに案内される。ランドリールームなんて洒落た名前のつく空間なんか見たこともなかった。洗濯機は洗面所の片隅にあるものしか知らない。
 でも、通されたランドリールームは乾燥機能付き洗濯機が置かれているだけでなく、アイロン台もあり、アイロンもそこでかけることができるようになっていた。洗濯に関する全てのことがこの一部屋で可能なのだ。
 ランドリールームの次はキッチンだ。キッチンはリビングダイニングの少し手前側にあった。

「恐らく必要なものは全て揃っていると思うが、もし足りないものがあったら言ってくれ、すぐに揃える」

 キッチンは直生が住んでいたアパートよりも広く、ゆったりしている。そこに、オーブン、電子レンジ、トースター、ケトル、炊飯器。鍋やフライパンは壁にかけられている。パッと見足りないものなどなさそうだ。大体、直生はさほど料理をする方ではない。簡単なものを作るくらいだ。
 
「このくらいだがわからないことはあるか?」
「多分大丈夫かと……」
「そうか。もしわからないことがあったら連絡をくれればいい。とりあえず明日九時に迎えに来るから、その時に訊いてくれてもいい」

 そう言ってメッセージアプリのIDを交換した。

「これが鍵だ」

 そう鍵を手渡されるとき、二人の指先が触れた。
 その瞬間、ビリビリと電気が走ったような感じがし、体がじんわりと熱くなり熱を持ちはじめた。まるでヒートを起こす前みたいに。
 直生が自分の体の反応に戸惑っていると、触れた相手である神宮寺も電気が走った感じがしたのか、じっと自分の手を見ている。そして、直生の様子の変化に気づいたようで、明日来ると言うと側近の男を連れて帰っていった。
 二人が帰ると、糸が切れたように直生はその場にヘナヘナと座り込んだ。そして、一人になったことで少しずつ熱が落ち着いてくる。
 一体何があったのだろう。いや、軽く指先が触れただけだ。それなのにビリビリと電気が体中を貫いたような感じがし、それと同時に体が熱を帯び、じんわりと熱くなってきたのだ。あのまま触れていたらヒートを起こしたのではないか。
 そして、電気が走ったように感じたのはどうやら直生だけではないようだ。あの呆然と立ちすくんだ様子の神宮寺を見ると、彼もまた電気のようなものが走ったのだろう。
 熱くなりつつあった体は、神宮寺が帰り一人になったことでヒートを起こす方へ向かわずに少しずつ落ち着きを取り戻していた。もし、神宮寺が直生の様子に気づかず、あのまま同じ空間にいたらどうなっていたのだろうか。熱を帯びた体と強く香る神宮寺のフェロモン。
 神宮寺のフェロモンがヒートを促進させるかどうかはわからない。けれど、あのままでは間違いなくヒートを起こしていただろうし、直生がヒートを起こせば神宮寺はラットを起こす。その状態が危ないことくらいはわかる。
 でも、指先が触れただけで電気が走ったようになるなんて、どうしてなのだろう。体は熱を持ち始めたし。どうも神宮寺とはよくわからないことが起きるらしい。お互いの香りが辺りを充満して感じたり。それはどうしてなのか。考えると一つの単語に突き当たるので、そこで思考を停止させた。そんなことあるはずがないのだから。
 その夜はベッドに入ってからもそのことを考えてしまい、なかなか眠れなかった。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

氷の公爵様と身代わりパティシエ~「味覚なし」の旦那様が、僕のお菓子でトロトロに溶かされています!?~

水凪しおん
BL
【2月14日はバレンタインデー】 「お前の菓子だけが、私の心を溶かすのだ」 実家で「魔力なしの役立たず」と虐げられてきたオメガのリウ。 義弟の身代わりとして、北の果てに住む恐ろしい「氷血公爵」ジークハルトのもとへ嫁ぐことになる。 冷酷無慈悲と噂される公爵だったが、リウが作ったカカオのお菓子を食べた途端、その態度は激変!? リウの持つ「祝福のパティシエ」の力が、公爵の凍りついた呪いを溶かしていき――。 拾ったもふもふ聖獣と一緒に、甘いお菓子で冷たい旦那様を餌付け(?)する、身代わり花嫁のシンデレラストーリー!

あなたの家族にしてください

秋月真鳥
BL
 ヒート事故で番ってしまったサイモンとティエリー。  情報部所属のサイモン・ジュネはアルファで、優秀な警察官だ。  闇オークションでオメガが売りに出されるという情報を得たサイモンは、チームの一員としてオークション会場に潜入捜査に行く。  そこで出会った長身で逞しくも美しいオメガ、ティエリー・クルーゾーのヒートにあてられて、サイモンはティエリーと番ってしまう。  サイモンはオメガのフェロモンに強い体質で、強い抑制剤も服用していたし、緊急用の抑制剤も打っていた。  対するティエリーはフェロモンがほとんど感じられないくらいフェロモンの薄いオメガだった。  それなのに、なぜ。  番にしてしまった責任を取ってサイモンはティエリーと結婚する。  一緒に過ごすうちにサイモンはティエリーの物静かで寂しげな様子に惹かれて愛してしまう。  ティエリーの方も誠実で優しいサイモンを愛してしまう。しかし、サイモンは責任感だけで自分と結婚したとティエリーは思い込んで苦悩する。  すれ違う運命の番が家族になるまでの海外ドラマ風オメガバースBLストーリー。 ※奇数話が攻め視点で、偶数話が受け視点です。 ※エブリスタ、ムーンライトノベルズ、ネオページにも掲載しています。

キンモクセイは夏の記憶とともに

広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。 小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。 田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。 そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。 純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。 しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。 「俺になんてもったいない!」 素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。 性描写のある話は【※】をつけていきます。

当たり前の幸せ

ヒイロ
BL
結婚4年目で別れを決意する。長い間愛があると思っていた結婚だったが嫌われてるとは気付かずいたから。すれ違いからのハッピーエンド。オメガバース。よくある話。 初投稿なので色々矛盾などご容赦を。 ゆっくり更新します。 すみません名前変えました。

たとえ運命じゃなくても、僕は

mimi
BL
「僕は自分の気持ちを信じたい。 たとえ運命から背を背けようとも」 音楽大学に通うΩの青年・相田ひなた。 努力家の先輩αと、 運命の番だと告げられた天才α。 運命か、愛情か―― 選ぶのは、僕自身だ。 ※直接的な描写はありません。

春風の香

梅川 ノン
BL
 名門西園寺家の庶子として生まれた蒼は、病弱なオメガ。  母を早くに亡くし、父に顧みられない蒼は孤独だった。  そんな蒼に手を差し伸べたのが、北畠総合病院の医師北畠雪哉だった。  雪哉もオメガであり自力で医師になり、今は院長子息の夫になっていた。  自身の昔の姿を重ねて蒼を可愛がる雪哉は、自宅にも蒼を誘う。  雪哉の息子彰久は、蒼に一心に懐いた。蒼もそんな彰久を心から可愛がった。  3歳と15歳で出会う、受が12歳年上の歳の差オメガバースです。  オメガバースですが、独自の設定があります。ご了承ください。    番外編は二人の結婚直後と、4年後の甘い生活の二話です。それぞれ短いお話ですがお楽しみいただけると嬉しいです!

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

みにくいオメガの子

みこと
BL
オメガの由紀は高校を卒業するまでに番を見つけたい。しかし、他のオメガと違い全くモテない。お見合いも紹介もいつも散々な結果に終わっていた。 このまま誰にも必要とされずに一生を終えるかと不安になる。そんな由紀に驚きの事実が判明して…。 またもやオメガバースです。オメガバースの説明はありません。

処理中です...