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「退院したら……退院したら、ここ噛むからな」
そう言って直生の項に触れる。
「はい。噛んでください」
「ああ。あ、お前、敬語やめろ。番相手に敬語もおかしいだろ」
「でも……」
「いいんだよ。誉だ」
「え?」
「俺の名前だ」
「誉、さん」
「あぁ。これからは誉と呼んでくれ」
「はい!」
番相手に……。神宮寺が言ってくれるその言葉に本当に番になるのだな、と実感が湧いてきて直生は嬉しかった。
神宮寺が退院したのは、それから一ヶ月ほどしてからだった。退院後の神宮寺は、長らく病院にいたせいで忙しく、一緒に食事をすることもままならなかった。一人で食事をするのには慣れていたはずなのに、神宮寺と食事を共にすることに慣れてしまっていたからか、一人の食事は味気ない。でも、それも今日までだ。
今日は、退院してから初めて一緒に食事をする日だ。交通事故にあったあの日に約束したエンチラーダを作ってくれることになっていた。約束の時間に神宮寺の家へいくと、すでにいい香りがしていた。
「もう少しでできるから、コーヒーでも飲んで待ってろ」
そう言ってコーヒーをカップに入れてくれる。
直生はすることもなく、コーヒーカップ片手に神宮寺を眺めていた。
今日項を噛まれるのかな? と思う。神宮寺は退院したら、と言っていた。そうしたら今日なのだろうか。そう思うとドキドキする。
番になるには、Ωがヒートを起こしているときにαがΩの項を噛むことで成立する。今はヒート中ではないけれど、運命の番だから、触れることでヒートを起こすことができる。だからその心配はない。番になろう、項を噛もうと思ったときに触れあえばいいのだ。
「できたぞ」
直生がグルグルしている間に食事はできあがり、すでにカトラリーまで並べられていた。
「すいません。運ぶのくらい手伝おうと思ってたのに」
「そんなことは構わない。難しい顔してたからな」
「え……」
「ほら食べるぞ。冷める」
「あ、うん」
テーブルに並んでいるのは美味しそうなチキンエンチラーダ。オリーブオイル、チキンコンソメ、ケチャップ、レッドペッパー、チリペッパーソース、塩、胡椒、と調味料は普通に日本で売られているものと輸入食材のお店で普通に買えるもので作れたらしい。
普段使わないのはチリペッパーソースくらいで、後はいつも使っているものがメキシコ料理に変身するなんてすごいな、と思った。
いただきます、をしてエンチラーダにかじりつく。
「美味い! めっちゃ美味い!」
直生が興奮気味に言うと、神宮寺は嬉しそうな顔をした。
「なら良かった。初めてだから不安だったよ」
「そんな。誉さんが料理上手なのは知ってたけど、メキシコ料理まで作れるなんてすごい!」
「レシピサイト見ながら作っただけだぞ」
「でもでも! それでもすごい!」
直生が手放しで褒めると、神宮寺は嬉しそうに笑った。
「料理は番としてオーケーか?」
番という言葉に直生はドキリとして、思わず下を向くと神宮寺の真剣な声が聞こえてきた。
「やめるか?」
そう言って、直生の項に触れてくる。あまり触れているとヒートを起こしてしまうのに……。それにドキリとしたのは嫌だからではないのだ。
「嫌じゃない。ただ、緊張してるだけで……」
「良かった」
神宮寺はホッとしたように笑う。もし直生がやっぱり嫌だと言ったらやめるつもりだったのだろうか。
そう言って直生の項に触れる。
「はい。噛んでください」
「ああ。あ、お前、敬語やめろ。番相手に敬語もおかしいだろ」
「でも……」
「いいんだよ。誉だ」
「え?」
「俺の名前だ」
「誉、さん」
「あぁ。これからは誉と呼んでくれ」
「はい!」
番相手に……。神宮寺が言ってくれるその言葉に本当に番になるのだな、と実感が湧いてきて直生は嬉しかった。
神宮寺が退院したのは、それから一ヶ月ほどしてからだった。退院後の神宮寺は、長らく病院にいたせいで忙しく、一緒に食事をすることもままならなかった。一人で食事をするのには慣れていたはずなのに、神宮寺と食事を共にすることに慣れてしまっていたからか、一人の食事は味気ない。でも、それも今日までだ。
今日は、退院してから初めて一緒に食事をする日だ。交通事故にあったあの日に約束したエンチラーダを作ってくれることになっていた。約束の時間に神宮寺の家へいくと、すでにいい香りがしていた。
「もう少しでできるから、コーヒーでも飲んで待ってろ」
そう言ってコーヒーをカップに入れてくれる。
直生はすることもなく、コーヒーカップ片手に神宮寺を眺めていた。
今日項を噛まれるのかな? と思う。神宮寺は退院したら、と言っていた。そうしたら今日なのだろうか。そう思うとドキドキする。
番になるには、Ωがヒートを起こしているときにαがΩの項を噛むことで成立する。今はヒート中ではないけれど、運命の番だから、触れることでヒートを起こすことができる。だからその心配はない。番になろう、項を噛もうと思ったときに触れあえばいいのだ。
「できたぞ」
直生がグルグルしている間に食事はできあがり、すでにカトラリーまで並べられていた。
「すいません。運ぶのくらい手伝おうと思ってたのに」
「そんなことは構わない。難しい顔してたからな」
「え……」
「ほら食べるぞ。冷める」
「あ、うん」
テーブルに並んでいるのは美味しそうなチキンエンチラーダ。オリーブオイル、チキンコンソメ、ケチャップ、レッドペッパー、チリペッパーソース、塩、胡椒、と調味料は普通に日本で売られているものと輸入食材のお店で普通に買えるもので作れたらしい。
普段使わないのはチリペッパーソースくらいで、後はいつも使っているものがメキシコ料理に変身するなんてすごいな、と思った。
いただきます、をしてエンチラーダにかじりつく。
「美味い! めっちゃ美味い!」
直生が興奮気味に言うと、神宮寺は嬉しそうな顔をした。
「なら良かった。初めてだから不安だったよ」
「そんな。誉さんが料理上手なのは知ってたけど、メキシコ料理まで作れるなんてすごい!」
「レシピサイト見ながら作っただけだぞ」
「でもでも! それでもすごい!」
直生が手放しで褒めると、神宮寺は嬉しそうに笑った。
「料理は番としてオーケーか?」
番という言葉に直生はドキリとして、思わず下を向くと神宮寺の真剣な声が聞こえてきた。
「やめるか?」
そう言って、直生の項に触れてくる。あまり触れているとヒートを起こしてしまうのに……。それにドキリとしたのは嫌だからではないのだ。
「嫌じゃない。ただ、緊張してるだけで……」
「良かった」
神宮寺はホッとしたように笑う。もし直生がやっぱり嫌だと言ったらやめるつもりだったのだろうか。
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