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路地裏の夕暮れ5
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味噌汁の湯気の向こうには、さっき「帰る」と言った人とは思えないくらい、いつものイジュンに見えた。しんみりしてしまっているのは俺だけか。そう思うとなんだか悔しくなった。
「じゃあさ、明日と明後日、何しようか」
話しが飛びすぎだ。でも、なんでもない顔をしているイジュンに悔しくなったんだから仕方ない。そして、俺が投げかけた言葉に、イジュンは箸を止めて俺の顔をじっと見る。
「うーん……行きたいところ、まだあるんだ」
「どこ?」
「秋葉原」
「秋葉原? ああ、電気街?」
「そうそう。でも、ただの電気屋じゃなくて、ラジオ会館に行ってみたい」
思いがけない言葉に俺は笑ってしまう。随分、オタクなことを言うんだなと思ったんだ。秋葉原で電気製品を見たいんじゃない。見たいのはオタクなものだ。アニメのフィギュアがたくさんあるところだ。
「なんでまた」
「ネットで見たんだよ。模型とかフィギュアとか電子部品がごちゃっとしてるって書いてあって、それは面白そうだなと思って」
「確かにあそこはカオスだな。階ごとに全然違う世界だから」
「そういうの面白くない? なんか宝探しみたいじゃない?」
「俺はまた、電気街じゃなかったら、メイドカフェにでも行きたいのかと思ったよ」
「あぁメイドカフェか。間に合ってるからいいや」
「間に合ってるって?」
「だって、明日海がいてくれてるから」
「……俺は女じゃないぞ」
「知ってるよ。明日海は男だ。でも、俺にとって明日海は特別だから」
特別。そう言われてドキリとした。でも、それに対してなんて返したらいいのかわからない俺はなんでもないように話しを続けた。
「じゃあ明日は秋葉原で、明後日は……。週末だから1日付き合えるぞ」
「明後日は最後だから、もう一回浅草に行きたい」
「浅草? 気に入ったのか?」
「うん。初めて会った場所だし」
箸を持ったまま視線を落とす。イジュンも俺と会えなくなることを寂しいと思ってくれているのか。そう思った。でも、それに対してなにかをいうことは出来ない。だからなんでもない顔をして続けるんだ。
「じゃあ。明日は秋葉原で明後日は浅草か」
「うん。あと、もし時間があったら、またここで猫を見たい」
「欲張りだな」
「時間がないからそこ、ね」
イジュンはそう言ってから箸を置き、ほうじ茶を口に運んだ。その表情を俺はいつもより長く見つめてしまう。話しながら、カウントダウンを感じてしまう。
「もう少しいればいいのに……」
口をついて出た言葉はそんな言葉だった。俺の言葉にイジュンは笑って言った。
「多分、そうしたら帰らなくなっちゃうから」
軽く笑っていうその声に、冗談と本音が半分ずつ混ざっている気がした。
しばらく沈黙が続いた。店の奥からはだし汁の匂いと鍋がコトコト煮える音。隣の席では常連らしいおじいさんが店主と世間話をしている。俺が寂しいと思うように、イジュンも寂しいと思ってくれていればいい。そう思ったときにふと考えた。なんで俺はイジュンが帰ることを寂しいと感じてるんだ? 情が移った? わからない。でも、考えてはいけないような気がした。
「じゃあさ、明日と明後日、何しようか」
話しが飛びすぎだ。でも、なんでもない顔をしているイジュンに悔しくなったんだから仕方ない。そして、俺が投げかけた言葉に、イジュンは箸を止めて俺の顔をじっと見る。
「うーん……行きたいところ、まだあるんだ」
「どこ?」
「秋葉原」
「秋葉原? ああ、電気街?」
「そうそう。でも、ただの電気屋じゃなくて、ラジオ会館に行ってみたい」
思いがけない言葉に俺は笑ってしまう。随分、オタクなことを言うんだなと思ったんだ。秋葉原で電気製品を見たいんじゃない。見たいのはオタクなものだ。アニメのフィギュアがたくさんあるところだ。
「なんでまた」
「ネットで見たんだよ。模型とかフィギュアとか電子部品がごちゃっとしてるって書いてあって、それは面白そうだなと思って」
「確かにあそこはカオスだな。階ごとに全然違う世界だから」
「そういうの面白くない? なんか宝探しみたいじゃない?」
「俺はまた、電気街じゃなかったら、メイドカフェにでも行きたいのかと思ったよ」
「あぁメイドカフェか。間に合ってるからいいや」
「間に合ってるって?」
「だって、明日海がいてくれてるから」
「……俺は女じゃないぞ」
「知ってるよ。明日海は男だ。でも、俺にとって明日海は特別だから」
特別。そう言われてドキリとした。でも、それに対してなんて返したらいいのかわからない俺はなんでもないように話しを続けた。
「じゃあ明日は秋葉原で、明後日は……。週末だから1日付き合えるぞ」
「明後日は最後だから、もう一回浅草に行きたい」
「浅草? 気に入ったのか?」
「うん。初めて会った場所だし」
箸を持ったまま視線を落とす。イジュンも俺と会えなくなることを寂しいと思ってくれているのか。そう思った。でも、それに対してなにかをいうことは出来ない。だからなんでもない顔をして続けるんだ。
「じゃあ。明日は秋葉原で明後日は浅草か」
「うん。あと、もし時間があったら、またここで猫を見たい」
「欲張りだな」
「時間がないからそこ、ね」
イジュンはそう言ってから箸を置き、ほうじ茶を口に運んだ。その表情を俺はいつもより長く見つめてしまう。話しながら、カウントダウンを感じてしまう。
「もう少しいればいいのに……」
口をついて出た言葉はそんな言葉だった。俺の言葉にイジュンは笑って言った。
「多分、そうしたら帰らなくなっちゃうから」
軽く笑っていうその声に、冗談と本音が半分ずつ混ざっている気がした。
しばらく沈黙が続いた。店の奥からはだし汁の匂いと鍋がコトコト煮える音。隣の席では常連らしいおじいさんが店主と世間話をしている。俺が寂しいと思うように、イジュンも寂しいと思ってくれていればいい。そう思ったときにふと考えた。なんで俺はイジュンが帰ることを寂しいと感じてるんだ? 情が移った? わからない。でも、考えてはいけないような気がした。
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