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プリクラの距離4
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ラジオ会館の1階。出ようとしたところでイジュンは足を止めた。
「どうした?」
「やっぱり欲しいなと思って。1階だけでいいから、もう一度見てもいい?」
「ん。後悔ないように見ろ」
「ありがとう」
そう言うとイジュンは笑顔を浮かべて、ケースの中に並ぶフィギュアを真剣に見だした。そこには、イジュンが好きだと言っていた、千と千尋の神隠しのフィギュアがあった。それを買うのだろう、と見ていると、他にも見ている。そして、足が止まったのは鬼滅の刃の前だった。どちらにするか悩んでいるのだろうかと見ていると、お店の人に両方の箱を袋に入れて貰っていた。
「2つ買ったのか」
「うん。他にも欲しいのあったけど、荷物が増えるから2つで我慢した」
「お前、それでアニオタじゃないって言うの無理ないか?」
「そんなことないよ。アニオタは日本語勉強してるよ。字幕じゃなく日本語で理解したいって言って」
「それはかなり重病だな。でも、普通は作品楽しむだけだぞ? わざわざフィギュアを買ったりはしない」
「そうかな? 自分ではアニオタじゃないと思ってるよ」
と終わりのなさそうなアニオタ論を繰り広げる。そして、建物を出ると、通りの喧噪が一気に押し寄せた。メイド姿の若い女の子たちが「ご主人さま~、どうですか?」とイジュンに声をかける。そして次には、「お嬢様もお帰りになりませんか?」と俺に向かって言ったのだ。説明するまでもないだろうが、男性客に対しては「ご主人様」、女性客に対しては「お嬢様」と言う。つまり、俺に向かって「お嬢様」と言ったということは、女に間違われたということだ。それでムスっとした俺を見て、しばし不思議そうにしていたが、俺がムスっとした理由がわかった途端、イジュンは声を上げて笑った。笑うことないだろう。
「ほら、行くぞ」
俺が足早に歩き出すと、イジュンが小走りについてきた。
「そんなに怒らないで」
「怒ってねーよ」
「はいはい。まぁ、悪気があったわけじゃないんだから」
「あってたまるか。ほら、土産買うんだろ」
「うん。買うよ、買う」
そのまま少し歩いたところにある雑居ビルの一角に外国人向けグッズの店に入った。鮮やかな提灯、浮世絵風の手ぬぐい、キーホルダーやポストカード。日本人の俺には不自然すぎるそんなものも、イジュンにとっては新鮮に映るらしい。
最初に手を伸ばしたのは富士山に太陽が昇っているイラストにJAPANと書かれたマグカップだった。
「父さんはコーヒーが好きだから、これでいいかな」
そう言って真剣に探している横顔は優しい顔をしていた。相手のこと、それだけ大事に思っているんだなとわかる。次にイジュンが手に取ったのは小さな扇子だった。桜が舞う淡いピンクの布地で、とても女性らしい。
「韓国にも扇子はあるけど、こんなに繊細な柄はないよ。きっと喜ぶと思う。妹はどうしよう」
マグカップと扇子を手に店内を歩き回る。そうして選んだのはなにかのキャラクターだろうか。デフォルメされた可愛い女の子がピースサインをしているキーホルダーだ。いかにも秋葉原らしい。
「妹は子供の頃からこういう可愛いのが好きだから」
そう言うイジュンの横顔はお兄さんの顔をしていた。自分と一緒にいるときには見れない表情だった。
「うん。家族へは買えたからいいや。ありがとう。あとはあの殿堂へ行って買うよ」
それは韓国人の間でも有名だという。驚安なだけでなく、なんでも揃っているそこで頼まれものを買ったりするらしい。
「薬局で売っているようなものを頼まれたりしてるんだ」
いわく、日本の薬はよく効くと言って頼まれているらしい。だから、それをお土産にする、と。薬なんかがお土産になるのかとびっくりするが、貰う側が欲しいと言うんだからそれでいいのだろう。
「どうした?」
「やっぱり欲しいなと思って。1階だけでいいから、もう一度見てもいい?」
「ん。後悔ないように見ろ」
「ありがとう」
そう言うとイジュンは笑顔を浮かべて、ケースの中に並ぶフィギュアを真剣に見だした。そこには、イジュンが好きだと言っていた、千と千尋の神隠しのフィギュアがあった。それを買うのだろう、と見ていると、他にも見ている。そして、足が止まったのは鬼滅の刃の前だった。どちらにするか悩んでいるのだろうかと見ていると、お店の人に両方の箱を袋に入れて貰っていた。
「2つ買ったのか」
「うん。他にも欲しいのあったけど、荷物が増えるから2つで我慢した」
「お前、それでアニオタじゃないって言うの無理ないか?」
「そんなことないよ。アニオタは日本語勉強してるよ。字幕じゃなく日本語で理解したいって言って」
「それはかなり重病だな。でも、普通は作品楽しむだけだぞ? わざわざフィギュアを買ったりはしない」
「そうかな? 自分ではアニオタじゃないと思ってるよ」
と終わりのなさそうなアニオタ論を繰り広げる。そして、建物を出ると、通りの喧噪が一気に押し寄せた。メイド姿の若い女の子たちが「ご主人さま~、どうですか?」とイジュンに声をかける。そして次には、「お嬢様もお帰りになりませんか?」と俺に向かって言ったのだ。説明するまでもないだろうが、男性客に対しては「ご主人様」、女性客に対しては「お嬢様」と言う。つまり、俺に向かって「お嬢様」と言ったということは、女に間違われたということだ。それでムスっとした俺を見て、しばし不思議そうにしていたが、俺がムスっとした理由がわかった途端、イジュンは声を上げて笑った。笑うことないだろう。
「ほら、行くぞ」
俺が足早に歩き出すと、イジュンが小走りについてきた。
「そんなに怒らないで」
「怒ってねーよ」
「はいはい。まぁ、悪気があったわけじゃないんだから」
「あってたまるか。ほら、土産買うんだろ」
「うん。買うよ、買う」
そのまま少し歩いたところにある雑居ビルの一角に外国人向けグッズの店に入った。鮮やかな提灯、浮世絵風の手ぬぐい、キーホルダーやポストカード。日本人の俺には不自然すぎるそんなものも、イジュンにとっては新鮮に映るらしい。
最初に手を伸ばしたのは富士山に太陽が昇っているイラストにJAPANと書かれたマグカップだった。
「父さんはコーヒーが好きだから、これでいいかな」
そう言って真剣に探している横顔は優しい顔をしていた。相手のこと、それだけ大事に思っているんだなとわかる。次にイジュンが手に取ったのは小さな扇子だった。桜が舞う淡いピンクの布地で、とても女性らしい。
「韓国にも扇子はあるけど、こんなに繊細な柄はないよ。きっと喜ぶと思う。妹はどうしよう」
マグカップと扇子を手に店内を歩き回る。そうして選んだのはなにかのキャラクターだろうか。デフォルメされた可愛い女の子がピースサインをしているキーホルダーだ。いかにも秋葉原らしい。
「妹は子供の頃からこういう可愛いのが好きだから」
そう言うイジュンの横顔はお兄さんの顔をしていた。自分と一緒にいるときには見れない表情だった。
「うん。家族へは買えたからいいや。ありがとう。あとはあの殿堂へ行って買うよ」
それは韓国人の間でも有名だという。驚安なだけでなく、なんでも揃っているそこで頼まれものを買ったりするらしい。
「薬局で売っているようなものを頼まれたりしてるんだ」
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