理系に異世界生活の道はありますか?

よもぎ

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プロローグ

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*プロローグ

「うーん!わからん!」

少年は小声でできる限りの声量を持って叫んだ。目の前には全く見覚えもない西洋風の街が広がっていてそこを青銅の甲冑を身につけた剣士?やら顔だけがドラゴン的な?人間?が通り過ぎていく。  
どこかの市場らしいが食材に至っても彼の知るものは一つもなかった。

少年はおどろおどろしい真っ青な棘の生えた果実を手に取って首を傾げる。

(何これどう考えてもやばくないか)

それだけではない、真っ黒なローブに身を包んだ集団もあちらこちらで訳もわからない言葉を連呼しては杖を振るい奇声をあげた。

『アムス・ハイライ・ペルニカ!』

その度に地面が凍ったり燃えたりを繰り返している。

「あれって魔法...なのか?何にもないとこから火とか出してますけどそれエネルギーの保存則成り立ってます??」

少年はブツブツ独り言を言って物陰で頭を抱える。

(この辺にいる連中もよくわからんが...あ、ありゃなんだよ)

少年の目線の先には超高層ビル並の太さの幹を持った大樹が広がっていた。
長生きとかそういう域を超えて天まで登るあの木。 
あそこまで大きいと幹が自身の重力に耐えきれなくなるはずなのだが全くそんな気配もなく佇んでいる。

(神話にでてくるユグドラシルかよ...神話じゃないなら学術的大発見だぞありゃ)

「…いわゆる異世界転生ってやつなのか?こりゃ」

巨大な黒竜が少年の目の前を通り過ぎる。

確か昼寝をしてて、起きたらここに。

少年の知る世界はここにはなかった。

@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

少年の名前は結城京太郎。
高校2年生であり17歳である。
 
彼は裕福な家庭で育ち私立の小学校に入学したりなど順風満帆な人生を送っていたが両親は事故ですぐに彼の元から消え去ってしまったのだった。
そこから彼の生活は当然一変した。

学校にも通えず1日1日生きるのにも精一杯でまともに人生を謳歌する余裕など微塵もない。 

その時悟った。 

生きるために生きる人生になんの意味があるのだ?と

(そう。人生とは圧倒的な課金ゲーなのだ。課金額が多い者ほど良い教育を受け新たな収入源を得やすい条件を整えていくシステム。しかも最初の課金資産が決まるのは完全な運ゲーだ。仮にそれがよくてもバグみたいなことで無課金プレイヤーに成り下がったりもする。こんなにも厳しいゲームがあるのだろうか?)

そんな絶望に苛まれていた時、少年は数学という学問に出会った。

数学はとにかく孤独な学問だ。

ただひたすらに与えられた条件や命題から答えや証明を導き出す作業。だが数学を解いている時だけはすべてを忘れられた彼は数学に没頭し続けたのだった。

まるで自分の生きる意味や目的を解き明かすかのように。

少年は今なおそれを探していた。


@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@


日か沈んで行くのを見て京太郎はホッと息をついた。
何よりも始めてみつけた異世界での共通項だったからだ。

「ふむ」

京太郎はマルタに腰をかける。
色々歩き回って情報集収に務めた結果分かったことは3つだった。

1つ目、こちらの住民と意思の疎通が取れたこと。文字ベースの言語体型は日本語とは異なるものの発音に関してはほとんど同じ言語を扱ってるようだった。
これは大きい。新たな言語を1から習得する労力は当然凄まじいしまずそんな能力は俺にはないからだ。 

2つ目、魔法という技術?がこの世界には存在すること。
実際に教会らしきとこを覗いたりや魔法使い的な人について行ったりして目にしてみたが何かのエネルギーを元にそういった現象を起こしているという様子はなかった。
つまり完全に不思議なエネルギー体系を魔法は持っているのだ。
すべての事柄、事象を式へと落とし込む数学からしたらこれは発狂ものだ。
...
数学で言えば不定形みたいなものかもしれない。
魔法というのは個人個人で例えばエネルギー体系が異なったりするのかもしれない。
何かを消費して魔法を使う人もいれば詠唱を元に魔法を出力する人もいるということか。
これに関しては実際に魔法を自分で扱ってみる方が早いだろう。

3つ目、日が沈み始めてから街の様子が明らかにおかしい。
さっきまで活気付いていた市場から人が全く消えてしまった。
皆何かに怯えるようにどこかへ行ってしまったのだ。
自分の家にでも帰ったのだろうか?

「一体なんなんだ?」

例えば暗がりが恐ろしいという文化があるのか、もしくは宗教的な教えなのかもしれない。
いずれにせよ俺は完全な暗闇にいるが異常はない。
これはもはや異世界生活1日目にしては楽勝か?

気候もよくて住みやすそうだし結構かわゆい女の子もチラホラいたしもしかしてこれってめちゃくちゃいい世界に転生したかもしれない。

「にゃは」

京太郎は暗黒微笑を浮かべマルタに寝転がった。それと同時にグ~っとお腹が鳴った。

「お腹空いたなぁ」

いつもであれば自分で何か料理して食べている時間くらいなのだろう。7時ってとこか?
とはいえ今は一文無しで頼れる知り合いだっていない。
解決策は働き口でも見つけて食わせてもらうことくらいか。

「よっと」

京太郎が起き上がりとにかくどこか探しにいこうとした時だった。

「....なんだよ...あれ」

暗がりからにゅるりと何かが姿を現したが瞬間的に京太郎は理解した。
あのふらつく足取り、所々腐った肉体。
そして焦点が合わず何かを渇望するような形相。

間違いない。

あれは紛れもないゾンビだった。

「ッ...」

京太郎は反射的に逃げようと走り出したが既に大群に既に囲まれていて逃げ道などどこにもなかった。

「嘘だろ。こんなのって」

彼は尻餅をついて震えに震えた。
映画で何度もみた光景が実際に目の前に広がっている。
無数の化け物の手がこちらにずらりと伸びる。

なんだよ、この世界は。

食われて死ぬのか、俺。

ごめん俺。

「なら嘘にしなさいよ!馬鹿!」

京太郎を掴んでいた化け物が瞬時に燃え上がり奇声を上げ、何かを切り裂く音と共に闇に響き渡る。

「こっちだ化け物!...ふんっ!」

何かを押しつぶすような音と血しぶきがそこら中に飛び交う。 

気がつくと化け物達はバラバラに崩れ去っていてそれが1人の金色の髪を持つ少女の仕業だと分かった頃にはすべては終わっていた。

「はやく逃げるわよ!あんた!」

異世界での運命がついに回り始めた瞬間だった。

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