サッカー部イケメン寝取られ。思春期を迎えた幼馴染の少女は、幼い頃から一緒に育ってきた少年を捨てる

ユキリス

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「っと、絵里奈さん大丈夫?最近調子が悪そうだけど‥。俺でよければ保健室一緒に行こうか?」


 と、その様に気遣わしげに声を掛けてきたのは、クラスでも男女問わず人望のある生徒だった。


「黎人くん‥。ちょっと眩暈がしただけ‥。全然平気」

 だがその問い掛けに対し、質問を受けた側である絵梨花と呼ばれた少女は、内心とは反する返答を口とした。

「そっか‥。もし何か辛いことがあれば、遠慮なく言ってくれていいから」

 ただ、その本心を見透かした様な垂れ目の生徒の瞳が絵梨花を射抜く。

 今自らの前に佇む黎人という青年。

 彼は絵梨花と同年代であるにも関わらず、少し大人びて見える。

 外見もそうだが、それに倣い同様に、人格すら成熟している様に、絵梨花には感じられた。

 彼女はこの黎人という人物を個人的に好かなかった。

 否、寧ろ忌避していると称しても差し支えない。

 元来静寂を好む絵梨花は、クラスでも一番に人気者である黎人の周囲が騒がしいのを嫌悪していた。

 ただ黎人の人柄は傍目から見ても社交性に富んでいるのは容易に窺えた。

 故に表立ってはこれ見よがしに避けるのは自然憚られた。

 その為日直が同じになり、あまつさえ席が隣同士になれど、絵梨花はそれらを許容した。

 例え休み時間になると彼の周囲に人だかりが出来ようとも、耐え忍んで見せたのだ。

 彼女は静かに読書をするのを大層好んだ為、黎人の傍に居合わせているのは苦痛でしかなかった。

 けれど無視を決め込み学校生活を送った。

 そうせざるを得なかった。

 そんなストレスの要因から今、予期せぬ心遣いを受けているとあらば、気後れしてしまうのも致仕方無いだろう。

 否が応にもこの様な相手には萎縮してしまうのだから。

「それじゃあ、俺はこれから部活あるから、また明日」

 と、そんな暗い考えに囚われていた絵梨花を目の当たりとして、爽やかな笑みを浮かべた黎人は踵を返した。

 彼は如何にもな端正な顔立ちをしており、イケメンと称して差し支えない。

 そんな人物であるからクラスの女子たちは入れ食いだ。

 まるでアイドル顔負けのその淡麗な容姿に節操のない女子等は既に告白をしている者さえいるのだとか。

 そんな彼の背を見送り絵梨花は内心でため息を吐く。

 一体何故自分が彼と隣同士になってしまったのか未だ判然としない。

 今時席替えなど担任は放任主義であり、更に高校生ともなれば各自で決めるのが通例。

 その為特に今の席で不便は無かった絵梨花だからそれまで通り後ろの方を陣取った。

 背もスラリと高い彼女にはそれでも然程問題は無く、他の生徒が遮蔽物となる事はない。

 普段通りにしているだけで黒板は見えるのだ。

 故に板書をする事に支障は無かった。

 そして後ろの席であれば読書が捗り、退屈な授業の間没頭出来るのも、彼女が学校生活を送る上での楽しみの一つであった。

 だが、そんな絵梨花の平穏も突然破られる事となった。

 何せ絵梨花の隣席を望んだのは、そう、クラスでも人気者である黎人であったのだ。

 何故に自らの席を選んだのか判然としないが、偶然だろう。

 当初はそう思って密かに憂鬱ながらも絵梨花は丁寧に会釈を返すに留めた。

 すると同様に黎人の方も此方に倣い改めて自己紹介をした。

 その様な塩梅であった。

 だが事ここに至っては絵梨花とて自身の勘違いは理解していた。

 どうやら黎人は絵梨花を揶揄うのが心底から楽しい様だ。

 積極的に話し掛けてくるのは勿論の事、話題の引き出しが多いのか妙に意識を惹かれてしまう。

 加えてただ饒舌なだけなら相槌を打つだけで良いのだが、やはり話し上手であるからしい。

 その為気が付けば自ずと彼と共に言葉を交わしているのだ。

 絵梨花は落ち着かない気持ちを逸らす為自らの髪を弄ぶ。

 そして帰宅をするべくして、鞄を持ち教室を後とした。





 *




「遅いぞ、絵梨花」


「ん、ごめんね待たせちゃって」


 帰路につき、その道すがら予め待ち合わせていた幼馴染である少年と合流を果たす。

 純平と呼ばれた少年は何処か不機嫌そうに鼻を鳴らし、つっけんどんな態度を露わとしていた。

 それもこれも全て絵梨花に原因があるとでも言わんばかりの振る舞いだ。

 そもそも最初に日直がある旨は断っていた筈であるが、どうやらそれを含めて待たされたことが腹に据えかねている様だ。

 本来であれば共に帰るつもりもなく、待たせるのは申し訳ない。

 そんな心境であった絵梨花に対して、反発を見せたのは彼だ。

 明日は先に帰っていて欲しいとの旨を伝えようとした所、どうしてかムキになって待っていたのがこの少年である。

 絵梨花は如何しても、その態度が腑に落ちず、内心では小首を傾げるばかりであった。


「なー絵梨花。お前って最近あのサッカー部のやつと良く話してるん?」

「え、そんな事はないと思うけど‥。あ、でも同じ日直だからもしかしたら前よりも少しだけ関わる様になったかもしれないかな‥」

 ただ次の瞬間与えられた言葉に思考を乱された。

 そして反射的に口とした声は自ずと上擦るのが分かる。

「ふーん、そうなんだ。でもなんかあいつっていけすかない奴だよな。いつも周りに人侍らせて偉そうっつーかなんつーか」

「‥そうかな‥」

 咄嗟に受け答えた絵梨花に返るのは、何処か嫉妬混じりの物言い。

 絵梨花とてそれから滲み出る本心には及んでいた。

 だが思わずといった具合に反論染みた呟きが出てしまう。

 そんな迂闊な彼女の口とした言葉に応じて幼馴染の少年は言う。

「いや、だってそうだろう?あんな風に良い人の振りしてるけど、絶対何かあるってあいつ。絵梨花も気をつけろよな」

「‥」

 これには流石に上手い二の句が浮かばない絵梨花だ。

 よくもまぁこれ程嫌う事が出来るものだと思った。

 だが、当初自分も黎人に抱いていた思いも今し方に純平が述べた言葉の内容と意味する所は違えど、少なからずこうるさい相手だと一方的に思っていたのもまた事実なのだから、否が応にも自戒する羽目となった。


 だが、やはりこうまでして隣席の人物を知りもしないくせに、一方的に扱き下ろされると絵梨花とて鬱憤は溜まる。


 それもそのはず。

 少なくない学校生活の時間を共に送るクラスメイトを悪く言われれば誰だって自分と同様の思いを抱くに違いない。

 絵梨花はそう思い口を閉ざし沈黙した。

 まさか幼馴染の口からこの様な不毛な言葉が出てくるとは夢にも思わない。

 正に口さがないとはこの事か。

 これでは自らとクラスを同じくする女子たちと同じでは無いか。

絵梨花はそんな彼女等が苦手であったが、幼馴染に対しては同一視は決してしたく無かった。

けれどそう見えてしまった。

 特段本人の居ないところで他人に言っているのがより一層余計に質が悪い。

 気分を害し、否が応にも一気に不愉快な気持ちとなる。

 幾ら相手が幼馴染といえども、流石に聞くに堪えなかった。

「わたし、そういえばママからお使い頼まれてたの忘れてたの‥。だからまた明日ねっ」

 胸中にあるのは不快感のみであり、かつてに感じた事のない感覚を得た絵梨花は、咄嗟に道を逸れていた。

 気が付けば小走りとなり、背後からの呼び止める声にすら応じない。

 この様な嫌悪は、度々絵梨花が思春期を迎えてからというもの感じていた。

 それは特段、長年共に育ってきた父親や、幼馴染である少年に対する不快感だ。

 先程の様な話を振られると、如何しても気持ち悪いという感情が勝り、相手が幼馴染であるのにも関わらず、近くに居たく無かった。

 最早それは深刻となり、絵梨花は幼馴染に対して彼が隣に居る必要性を感じていなかった。


 けれどそれとは対称的に、黎人には嫌悪は抱く事もなく平素通りに話せるのだから、あまりに不自然に過ぎる話である。

 果たして自分は一体どうなっているのだろうか。

 これは何かの病気だとでも言うのだろうか。

 そう思わず不安になる程に、今の絵梨花は幼馴染の少年を忌避していた。

 それも黎人とは根本的に異なり、幼馴染の少年に接するに際しては、何処か吐き気にも似た感覚を伴う。

 それが黎人には無い。

 苦手意識は依然として根付いているが、それは絵梨花自身の感じ方による所が大きい。

 それを彼女は無自覚にも理解していた。

 だが幼馴染の少年は、既に触れることすら躊躇われる。

 その傾向は初潮を迎えてからより一層強くなったのだ。

 だがまさかそれが原因とは知る由も無い絵梨花は今日も今日とて精神をすり減らすがままに、帰宅したのであった。
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