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エピソード12 誰が魔王を殺したか
魔王と勇者と作戦
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それから数分後――。
「……と、ざっとそんな感じだな」
シュータは、自身が温めていた作戦の要点を掻い摘んで話すと、思案顔で顎髭を撫でているギャレマスにニヤリと笑いかける。
「どうだ? 結構イケそうな気がしねえか?」
「むぅ……」
ギャレマスは、シュータの言葉にも煮え切らない様子で難しい顔をするが、チラリと下に目を遣ると、胸中の不安を振り払うように小さく頷いた。
「……確かに、この状況では、今のお主の案に乗るのが最善であろうな」
「よし、なら決まりだ!」
ギャレマスの同意を得たシュータは、満足げに笑うと、早速とばかりに手を横に伸ばし、空中に赤く光る魔法陣を描き始める。
「だったら、さっさと始めようぜ! あんまり上に居たまんまでウダウダしてたら、あのクソオカマに勘付かれかねねえからな!」
「ちょ! ちょっと待て、シュータ!」
今すぐに行動に移ろうとするシュータを、ギャレマスは慌てて制止した。
そして、ウンダロース山脈の山裾の地面に這いつくばったままの狼獣人の姿を指さしながら、訝しげに尋ねる。
「今の手筈を実行に移すとなると、あそこにいるジェレミィアの協力が不可欠であろう? な、ならばどうやってあやつに作戦の内容を伝えるというのだ? 地上に降りてからでは、とても説明する時間など――」
「ああ、何だ、そんな事か」
ギャレマスの懸念に、シュータは不敵な笑みを浮かべた。
そして、おどけた様子で肩を竦めてみせながら答えを継ぐ。
「そんな事、わざわざ考えるまでもねえよ。必要ねえからな」
「ひ、必要ない……だと?」
そんな彼の余裕に満ちた反応に、ギャレマスはますます当惑する。
「い、いや……必要だろう? ジェレミィアにも事前に作戦の内容を伝える事は――」
「だから、必要無いんだっつってんだろうが」
シュータは、食い下がるギャレマスに苛立ちを露わにしながら、ぶっきらぼうに答えた。
「――だって、もう伝わってるんだからよ」
「……へ?」
ギャレマスは、シュータの言葉の意味が解らず、目を点にする。
そんな彼を無視して、シュータは唐突に下を向いて、普通と変わらぬ声量で声をかけた。
「――な、そうだろ、ジェレミィア? 聴こえてたら、片手を挙げてみろ」
すると、うつ伏せに這いつくばったままのジェレミィアが、軽く片手を挙げてヒラヒラと振った。
「な……?」
「ほらな、聴こえてるってよ」
彼女の反応に驚き、大きく目を見開いたギャレマスに、シュータはドヤ顔で言う。
「アイツ、狼獣人だからよ。他の種族じゃ到底聞こえない小ささの声でも、アイツのデカい三角耳ならバッチリ聴きとれるんだわ。もちろん、今の俺たちの作戦会議の内容もな」
「な……なるほど……!」
シュータの説明に、ギャレマスはようやく全て納得した。
「確かに……それなら、わざわざ説明し直す必要は無いな」
「ようやく理解できたか? なら、早速……」
と、言いかけたシュータだったが、ふと何かに気付いた様子で口を噤む。
そして、ギャレマスの顔――正確に言うと、ギャレマスの側頭部から天に向かって伸びた、純白の角をじっと凝視した。
彼の視線に気付いたギャレマスは、胸の中に何とも言えない嫌な予感が満ちていくのを感じ、恐る恐るシュータに声をかける。
「あ……あの~……しゅ、シュータ……さん? そ、その……どうして他人の角をそんなジロジロ見ておるのだ? な、なんか、とてつもなく嫌な予感が――」
「いい事考えた~ッ!」
ギャレマスの声を遮るように弾んだ声を上げたシュータが、突然手を伸ばしたかと思うと、彼の右の角をむんずと掴み、瞬時に創成したエネルギー棍棒を握った右手を高々と振り上げた。
「ファッ? しゅ、シュータ、何をする気だッ? や、やめ――」
ギャレマスの制止の声は届かず――否、さも当然のように無視され、その次の瞬間、シュータは真っ赤に輝くエネルギー棍棒を握った右手を軽々と振り下ろす。
「ふんっ」
ぽっきいんッ!
「ぎゃ……ぎゃあああああああああっ!」
シュータの声と共に上がったのは、枯れ木が折れるような乾いた音と、魔王の悲鳴だった。
左側頭部に鈍い痛みを感じると同時に、凄まじい衝撃がギャレマスの身体を襲い、彼は凄まじいスピードで真っ直ぐ地上へと落下していく。
頭を襲った衝撃で一瞬気を失いかけたギャレマスだったが、辛うじて意識を繋ぎ止め、必死に黒翼を羽搏かせる事で、何とか地上に軟着陸した。
「く……くくうっ!」
彼は、未だに痛みでくらくらする頭を擦りながら、ヨロヨロと立ち上がる。
――と、
「……ん?」
ふと、手のひらに違和感を感じて、その動きを止めた。
彼の顔から血の気が引く。
「ま……ま、まさか……」
彼は、不吉な予感を覚えながら、恐る恐る手を左側頭部に這わせる。
そして、髪の毛から突き出た固い角の感触がある事を確認し、深く安堵の息を漏らした。
――――だが、
「あ、あの……魔王さん……」
いつの間に背中を支えてくれていたジェレミィアが躊躇いがちにかけてきた声に、収まりかけた不安が一気に増大する。
「あのね……魔王さん、落ち着いて聞いてね」
「な……なんだ?」
意味深に念押しされた事で更に不安に拍車がかかるのを感じながら、ギャレマスはおずおずと訊き返した。
「ど、どうしたというのだ、ジェレミィアよ……? か、構わぬから申してみよ」
「その……魔王さんの……角……」
「……!」
言いづらそうに紡がれたジェレミィアの言葉に、ギャレマスは震える左手でゆっくりと自分の左角に触れ、恐る恐る先端に向かって指を滑らせる。
――彼が薄っすら察していた想像は、悪い方向に当たっていた。
「な……無い……! よ、余の角が……お、折れて……!」
自分の角が半分ほどのところでシュータにへし折られた事にようやく気付いたギャレマスは、愕然としながらうわごとのように呟く。
……だが、彼には角の喪失を嘆く暇すら与えられなかった。
「――魔王さんッ!」
「ッ!」
ジェレミィアの緊迫した声でハッと我に返ったギャレマスが前方に目を遣ると、真っ赤な円錐状のエネルギー体が自分とジェレミィアの方に向かって一直線に飛んでくるのが見えた。
それは、彼を追って地上に着地したシュータが即座に放った錐型飛翔体型エネルギー弾だという事を察したギャレマスは、焦燥に満ちた表情を浮かべる。
「なッ! しゅ、シュータ、もうなのかッ? ま、まだ余の心の準備が――!」
「魔王さんッ!」
驚愕と当惑で一瞬体が硬直したギャレマスの耳に、ジェレミィアの叫び声が届いた。
それと同時に、彼の身体がぐるんと回転し、足が地面から離れる。
「うおおっ?」
「ほら、ぼんやりしない! さっきの打ち合わせの通りに動くよ!」
彼女は、小脇に抱えたギャレマスにそう言うと、至近距離まで近づいた錐型飛翔体型エネルギー弾を一瞥した。
錐型飛翔体型エネルギー弾は、更に眩い赤光を放ち始めている。もう、あとほんの数秒で大爆発するだろう。
そう判断した彼女は、先ほど地面に這いつくばったままで聞いていたシュータの作戦通りに自分の役割を果たさんと、一瞬でその両脚に力を籠めた。
そして、カッと目を見開き、錐型飛翔体型エネルギー弾に背を向け、その反対側――即ち、切り立った崖の方に身体を向ける。
「――行くよ! 舌を噛み切りたくなかったら、口を閉じててッ!」
ジェレミィアはそう叫ぶと、小脇に抱えたギャレマスの返事も聞かず、その脚に籠めた力を一気に解き放ち、超加速しながら崖から大きく跳躍したのだった――!
「……と、ざっとそんな感じだな」
シュータは、自身が温めていた作戦の要点を掻い摘んで話すと、思案顔で顎髭を撫でているギャレマスにニヤリと笑いかける。
「どうだ? 結構イケそうな気がしねえか?」
「むぅ……」
ギャレマスは、シュータの言葉にも煮え切らない様子で難しい顔をするが、チラリと下に目を遣ると、胸中の不安を振り払うように小さく頷いた。
「……確かに、この状況では、今のお主の案に乗るのが最善であろうな」
「よし、なら決まりだ!」
ギャレマスの同意を得たシュータは、満足げに笑うと、早速とばかりに手を横に伸ばし、空中に赤く光る魔法陣を描き始める。
「だったら、さっさと始めようぜ! あんまり上に居たまんまでウダウダしてたら、あのクソオカマに勘付かれかねねえからな!」
「ちょ! ちょっと待て、シュータ!」
今すぐに行動に移ろうとするシュータを、ギャレマスは慌てて制止した。
そして、ウンダロース山脈の山裾の地面に這いつくばったままの狼獣人の姿を指さしながら、訝しげに尋ねる。
「今の手筈を実行に移すとなると、あそこにいるジェレミィアの協力が不可欠であろう? な、ならばどうやってあやつに作戦の内容を伝えるというのだ? 地上に降りてからでは、とても説明する時間など――」
「ああ、何だ、そんな事か」
ギャレマスの懸念に、シュータは不敵な笑みを浮かべた。
そして、おどけた様子で肩を竦めてみせながら答えを継ぐ。
「そんな事、わざわざ考えるまでもねえよ。必要ねえからな」
「ひ、必要ない……だと?」
そんな彼の余裕に満ちた反応に、ギャレマスはますます当惑する。
「い、いや……必要だろう? ジェレミィアにも事前に作戦の内容を伝える事は――」
「だから、必要無いんだっつってんだろうが」
シュータは、食い下がるギャレマスに苛立ちを露わにしながら、ぶっきらぼうに答えた。
「――だって、もう伝わってるんだからよ」
「……へ?」
ギャレマスは、シュータの言葉の意味が解らず、目を点にする。
そんな彼を無視して、シュータは唐突に下を向いて、普通と変わらぬ声量で声をかけた。
「――な、そうだろ、ジェレミィア? 聴こえてたら、片手を挙げてみろ」
すると、うつ伏せに這いつくばったままのジェレミィアが、軽く片手を挙げてヒラヒラと振った。
「な……?」
「ほらな、聴こえてるってよ」
彼女の反応に驚き、大きく目を見開いたギャレマスに、シュータはドヤ顔で言う。
「アイツ、狼獣人だからよ。他の種族じゃ到底聞こえない小ささの声でも、アイツのデカい三角耳ならバッチリ聴きとれるんだわ。もちろん、今の俺たちの作戦会議の内容もな」
「な……なるほど……!」
シュータの説明に、ギャレマスはようやく全て納得した。
「確かに……それなら、わざわざ説明し直す必要は無いな」
「ようやく理解できたか? なら、早速……」
と、言いかけたシュータだったが、ふと何かに気付いた様子で口を噤む。
そして、ギャレマスの顔――正確に言うと、ギャレマスの側頭部から天に向かって伸びた、純白の角をじっと凝視した。
彼の視線に気付いたギャレマスは、胸の中に何とも言えない嫌な予感が満ちていくのを感じ、恐る恐るシュータに声をかける。
「あ……あの~……しゅ、シュータ……さん? そ、その……どうして他人の角をそんなジロジロ見ておるのだ? な、なんか、とてつもなく嫌な予感が――」
「いい事考えた~ッ!」
ギャレマスの声を遮るように弾んだ声を上げたシュータが、突然手を伸ばしたかと思うと、彼の右の角をむんずと掴み、瞬時に創成したエネルギー棍棒を握った右手を高々と振り上げた。
「ファッ? しゅ、シュータ、何をする気だッ? や、やめ――」
ギャレマスの制止の声は届かず――否、さも当然のように無視され、その次の瞬間、シュータは真っ赤に輝くエネルギー棍棒を握った右手を軽々と振り下ろす。
「ふんっ」
ぽっきいんッ!
「ぎゃ……ぎゃあああああああああっ!」
シュータの声と共に上がったのは、枯れ木が折れるような乾いた音と、魔王の悲鳴だった。
左側頭部に鈍い痛みを感じると同時に、凄まじい衝撃がギャレマスの身体を襲い、彼は凄まじいスピードで真っ直ぐ地上へと落下していく。
頭を襲った衝撃で一瞬気を失いかけたギャレマスだったが、辛うじて意識を繋ぎ止め、必死に黒翼を羽搏かせる事で、何とか地上に軟着陸した。
「く……くくうっ!」
彼は、未だに痛みでくらくらする頭を擦りながら、ヨロヨロと立ち上がる。
――と、
「……ん?」
ふと、手のひらに違和感を感じて、その動きを止めた。
彼の顔から血の気が引く。
「ま……ま、まさか……」
彼は、不吉な予感を覚えながら、恐る恐る手を左側頭部に這わせる。
そして、髪の毛から突き出た固い角の感触がある事を確認し、深く安堵の息を漏らした。
――――だが、
「あ、あの……魔王さん……」
いつの間に背中を支えてくれていたジェレミィアが躊躇いがちにかけてきた声に、収まりかけた不安が一気に増大する。
「あのね……魔王さん、落ち着いて聞いてね」
「な……なんだ?」
意味深に念押しされた事で更に不安に拍車がかかるのを感じながら、ギャレマスはおずおずと訊き返した。
「ど、どうしたというのだ、ジェレミィアよ……? か、構わぬから申してみよ」
「その……魔王さんの……角……」
「……!」
言いづらそうに紡がれたジェレミィアの言葉に、ギャレマスは震える左手でゆっくりと自分の左角に触れ、恐る恐る先端に向かって指を滑らせる。
――彼が薄っすら察していた想像は、悪い方向に当たっていた。
「な……無い……! よ、余の角が……お、折れて……!」
自分の角が半分ほどのところでシュータにへし折られた事にようやく気付いたギャレマスは、愕然としながらうわごとのように呟く。
……だが、彼には角の喪失を嘆く暇すら与えられなかった。
「――魔王さんッ!」
「ッ!」
ジェレミィアの緊迫した声でハッと我に返ったギャレマスが前方に目を遣ると、真っ赤な円錐状のエネルギー体が自分とジェレミィアの方に向かって一直線に飛んでくるのが見えた。
それは、彼を追って地上に着地したシュータが即座に放った錐型飛翔体型エネルギー弾だという事を察したギャレマスは、焦燥に満ちた表情を浮かべる。
「なッ! しゅ、シュータ、もうなのかッ? ま、まだ余の心の準備が――!」
「魔王さんッ!」
驚愕と当惑で一瞬体が硬直したギャレマスの耳に、ジェレミィアの叫び声が届いた。
それと同時に、彼の身体がぐるんと回転し、足が地面から離れる。
「うおおっ?」
「ほら、ぼんやりしない! さっきの打ち合わせの通りに動くよ!」
彼女は、小脇に抱えたギャレマスにそう言うと、至近距離まで近づいた錐型飛翔体型エネルギー弾を一瞥した。
錐型飛翔体型エネルギー弾は、更に眩い赤光を放ち始めている。もう、あとほんの数秒で大爆発するだろう。
そう判断した彼女は、先ほど地面に這いつくばったままで聞いていたシュータの作戦通りに自分の役割を果たさんと、一瞬でその両脚に力を籠めた。
そして、カッと目を見開き、錐型飛翔体型エネルギー弾に背を向け、その反対側――即ち、切り立った崖の方に身体を向ける。
「――行くよ! 舌を噛み切りたくなかったら、口を閉じててッ!」
ジェレミィアはそう叫ぶと、小脇に抱えたギャレマスの返事も聞かず、その脚に籠めた力を一気に解き放ち、超加速しながら崖から大きく跳躍したのだった――!
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