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エピソード14 魔王がやらねば誰がやる
魔王と生存と証明
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「う、うわあっ?」
突然スウィッシュに抱きつかれたギャレマスは、慌てて足を踏ん張って彼女の身体を受け止めながら、驚きの声を上げた。
「な、何だっ? どうしたのだ、スウィッシュよ?」
「ふ、ふわあああああああああんッ! 陛下……陛下ぁ……!」
問いかけるギャレマスの言葉にも応えず、彼の胸に顔を埋めて幼子のように泣きじゃくるスウィッシュ。
ギャレマスは、とりあえずそんな彼女の頭を恐る恐る撫でながら、戸惑いの表情を浮かべた。
「ほ、本当にどうしたのだ? 確かに久しぶりの再会だが、別にそんな号泣するほどの事では……」
「……いや、そりゃ号泣もするだろう」
首を傾げる雷王に呆れ声をかけたのは、アルトゥーだった。
「何せ、死んだと思っていた大切な男が、突然元気な姿で目の前で現れたんだ。そういう反応になるのは当然だと思うぞ」
「……え?」
ギャレマスは、アルトゥーの言葉に目をパチクリさせながら、首を傾げる。
「死んだと思っていた? 余がか? 一体誰が、そんな事実無根な事を……?」
「癒撥将が、『王が勇者の攻撃を食らって死んだ』と言っていたし、その瞬間に立ち会ったという御老体も『間違いない』と言っていたし……」
「あ……」
ギャレマスは、アルトゥーの答えを聞いてハッとした顔を浮かべ、困ったように頭を掻いた。
この前のウンダロース山脈での顛末は、元々ツカサやマッツコーの目を欺き、ノーマークで魔王城まで侵入する為にシュータと示し合わせた策だ。
もちろん、味方であるスウィッシュたちまで騙すつもりは無かったのだが、三週間もの間音信不通のままでいた上に、マッツコーからそう告げられたら、確かに死んだと思われてしまってもしょうがないかもしれない……。
「そういう事か……」
「……実際の話、どうして生きているのだ、王? 御老体の話を聞く限り、万が一にも生き延びられるはずがなかったという話だったが……?」
そこまで口にしたアルトゥーは、急に表情を険しくさせ、腰のベルトに仕込んだ飛刀を抜いた。
「――まさか! 王も、あそこの元王たちと同じく、癒撥将の能力によって甦らされた傀儡――イキビトとやらかっ?」
「へ? あ、いや! そ、そうではないぞっ!」
ギャレマスは、鋭い目を向けて飛刀を構えたアルトゥーを前にして、慌てて首を左右に振る。
「よ、余は、最初から死んでなどおらぬぞ! ほ、ほれ、この通りピンピンしておる!」
「むう……あそこの二体は言葉を喋る事もままならぬようだが、コイツは意思の疎通が出来るタイプか。おまけに、ウソを吐くほどの知能も有しておるとは……!」
「いやいや! だから、ウソではないというに!」
自分の言葉を信じず、更に表情を強張らせるアルトゥーに、ギャレマスは上ずった声で叫びながら、自分の金色の瞳を指さした。
「ほ、ほら、見てみろ! この曇りひとつ無い瞳を! これが死人の目に見えるかっ?」
「そう言われれば……」
ギャレマスの言葉につられて、彼の目をまじまじと見たアルトゥーが、小さく頷く。
「確かに……その瞳に宿る“アホ”と“お人好し”の眼光は、確かに以前の王と同じもののようだ……」
「……いや、“アホ”とか“お人好し”の眼光って、普通のとは何か違うのか? というか……お前、主に向かって“アホ”って……」
アルトゥーの呟きが耳に入り、思わず口元をひくつかせるギャレマス。
と、その時、
「……心配しなくても、そこのへっぽこクソ魔王は、確かに生きていますわよ。聖女のわらわが確と保証しますわ。……わらわとしては、死んでてくれても全然構わないんですけどね」
「おお……お主は……!」
ギャレマスは、美しい顔を顰めながら毒舌を吐いた人間族の聖女の姿を見て、表情を輝かせた。
「エラルティス! お主も来てくれたのだな! サリアの為に――!」
「勘違いしないで下さいまし」
魔王に声をかけられた聖女エラルティスは、これ以上無く不機嫌そうに眉間へ皺を寄せながら、吐き捨てるように言う。
「わらわは、そこで貴方にしがみついてる貧乳娘と陰キャ魔族と元“伝説の四勇士”のクセに魔族の男に惚れた色ボケエルフに攫われて、無理矢理連れて来られただけです」
そう言いながら、彼女は首に巻きついた古い革のチョーカーを忌々しげに引っ張った。
「……この忌々しい呪いの首輪さえ無ければ、すぐにでもこんな死人臭い場所からおさらばしてやるところですのに……チッ!」
「お、おう……それは、スマンかった……」
露骨に不満を露わにするエラルティスの剣幕に気圧され、ギャレマスは反射的に謝る。
と、その時――、
「……驚いたわねん」
そう、ポツリと呟いたのは、マッツコーだった。
彼は、珍しく真顔で、ギャレマスの顔を鋭い目で睨みつける。
「まさか、あの凄まじい爆発の中で生き延びるなんて……! 間違いなく、跡形も無く吹き飛んだと思ってたのに……」
そう言うと、彼はギリリと奥歯を噛み締め、険しい声で魔王に訊ねた。
「雷王ちゃんッ! アナタは、どうやってあの爆発から――っ?」
「あ……いや、それは……」
マッツコーの詰問に、ギャレマスはバツ悪げに目を逸らす。
彼の問いに対する答えは、「実は、初めから勇者シュータとグルで、一芝居打っただけ」なのだが、それをそのまま伝えてしまったら、色々とマズい気がした。
『魔王が、敵である勇者とこっそり裏で手を組んでました』なんて、体裁が悪いどころの話ではない。
そんな事を暴露してしまったら、せっかくの部下からの信頼を失ってしまうかもしれないし……。
なので――、
「は、ハーッハッハッハッハッ!」
笑って誤魔化した。
「よ、余は“地上最強の生物”こと、“雷王”イラ・ギャレマスであるぞ! あ、あのような爆発……余にとっては焚き火の中で栗が爆ぜたのと同じようなもの! は、ハーッハッハッハッハッ……」
「……もういい」
「ハッハッ……!」
高笑いの最中に上がった、沈んだ女の声に、ギャレマスの顔は硬直する。
そして、小さく息を吐きながら真顔に戻り、声の上がった方に顔を向けた。
そこには鴉羽の色をした聖礼装を纏った少女の姿が――。
彼女の姿を見たギャレマスが、様々な感情が入り混じったような声で呟く。
「――サリア……!」
「違えよ、クソオヤジ!」
少女は、ギャレマスの呟きに顔を歪めながら、苛立たしげに声を荒げた。
「サリアなんかじゃない! ウチは――ツカサだッ!」
突然スウィッシュに抱きつかれたギャレマスは、慌てて足を踏ん張って彼女の身体を受け止めながら、驚きの声を上げた。
「な、何だっ? どうしたのだ、スウィッシュよ?」
「ふ、ふわあああああああああんッ! 陛下……陛下ぁ……!」
問いかけるギャレマスの言葉にも応えず、彼の胸に顔を埋めて幼子のように泣きじゃくるスウィッシュ。
ギャレマスは、とりあえずそんな彼女の頭を恐る恐る撫でながら、戸惑いの表情を浮かべた。
「ほ、本当にどうしたのだ? 確かに久しぶりの再会だが、別にそんな号泣するほどの事では……」
「……いや、そりゃ号泣もするだろう」
首を傾げる雷王に呆れ声をかけたのは、アルトゥーだった。
「何せ、死んだと思っていた大切な男が、突然元気な姿で目の前で現れたんだ。そういう反応になるのは当然だと思うぞ」
「……え?」
ギャレマスは、アルトゥーの言葉に目をパチクリさせながら、首を傾げる。
「死んだと思っていた? 余がか? 一体誰が、そんな事実無根な事を……?」
「癒撥将が、『王が勇者の攻撃を食らって死んだ』と言っていたし、その瞬間に立ち会ったという御老体も『間違いない』と言っていたし……」
「あ……」
ギャレマスは、アルトゥーの答えを聞いてハッとした顔を浮かべ、困ったように頭を掻いた。
この前のウンダロース山脈での顛末は、元々ツカサやマッツコーの目を欺き、ノーマークで魔王城まで侵入する為にシュータと示し合わせた策だ。
もちろん、味方であるスウィッシュたちまで騙すつもりは無かったのだが、三週間もの間音信不通のままでいた上に、マッツコーからそう告げられたら、確かに死んだと思われてしまってもしょうがないかもしれない……。
「そういう事か……」
「……実際の話、どうして生きているのだ、王? 御老体の話を聞く限り、万が一にも生き延びられるはずがなかったという話だったが……?」
そこまで口にしたアルトゥーは、急に表情を険しくさせ、腰のベルトに仕込んだ飛刀を抜いた。
「――まさか! 王も、あそこの元王たちと同じく、癒撥将の能力によって甦らされた傀儡――イキビトとやらかっ?」
「へ? あ、いや! そ、そうではないぞっ!」
ギャレマスは、鋭い目を向けて飛刀を構えたアルトゥーを前にして、慌てて首を左右に振る。
「よ、余は、最初から死んでなどおらぬぞ! ほ、ほれ、この通りピンピンしておる!」
「むう……あそこの二体は言葉を喋る事もままならぬようだが、コイツは意思の疎通が出来るタイプか。おまけに、ウソを吐くほどの知能も有しておるとは……!」
「いやいや! だから、ウソではないというに!」
自分の言葉を信じず、更に表情を強張らせるアルトゥーに、ギャレマスは上ずった声で叫びながら、自分の金色の瞳を指さした。
「ほ、ほら、見てみろ! この曇りひとつ無い瞳を! これが死人の目に見えるかっ?」
「そう言われれば……」
ギャレマスの言葉につられて、彼の目をまじまじと見たアルトゥーが、小さく頷く。
「確かに……その瞳に宿る“アホ”と“お人好し”の眼光は、確かに以前の王と同じもののようだ……」
「……いや、“アホ”とか“お人好し”の眼光って、普通のとは何か違うのか? というか……お前、主に向かって“アホ”って……」
アルトゥーの呟きが耳に入り、思わず口元をひくつかせるギャレマス。
と、その時、
「……心配しなくても、そこのへっぽこクソ魔王は、確かに生きていますわよ。聖女のわらわが確と保証しますわ。……わらわとしては、死んでてくれても全然構わないんですけどね」
「おお……お主は……!」
ギャレマスは、美しい顔を顰めながら毒舌を吐いた人間族の聖女の姿を見て、表情を輝かせた。
「エラルティス! お主も来てくれたのだな! サリアの為に――!」
「勘違いしないで下さいまし」
魔王に声をかけられた聖女エラルティスは、これ以上無く不機嫌そうに眉間へ皺を寄せながら、吐き捨てるように言う。
「わらわは、そこで貴方にしがみついてる貧乳娘と陰キャ魔族と元“伝説の四勇士”のクセに魔族の男に惚れた色ボケエルフに攫われて、無理矢理連れて来られただけです」
そう言いながら、彼女は首に巻きついた古い革のチョーカーを忌々しげに引っ張った。
「……この忌々しい呪いの首輪さえ無ければ、すぐにでもこんな死人臭い場所からおさらばしてやるところですのに……チッ!」
「お、おう……それは、スマンかった……」
露骨に不満を露わにするエラルティスの剣幕に気圧され、ギャレマスは反射的に謝る。
と、その時――、
「……驚いたわねん」
そう、ポツリと呟いたのは、マッツコーだった。
彼は、珍しく真顔で、ギャレマスの顔を鋭い目で睨みつける。
「まさか、あの凄まじい爆発の中で生き延びるなんて……! 間違いなく、跡形も無く吹き飛んだと思ってたのに……」
そう言うと、彼はギリリと奥歯を噛み締め、険しい声で魔王に訊ねた。
「雷王ちゃんッ! アナタは、どうやってあの爆発から――っ?」
「あ……いや、それは……」
マッツコーの詰問に、ギャレマスはバツ悪げに目を逸らす。
彼の問いに対する答えは、「実は、初めから勇者シュータとグルで、一芝居打っただけ」なのだが、それをそのまま伝えてしまったら、色々とマズい気がした。
『魔王が、敵である勇者とこっそり裏で手を組んでました』なんて、体裁が悪いどころの話ではない。
そんな事を暴露してしまったら、せっかくの部下からの信頼を失ってしまうかもしれないし……。
なので――、
「は、ハーッハッハッハッハッ!」
笑って誤魔化した。
「よ、余は“地上最強の生物”こと、“雷王”イラ・ギャレマスであるぞ! あ、あのような爆発……余にとっては焚き火の中で栗が爆ぜたのと同じようなもの! は、ハーッハッハッハッハッ……」
「……もういい」
「ハッハッ……!」
高笑いの最中に上がった、沈んだ女の声に、ギャレマスの顔は硬直する。
そして、小さく息を吐きながら真顔に戻り、声の上がった方に顔を向けた。
そこには鴉羽の色をした聖礼装を纏った少女の姿が――。
彼女の姿を見たギャレマスが、様々な感情が入り混じったような声で呟く。
「――サリア……!」
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