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エピソード14 魔王がやらねば誰がやる
魔王とイキビト二号と攻防
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「ワタシに……治してもらうですって?」
ギャレマスの言葉を聞いたマッツコーは、一瞬目を点にし、それからくっくっと笑い出した。
そして、不敵な表情を浮かべながらコクンと頷く。
「……ええ、いいわよん。雷王ちゃんがワタシたちに勝つ事が出来たら、アナタの望み通りに、その傷を治癒してあげるわよん。――もっとも、ワタシのイキビト二号ちゃん……霹靂王を相手にして、そんな事なんて出来やしないでしょうけどね」
「決まりだな」
マッツコーの答えを聞いたギャレマスは、目一杯に広げた右手の指先に一瞬で理力を集めるや、すかさず腕を勢いよく横に振り払った。
「では、いくぞ! 熊手爪撃空波呪術ッ!」
詠唱と共に彼の指先から放たれた五本の風の波動が、対峙するイキビト二号目がけて襲いかかる。
それを見るや、イキビト二号は即座に両手を激しく打ち合わせた。
『ダ・メダコ・リャー』
次の瞬間、天から降り落ちてきた雷の壁が五本の風の波動の前に立ち塞がり、風と雷のふたつの呪術は凄まじい音と光を放ちながら激しく激突する。
――と、
「雷あれ! 穿刺雷槍呪術ッ!」
『……!』
轟音に紛れて微かに聴こえてきた詠唱の声に、イキビト二号は微かに目を見開く。
次の刹那、雷の壁を突き破って現れたのは、青白く輝く雷槍の穂先だった。
それを見止めたイキビト二号は、直ちに両掌を打ち合わせ、新たな呪術を詠唱する。
『――イカズチアレ。スタ・ンガ・ン』
瞬く間に薄い電膜に覆われた右手で裏拳を放ち、自分の胸元目がけて繰り出された雷槍を弾き飛ばした。
イキビト二号は、振り払った右拳の勢いを利用して上半身を右へ捻りながら、今度は左掌に理力を集める。
『……ラ・イガーボ・ム』
バチバチと音を立てる密度の濃い稲妻でコーティングされたイキビト二号の掌打が、刺突を弾かれて体勢を崩したギャレマスの顔面を捉えんとした。
――その直前、“パチンッ!”という乾いた音が空気を震わせる。
「真空刃剣呪術ッ!」
指を鳴らすと同時にギャレマスが創成した真空の大剣が、彼の顔面を目掛けて放たれたイキビト二号の掌打をはっしと受け止めた。
それによって、イキビト二号の動きが一瞬止まる。
「うおおおおお――っ!」
その隙を逃さず、ギャレマスは雄叫びを上げながら左手に握った雷槍を真横に薙ぎ払った。
『……グ』
雷槍の穂が肉を断つ確かな手応えと共に、イキビト二号の口から微かに漏れた呻き声がギャレマスの耳に届く。
――だが、
『――ふんッ』
「ぐふっ……!」
深々と腹を裂かれたはずのイキビト二号が放った右の拳打を脇腹に食らったギャレマスは、表情を歪めて体を折った。
体勢を崩したギャレマスに向けて、すかさず中段蹴りを放つイキビト二号。
「な、何のぉ!」
咄嗟に左脚と左肘で挟み込むようにしてイキビト二号の鋭い蹴りを受け止めたギャレマスは、そのまま右脚を軸にし、ぐるんと体を横に回転させる。
『……!』
右脚を絡め取られた格好になったイキビト二号は、ギャレマスの身体の回転に引っ張られるように石床へ叩きつけられた。
ゴキィッ……という、固い卵の殻が砕けるような嫌な音が、呪祭拝堂の中に響き渡る。
だが――、
『……』
一瞬の攻守逆転で、受け身を取る暇も無く石床に頭を打ちつけたイキビト二号だったが、あっさり起き上がった。
強く打ちつけた頭は醜くへこみ、裂けた皮膚からは赤黒い液体が滲み出ていたが、その表情は相変わらずの無表情で、如何程の痛痒も感じていないよう――否、実際に何ら痛みを感じていない。
何故なら、逝人である彼には、痛みや喜怒哀楽を感じる魂が存在していないからだ。
「ちっ……」
平然としているイキビト二号の姿を見て、ギャレマスは片膝をついた体勢で舌打ちする。
その一方で、ふたりの攻防を少し離れた場所で見ていたマッツコーは、にんまりとほくそ笑んだ。
「うふふ……残念だったわねん、雷王ちゃん」
「……」
「生身の相手だったら、さっきの横薙ぎ攻撃で決着がついていたでしょうねぇ。……でも、痛みを感じないイキビトちゃん相手には何ら無意味よん」
『……イカズチアレ』
マッツコーの言葉に応えるように、イキビト二号が掌を強く打ち合わせる。
『スタ・ンガ・ン』
「……ッ!」
イキビト二号が、今度は両拳に雷膜を張り、片膝をついたギャレマスに向かって殴りかかった。
ギャレマスは大きく体を捻って右拳での初撃を躱すと、間髪入れずに繰り出された左拳を真空の大剣で弾いた。
彼はそのまま、右手の真空の大剣と左手の雷の手槍を交互に繰り出し、イキビト二号に猛攻を仕掛ける。
「はあああああああ――っ!」
『……』
それに対し、イキビト二号も負けじと両拳を巧みに操りながら、ギャレマスの繰り出す剣撃と槍撃をいなし、弾き、受け、隙を見て鋭い拳撃を打ち込んだ。
――時折青白い閃光を放ちながら、互いに一歩も引かずに打ち合うふたりの戦い。
それは、まるで祭祀の場で神に捧げられる戦舞のように華麗で神々しくさえあり、その場に居合わせた者たちは皆――マッツコーでさえも、思わず心を奪われるのだった……!
ギャレマスの言葉を聞いたマッツコーは、一瞬目を点にし、それからくっくっと笑い出した。
そして、不敵な表情を浮かべながらコクンと頷く。
「……ええ、いいわよん。雷王ちゃんがワタシたちに勝つ事が出来たら、アナタの望み通りに、その傷を治癒してあげるわよん。――もっとも、ワタシのイキビト二号ちゃん……霹靂王を相手にして、そんな事なんて出来やしないでしょうけどね」
「決まりだな」
マッツコーの答えを聞いたギャレマスは、目一杯に広げた右手の指先に一瞬で理力を集めるや、すかさず腕を勢いよく横に振り払った。
「では、いくぞ! 熊手爪撃空波呪術ッ!」
詠唱と共に彼の指先から放たれた五本の風の波動が、対峙するイキビト二号目がけて襲いかかる。
それを見るや、イキビト二号は即座に両手を激しく打ち合わせた。
『ダ・メダコ・リャー』
次の瞬間、天から降り落ちてきた雷の壁が五本の風の波動の前に立ち塞がり、風と雷のふたつの呪術は凄まじい音と光を放ちながら激しく激突する。
――と、
「雷あれ! 穿刺雷槍呪術ッ!」
『……!』
轟音に紛れて微かに聴こえてきた詠唱の声に、イキビト二号は微かに目を見開く。
次の刹那、雷の壁を突き破って現れたのは、青白く輝く雷槍の穂先だった。
それを見止めたイキビト二号は、直ちに両掌を打ち合わせ、新たな呪術を詠唱する。
『――イカズチアレ。スタ・ンガ・ン』
瞬く間に薄い電膜に覆われた右手で裏拳を放ち、自分の胸元目がけて繰り出された雷槍を弾き飛ばした。
イキビト二号は、振り払った右拳の勢いを利用して上半身を右へ捻りながら、今度は左掌に理力を集める。
『……ラ・イガーボ・ム』
バチバチと音を立てる密度の濃い稲妻でコーティングされたイキビト二号の掌打が、刺突を弾かれて体勢を崩したギャレマスの顔面を捉えんとした。
――その直前、“パチンッ!”という乾いた音が空気を震わせる。
「真空刃剣呪術ッ!」
指を鳴らすと同時にギャレマスが創成した真空の大剣が、彼の顔面を目掛けて放たれたイキビト二号の掌打をはっしと受け止めた。
それによって、イキビト二号の動きが一瞬止まる。
「うおおおおお――っ!」
その隙を逃さず、ギャレマスは雄叫びを上げながら左手に握った雷槍を真横に薙ぎ払った。
『……グ』
雷槍の穂が肉を断つ確かな手応えと共に、イキビト二号の口から微かに漏れた呻き声がギャレマスの耳に届く。
――だが、
『――ふんッ』
「ぐふっ……!」
深々と腹を裂かれたはずのイキビト二号が放った右の拳打を脇腹に食らったギャレマスは、表情を歪めて体を折った。
体勢を崩したギャレマスに向けて、すかさず中段蹴りを放つイキビト二号。
「な、何のぉ!」
咄嗟に左脚と左肘で挟み込むようにしてイキビト二号の鋭い蹴りを受け止めたギャレマスは、そのまま右脚を軸にし、ぐるんと体を横に回転させる。
『……!』
右脚を絡め取られた格好になったイキビト二号は、ギャレマスの身体の回転に引っ張られるように石床へ叩きつけられた。
ゴキィッ……という、固い卵の殻が砕けるような嫌な音が、呪祭拝堂の中に響き渡る。
だが――、
『……』
一瞬の攻守逆転で、受け身を取る暇も無く石床に頭を打ちつけたイキビト二号だったが、あっさり起き上がった。
強く打ちつけた頭は醜くへこみ、裂けた皮膚からは赤黒い液体が滲み出ていたが、その表情は相変わらずの無表情で、如何程の痛痒も感じていないよう――否、実際に何ら痛みを感じていない。
何故なら、逝人である彼には、痛みや喜怒哀楽を感じる魂が存在していないからだ。
「ちっ……」
平然としているイキビト二号の姿を見て、ギャレマスは片膝をついた体勢で舌打ちする。
その一方で、ふたりの攻防を少し離れた場所で見ていたマッツコーは、にんまりとほくそ笑んだ。
「うふふ……残念だったわねん、雷王ちゃん」
「……」
「生身の相手だったら、さっきの横薙ぎ攻撃で決着がついていたでしょうねぇ。……でも、痛みを感じないイキビトちゃん相手には何ら無意味よん」
『……イカズチアレ』
マッツコーの言葉に応えるように、イキビト二号が掌を強く打ち合わせる。
『スタ・ンガ・ン』
「……ッ!」
イキビト二号が、今度は両拳に雷膜を張り、片膝をついたギャレマスに向かって殴りかかった。
ギャレマスは大きく体を捻って右拳での初撃を躱すと、間髪入れずに繰り出された左拳を真空の大剣で弾いた。
彼はそのまま、右手の真空の大剣と左手の雷の手槍を交互に繰り出し、イキビト二号に猛攻を仕掛ける。
「はあああああああ――っ!」
『……』
それに対し、イキビト二号も負けじと両拳を巧みに操りながら、ギャレマスの繰り出す剣撃と槍撃をいなし、弾き、受け、隙を見て鋭い拳撃を打ち込んだ。
――時折青白い閃光を放ちながら、互いに一歩も引かずに打ち合うふたりの戦い。
それは、まるで祭祀の場で神に捧げられる戦舞のように華麗で神々しくさえあり、その場に居合わせた者たちは皆――マッツコーでさえも、思わず心を奪われるのだった……!
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