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エピソード15 MAOH WORLD!
重力と制止と聖句
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――超加重魔法術とは、理力を漲らせた赤い魔法陣を展開し、その魔法陣内の重力を数倍に増幅させる事が出来る“重力制御術式”である。
“重力制御術式”は、現代日本の少年・仲村秀大を勇者としてこの世界へ転移させた人間族の神が、彼に与えた数多の“チート能力”の内のひとつだった。
バリエーションとして、敵の足下に展開させた魔法陣によって発生した高重力で身体の自由を奪う過重力や超重力、それとは逆に、自身の足下に反重力の魔法陣を展開して、空を自在に飛び回る反重力などがあり、今シュータが発動した超加重魔法術もそのバリエーションの一つである。
超加重魔法術は、過重力や超重力よりも大量の理力を消費するが、その分、効果発動範囲が他の術よりもずっと広い事が特徴だ。
その発動範囲の広さは、人間族領最大の屋外闘技場であるコラークェンコロシアム全体を丸々覆い尽くせるほど――“コラークェンコロシアム”をご存知でない、現代日本に生きる読者諸兄にも分かりやすいように言い換えるならば、「東京ドーム一個分」である。
もちろん、最大で平常の二十倍の重力が一点集中でかかる超重力に比べると、効果範囲が広くなる分だけ重力は分散されるが、それでも魔法陣の中にかかる重力は平常時の数倍に達する。
――これも現代日本に生きる読者諸兄に分かりやすいように言い換えるならば、さしずめ『超重力が『メラゾーマ』で、超加重魔法術が『超広範囲のベギラマ』といったところであろう。
……え? 喩えが良く分からない?
さてはオメー、FF派だな?
……閑話休題。
「こうすりゃ、もう俺のジャマは出来ねえだろ。――超加重魔法術!」
シュータがそう叫んだ瞬間、広い呪祭拝堂の石床にびっしりと張り巡らされるように展開した魔法陣が一際眩しく光り、地鳴りのような音が地面の下から響き渡った。
それと同時に、その場に居た全ての者たちは、自分の体に凄まじい負荷がかかるのを感じる。
「ぐ……ッ!」
「が……!」
「うっ……!」
「これは……っ?」
「な……っ?」
「ぐぬ……ぅ!」
「重……っ!」
彼らは驚き混じりの呻き声を上げながら、体に圧し掛かる荷重に耐えきれずに這いつくばり、まるで石床に縫い付けられたかのように、身じろぎひとつできなくなってしまった。
「う……動けな……」
「くくく……動けねえだろ?」
シュータは、石床の上で必死にもがくスウィッシュたちを見下ろしながら、その口元を歪めてせせら笑う。
「今のテメエらの身体には、超加重魔法術でいつもの数倍の重力負荷がかかってるからな。戦闘民族でもないテメエらじゃ、指一本動かすのも一苦労だろ?」
そう言うと、彼はふと眉を顰め、「……例外はクソ魔王だが」と独り言ちながら、視線を別の方へ向けた。
だが、石床に半分身体をめり込んだ状態で苦しげに唸っているギャレマスの姿を確認し、僅かに安堵の息を吐く。
「……心配なさそうだな。まあ……そりゃそうか。何せ、アイツには既に超重力を二重掛けしてるからな。さすがの“地上最強の生物”サマも、トータル五十倍くらいの重力に押さえつけられちゃ、ピクリとも動けねえわな」
「や……や……め……」
凄まじい重力で身体を圧し潰されながらも、ギャレマスはシュータに向けて必死に声を上げた。
「やめ……やめろ……しゅ、シュータ……! む、むす……娘を……苦し……ませ……る……事は……ゆる……さぬ!」
「……まだ喋れる余裕があるとは、さすが、『腐っても魔王様』ってところか?」
そう言って、シュータは魔王を嘲笑う。
……と、不意に彼は表情を消した。
「……別に、俺だって好き好んで苦しませてる訳じゃねーんだよ、クソが」
「え……?」
「――エラルティス!」
思わず漏れた声をギャレマスに聞き咎められたシュータは、慌てた様子で聖女の名を叫びながら、魔王を避けるように顔を背ける。
そして、ひとり呆然と立ち竦んでいるエラルティスに向けて顎をしゃくった。
「……ほら、邪魔が入らないようにしてやったぜ。テメエには反重力をかけて、他の奴と違って自由に動けるようにしてるから、さっさとやれ」
「え……ええ……」
シュータに促されたエラルティスは、ぎこちなく頷くと、聖杖を構えて恐る恐る一歩踏み出す。
エラルティスの足元には、シュータが伝えた通り、反重力の魔法陣が布かれていて、超加重魔法術の高重力を相殺しているようだ。
「……」
それを確認した彼女は一瞬複雑な表情を浮かべたが、すぐに口元を固く結び、石床の上に磔られて苦しげに喘いでいる赤髪の少女へ一歩一歩近付いてゆく。
「や、やめなさい、クズ聖女! ……お願い、やめて!」
「よ……よせ、エラルティス!」
「エラリィッ!」
背後から上がる懇願や制止の声も無視し、エラルティスは石床に聖杖の先を強く打ちつけた。
「――聖鎖法術!」
彼女の口から聖句が紡がれると同時に創成された光の鎖が、倒れ伏すツカサの四肢にきつく絡みつく。
「く……ぅ」
聖鎖法術の放つ法力に身体を蝕まれたツカサの口から、苦しげな呻き声が漏れた。
「や……やめろ、聖女……っ!」
「むぅ……!」
「さ、サリア姫……い、いや、違う……と、とにかく、姫ぇッ!」
彼女の苦悶の声に、狼狽した叫び声が上がる。
「や……やめろ、エラルティス! む……娘を――ッ!」
「……」
一際大きく上がったギャレマスの絶叫に、僅かに唇を噛んだエラルティスは――大きく息を吸い込んでから、
『――天におわす全能の神よ かの愚かなる邪悪の権化を 慈悲と断罪の光もて浄滅し給え!』
と、厳かに聖句を紡いだのだった――!
“重力制御術式”は、現代日本の少年・仲村秀大を勇者としてこの世界へ転移させた人間族の神が、彼に与えた数多の“チート能力”の内のひとつだった。
バリエーションとして、敵の足下に展開させた魔法陣によって発生した高重力で身体の自由を奪う過重力や超重力、それとは逆に、自身の足下に反重力の魔法陣を展開して、空を自在に飛び回る反重力などがあり、今シュータが発動した超加重魔法術もそのバリエーションの一つである。
超加重魔法術は、過重力や超重力よりも大量の理力を消費するが、その分、効果発動範囲が他の術よりもずっと広い事が特徴だ。
その発動範囲の広さは、人間族領最大の屋外闘技場であるコラークェンコロシアム全体を丸々覆い尽くせるほど――“コラークェンコロシアム”をご存知でない、現代日本に生きる読者諸兄にも分かりやすいように言い換えるならば、「東京ドーム一個分」である。
もちろん、最大で平常の二十倍の重力が一点集中でかかる超重力に比べると、効果範囲が広くなる分だけ重力は分散されるが、それでも魔法陣の中にかかる重力は平常時の数倍に達する。
――これも現代日本に生きる読者諸兄に分かりやすいように言い換えるならば、さしずめ『超重力が『メラゾーマ』で、超加重魔法術が『超広範囲のベギラマ』といったところであろう。
……え? 喩えが良く分からない?
さてはオメー、FF派だな?
……閑話休題。
「こうすりゃ、もう俺のジャマは出来ねえだろ。――超加重魔法術!」
シュータがそう叫んだ瞬間、広い呪祭拝堂の石床にびっしりと張り巡らされるように展開した魔法陣が一際眩しく光り、地鳴りのような音が地面の下から響き渡った。
それと同時に、その場に居た全ての者たちは、自分の体に凄まじい負荷がかかるのを感じる。
「ぐ……ッ!」
「が……!」
「うっ……!」
「これは……っ?」
「な……っ?」
「ぐぬ……ぅ!」
「重……っ!」
彼らは驚き混じりの呻き声を上げながら、体に圧し掛かる荷重に耐えきれずに這いつくばり、まるで石床に縫い付けられたかのように、身じろぎひとつできなくなってしまった。
「う……動けな……」
「くくく……動けねえだろ?」
シュータは、石床の上で必死にもがくスウィッシュたちを見下ろしながら、その口元を歪めてせせら笑う。
「今のテメエらの身体には、超加重魔法術でいつもの数倍の重力負荷がかかってるからな。戦闘民族でもないテメエらじゃ、指一本動かすのも一苦労だろ?」
そう言うと、彼はふと眉を顰め、「……例外はクソ魔王だが」と独り言ちながら、視線を別の方へ向けた。
だが、石床に半分身体をめり込んだ状態で苦しげに唸っているギャレマスの姿を確認し、僅かに安堵の息を吐く。
「……心配なさそうだな。まあ……そりゃそうか。何せ、アイツには既に超重力を二重掛けしてるからな。さすがの“地上最強の生物”サマも、トータル五十倍くらいの重力に押さえつけられちゃ、ピクリとも動けねえわな」
「や……や……め……」
凄まじい重力で身体を圧し潰されながらも、ギャレマスはシュータに向けて必死に声を上げた。
「やめ……やめろ……しゅ、シュータ……! む、むす……娘を……苦し……ませ……る……事は……ゆる……さぬ!」
「……まだ喋れる余裕があるとは、さすが、『腐っても魔王様』ってところか?」
そう言って、シュータは魔王を嘲笑う。
……と、不意に彼は表情を消した。
「……別に、俺だって好き好んで苦しませてる訳じゃねーんだよ、クソが」
「え……?」
「――エラルティス!」
思わず漏れた声をギャレマスに聞き咎められたシュータは、慌てた様子で聖女の名を叫びながら、魔王を避けるように顔を背ける。
そして、ひとり呆然と立ち竦んでいるエラルティスに向けて顎をしゃくった。
「……ほら、邪魔が入らないようにしてやったぜ。テメエには反重力をかけて、他の奴と違って自由に動けるようにしてるから、さっさとやれ」
「え……ええ……」
シュータに促されたエラルティスは、ぎこちなく頷くと、聖杖を構えて恐る恐る一歩踏み出す。
エラルティスの足元には、シュータが伝えた通り、反重力の魔法陣が布かれていて、超加重魔法術の高重力を相殺しているようだ。
「……」
それを確認した彼女は一瞬複雑な表情を浮かべたが、すぐに口元を固く結び、石床の上に磔られて苦しげに喘いでいる赤髪の少女へ一歩一歩近付いてゆく。
「や、やめなさい、クズ聖女! ……お願い、やめて!」
「よ……よせ、エラルティス!」
「エラリィッ!」
背後から上がる懇願や制止の声も無視し、エラルティスは石床に聖杖の先を強く打ちつけた。
「――聖鎖法術!」
彼女の口から聖句が紡がれると同時に創成された光の鎖が、倒れ伏すツカサの四肢にきつく絡みつく。
「く……ぅ」
聖鎖法術の放つ法力に身体を蝕まれたツカサの口から、苦しげな呻き声が漏れた。
「や……やめろ、聖女……っ!」
「むぅ……!」
「さ、サリア姫……い、いや、違う……と、とにかく、姫ぇッ!」
彼女の苦悶の声に、狼狽した叫び声が上がる。
「や……やめろ、エラルティス! む……娘を――ッ!」
「……」
一際大きく上がったギャレマスの絶叫に、僅かに唇を噛んだエラルティスは――大きく息を吸い込んでから、
『――天におわす全能の神よ かの愚かなる邪悪の権化を 慈悲と断罪の光もて浄滅し給え!』
と、厳かに聖句を紡いだのだった――!
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