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エピソード4 さまよえる(顔色が)蒼い魔王
魔王と半人族と統治者
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とっぷりと深い闇が落ちる森の中、数十人もの人影がゆっくりと歩を進めていた。
それは、自分たちの集落へと向かう、森に棲む原初亜人・半人族の一群だった。
その、半人族の集団の中央――、
「……のう、スッタバよ」
テントの布と折れた支柱を利用して作った即席の担架の上に乗せられたギャレマスが、酷い揺れと、もっと酷い腰の痛みに顔を顰めながら、担架の担ぎ手のひとりであるスッタバに向かって声をかける。
「アイ。ナんでショう、おうサマ?」
スッタバは、額に浮いた汗を手の甲で拭きながら、ギャレマスの声に応じて振り返った。
そんな彼に向けて鷹揚に頷きながら、ギャレマスは言葉を続ける。
「お主が先ほど申しておった、お主ら半人族を治める者の事なのだが――」
「アイ。バトシュさマのことデスか?」
「ああ」
軽く首を縦に振ったギャレマスは、顎髭を撫でながら尋ねた。
「その“バトシュ”という者は、“ソトビト”だと申しておったが……そもそも、“ソトビト”とは何なのだ?」
「アイ」
スッタバは、ギャレマスの問いかけに気安く頷くと、淡々と答える。
「ソトビトっていウのは、スッタバたチとはちがウとこロからきタひトのことデス」
「――違うところから……つまり、我らのようにか?」
「アイ」
「ひょっとして……」
ふたりの会話に口を挟んだのは、ギャレマスの乗る担架の左側を歩いていたスウィッシュだった。
「あなたに、その共通語を教えたのが……?」
「アイ」
スウィッシュの問いかけに、スッタバはチョコンと首を縦に振った。
「バトシュさマ、スッタバたちニ、このコトバおしえテくれまシタ。……でモ、ちゃんトしゃべレルの、スッタバだケ」
「――という事は」
ギャレマスは、スッタバの答えに微かに驚きながら、更に質問を重ねる。
「お主たちを治める“バトシュ”は、四大種族のうちのいずれかという事か?」
「よ……よンダい……?」
「あぁ……そこからか……」
眉を顰めて首を傾げるスッタバの様子を見たギャレマスは、少しだけ辟易しながらも、彼から詳しい情報を引き出せるように、辛抱強く言葉を探す。
「では……質問を変えよう。――そのバトシュという者は、男か? それとも女?」
「アイ。オトこノひトデス」
「男か……では、どのような外見だ? 余やサリアのように、頭に角が生えたり、背中に翼が生えていたりしておるか?」
「ア……イエ。はえテナいデス」
「そうか。――なら、体毛……体の毛は? 獣のように全身に毛が生えていたりしているか?」
「イエ……ケは、スッタバやおうサマたちとおナジくらい……ウウン、あたマもツルツルだカラ、もっトすくナイ――デス」
「……要するに、禿げてるって事か……」
そう呟いたのは、担架の右側を歩くファミィだった。
「という事は、かなりの高齢という事なのだな……その、バトシュとかいう男は」
「あ、アイ。バトシュさマ、おジいサン」
ファミィの呟きに、スッタバは頷く。
それを聞いて、スウィッシュの隣を歩くサリアが口を挟んだ。
「そうなると……種族がふたつまで絞れますね! 人間族かエルフ族か……」
「いえ……まだ、魔族の可能性もあります。王族以外には顕現する事の無い翼はともかく、あたしみたいに角も無い魔族もいますから」
サリアの言葉に、スウィッシュが苦笑いを浮かべながら、自分の頭を指さした。
その言葉を聞いて、サリアがハッとした表情を浮かべる。
「あ……ごめんなさい、スーちゃん! サリア、スーちゃんの事を考えないで……」
「あはは、平気です、サリア様」
慌てた様子で謝るサリアに微笑みを向けながら、スウィッシュは頭を振った。
「別に、悪気があってサリア様がそう仰った訳ではないって事は分かってますから」
「本当にごめんね、スーちゃん……」
「……」
「……」
スウィッシュは本当に気にしていない様子だったが、何となく重い空気が一同の間を流れる。
と、その時、
「あ、あノ……」
おずおずと、スッタバが声を上げた。
「お、おう、何だ?」
彼の声に、すかさず応じるギャレマス。
そんな、食い気味のギャレマスの様子に気圧されながらも、スッタバは言葉を継ぐ。
「た、たブン、バトシュさマは、そっチのヒトとおなジじゃなイカと……オモいマス」
「……へ?」
唐突にスッタバから指をさされ、驚いて素っ頓狂な声を上げたのは――ファミィだった。
「わ……私か? 私と、そのバトシュとかいう男が同じ?」
「アイ」
「……のう、スッタバよ」
ファミィの声にコクンと頷いたスッタバに、ギャレマスは尋ねる。
「何故、お主はファミィとバトシュが同じ――エルフ族だと思うのだ?」
「それハ……みみデス」
「あ……耳か!」
「アイ」
ハッとするギャレマスに、スッタバはニコリと笑って、自分の耳を指さした。
「バトシュさマのみみ、ピーンッてながイ。そっチの、きんイロのケのヒトとおなジみみ」
「なるほど……それなら、確かに、エルフ族と見て間違いないですね」
スッタバの言葉に、形のいい顎に指を当てたスウィッシュが、腑に落ちたという表情で呟いた。
「尖耳は、エルフ族独自の特徴のひとつですからね。そのバトシュとかいう男、エルフ族でほぼほぼ間違いないでしょう」
「エルフなのか……」
スウィッシュの言葉に頷いたギャレマスは、思わず顔を顰めた。
「……」
ファミィも、無言のまま、僅かにその表情を強張らせる。
そんなふたりのただならぬ様子に、戸惑いの表情を浮かべたスッタバが、おずおずと尋ねかけた。
「あ……あノ? そレが……ナニか?」
「う……む」
スッタバの問いかけに、ギャレマスは渋い顔をしながら、躊躇いがちに呟く。
「――半人族を統べるのが、エルフの老人か……」
上下する担架の動きに合わせて身体を上下に揺らしながら、ギャレマスは心の中で嘆息した。
(ふぅむ……これは、話がなかなかに拗れてしまうやもしれぬなぁ……)
それは、自分たちの集落へと向かう、森に棲む原初亜人・半人族の一群だった。
その、半人族の集団の中央――、
「……のう、スッタバよ」
テントの布と折れた支柱を利用して作った即席の担架の上に乗せられたギャレマスが、酷い揺れと、もっと酷い腰の痛みに顔を顰めながら、担架の担ぎ手のひとりであるスッタバに向かって声をかける。
「アイ。ナんでショう、おうサマ?」
スッタバは、額に浮いた汗を手の甲で拭きながら、ギャレマスの声に応じて振り返った。
そんな彼に向けて鷹揚に頷きながら、ギャレマスは言葉を続ける。
「お主が先ほど申しておった、お主ら半人族を治める者の事なのだが――」
「アイ。バトシュさマのことデスか?」
「ああ」
軽く首を縦に振ったギャレマスは、顎髭を撫でながら尋ねた。
「その“バトシュ”という者は、“ソトビト”だと申しておったが……そもそも、“ソトビト”とは何なのだ?」
「アイ」
スッタバは、ギャレマスの問いかけに気安く頷くと、淡々と答える。
「ソトビトっていウのは、スッタバたチとはちがウとこロからきタひトのことデス」
「――違うところから……つまり、我らのようにか?」
「アイ」
「ひょっとして……」
ふたりの会話に口を挟んだのは、ギャレマスの乗る担架の左側を歩いていたスウィッシュだった。
「あなたに、その共通語を教えたのが……?」
「アイ」
スウィッシュの問いかけに、スッタバはチョコンと首を縦に振った。
「バトシュさマ、スッタバたちニ、このコトバおしえテくれまシタ。……でモ、ちゃんトしゃべレルの、スッタバだケ」
「――という事は」
ギャレマスは、スッタバの答えに微かに驚きながら、更に質問を重ねる。
「お主たちを治める“バトシュ”は、四大種族のうちのいずれかという事か?」
「よ……よンダい……?」
「あぁ……そこからか……」
眉を顰めて首を傾げるスッタバの様子を見たギャレマスは、少しだけ辟易しながらも、彼から詳しい情報を引き出せるように、辛抱強く言葉を探す。
「では……質問を変えよう。――そのバトシュという者は、男か? それとも女?」
「アイ。オトこノひトデス」
「男か……では、どのような外見だ? 余やサリアのように、頭に角が生えたり、背中に翼が生えていたりしておるか?」
「ア……イエ。はえテナいデス」
「そうか。――なら、体毛……体の毛は? 獣のように全身に毛が生えていたりしているか?」
「イエ……ケは、スッタバやおうサマたちとおナジくらい……ウウン、あたマもツルツルだカラ、もっトすくナイ――デス」
「……要するに、禿げてるって事か……」
そう呟いたのは、担架の右側を歩くファミィだった。
「という事は、かなりの高齢という事なのだな……その、バトシュとかいう男は」
「あ、アイ。バトシュさマ、おジいサン」
ファミィの呟きに、スッタバは頷く。
それを聞いて、スウィッシュの隣を歩くサリアが口を挟んだ。
「そうなると……種族がふたつまで絞れますね! 人間族かエルフ族か……」
「いえ……まだ、魔族の可能性もあります。王族以外には顕現する事の無い翼はともかく、あたしみたいに角も無い魔族もいますから」
サリアの言葉に、スウィッシュが苦笑いを浮かべながら、自分の頭を指さした。
その言葉を聞いて、サリアがハッとした表情を浮かべる。
「あ……ごめんなさい、スーちゃん! サリア、スーちゃんの事を考えないで……」
「あはは、平気です、サリア様」
慌てた様子で謝るサリアに微笑みを向けながら、スウィッシュは頭を振った。
「別に、悪気があってサリア様がそう仰った訳ではないって事は分かってますから」
「本当にごめんね、スーちゃん……」
「……」
「……」
スウィッシュは本当に気にしていない様子だったが、何となく重い空気が一同の間を流れる。
と、その時、
「あ、あノ……」
おずおずと、スッタバが声を上げた。
「お、おう、何だ?」
彼の声に、すかさず応じるギャレマス。
そんな、食い気味のギャレマスの様子に気圧されながらも、スッタバは言葉を継ぐ。
「た、たブン、バトシュさマは、そっチのヒトとおなジじゃなイカと……オモいマス」
「……へ?」
唐突にスッタバから指をさされ、驚いて素っ頓狂な声を上げたのは――ファミィだった。
「わ……私か? 私と、そのバトシュとかいう男が同じ?」
「アイ」
「……のう、スッタバよ」
ファミィの声にコクンと頷いたスッタバに、ギャレマスは尋ねる。
「何故、お主はファミィとバトシュが同じ――エルフ族だと思うのだ?」
「それハ……みみデス」
「あ……耳か!」
「アイ」
ハッとするギャレマスに、スッタバはニコリと笑って、自分の耳を指さした。
「バトシュさマのみみ、ピーンッてながイ。そっチの、きんイロのケのヒトとおなジみみ」
「なるほど……それなら、確かに、エルフ族と見て間違いないですね」
スッタバの言葉に、形のいい顎に指を当てたスウィッシュが、腑に落ちたという表情で呟いた。
「尖耳は、エルフ族独自の特徴のひとつですからね。そのバトシュとかいう男、エルフ族でほぼほぼ間違いないでしょう」
「エルフなのか……」
スウィッシュの言葉に頷いたギャレマスは、思わず顔を顰めた。
「……」
ファミィも、無言のまま、僅かにその表情を強張らせる。
そんなふたりのただならぬ様子に、戸惑いの表情を浮かべたスッタバが、おずおずと尋ねかけた。
「あ……あノ? そレが……ナニか?」
「う……む」
スッタバの問いかけに、ギャレマスは渋い顔をしながら、躊躇いがちに呟く。
「――半人族を統べるのが、エルフの老人か……」
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