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エピソード6 勇魔同舟
姫と勇者と友達
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ジェレミアの言葉に、サリアはつと表情を曇らせ、黙ったまま顔を俯かせる。
そして、少ししてから顔を上げ、
「……ごめん、ミィちゃん、シューくん」
と言いながら、フルフルと首を横に振った。
「シューくんとミィちゃんが、サリアの作った料理を気に入ってもらえて良かったし、仲間に誘ってくれた事は嬉しいんだけど……やっぱり、お父様やスーちゃんたちと離れたくないんだ……」
「お、おお……サリアよ……!」
サリアの返事を聞いたギャレマスは、感激に打ち震えながら滂沱の涙を流す。その傍らで、スウィッシュが無言で自分のハンカチを彼に差し出した。
そんな父親の事をチラリと見て、微笑を浮かべたサリアは、ジェレミィアとシュータに向けてぺこりと頭を下げる。
「……だから、サリアはシューくんのお誘いには応えられません。ごめんなさい」
「そっか……」
申し訳なさそうな顔でそう言ったサリアに、ジェレミィアは微笑みを浮かべて小さく頷いた。
「まあ……そりゃそうだよね。今はいっしょにいるけど、本来、アタシたちとサッちゃんたちは敵同士だもんね……」
「ううん」
少し寂しそうな表情を浮かべるジェレミィアに、サリアは大きくかぶりを振る。
そして、目を大きく見開いて、ジェレミィアたちに向かって言った。
「もう敵なんかじゃないよ!」
「え……? でも……」
「ひとつの部屋に集まって、いっしょにご飯を食べたんだから、サリアたちはみ~んなお友達だよ! 敵同士だったら、そんな事はしないでしょ?」
サリアは弾んだ声でそう言うと、その場に居た全員に笑いかける。
「だから、もう勇者とか魔王とか……敵とか味方とか関係無しに、みんなで仲良くやっていこうよ! ねっ?」
「……」
サリアの提案に、その場に居た全員が、戸惑いの表情を浮かべた。
部屋の中に何とも言えない沈黙が垂れ込める。
と、スウィッシュがおずおずと口を開いた。
「……サリア様。あなたの言いたい事は分からないでもありませんが、あたしたち魔族と“伝説の四勇士”には深い因縁があり、その上種族も違いますから、そうやすやすと打ち解けられるものでは……」
「でも、ファミちゃんとはお友達になれたよ?」
「それは……」
キョトンとした顔で訊き返すサリアに、返す言葉を失うスウィッシュ。
言い淀む彼女に、サリアは更に言葉を継ぐ。
「ファミちゃんだけじゃないよ。エルフ族のヴァートスさんとも、半人族のみんなとも仲良くなれたよ?」
「それは……確かにそうですけど……」
「だから、立場とか種族とかがあるから仲良くなれないなんて事は無いと思うんだよー」
そう言って、サリアは満面の笑みを浮かべた。
「だから、サリアとシューくんたちはお友達になれるし、もうお友達なんだよ。少なくとも、サリアはそう思ってる」
「と……友達? 俺と、お前が?」
サリアの言葉に、戸惑いの声を上げるシュータ。
そんな彼に、サリアは大きく頷きかける。
「そう! だから、これからは、シューくんが肉餅挟み込みパンが食べたくなったら、サリアが作ってあげるから、いつでも来ていいよー。お友達だったら、家に遊びに行くのは普通だからねっ」
「いや……サッちゃんの“家”って、魔王さんのお城じゃん。勇者がそんな気安く行っちゃダメな所なんじゃ……」
無邪気なサリアの言葉に、苦笑しながらツッコむジェレミィア。
一方のシュータは、ポカンと口を開け、サリアの顔を凝視しながら、おずおずと口を開く。
「い……いいのか? 照り焼きバーガー食う為なら、俺はお前ん家に本当に行っちまうぞ。多分、週四くらいのペースで……」
「いや、多いわ!」
シュータの言葉に、ギャレマスは慌てて口を挟んだ。
「何だ、週四って! 我が城……魔王国の中心部に、まるで定食屋の様なノリで足しげく通われて堪るかぁっ!」
「んだよ、ケチ! ……じゃあ、週六でいいよ」
「よくないわ! というか、何故増えるぅッ?」
血走った目を剥き、怒声を上げるギャレマス。
と、彼の袖をサリアが引いた。
「……お父様、ダメですか?」
「う……」
サリアの懇願するような顔を目の当たりにした途端、ギャレマスは返す言葉に詰まり、目を白黒させる。
そして、何か言いたげに口をモゴモゴと動かしながら、首を横に振りかけたり、縦に振ろうとしたり、やっぱり横に振ろうとしたけど途中で止めて……を数度繰り返した後、力無く頷いた。
「……分かった」
「わあ! 本当ですか、お父様っ?」
「い、いや、だが!」
パアッと顔を輝かせるサリアを慌てて制して、ギャレマスは考え込みながら、おずおずと言う。
「だが……さすがに週四は多すぎる。せめて週一……いや、やっぱりニ週間に一度……いや、やっぱりもう少し……」
「いや……二週間に一度なら、勇者が居城に押しかけてきても構わんのか、王よ……」
「ちょ! へ、陛下ぁっ?」
魔王の言葉に、アルトゥーは呆れ混じりの表情を浮かべ、スウィッシュは素っ頓狂な叫び声を上げた。
だが、そんなふたりの反応も構わず、サリアはシュータとジェレミィアに向けてニッコリと微笑みかける。
「良かったね! お父様のお赦しが出たよー!」
「お、おう……いや、コレ冗談じゃなくてマジの話なのか?」
「いいのかなぁ……」
思いもかけない話の流れに、さすがに若干引き気味のシュータとジェレミィアであった……。
「……バカバカしい」
そんなやり取りを、一人離れたところで横目で見ながら、エラルティスは苦々しい表情を浮かべていた。
彼女は、イライラした様子で翠色の髪を指で掻き上げる。
「魔族と友達なんて、想像するだけでゾッとしますわ。わらわは真っ平御免ですわよ」
彼女はそう言い捨てると、テーブルの皿に乗った、自分の分であろう“肉餅挟み込みパン”を一瞥した。
「……」
彼女は、ゴクリと生唾を飲み込むと、皆に気付かれないようにそおっとテーブルに近付く。
そして、ゆっくりと身を屈めて、肉餅挟み込みパンに顔を寄せた。
漂ってきたタレの香りが、エラルティスの鼻腔をくすぐる。
もう一度口中に湧いた唾を飲み込んだ彼女は、無意識に手を伸ばしていく。
「……はっ!」
だが、肉餅挟み込みパンに触れようとした直前、彼女は我に返り、慌てて伸ばした手を引っ込めた。
「わ、わらわは、今何をしようと……?」
彼女は、慌ててテーブルから飛び退ると、先ほど伸ばしかけた手をまじまじと見つめながら、呆然と呟く。
そして、ブンブンと首を激しく横に振って、頭の中を占めた邪念を振り払った。
「あ……ありえませんわ! 聖女であるわらわが、汚らわしい魔族が作った食べ物などに興味を持つだなんて……!」
そう自分に言い聞かせるエラルティス。
その内、ようやく気持ちが落ち着いた彼女は、大きく溜息を吐きながら、和気藹々? としているシュータと魔王たちの姿を一瞥した。
そして、一際無邪気な笑顔を見せている赤毛の少女の顔に視線を向けると、翠瞳を妖しく光らせる。
「……確か、『一緒にご飯を食べたら友達』なんでしたっけ?」
そう独り言ちたエラルティスは、その口角を三日月の形に吊り上げながら、冷たい声で言葉を継いだ。
「……でしたら、食べていないわらわと貴女は友達じゃありませんよねえ? ……そうでしょう? 汚らわしい魔族の王女様……!」
そして、少ししてから顔を上げ、
「……ごめん、ミィちゃん、シューくん」
と言いながら、フルフルと首を横に振った。
「シューくんとミィちゃんが、サリアの作った料理を気に入ってもらえて良かったし、仲間に誘ってくれた事は嬉しいんだけど……やっぱり、お父様やスーちゃんたちと離れたくないんだ……」
「お、おお……サリアよ……!」
サリアの返事を聞いたギャレマスは、感激に打ち震えながら滂沱の涙を流す。その傍らで、スウィッシュが無言で自分のハンカチを彼に差し出した。
そんな父親の事をチラリと見て、微笑を浮かべたサリアは、ジェレミィアとシュータに向けてぺこりと頭を下げる。
「……だから、サリアはシューくんのお誘いには応えられません。ごめんなさい」
「そっか……」
申し訳なさそうな顔でそう言ったサリアに、ジェレミィアは微笑みを浮かべて小さく頷いた。
「まあ……そりゃそうだよね。今はいっしょにいるけど、本来、アタシたちとサッちゃんたちは敵同士だもんね……」
「ううん」
少し寂しそうな表情を浮かべるジェレミィアに、サリアは大きくかぶりを振る。
そして、目を大きく見開いて、ジェレミィアたちに向かって言った。
「もう敵なんかじゃないよ!」
「え……? でも……」
「ひとつの部屋に集まって、いっしょにご飯を食べたんだから、サリアたちはみ~んなお友達だよ! 敵同士だったら、そんな事はしないでしょ?」
サリアは弾んだ声でそう言うと、その場に居た全員に笑いかける。
「だから、もう勇者とか魔王とか……敵とか味方とか関係無しに、みんなで仲良くやっていこうよ! ねっ?」
「……」
サリアの提案に、その場に居た全員が、戸惑いの表情を浮かべた。
部屋の中に何とも言えない沈黙が垂れ込める。
と、スウィッシュがおずおずと口を開いた。
「……サリア様。あなたの言いたい事は分からないでもありませんが、あたしたち魔族と“伝説の四勇士”には深い因縁があり、その上種族も違いますから、そうやすやすと打ち解けられるものでは……」
「でも、ファミちゃんとはお友達になれたよ?」
「それは……」
キョトンとした顔で訊き返すサリアに、返す言葉を失うスウィッシュ。
言い淀む彼女に、サリアは更に言葉を継ぐ。
「ファミちゃんだけじゃないよ。エルフ族のヴァートスさんとも、半人族のみんなとも仲良くなれたよ?」
「それは……確かにそうですけど……」
「だから、立場とか種族とかがあるから仲良くなれないなんて事は無いと思うんだよー」
そう言って、サリアは満面の笑みを浮かべた。
「だから、サリアとシューくんたちはお友達になれるし、もうお友達なんだよ。少なくとも、サリアはそう思ってる」
「と……友達? 俺と、お前が?」
サリアの言葉に、戸惑いの声を上げるシュータ。
そんな彼に、サリアは大きく頷きかける。
「そう! だから、これからは、シューくんが肉餅挟み込みパンが食べたくなったら、サリアが作ってあげるから、いつでも来ていいよー。お友達だったら、家に遊びに行くのは普通だからねっ」
「いや……サッちゃんの“家”って、魔王さんのお城じゃん。勇者がそんな気安く行っちゃダメな所なんじゃ……」
無邪気なサリアの言葉に、苦笑しながらツッコむジェレミィア。
一方のシュータは、ポカンと口を開け、サリアの顔を凝視しながら、おずおずと口を開く。
「い……いいのか? 照り焼きバーガー食う為なら、俺はお前ん家に本当に行っちまうぞ。多分、週四くらいのペースで……」
「いや、多いわ!」
シュータの言葉に、ギャレマスは慌てて口を挟んだ。
「何だ、週四って! 我が城……魔王国の中心部に、まるで定食屋の様なノリで足しげく通われて堪るかぁっ!」
「んだよ、ケチ! ……じゃあ、週六でいいよ」
「よくないわ! というか、何故増えるぅッ?」
血走った目を剥き、怒声を上げるギャレマス。
と、彼の袖をサリアが引いた。
「……お父様、ダメですか?」
「う……」
サリアの懇願するような顔を目の当たりにした途端、ギャレマスは返す言葉に詰まり、目を白黒させる。
そして、何か言いたげに口をモゴモゴと動かしながら、首を横に振りかけたり、縦に振ろうとしたり、やっぱり横に振ろうとしたけど途中で止めて……を数度繰り返した後、力無く頷いた。
「……分かった」
「わあ! 本当ですか、お父様っ?」
「い、いや、だが!」
パアッと顔を輝かせるサリアを慌てて制して、ギャレマスは考え込みながら、おずおずと言う。
「だが……さすがに週四は多すぎる。せめて週一……いや、やっぱりニ週間に一度……いや、やっぱりもう少し……」
「いや……二週間に一度なら、勇者が居城に押しかけてきても構わんのか、王よ……」
「ちょ! へ、陛下ぁっ?」
魔王の言葉に、アルトゥーは呆れ混じりの表情を浮かべ、スウィッシュは素っ頓狂な叫び声を上げた。
だが、そんなふたりの反応も構わず、サリアはシュータとジェレミィアに向けてニッコリと微笑みかける。
「良かったね! お父様のお赦しが出たよー!」
「お、おう……いや、コレ冗談じゃなくてマジの話なのか?」
「いいのかなぁ……」
思いもかけない話の流れに、さすがに若干引き気味のシュータとジェレミィアであった……。
「……バカバカしい」
そんなやり取りを、一人離れたところで横目で見ながら、エラルティスは苦々しい表情を浮かべていた。
彼女は、イライラした様子で翠色の髪を指で掻き上げる。
「魔族と友達なんて、想像するだけでゾッとしますわ。わらわは真っ平御免ですわよ」
彼女はそう言い捨てると、テーブルの皿に乗った、自分の分であろう“肉餅挟み込みパン”を一瞥した。
「……」
彼女は、ゴクリと生唾を飲み込むと、皆に気付かれないようにそおっとテーブルに近付く。
そして、ゆっくりと身を屈めて、肉餅挟み込みパンに顔を寄せた。
漂ってきたタレの香りが、エラルティスの鼻腔をくすぐる。
もう一度口中に湧いた唾を飲み込んだ彼女は、無意識に手を伸ばしていく。
「……はっ!」
だが、肉餅挟み込みパンに触れようとした直前、彼女は我に返り、慌てて伸ばした手を引っ込めた。
「わ、わらわは、今何をしようと……?」
彼女は、慌ててテーブルから飛び退ると、先ほど伸ばしかけた手をまじまじと見つめながら、呆然と呟く。
そして、ブンブンと首を激しく横に振って、頭の中を占めた邪念を振り払った。
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その内、ようやく気持ちが落ち着いた彼女は、大きく溜息を吐きながら、和気藹々? としているシュータと魔王たちの姿を一瞥した。
そして、一際無邪気な笑顔を見せている赤毛の少女の顔に視線を向けると、翠瞳を妖しく光らせる。
「……確か、『一緒にご飯を食べたら友達』なんでしたっけ?」
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