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エピソード8 謀事魔多し
魔王と聖女と実力差
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エラルティスが声を張り上げ、聖杖の石突で床を突き叩くと同時に、ギャレマスの周囲から、幾筋もの白光が上に向かって伸びる。
上昇した白光は、魔王の頭上付近から急激なカーブを描いて互いに交差し、巨大な光の網と成ると、見上げる彼の身体に覆い被さった。
「む――?」
「さあ! 魔王の身体の自由は奪いましたわよ!」
ギャレマスの口から低い唸り声が上がったのを聞いたエラルティスが、すかさず周囲の男たちに向かって叫ぶ。
「今が好機ですわ! その手槍なり剣なりで、魔王の身体を穴だらけにしておしまいッ!」
「ハッ!」
「うおおおおおおっ!」
「くたばれ、魔族――ッ!」
エラルティスの檄に応じ、尻餅をついていた人間族の男たちが雄叫びを上げた。
各々の武器を構えて弾かれるように立ち上がった彼らは、白光の網に囚われている魔王に止めを刺さんと、彼を周りから押し包むように一斉に躍りかかる。
そして、男たちの白銀の光を放つ刃が、光網の上から魔王の肉体に突き立つ――寸前、
「――真空刃剣呪術」
男たちの包囲の中心から、落ち着いた低い声が上がった。
そして、次の瞬間、
「う、うおおおおおっ?」
「ギャああああッ!」
「ぐわああああああ~ッ!」
口々に悲鳴を上げながら、先ほど竜巻に弾き飛ばされた時と同じように四方に吹き飛ぶ警備の男たち。
それと同時に、光の網の残滓も飛び散り、氷が溶けるように淡く消えていく。
「やれやれ……雷王の力、見くびってもらっては困るな。勇者シュータならいざ知らず、名も無きお主らの刃ごときに斃れるような余ではないわ」
聖罠法術の束縛を脱したギャレマスは、そう呆れ交じりの声を上げながら、仄かに青く光る真空の剣を軽く振った。
そして、蹲って呻き声を上げている警備の男たちに向かって、冷めた声をかける。
「安心せよ。死にはせぬ。斬らずに吹き飛ばしただけだからな」
「……まったく、役に立たない男ども! 蚤虫ほどの役にも立ちませんわ!」
真空の剣を携え、涼しい顔をして立っている魔王の姿に、エラルティスは表情を歪めた。
そして、ギリギリと歯噛みしながら、闇の中に融けていく光網の最後の欠片に目を遣る。
「それにしても……わらわの聖罠法術を、こうも容易く……!」
「言うたであろう? 余の事を見くびるなと」
悔しげに呟くエラルティスに、右手に持った真空刃剣呪術の刃を向けるギャレマス。
そんな彼の顔を睨みつけながら、エラルティスは憎々しげに舌打ちした。
「でも……あなたは、聖女の法力で出来た矢を二本も、その身に受けているのに……!」
「……確かに、お主の法力の干渉はあるのだろうな。いつもより体が重いし、呪術の精度も悪いようだ」
ギャレマスは、エラルティスの言葉に小さく頷きながら、手に持った青い光を放つ真空の剣を一瞥する。
そして、その剣を軽々と振り回すと、事もなげに言い放った。
「――だが、それだけだ」
「なっ……?」
エラルティスは、ギャレマスの言葉に愕然として、目を大きく見開く。
そんな彼女に、魔王は淡々と言った。
「所詮、お主の法力は、この雷王ギャレマスの前では、そこまでだという事だ」
そして、微かな怒りの炎が揺らめく黄金の瞳で聖女の顔を睨み据えながら、低い声で言葉を継ぐ。
「さて……力の差を知覚したのならば、もう無駄な足掻きは止めるが身の為だぞ。まだ抵抗するというのなら、女とて容赦はせ――」
「お――お黙りなさいッ! 汚らわしい魔族の分際でッ!」
ギャレマスの威圧に満ちた言葉を聞いたエラルティスは、激昂のあまり顔を激しく歪めながら、ヒステリックに絶叫した。
彼女は、聖杖の柄を砕けんばかりに握りしめると、再び先端を床に叩きつける。
「わらわの力がそこまでなのかどうか、もう一度試して差し上げますわ! 聖罠法術ァッ!」
「……無駄だと言うに」
ギャレマスは呆れたように嘆息すると、彼女の唱和に応じて立ち上った白い光の網を、手にした真空の剣で斬り払った。
「――聖光千矢ッ!」
「……ッ!」
すかさず上がった新たな法術の唱和に目を見開いたギャレマスだったが、すぐさま真空刃剣呪術を解除して空いた手の指を大きく広げ、そのまま勢いよく振り上げる。
「熊手爪撃空波呪術ッ!」
彼の五本の指から生じた風の波動が、接近する無数の光の矢を悉く吹き散らした。
そして、勢いを衰えぬまま、法術を放った張本人に向かっていくが――。
「……む? 居ない?」
そこに立っているはずの白い法衣を纏った聖女の姿が無い事に気付いたギャレマスは、訝しげに声を上げた。
どうやら……エラルティスは、ギャレマスが聖罠法術と聖光千矢の連続攻撃に一瞬気を取られた隙に、秘かに移動していたようだ。
「どこだ? あの者は、どこに――」
「おーほっほっほっ! こちらですわ、お間抜け魔王ッ!」
辺りを見回すギャレマスに、エラルティスの高飛車な哄笑が浴びせかけられる。
ハッとしたギャレマスは、声のした方に振り返り――その目を大きく見開いた。
彼の目に飛び込んできたのは――。
「サ……サリアッ!」
「お、お父様……ごめんなさい……」
柱に縛りつけられた最愛の娘の強張った顔と――、
「う、うふふふふ! 魔王! へ……下手な動きはしない事をおススメいたしますわよ! さもなければ……その先は言わずとも、もちろん分かりますわよねぇ?」
盾にするようにサリアの後ろへ回り込み、首に嵌められた銀の首輪に指を添えている、聖女の引き攣った嘲笑だった。
「……エラルティスッ!」
砕けんばかりに奥歯を食い縛ったギャレマスは、勝ち誇った様子のエラルティスに向けて、烈火の如く激しい怒号を上げるのだった。
上昇した白光は、魔王の頭上付近から急激なカーブを描いて互いに交差し、巨大な光の網と成ると、見上げる彼の身体に覆い被さった。
「む――?」
「さあ! 魔王の身体の自由は奪いましたわよ!」
ギャレマスの口から低い唸り声が上がったのを聞いたエラルティスが、すかさず周囲の男たちに向かって叫ぶ。
「今が好機ですわ! その手槍なり剣なりで、魔王の身体を穴だらけにしておしまいッ!」
「ハッ!」
「うおおおおおおっ!」
「くたばれ、魔族――ッ!」
エラルティスの檄に応じ、尻餅をついていた人間族の男たちが雄叫びを上げた。
各々の武器を構えて弾かれるように立ち上がった彼らは、白光の網に囚われている魔王に止めを刺さんと、彼を周りから押し包むように一斉に躍りかかる。
そして、男たちの白銀の光を放つ刃が、光網の上から魔王の肉体に突き立つ――寸前、
「――真空刃剣呪術」
男たちの包囲の中心から、落ち着いた低い声が上がった。
そして、次の瞬間、
「う、うおおおおおっ?」
「ギャああああッ!」
「ぐわああああああ~ッ!」
口々に悲鳴を上げながら、先ほど竜巻に弾き飛ばされた時と同じように四方に吹き飛ぶ警備の男たち。
それと同時に、光の網の残滓も飛び散り、氷が溶けるように淡く消えていく。
「やれやれ……雷王の力、見くびってもらっては困るな。勇者シュータならいざ知らず、名も無きお主らの刃ごときに斃れるような余ではないわ」
聖罠法術の束縛を脱したギャレマスは、そう呆れ交じりの声を上げながら、仄かに青く光る真空の剣を軽く振った。
そして、蹲って呻き声を上げている警備の男たちに向かって、冷めた声をかける。
「安心せよ。死にはせぬ。斬らずに吹き飛ばしただけだからな」
「……まったく、役に立たない男ども! 蚤虫ほどの役にも立ちませんわ!」
真空の剣を携え、涼しい顔をして立っている魔王の姿に、エラルティスは表情を歪めた。
そして、ギリギリと歯噛みしながら、闇の中に融けていく光網の最後の欠片に目を遣る。
「それにしても……わらわの聖罠法術を、こうも容易く……!」
「言うたであろう? 余の事を見くびるなと」
悔しげに呟くエラルティスに、右手に持った真空刃剣呪術の刃を向けるギャレマス。
そんな彼の顔を睨みつけながら、エラルティスは憎々しげに舌打ちした。
「でも……あなたは、聖女の法力で出来た矢を二本も、その身に受けているのに……!」
「……確かに、お主の法力の干渉はあるのだろうな。いつもより体が重いし、呪術の精度も悪いようだ」
ギャレマスは、エラルティスの言葉に小さく頷きながら、手に持った青い光を放つ真空の剣を一瞥する。
そして、その剣を軽々と振り回すと、事もなげに言い放った。
「――だが、それだけだ」
「なっ……?」
エラルティスは、ギャレマスの言葉に愕然として、目を大きく見開く。
そんな彼女に、魔王は淡々と言った。
「所詮、お主の法力は、この雷王ギャレマスの前では、そこまでだという事だ」
そして、微かな怒りの炎が揺らめく黄金の瞳で聖女の顔を睨み据えながら、低い声で言葉を継ぐ。
「さて……力の差を知覚したのならば、もう無駄な足掻きは止めるが身の為だぞ。まだ抵抗するというのなら、女とて容赦はせ――」
「お――お黙りなさいッ! 汚らわしい魔族の分際でッ!」
ギャレマスの威圧に満ちた言葉を聞いたエラルティスは、激昂のあまり顔を激しく歪めながら、ヒステリックに絶叫した。
彼女は、聖杖の柄を砕けんばかりに握りしめると、再び先端を床に叩きつける。
「わらわの力がそこまでなのかどうか、もう一度試して差し上げますわ! 聖罠法術ァッ!」
「……無駄だと言うに」
ギャレマスは呆れたように嘆息すると、彼女の唱和に応じて立ち上った白い光の網を、手にした真空の剣で斬り払った。
「――聖光千矢ッ!」
「……ッ!」
すかさず上がった新たな法術の唱和に目を見開いたギャレマスだったが、すぐさま真空刃剣呪術を解除して空いた手の指を大きく広げ、そのまま勢いよく振り上げる。
「熊手爪撃空波呪術ッ!」
彼の五本の指から生じた風の波動が、接近する無数の光の矢を悉く吹き散らした。
そして、勢いを衰えぬまま、法術を放った張本人に向かっていくが――。
「……む? 居ない?」
そこに立っているはずの白い法衣を纏った聖女の姿が無い事に気付いたギャレマスは、訝しげに声を上げた。
どうやら……エラルティスは、ギャレマスが聖罠法術と聖光千矢の連続攻撃に一瞬気を取られた隙に、秘かに移動していたようだ。
「どこだ? あの者は、どこに――」
「おーほっほっほっ! こちらですわ、お間抜け魔王ッ!」
辺りを見回すギャレマスに、エラルティスの高飛車な哄笑が浴びせかけられる。
ハッとしたギャレマスは、声のした方に振り返り――その目を大きく見開いた。
彼の目に飛び込んできたのは――。
「サ……サリアッ!」
「お、お父様……ごめんなさい……」
柱に縛りつけられた最愛の娘の強張った顔と――、
「う、うふふふふ! 魔王! へ……下手な動きはしない事をおススメいたしますわよ! さもなければ……その先は言わずとも、もちろん分かりますわよねぇ?」
盾にするようにサリアの後ろへ回り込み、首に嵌められた銀の首輪に指を添えている、聖女の引き攣った嘲笑だった。
「……エラルティスッ!」
砕けんばかりに奥歯を食い縛ったギャレマスは、勝ち誇った様子のエラルティスに向けて、烈火の如く激しい怒号を上げるのだった。
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