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第五章 闖入せし悪魔たちは、何を望むのか
第五章其の壱拾壱 白猫
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「ふ……フラニィ! な……何でここに――?」
てっきり、フラニィが王宮にいるものと思い込んでいたハヤテは、驚きの表情を浮かべながら、どこか自慢げな顔をしている彼女に尋ねた。
その問いに対し、僅かに微笑を浮かべたフラニィは、目を輝かせて答える。
「あたし、ハヤテ様の事が心配で……。お父様のお赦しを頂いて、こっそり後をつけていたんです」
「心配って……。何を考えているんだ、君は!」
フラニィの答えに、ハヤテは思わず声を荒げた。
「安全な王宮を出て、わざわざこんな危ない場所までついてくるなんて……」
「あら? ハヤテ様は、あいつらと“交渉”しに来たんですよね? だったら、安全なんじゃないんですか?」
「う……」
フラニィの切り返しの前に、思わず言葉に詰まるハヤテ。
そんな彼の顔を見たフラニィは、慌てて首を横に振った。
「あ! ち、違うんです! 別に、ハヤテ様を責めてるとか、そんなんじゃなくて……。実は、お父様からお遣いも言いつけられてるんです――」
「……お遣い?」
怪訝そうに首を傾げるハヤテの前に、フラニィは携えていた袋を差し出した。
「お父様が、『万が一、交渉が上手くいかずにハヤテ様が襲われた時には、これを渡すように』って――」
「こ――これは……!」
フラニィから渡された袋の中を覗き込んで、驚きで目を大きく見開いたハヤテは、無造作に袋に手を突っ込み、入っていた物を取り出す。
――間違いない。
「……コンセプト・ディスク・ドライブと、ウィンディウルフディスク……それに、マウンテンエレファントディスクまで……!」
「これで、戦って下さい、ハヤテ様」
「――!」
ハヤテは、フラニィの言葉に表情を変えた。
真っ直ぐな目で彼の顔を見つめたフラニィは、離れた場所で禍々しい気配を撒き散らしているZ2を指さす。
「あいつは……本気でハヤテ様を殺そうとしています。戦って下さい、ハヤテ様! 殺されないように――!」
「し……しかし……」
だが、フラニィに促されてもなお、ハヤテは躊躇の表情を浮かべた。
「俺は――」
「はははっ! 誰かと思ったら、この前ハヤテと同時に捕まえた白猫さんじゃないか!」
ハヤテの声を途中で遮ったのは、甲高い笑い声だった。
「Z2……!」
「おや……君が持っているのは――テラの装着アイテムじゃないか?」
Z2は、ゆっくりと近付きながら、ハヤテの手元を指さす。
足を止めた彼は、じりじりと左脚を後ろに下げながら、ゆっくりと頷いた。
「ふぅん、なるほどね……。キミは、『交渉に来た』と言って、ボクらを油断させるつもりだったんだね。そして、隙を見せた途端に、こっそり付いてこさせてた白猫から装甲アイテムを受け取り、装甲戦士になって、ボクらを騙し討ちにしようと――」
「違う! それは……誤解だ!」
剣呑な響きを帯びたZ2の言葉に、ハヤテは慌てて頭を振る。
だが、Z2の頑なな態度は変わらなかった。
「じゃあ、そこの白猫と、その手にある装着アイテムは、どう説明するんだい?」
「――もういいよ!」
Z2は、声を荒げると同時に地を蹴る。
「――危ないッ!」
ハヤテは、咄嗟にフラニィを突き飛ばし、自分も横に跳んだ。次の瞬間、彼らがいた地面が、まるで爆破でもされたように弾ける。
「ぐ――ッ!」
濛々と立ち込める土埃と、大小様々な土塊と石の礫に襲われ、咄嗟に腕を掲げて顔を守ったハヤテは、思わず目を固く閉じた。
「――ハヤテ様ッ!」
「……グッ!」
フラニィの悲鳴が耳に届いた瞬間、ハヤテは首を掴まれ、無理矢理立たせられる。
「キミが何を考えていたのか、何を企んでいたのか……そんな事はもういいや」
Z2は、仮面のスリットの奥で、アイユニットを真っ赤に光らせながら、静かに言った。
「――サッサと死んで、その装甲アイテムを“光る板”に戻してボクに渡してくれたら、ね!」
「が――は……!」
哄笑しながら、ハヤテの首を掴んだ手に、徐々に力を込めていくZ2。
Z2の指に、気道と頸動脈を絞められたハヤテは、口を大きく開けて、苦しそうに喘ぐ。
そして、その目がグルンと裏返り――
「止めてぇっ!」
その時、ハヤテの首を絞めるZ2の腕に、白いものがしがみついてきた。
「は――離してっ! ハヤテ様の首から、その手を――ッ!」
「……何だよ。今いいところなんだから、じゃれついてこないでよ、白猫さん!」
微かに苛立った声で言ったZ2は、むしゃぶりついてくるフラニィを、いとも容易く振り払う。
フラニィは、草の上をゴロゴロと転がるが、すぐに体勢を整えると、四つん這いになった。全身の毛を逆立て、尻尾を立てた彼女は、Z2に向けて牙を剥き出し、フーッ! と威嚇の声を上げる。
「……チッ!」
そのフラニィの姿を見たZ2は、今度は大きく舌打ちした。
「……何だよ! たかがネコの分際で、人間様に対してその態度はさ! そんなに死にたいのなら、望み通り――」
「――フラニィに、手は出させないッ!」
Z2の怒声を途中で遮ったのは、ハヤテの決然とした声。
ハッとしたZ2の目に映ったのは、首を絞められながらも、ハヤテが己の左胸に押し当てたコンセプト・ディスク・ドライブだった。
「し……しまっ――」
「……装甲戦士、装着ッ!」
ハヤテの声と共に、ディスクの読み込みが終わり、コンセプト・ディスク・ドライブが七色の光を放ち、ハヤテの身体を包み込んだ。
一瞬後、光が弾け飛び、ハヤテの身体は――、
『装甲戦士テラ・タイプ・マウンテンエレファント、完装ッ!』
灰色の巨象を模した装甲を纏っていた。
てっきり、フラニィが王宮にいるものと思い込んでいたハヤテは、驚きの表情を浮かべながら、どこか自慢げな顔をしている彼女に尋ねた。
その問いに対し、僅かに微笑を浮かべたフラニィは、目を輝かせて答える。
「あたし、ハヤテ様の事が心配で……。お父様のお赦しを頂いて、こっそり後をつけていたんです」
「心配って……。何を考えているんだ、君は!」
フラニィの答えに、ハヤテは思わず声を荒げた。
「安全な王宮を出て、わざわざこんな危ない場所までついてくるなんて……」
「あら? ハヤテ様は、あいつらと“交渉”しに来たんですよね? だったら、安全なんじゃないんですか?」
「う……」
フラニィの切り返しの前に、思わず言葉に詰まるハヤテ。
そんな彼の顔を見たフラニィは、慌てて首を横に振った。
「あ! ち、違うんです! 別に、ハヤテ様を責めてるとか、そんなんじゃなくて……。実は、お父様からお遣いも言いつけられてるんです――」
「……お遣い?」
怪訝そうに首を傾げるハヤテの前に、フラニィは携えていた袋を差し出した。
「お父様が、『万が一、交渉が上手くいかずにハヤテ様が襲われた時には、これを渡すように』って――」
「こ――これは……!」
フラニィから渡された袋の中を覗き込んで、驚きで目を大きく見開いたハヤテは、無造作に袋に手を突っ込み、入っていた物を取り出す。
――間違いない。
「……コンセプト・ディスク・ドライブと、ウィンディウルフディスク……それに、マウンテンエレファントディスクまで……!」
「これで、戦って下さい、ハヤテ様」
「――!」
ハヤテは、フラニィの言葉に表情を変えた。
真っ直ぐな目で彼の顔を見つめたフラニィは、離れた場所で禍々しい気配を撒き散らしているZ2を指さす。
「あいつは……本気でハヤテ様を殺そうとしています。戦って下さい、ハヤテ様! 殺されないように――!」
「し……しかし……」
だが、フラニィに促されてもなお、ハヤテは躊躇の表情を浮かべた。
「俺は――」
「はははっ! 誰かと思ったら、この前ハヤテと同時に捕まえた白猫さんじゃないか!」
ハヤテの声を途中で遮ったのは、甲高い笑い声だった。
「Z2……!」
「おや……君が持っているのは――テラの装着アイテムじゃないか?」
Z2は、ゆっくりと近付きながら、ハヤテの手元を指さす。
足を止めた彼は、じりじりと左脚を後ろに下げながら、ゆっくりと頷いた。
「ふぅん、なるほどね……。キミは、『交渉に来た』と言って、ボクらを油断させるつもりだったんだね。そして、隙を見せた途端に、こっそり付いてこさせてた白猫から装甲アイテムを受け取り、装甲戦士になって、ボクらを騙し討ちにしようと――」
「違う! それは……誤解だ!」
剣呑な響きを帯びたZ2の言葉に、ハヤテは慌てて頭を振る。
だが、Z2の頑なな態度は変わらなかった。
「じゃあ、そこの白猫と、その手にある装着アイテムは、どう説明するんだい?」
「――もういいよ!」
Z2は、声を荒げると同時に地を蹴る。
「――危ないッ!」
ハヤテは、咄嗟にフラニィを突き飛ばし、自分も横に跳んだ。次の瞬間、彼らがいた地面が、まるで爆破でもされたように弾ける。
「ぐ――ッ!」
濛々と立ち込める土埃と、大小様々な土塊と石の礫に襲われ、咄嗟に腕を掲げて顔を守ったハヤテは、思わず目を固く閉じた。
「――ハヤテ様ッ!」
「……グッ!」
フラニィの悲鳴が耳に届いた瞬間、ハヤテは首を掴まれ、無理矢理立たせられる。
「キミが何を考えていたのか、何を企んでいたのか……そんな事はもういいや」
Z2は、仮面のスリットの奥で、アイユニットを真っ赤に光らせながら、静かに言った。
「――サッサと死んで、その装甲アイテムを“光る板”に戻してボクに渡してくれたら、ね!」
「が――は……!」
哄笑しながら、ハヤテの首を掴んだ手に、徐々に力を込めていくZ2。
Z2の指に、気道と頸動脈を絞められたハヤテは、口を大きく開けて、苦しそうに喘ぐ。
そして、その目がグルンと裏返り――
「止めてぇっ!」
その時、ハヤテの首を絞めるZ2の腕に、白いものがしがみついてきた。
「は――離してっ! ハヤテ様の首から、その手を――ッ!」
「……何だよ。今いいところなんだから、じゃれついてこないでよ、白猫さん!」
微かに苛立った声で言ったZ2は、むしゃぶりついてくるフラニィを、いとも容易く振り払う。
フラニィは、草の上をゴロゴロと転がるが、すぐに体勢を整えると、四つん這いになった。全身の毛を逆立て、尻尾を立てた彼女は、Z2に向けて牙を剥き出し、フーッ! と威嚇の声を上げる。
「……チッ!」
そのフラニィの姿を見たZ2は、今度は大きく舌打ちした。
「……何だよ! たかがネコの分際で、人間様に対してその態度はさ! そんなに死にたいのなら、望み通り――」
「――フラニィに、手は出させないッ!」
Z2の怒声を途中で遮ったのは、ハヤテの決然とした声。
ハッとしたZ2の目に映ったのは、首を絞められながらも、ハヤテが己の左胸に押し当てたコンセプト・ディスク・ドライブだった。
「し……しまっ――」
「……装甲戦士、装着ッ!」
ハヤテの声と共に、ディスクの読み込みが終わり、コンセプト・ディスク・ドライブが七色の光を放ち、ハヤテの身体を包み込んだ。
一瞬後、光が弾け飛び、ハヤテの身体は――、
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