好色一代勇者 〜ナンパ師勇者は、ハッタリと機転で窮地を切り抜ける!〜(アルファポリス版)

朽縄咲良

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第十一章 “DEATH”TINY

生氣と瘴氣

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 「…………」

 放った黒い大蛇たち――即ち、己の左腕を掻き消された“銀の死神”は、無表情のまま、じっと左腕の切断面を見つめていた。

「……何だこりゃ。魂消たまげたなあ……」

 一方、彼の額から放たれた光を目の当たりにしたヒースは、驚きを禁じ得ない。

「やるじゃんやるじゃん! パーム、お前はやれば出来る子だと、俺は信じてたぞ~!」
「――や、止めて下さい、ジャスミンっ!」

 興奮したジャスミンに、まるで犬コロの様に頭をワシワシ掻き回されながら、パームは思わず悲鳴を上げた。

「……つかよぉ、一体、何だったんだ、今の光は……?」

 ヒースが、首を傾げながらパームに問い質す。
 パームは、視線を“しろがねの死神”に据えたまま答える。

「今のは……“キヨメ”です。――アッザムの聖眼から、自らの体内の生氣しょうきを放出して、幽氣ユウキ尸氣シキ、そして、その両方が混合した瘴氣ショウキを元に、この世に留まる不浄の存在――つまり、死霊や屍鬼などを浄滅する……平たく言えば、です」
「…………?」
「……うむ、さっぱり分からん」
「……でしょうね……」

 首を傾げるヒースとジャスミンを前に、ガクリと肩を落とすパーム。

「スミマセン……説明が下手で」
「まあ、よく分からんが……つまり」
「――はい」

 何を言いたいのかをいち早く察したヒースの言葉に頷いて、パームは言葉を続けた。

「――今の“アッザムの聖眼”で、“銀の死神アイツ”の左腕が消え去ったという事は……」
「――つまり……アイツは、死霊屍鬼と同じ類の存在だ、って事か?」
「……恐らく」

 ヒースの目を見て、パームはコクリと頷く。

「――なるほどねぇ……」

 ジャスミンは、腑に落ちたという顔になる。

「そりゃあ、死霊屍鬼オカルト系が相手だっていう事になりゃ、確かにパーム神官の範疇だわな」
「そういう……事です」

 パームは首肯すると、前方で黙って佇む“銀の死神”を睨みながら言う。

「……なので、彼女の相手は、僕がします。二人は先に――」
「おいおい坊ちゃんよ。俺との契約条件の内容を、もう忘れたのかい?」

 ヒースは、戯けた調子でそう言うと、唇を歪めて、二カッと豪快に笑ってみせた。

「……契約、ですか……?」 
「ああ。『銀の死神と戦り合わせる』――それが、俺とお前らとの契約の条件だったはずだぜ」
「で……でも……」
「でももクソもねえよ」

 ヒースは、口ごもるパームを睨みつけて黙らせると、手にした大棍棒を肩に担いだ。そして、その巨大おおきな掌を、パームの頭の上に乗せる。

「――まあ実際、アイツの左腕はかなり厄介だからな。アレを無効化できそうな坊ちゃんの力は、これからのり合いには、ぶっちゃけ必要だ。まあ、この俺と一緒に戦わせてやるよ!」
「……と、特別に、って……」

 ヒースの言い草に、顔をひくつかせるパーム。
 しかし、彼はすぐに気を取り直して、周りを見回す。

「じゃ、じゃあ、ジャスミンさんだけでも――て、あれ……? いない……」
「ああ。色男なら、さっきお前が『彼女の相手は、僕がします。二人は先に――』って言った時点で、『あ、そう。じゃ、それでヨロシク!』とか言い残して、ダッシュで建物の方へ走っていったぜ」
「は――? ほ、本当ですかぁ?」

 ヒースの言葉に、思わず口をあんぐりと開けるパーム。

「――本当だ。いっそ清々しいほどに、一目散に去っていったぞ」
「し――死神ぃ?」

 二人の会話に口を挟んできたのは、まさかの“銀の死神”。
 だが、怒りとも焦燥とも失望ともいえない感情に翻弄され、すっかり頭に血が上ったパームは、思わず死神に食ってかかる。

「……ていうか、何で止めないで見逃したんですか! そもそも、貴女……僕たちを留める為に、ここに来たんじゃ無いんですかぁ?」
「あ……すまん」

 死神は、呆気に取られるほどの素直な態度で、ふたりに向かって頭を下げた。

「……あまりにも自然で、堂々とした逃げっぷりだったので……、逆に手を出せなかった」
「いや……、“銀の死神”様にそんなド直球で謝られると、逆にコッチの調子が狂うんだけどよ……。」

 ヒースは、顔を引き攣らせながら、やれやれと苦笑いを浮かべる。

「冥神ダレムの手によって創り出された、“人の形を成した災厄”が、素直に頭を下げてるんじゃねえよ……」
「……それだ」

 死神は、ヒースの言葉尻を捉えて、右手で彼を指弾した。

「――前々から気になっていたのだが……大分、私の事が歪んで伝えられてしまっているようだ……」
「歪んで伝えられている……? な、何の事ですか!」

 死神の呟くような言葉に、パームは噛みつき、大声を上げる。
 彼の表情を目の当たりにして、死神はその美貌を無表情に保ったまま、何ともいえない陰気な口調で、静かに口を開いた。

「……その神官の言う通り。私は、生者では無い。――だが、今の無知蒙昧な人間共が信じているような、冥神とやらの手による“災厄の塊”という訳でも無い」

 彼女はそこで、無理矢理、その美しいかんばせを歪めて、自らを嘲るように嘲笑わらってみせた。

「……私は、、神に背きし愚民どもにより、人の屍を基にして人為的に創り出された禁忌の存在……ロットナンバーZE―LA753……コードネーム“ゼラニウム”という存在モノだ――」
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