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第3章
31・魔術師長で魔術士爵で……?
しおりを挟むレオナルド・フレデリクス・アステリエ。
この人こそが、魔術国家アステリエを治める若き国王陛下である。
「本日は、魔術技術交流会のためにお集まりいただき感謝する!」
壇上でみなの視線を一身に集めながら、陛下は堂々と言い放った。
獅子を思わせる勇ましい金髪と、鋭い光を宿した青い瞳が大広間の空気を一瞬で支配する。
圧倒的な存在感に広間の誰もが息をのみ、自然と視線を奪われていた。
「この交流会が、各国の魔術技術の発展と友好の架け橋となることを願っている。我がアステリエ王国は、開催国として全力を尽くす所存である!」
(すっごい迫力……)
拍手が大広間中に広がっていく。
私もつられるように拍手をしながら、国王陛下の姿をまじまじと見つめてしまった。
(この人が、シリウス様にあれこれと無理難題を言っている国王陛下か……)
シリウス様へ結婚を命じて婚約者を押し付けたり、私たちの結婚式に参列すると早々に宣言したり、今日のレセプションに私を参加させなければ攫いにいくと脅したり……。
シリウス様からいろいろと話を聞いたせいで、三ヶ月前の婚礼祝賀パレードで陛下を見た時から、印象がすっかり変わってしまったのが複雑である。
「そして我が国の魔術省を代表し、交流会を取り仕切ってくれたものへ改めて敬意を表したい」
国王陛下の視線が、真っ直ぐにシリウスへむけられた。
「我が国随一の魔術師である、シリウス・ヴェルナー公爵! よく尽力してくれた! これからも頼むぞ!」
(……え?)
胸の奥が、ひゅっと鳴ったような気がした。
今……国王陛下は、シリウス様のことをなんと呼んだ?
公爵?
「……もったいなきお言葉」
固まってしまった私の隣で、シリウス様は表情一つ変えていなかった。淡々とした様子で頭を下げている。
「以上だ! 今宵は存分に楽しみ、明日以降の交流へ備えてくれ!」
国王陛下が壇上を降りると、張り詰めていた空気がふっと緩んでいく。
大広間にはざわめきが戻り、人々は再びおのおの楽しげに過ごし始めた。
私はそっとシリウス様の袖を引き、小声で声をかけた。
「シリウス様……、一つだけ確認してもいいですか?」
「なんですか」
「シリウス様って、公爵だったんですか……?」
震える声で、恐る恐るシリウス様へ尋ねる。
シリウス様は意外そうに瞳をぱちりと瞬かせた。
「ご存知なかったんですか」
「てっきり、魔術士爵だけをお持ちかと……」
「まぁ、無理はありません。私は基本的に、公爵としてよりも魔術師長として表に立つことが多いですからね。知らない人も多いでしょう」
シリウス様は気取った様子もなく冷静に告げてくる。
公爵なのはやはり事実らしい。
(魔術師長で、魔術士爵で、公爵……?)
もう、言葉もでなかった。
頭の処理が追いつかない。
「もともと公爵は祖父の爵位なんですが、色々あって私が継ぐことになったんですよ」
(じゃあ私は、将来的に公爵夫人にもなるってこと……?)
魔術師長の妻、というだけでも十分すぎる重圧なのに。
それに加えて、公爵夫人という肩書きまで背負うことになるとは……。
荷が重い。重すぎる。
そんな私の混乱をよそに、背後から豪快な声が聞こえてきた。
「いやー! 堅苦しい挨拶も終わった終わった! お前たち楽しんでるかー!?」
振り返ると、さっきまで壇上にいた国王陛下が、私たちのもとへとやってきていた。
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